言語研究
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会長就任講演
  • ――FukuiとKurodaのシステムの相違点と類似点について――
    福井 直樹
    2022 年 161 巻 p. 1-33
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    生成文法における多様性の研究は,普遍文法(UG)の提案およびその探究と表裏一体の関係にある。UGの存在を想定するからこそ,なぜ人間言語は「多様性」を示すのか,その制約はどのようなものなのか,などが理論的説明を要求する問題として提起される。「理論的説明」とは,可能なかぎり少数の理論的想定からできるだけ多くの種類の言語現象を導く試みであるが,日英語統辞法の相違に関してこのことを試みた最初期の研究としてFukui(1986等)とKuroda(1988)を取り上げ,標準的理解とは異なり,この2つのアプローチには根本的相違点が存在し,またこれらに共通の重要な類似点は,単一のパラメータから多くの統辞特性を導く「クラスター効果」を得ようとしている点にあることを指摘する。このように理解して初めて,「パラメータ」概念の本質に関するその後の理論的発展,そして最近の生成文法研究とこれらの研究が適切に接続されることを示す。

論文
  • 森山 倭成, 岸本 秀樹, 木戸 康人
    2022 年 161 巻 p. 35-61
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    肥筑方言における主語は,生起する環境が主節か埋め込み節かにかかわらず,ガ格の代わりにノ格で標示させることが可能である。先行研究では,肥筑方言のノ格主語が,ガ格主語とは異なり,主語移動(A-移動)を起こさず,vP内に留まると主張されてきた。しかし,本論では,肥筑方言のノ格主語は,vP内に留まるのではなく,TPとvPの間に挟まれたAsp(ect)Pの指定部位置へ主語移動を起こすことを論じる。このことを示すために,まず,未確定代名詞束縛とサー感嘆文に関する言語事実から,ガ格主語はTP指定部位置に移動する一方で,ノ格主語はガ格主語よりも低い構造位置で認可されることを示す。次に,vP分裂文に関するデータから,ノ格主語が主語移動を受けてvP指定部よりも高い位置に移動することを示す。特に,vP分裂文のデータはノ格主語が動詞句内に留まることができないことを示す強い経験的な証拠を提供する。

  • ――弱強フットを用いた分析――
    菅沼 健太郎
    2022 年 161 巻 p. 63-89
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    本論文では秋田県横手市方言の有核動詞の過去形,非過去形のアクセントパターンについて論じる。同方言の有核動詞のアクセントは,過去形におけるそのパターンが多様である点,さらにその一方で非過去形では一貫したパターンが現れる点で特徴的である。具体的には,過去形では語幹の拍数や末子音の種類などに応じて次々末拍,次末拍,末拍のいずれかに下がり目が置かれる。その一方で非過去形では一貫して次末拍に下がり目が置かれる。本論文ではこれらのアクセントパターンが弱強フットを中核とした規則群によって導かれることを示す。さらに,検討課題が残されているものもあるが,本論文で提案した規則が形容詞のアクセント,および他の動詞活用のアクセントを説明するためにも有効であることを示唆する。

  • 堤 良一, 岡﨑 友子
    2022 年 161 巻 p. 91-117
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    本稿では,これまで現場指示用法あるいは文脈照応用法の例外的存在として扱われてきた一連のソ系(列)指示詞の用法について,それらは両者とはまったくふるまいの異なる「基準指示用法」であること,この用法は,日本語の中に古くから形を変えながら存在する用法であることを指摘した。「基準指示用法」は,何らかの対象を,心内の基準と照合する。堤(2002, 2012)を援用し,これらのソ系指示詞が変項解釈を受け,そのことによって,この用法が共通してもつ,いくつかの特徴が説明できることを示した。

  • 倉部 慶太
    2022 年 161 巻 p. 119-137
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    鼻音と子音の連続(NC連続)は,分離可能性,音節化,分節音性などの観点から様々な構成を示しうる。東南アジアでは語頭のNC連続が語族を越えて広く観察されるが,従来の多くの研究ではその音韻構成が充分に検討されてこなかった。本稿では,ジンポー語(シナ・チベット語族:ミャンマー北部)に観察される語頭のNC連続を検討し,様々な音韻的・非音韻的現象をもとに,この言語のNC連続が異音節クラスターであることを示す。具体的には,話者の直感,聞こえ度,有声性,声調付与,形態構造,単音節標的型接辞,部分重複,並列複合語の語順,挿入型ルドリング,韻文の音節調整,歌詞とメロディーのアラインメントなど様々な現象において,語頭のNC連続が異音節クラスターとして振る舞うことを指摘する。明瞭な異音節クラスター型のNC連続を持つジンポー語から得られた議論は,異なるタイプのNC連続を持つほかの言語の分析にも示唆を与える。

  • ――その領域拡大と限界点について――
    ジョン アルデレティ, クィーニー チャン, 田中 伸一
    2022 年 161 巻 p. 139-169
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

    広東語には,語がもともと持ついくつかの音調のタイプが,ある種の派生環境において高音調HHまたは上昇調MHに中和されるという現象がある。これは形態要因による過程であり,「變音」(changed tone)と呼ばれる。この論文では「變音」をめぐる形態現象について包括的な分析を展開し,この音調変化の現象が個別言語的な要因と普遍的な音韻制約のもとで「音調接辞の付加」により実現されることを示す。特に,この基本的な分析が「變音」を持つ形態統語上の構文(しかも先行研究での分析では十分な説明が与えられていなかったもの)にも広範に当てはまることを立証する。さらには,この基本的分析が未開拓の様々な構文に対してどの領域まで拡大でき,どの領域に限界点があるのかを調査することにより,この研究が理論的分析だけでなく経験的検証にも資するものであることを示す。

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