言語研究
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論文
  • ――指示参照ファイル理論による分析――
    山泉 実, 田中 太一
    2026 年169 巻 p. 1-30
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/11
    ジャーナル フリー

    本稿では,認知言語学における名詞句の意味に関する理論の1つである,指示参照ファイル理論を用いて潜伏疑問(Concealed Questions)を原理的に分析する。CQとは「太郎はこの事故の原因を知っている」のように,CQ述語の項になる名詞句が間接疑問相当の意味を表す表現である。生成統語論や形式意味論のような意味論と語用論を画然と区別し,文法をあくまで形式的な体系と見なす立場からの分析には,A)述語の意味的選択制限,B)CQとなる名詞句のクラス,C)名詞句への修飾とCQ解釈の関係という3つの問題が残されている。本稿では,主体の心における(同一性の基盤となる)IDの変異様態をCQ述語によって述べる表現としてCQを捉え直すことで,A)IDの変異様態によって規定される7種の述語,B)フレーム・役割モデルによるカテゴリー化と結びつく名詞句,C)Bの名詞句としての解釈しやすさの上昇という解答を与える。

  • ――[主格主語+分詞+FALL]構文の記述――
    石川 さくら
    2026 年169 巻 p. 31-56
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/11
    ジャーナル フリー

    南アジアは形態論的な使役化が特徴の一つとされる言語地域である。一方で逆使役は一部の言語にのみ観察される。本稿はベンガル語の分析的な[主格主語+分詞+FALL]構文(FALL構文)を記述し,これが逆使役であると論じる。当該構文はイディオム的特徴から記述の対象にされず,言及されても受身を表すとされてきた。しかし,本稿は当該の構造を構文と認め,ベンガル語の受身構文と対照しながら形態統語論的および意味論的記述を行う。形態統語論的にFALL構文は受身構文とは異なる特徴を持ち,特定の特徴を持つ動詞が分詞スロットに生起する。意味論的には,FALL構文では動作主が事象から削除される。これらの記述からFALL構文は逆使役であることを議論する。このようにイディオム的または分析的な構文に着目することで,南アジア言語におけるヴォイスの多様性や結合価減少操作に関する新たな共通点が明らかになる。

  • ――itar-を含む形式に着目して――
    松岡 葵
    2026 年169 巻 p. 57-80
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/11
    ジャーナル フリー

    本研究は,福岡県柳川方言における「行く」を表す動詞に補充法が生じていると主張し,各語根の出現環境を明らかにする。多くの九州方言で,「行く」を表す語根としてik-とitar-の形式の二形式が報告されている(柳川方言:{ikan/*itaran}「行かない。」,{itte/ita(t)te}「行って」)。先行研究は,両者を類義語の関係にあると分析するものと,補充法の関係にあると示唆するものに大別される。本稿は記述データを基に,柳川方言においてこれらは類義語ではなく補充法の関係にあると主張する。itar-は,-teを通時的に含む接辞(以下,T接辞)のうち,-teおよび完了接辞-tor,予期完了接辞-tokのいずれかの接辞が後続する場合に現れ,他のT接辞,そしてT接辞以外の接辞が後続する場合には現れない。ただし,ik-とitar-の出現は相補分布しておらず,この点で「不完全」な補充法である。

  • 佐藤 寛子
    2026 年169 巻 p. 81-101
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/11
    ジャーナル フリー

    本論文では,パプアニューギニアで話されているコーヴェ語の所有構文および所有構文と動名詞の関わりについて考察する。コーヴェ語の所有構文には,名詞に所有格代名詞が直接付加する直接所有構文と分類詞に所有格代名詞が付加する間接所有構文がある。間接所有構文では,所有分類詞はaとleの2種類が使われる。どの所有構文が使用されるかは,所有される名詞と所有者との関係性により決まる。所有構文は,動名詞節でも見られ,動名詞の意味上の主語や目的語を表す際に所有構造が使われるが,項の文法関係により異なる所有分類詞が使われる。本稿では,どのような所有構文が動名詞節に使用されるのか,また,1つの動名詞節に対して2つ以上の所有構文が使用されることは可能かどうか追求する。

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