日本地球化学会年会要旨集
2007年度日本地球化学会第54回年会講演要旨集
選択された号の論文の232件中1~50を表示しています
口頭発表
陸水
環境
  • 小原 智文, 冨安 卓滋, 井村 隆介, 穴澤 活郎
    セッションID: 1A09
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    1943年に閉山した山ヶ野金山では、金を精錬するために水銀を使用していたという記録がある。
  • 市耒 聖一, 冨安 卓滋, 穴澤 活郎
    セッションID: 1A10
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    旧大口金山跡地からの排水が流入している牛尾川において流入地点の上流から下流にかけて8地点で河川水を採取した。総水銀及びHg2+は、還元気化冷原子吸光光度法で測定した。その結果、流入地点付近で急激な濃度上昇を示し、その後、下流に向かい徐々に減少した。また、イオンクロマトグラフィーを用いて各種陰イオンの定量を行い、それらの濃度変動と水銀化学種の濃度変動を合わせて検討することで流入した水銀の挙動について考察した。
  • 武邊 勝道, 大屋 誠, 安食 正太, 古川 貴士, 松崎 靖彦, 麻生 稔彦
    セッションID: 1A11
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    耐候性鋼は表面に発生する保護性さびにより腐食速度が低減できるため,無塗装でも橋梁鋼材として使用できる.ただし,腐食環境の厳しい条件下では保護性さびが期待どおりに生成せず,充分な耐食性を発揮しない.したがって,耐候性鋼を利用する際には,建設予定地域における耐候性鋼の腐食しやすさを正確に評価し,地域環境に見合った仕様を選定する必要がある.鋼板の腐食には付着塩類量が関係するため,各地域での付着塩類の組成および付着塩類の挙動に関する知見を得ておく必要がある.そこで,島根県内の耐候性鋼橋梁の付着塩類と腐食状況の関係について調査した.海岸に近い橋梁は,海塩の影響のためにNa+とCl-の付着量が多く,腐食の進行も早い傾向がある.海岸から3km以上離れた,平野部または山間部では,海岸部に比べてNa+とCl-に乏しく,一方でCa2+やSO42-に富む傾向がある.これらの橋梁では,腐食の進行が穏やかである.
  • 武邊 勝道, 大屋 誠, 安達 良, 安食 正太, 大田 隼也, 願永 留美子, 北川 直樹, 古川 貴士, 松崎 靖彦, 麻生 稔彦
    セッションID: 1A12
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    耐候性鋼橋梁の腐食には付着する塩化物イオン量が関係する.塩化物イオンには海水に由来するものと,凍結防止剤に由来するものがある.本研究では,塩化カルシウムが凍結防止剤として散布される橋梁を対象に,凍結防止剤に由来する塩化物イオンの量と,腐食の関係を議論する.
  • 古川 賢吏, 高橋 嘉夫
    セッションID: 1A13
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    空気や水の流れによる物質移動は移流と呼ばれ、濃度勾配による物質移動は拡散と呼ばれる。水の流れが遅い系では、拡散が物質移動を支配する主要因である。そのため、元素の拡散挙動を研究することにより、堆積物中における元素の再移動や汚染物質の拡散を定量的に調べること及び廃棄物の埋設処分をする上での安全評価が可能となる。元素は固有の拡散係数を持っており、拡散挙動を議論するには拡散係数を求める必要がある。これまで、フリーなイオン(非錯体)について多くの研究が行われており、様々なイオンの拡散係数が求められている。しかし、実際に天然では、元素は錯体として存在していることが多いため、元素の拡散挙動の解明には錯生成による拡散挙動への影響を評価する必要がある。そこで本研究では、フリーなイオンと錯体の静水中での拡散係数を求め、錯生成による元素の拡散挙動への影響を調べた。
  • 藤本 智成, 高橋 嘉夫
    セッションID: 1A14
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    有機スズ化合物は水圏の吸着媒と結合して堆積物中に蓄積する。そのため、有機スズ化合物の使用が制限されている現在では、堆積物は有機スズ化合物の長期的な汚染源になる。本研究では、腐植物質存在下で有機スズ化合物の吸着実験を行い、有機スズの粘土鉱物への吸着挙動に及ぼす腐植物質の影響を調べた。本研究の特徴は、有機スズ‐腐植物質‐粘土鉱物の3元系で吸着実験を行っていることである。これにより溶存、沈殿している有機物が、有機スズの吸着挙動に与える影響を知ることができる。またこれまでの研究では、毒性の高いトリブチルスズについての研究が多く、化合物間の比較を行ったものはほとんどないため、本研究ではこの比較を行うことも特徴としている。
  • 原田 哲平, 光延 聖, 高橋 嘉夫
    セッションID: 1A15
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    テルル(Te)およびセレン(Se)は、半導体や光伝導体としての特性から、近年工業的利用が注目されている元素である。しかし両元素は人体に健康被害をもたらす有害元素である。その毒性は酸化数や配位子など化学形態により異なることが知られている。一般にTeとSeは地球化学的挙動が類似していると考えられているが、Teの地球化学的研究は殆ど行われていない。本研究では、天然を模擬した様々な酸化還元状態の水―土壌系で、TeおよびSeの固液両相の存在状態を決定し、両元素の水―土壌環境中での挙動解明を試みた。液相側は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、固相側はX線吸収微細構造(XAFS)を用いて固液両相のスペシエーションを行った。その結果、Teの固液分配比はSeよりも高く、土壌中の鉄水酸化物に吸着されやすいことが分かった。その他の結果からも、TeとSeの地球化学的挙動は必ずしも一致しないことが示された。これらの理由として、両元素の液相中でのイオン構造の違いが主因として推察される。
  • 嶋本 洋子, 高橋 嘉夫
    セッションID: 1A16
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    ヨウ素は移動しやすい元素であるため,放射性ヨウ素は放射性廃棄物中で最も重要視されている元素の一つである.ヨウ素は,化学形態に応じて気圏,水圏,地圏のいずれにも安定に存在するため,その化学形態を決定することは必須である.本研究では,XANES法とHPLC-ICP-MS法を用いて,土壌及び水中のスペシエーション法を検討した.XANES法では,LIII端とK端のXANESスペクトルを比較した.その結果,ヨウ素濃度が希薄な土壌試料ではK端の方がより高感度に測定できることが分かった.HPLC-ICP-MS法では4分以内に溶液中の無機ヨウ素の分離が可能であった.また,その応用として,千葉県養老温泉を調査した.土壌中では殆どが有機ヨウ素として存在するが,間隙水中では有機ヨウ素と無機ヨウ素が共存していた.
  • 光延 聖, 高橋 嘉夫
    セッションID: 1A17
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    Green rust (GR)はFe(II)とFe(III)を内包した水酸化鉄であり、還元能を有する事からredox-activeな元素の還元剤として注目されている。アンチモン(Sb)はヒ素(As)と同族元素であり、両元素ともに毒性が強く環境中への汚染が問題視されている。Sb, Asの環境動態、毒性は酸化数に大きく依存するため、本研究ではGRとSb, Asとの相互作用について調べた。実験はbatch系でGR/Sb(V), As(V)吸着実験を行い、XAFS法を用いて固相中Sb, Asのスペシエーションを行なった。XANES解析の結果、GRに吸着したAs(V)は還元されず24h後もAs(V)として存在していたのに対し、Sb(V)はSb(III)へ部分的に還元された。また、EXAFS法からSb, Asの局所構造を調べた結果、Sb, Asはcorner-sharingの形態でGRに吸着していることがわかった。
  • 西田 育子, 齊藤 智之, 島田 雄樹, 岡上 吉広, 横山 拓史
    セッションID: 1A18
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    ケイ酸を含む工業用水でも、ケイ酸濃度が非晶質シリカの溶解度以下であるにも関わらずシリカ系スケールが生成する場合があり、工業用水の前処理に用いる凝集剤由来のアルミニウムが影響していると推定している。工業用水の70%を用いる冷却システムにおいて、シリカ系スケール生成に対するアルミニウム影響を明らかにすることを目的として、水中およびスケール中のアルミニウムの化学状態およびシリカゲルへの吸着挙動を検討し、シリカ系スケールの生成機構を推定した。
  • 齊藤 智之
    セッションID: 1A19
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    化学プラントのクーリングシステムにシリカ系沈殿物が生成し、しばしば操業に支障をきたしている。これは、日本の地質が主に火成岩で構成されているために河川水中のケイ酸濃度が高い。そのようなケイ酸濃度の高い水を循環して用いるため、溶存成分が濃縮されてシリカ系沈殿物が生成する。さらに、河川水の濁りを除去する目的でPAC(ポリ塩化アルミニウム)処理を行うために、アルミニウム濃度も高くなっており、それもシリカ系沈殿物の生成を促進する要因となっている。本研究では、アルミニウムイオンの加水分解と重合反応に及ぼすケイ酸の影響について検討した。
  • 和田 聡, 寺門 靖高
    セッションID: 1A20
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    近年、大阪湾において人為起源と思われる栄養塩流入による富栄養化が進み,水質汚染問題が発生している。この問題を考える上で栄養塩(特にリンや窒素)の流入・流出経路を考えることが重要であるが、その経路は多く、挙動は複雑なものとなり人為起源の栄養塩がどのような流れで河川から海洋へ流入・流出しているかを解明することは難しい。
  • 井上 麻夕里, 谷水 雅治
    セッションID: 1A21
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    人為起源の鉛は,有鉛ガソリンの使用,石炭燃焼や鉛・銅などの鉱山の採掘など主に工業化に附随して放出されることが知られているが,近年アジアにおいて工業起源の鉛の放出量が増加していることが指摘されている.そこで本研究では小笠原から採取された、過去約100年の記録を有するサンゴ骨格を用いて,西太平洋表層に影響を与える人為起源鉛の放出起源の時系列変動を明らかにした.鉛起源の推定には、MC-ICP-MSにより測定したサンゴ骨格中の鉛同位体比を用いた。その結果、西太平洋表層においては,1900年代からすでに人為起源鉛の影響を受けていたことが明らかになった。また、1990年代以降から中国における鉛放出の影響を強く受けていることが示唆された.
海洋
  • 田中 伸一, 渡辺 豊
    セッションID: 1B01
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    海洋亜表層の溶存窒素、アルゴン濃度は、その水塊が表面で形成された時の大気-海洋間の気体交換や気泡貫入量によってのみ決まるため水塊形成時の海況を復元する指標となりうる可能性がある。そこで高精度な溶存窒素、アルゴンの分析装置を開発し北西部北太平洋においてその分布を明らかにした。その結果、海洋亜表層の各水塊の濃度、飽和度は各水塊ごとにそれぞれ異なっていた。また、非平衡の差から求めた気泡貫入量も各水塊で異なっており、水塊形成時の海況を復元する指標となりうることを示した。
  • 廣田 明成, 井尻 暁, 小松 大祐, 大久保 智, 中川 書子, 角皆 潤
    セッションID: 1B02
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    北極海、ベーリング海では一般的な海洋と比較して、海水中の硝酸塩濃度がリン酸塩濃度に比べて欠乏していることが知られている。これは、脱窒反応の進行が原因である可能性が指摘されているが、はっきりとしていない。そこで、2006年に行われたMR06-04航海において、チャクチ海、ベーリング海の海水、間隙水を採取し、その分析をおこなった。その結果、この海域で高濃度の溶存N2Oを発見した。また、溶存N2O濃度はN*の減少と相関を示した。つまり、脱窒の進行が進んでいる水塊ほど高濃度のN2Oを溶存させていた。このことから、この海域では海水中、もしくは海底下の堆積物中で脱窒反応が進行しており、その反応の中間成物であるN2Oが海水中に蓄積していると考えることができる。
  • 重光 雅仁, 渡辺 豊, 山中 康裕, 本多 牧生
    セッションID: 1B03
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    西部北太平洋亜寒帯域のtwilight zone(有光層下から1000mまで)における沈降粒子中窒素の分解過程とそれが窒素同位体比に及ぼす影響について知見を得ることを目的とした。沈降粒子は、セジメントトラップにより、2005年3月20日から9月18日にわたり、水深150m、540m、1000mにおいて採取された。サンプリング間隔は、7日あるいは14日である。解析に際して、150mにおける沈降粒子束を初期値として、540m、1000mの沈降粒子束を復元できる単純な沈降モデルを作成した。本モデルでは、1) 粒子は凝集し、全成分が同時に沈降すること、2) 主成分のうち、有機物、炭酸カルシウム、オパールは沈降過程において分解すること、3) 深度が増すにつれて沈降速度が速くなること、4) バラスト鉱物(炭酸カルシウム、オパール、陸起源物質)は分解しない一定の有機物を有すること、を仮定した。本モデルを用いて上記解析を行ったので報告する。
  • 渡辺 豊, 美村 藍希, 西岡 純
    セッションID: 1B04
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    近年、大気中の二酸化炭素増加により外洋の海水表層はpHが下がると考えられている。しかし、陸域との相互作用をする縁辺海はこれまでその知見はない。そこで、北太平洋の海洋循環ならびに気候を決めるオホーツク海において、海水中の炭酸系物質と栄養塩を1998, 1999, 2000, 2006に広域観測し、pHの変化を調べた。その結果、pHの0.001-0.5の増加を見出した。栄養塩変動を考慮しても、表層では有意にpHが増加しており、その原因は大陸河川からのアルカリ度の増加と考えられる。
  • 竹内 ふみ, 浅原 良浩, 長島 佳菜
    セッションID: 1B05
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    ベーリング海峡周辺海域の古環境復元は、過去の高緯度域の環境変動を捉える上で重要である。本研究では、海底堆積物中のSrおよびNd同位体をトレーサーとして利用し、周辺大陸からベーリング海、およびベーリング海から北極海への物質輸送の変化を捉えることを目的とする。今回は特に対象地域の現在の環境と表層堆積物のSr、Nd同位体比の分布の関係に着目した。得られたSr、Nd同位体比の分布はベーリング海峡を挟んだ北極海側とベーリング海側で堆積物の供給源が明らかに異なることを示唆している。今後、氷期と間氷期の間の分布の変化を探る重要な手掛かりとなろう。
  • 後藤 久範, 浅原 良浩, 柴田 信之介, 山本 鋼志
    セッションID: 1B06
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    過去の深層水循環の復元は過去の気候変動を理解する上で重要である。本研究では数百年から数千年の高時間分解能での深層水循環の変動解析を行うため、深海底堆積物に含まれる鉄マンガン酸化物に着目し、そのNd同位体が深層水循環のトレーサーとなりうるか、現世堆積物を対象に検討した。太平洋の表層堆積物から抽出した鉄マンガン酸化物成分の主成分元素と希土類元素の組成は、海水起源の鉄マンガンクラストの組成に類似していた。これは鉄マンガン酸化物が海水から沈殿して形成されたものであることを示唆している。また、現世太平洋における表層堆積物の鉄マンガン酸化物成分のNd同位体比の地域分布は、現世深層水のNd同位体比の分布とほぼ一致した。深海底堆積物に含まれる鉄マンガン酸化物のNd同位体は、今後、現世のみならず過去の深層水循環のトレーサーとしての利用が期待される。
  • 小畑 元, アリボ ディアソット
    セッションID: 1B07
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    日本海、オホーツク海の海水中のアルミニウム、インジウム、セリウムの分布を明らかにした。溶存態アルミニウムが水塊構造に対応した分布を示したのに対し、インジウムにはアルミニウムほど大きな濃度変化は観測されなかった。酸化還元環境に鋭敏に反応するセリウムは、深層水中で堆積物からの影響を強く受けていると考えられる。これまでに得られたスールー海、南シナ海における分布と比較しながら、縁辺海におけるこれらの微量金属元素の分布を支配する要因について考察する。
  • 井上 睦夫, 中野 佑介, 田中 究, 小藤 久毅, 小村 和久
    セッションID: 1B08
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    対馬沿岸分枝の循環パターンの解明のため、長崎県対馬西水道、東水道、島根県松江市、石川県輪島市、珠洲市、新潟県新潟市、青森県大間町、静岡県御前崎市の8地点において、2006年の1ヶ月間隔で海水試料20 Lを採取、228Ra/226Ra比をガンマ線測定により求めた。
  • 廣瀬 勝己
    セッションID: 1B09
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    2003年南太平洋で観測船「みらい」による観測(BEAGLE)が実施された。その際、放射能観海水試料が得られた。海水試料は量が少ないためICP-MSでプルトニウム濃度を測定した。その結果を、報告する。
  • 山田 正俊, 鄭 建
    セッションID: 1B10
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    日本海海水中の239+240Pu濃度と240Pu/239Pu同位体比の鉛直分布の測定から、その主要な起源を解明することを目的とした。陰イオン交換樹脂カラム法によりPuを分離・精製し、アルファ線測定後、SF-ICP-MSを用いて、240Pu/239Pu同位体比を測定した。海水中の239+240Pu濃度は、表層で8から9 mBq/m3であり、中層で37から39 mBq/m3と極大となり、底層で26から33 mBq/m3となる鉛直分布を示した。また、海水柱中の239+240Puのインベントリーは、85から87 Bq/m2であり、グローバルフォールアウトから推定される値(42 Bq/m2)の約2倍であった。240Pu/239Pu同位体比の鉛直分布は、表層から底層までほぼ一定の値を示し、ビキニ核実験起源のプルトニウムの存在を示唆していた。
  • 一色 健司
    セッションID: 1B11
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    全Crは外洋において表層でやや減少し,中深層ではほぼ一定となる,弱いリサイクル型(弱栄養塩型)の分布をすることが知られているが,外洋における分布の全容は明らかになっておらず,Crの海洋生物化学的な意義についても,まだ明確になっていない。本報告では,太平洋の南緯10度から北緯53度に至る全クロムの西経160度に沿った南北縦断面上の分布を報告し,分布の特徴について論じる。
  • 山本 祐平, 高橋 嘉夫, 清水 洋
    セッションID: 1B12
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    希土類元素(REE)は天然水中においてほとんどが錯体として存在しており、化学種によって挙動が異なる。腐植物質のような有機配位子はREEに対する強い親和性から、REEの挙動に大きな影響を与えることが報告されている。腐植物質は他の無機配位子とは異なり、固液両相に存在しうることから、腐植物質存在下でのREEの固液分配挙動は非常に複雑で未解明な点が多い。しかし、これまでの研究では液相に存在する腐植物質を対象にしたものがほとんどで、固相に存在する腐植物質に着目した研究例は少ない。本研究では腐植物質と水酸化鉄が競合する条件下におけるREE及び腐植物質の固液分配比を測定し、有機無機それぞれの配位子の影響を考察した。また天然の非常に有機物濃度が高い水のREEの固液分配比を測定し、室内実験の結果と比較、考察をした。
  • 田中 万也, 高橋 嘉夫, 清水 洋
    セッションID: 1B13
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    石灰岩などの炭酸カルシウム試料の希土類元素存在度は過去の海洋化学環境の復元にしばしば用いられる。炭酸カルシウムにはカルサイト、アラゴナイト、ファーテライトの三つの同質多形があり、天然では主にカルサイトとアラゴナイトが安定に存在している。主にカルサイトからなる石灰岩の多くはアラゴナイトからなるサンゴなどの生物性炭酸塩を起源とするものも少なくない。続成作用の過程で生物性炭酸塩がカルサイトへ再結晶化される際、希土類元素の再分配は炭酸カルシウムの結晶構造と関係していると考えられる。このような元素分配と結晶構造の関係を明らかにするために、本研究ではXAFS(X線吸収微細構造)法を用いてカルサイト及びアラゴナイトにおける希土類元素の局所構造(配位数、原子間距離)の決定を行った。天然試料の希土類元素濃度はXAFS測定を行うには低すぎるため、人工的に希土類元素を添加したカルサイト及びアラゴナイトを合成した。
  • 野尻 幸宏, 津守 博通
    セッションID: 1B14
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    国立環境研究所では、1995年から北太平洋中高緯度海域を運行する貨物船にCO2観測装置を搭載し、海洋表層CO2分圧を継続観測してきた。2006年までに、貨物船3隻に装置を載せかえながら、160回(片道航路単位)の北太平洋横断データを取得することができた。結果の解析から、海洋表層CO2分圧は大気CO2濃度の増加に合わせて上昇してきたが、特に北緯40度帯において、東西で増加速度に差が認められた。すなわち、西部北太平洋北緯40度帯では海洋CO2分圧増加速度が大気濃度増加に比べて小さく、その結果として、海洋CO2吸収は増強されてきた。一方、東部北太平洋北緯40度帯では海洋CO2分圧増加速度が大きく、この期間の海洋CO2吸収の低下が示唆された。
  • 角皆 潤, 三枝 俊介, 中川 書子, 山崎 哲生, 張 勁
    セッションID: 1B15
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    上越沖(佐渡南西沖)の海鷹海脚周辺海底では近年の調査でメタンハイドレートが回収されており、海底直下にメタンハイドレートを胚胎した海域であることが明らかになっている。海底下にハイドレートとして胚胎されたメタンが海水を通過し大気まで到達するか否かを判定することは、過去あるいは将来の急激な気候変化を考える上で極めて重要である。そこで本研究では「淡青丸」を用いて、海鷹海脚を中心に半径5 km以内の計22地点で海水試料を各層採取して海水中のメタン濃度分布を定量し、この海域における海底下からのメタンフラックス、さらに大気へのメタン放出の可能性の有無を検討した。
  • 兵法 彩, 佐久川 弘
    セッションID: 1B16
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    海水中に存在する溶存有機物(dissolved organic matter; DOM)の炭素量は、海洋表面の無機炭素量や大気中二酸化炭素の炭素換算量に匹敵するとされている。そのため海洋の炭素循環においてDOMは重要な役割を果たしていると考えられている。本研究では海水中DOMの起源の一つである植物プランクトンを用い、それらから生成・排出されるDOMの中の蛍光性溶存有機物の測定と人工太陽光を用いた光照射実験から、その光化学的分解特性について調べた。
  • 白井 厚太朗, 宮地 鼓, 棚部 一成, 高畑 直人, 佐野 有司
    セッションID: 1B17
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
    会議録・要旨集 フリー
    多くの干潟に生息する二枚貝類は,その貝殻内部に2セットの微細成長縞を朔望日(24時間50分)毎に形成するため,日レベルの高い時間分解能で生態・環境情報を抽出できる可能性を持っている.しかしながら,これまで二枚貝類を用いた研究では,種によってその結果が異なり,未だに元素組成比の環境プロキシとしての有効性についての一般的なコンセンサスが得られていない.そこで本研究では,マルスダレガイ科の1種カガミガイ(Phacosoma japonicum)を対象として,二枚貝類中の微量元素組成に関して古環境解析指標としての有用性を検討した.東京湾西部横浜市野島海岸より採集した個体を用いて,貝殻断面に見られる微細成長縞観察および超微小領域での化学組成分析(NanoSIMSと EPMA)を行ない,さらに生息場での水温や塩濃度などの海洋環境データと一対一の対応から,日レベルでの古水温や古塩濃度等の環境因子の抽出を試みた.
地球外物質
feedback
Top