日本地球化学会年会要旨集
2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
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口頭発表(第一日目)
G04 鉱物境界面の地球化学、水−岩石相互作用
  • 本多 翼, 高橋 嘉夫, 田中 雅人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 1A01
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    中国南部に存在するレアアース(REE)資源のイオン吸着型鉱床は風化花崗岩の鉱床で、土壌に塩化アンモニウムなどの溶液を流すと、REEが容易に抽出できる。しかし日本での存在やREEの抽出特性と分子レベルの化学状態の関係は明確ではない。そのため、広島県及び島根県の風化花崗岩を対象に、広域X線吸収微細構造(EXAFS)法などを用いてREEの抽出特性と分子レベルの化学状態の関係を調べた。風化の具合(CIA)、抽出率の高い試料のYのEXAFSスペクトルはY溶液のEXAFSスペクトルと類似している。この結果、REEは水和イオンの状態で粘土鉱物に弱く吸着しており、抽出が容易な状態であると示唆された。一方CIA,抽出率の低い試料のEXAFSスペクトルはY溶液のEXAFSスペクトルと異なり、他の元素と強く結合しており、抽出されにくい状態であると示唆された。結果、EXAFSパターンが外圏錯体であり、大いに風化している風化花崗岩は高い抽出率を持っていることが示唆された。
  • 深井 惠, 木川田 喜一, 大井 隆夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 1A02
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    明礬石族鉱物生成に伴う希土類元素(REEs)の分別について検討を行うため、明礬石鉱物の前駆体と考えられるアルカリ金属元素-REE-硫酸複塩の生成条件がREEパターンに与える影響について検討を行った。CIコンドライトのREE組成を模したREEs硫酸溶液と、硫酸カリウム溶液または硫酸ナトリウム溶液とを、PTFE密閉容器に封入し、所定の温度で所定の期間反応させた。内容物を吸引濾過により、液相と固相に分離し、液相中のREEsを分析し、固液分配係数Kdを求めた。
    硫酸カリウム系では、実際の明礬石のREEパターンとよく似た形状のKdのパターンを示した。硫酸カリウム系と硫酸ナトリウム系とを比較すると、REEsの分配挙動が異なった。また、硫酸ナトリウム系では、温度によってREEsの分配挙動が異なった。
  • 松沼 智史, 鍵 裕之, 小松 一生, 丸山 浩司, 吉野 徹
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 1A03
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    アラゴナイト構造を取るSr2+は、同じくアラゴナイト構造の結晶に取り込まれやすく、カルサイト構造には取り込まれにくい不適合元素であることが知られている。我々の実験ではストロンチウムを取り込んだACCを加圧することで結晶化させ、ストロンチウムが本来入りにくいカルサイト結晶中に取り込まれるかを調べた。その結果、出発溶液中のストロンチウム濃度が上昇するにつれて、ACCを加圧して得られたカルサイトの格子体積の上昇が観測された。これによって、カルサイトの構造中にSr2+が取り込まれたことが分かった。比較試料の格子体積はSr/(Sr+Ca)が8%程度までは増加し、その後ほぼ一定となったことから、ACCを経由したカルサイトの方がストロンチウムを多く取り込んでいたことが分かった。特性X線マッピングから、取り込まれたストロンチウムは一様に分布していることが分かり、加熱した試料からは、炭酸ストロンチウム結晶は検出されず、格子体積の減少も見られなかった。
  • 石村 豊穂
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 基調講演
    セッションID: 1A04
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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     生物源炭酸塩の炭素酸素安定同位体組成(δ13C, δ18O)は地球環境変動を記録することから,過去60年以上にわたり古環境解析に多用されてきた.一方,堆積物や岩石中で無機沈殿によって形成される炭酸塩も,形成時の温度履歴や周辺水の起源に関わる情報をその同位体値に記録しているので,環境情報を紐解く鍵として活用することが可能である.これらの炭酸塩同位体研究の発展に伴い,近年では微小領域における高解像度解析が重視されつつあるが,分析技術の制限がさらなる展開の壁となってきた.本研究では,この問題を解決するために開発した微量炭酸塩安定同位体比測定法の紹介と近年の応用研究,そして分析に際しての課題と今後の展望について紹介する.
  • 渡辺 勇輔, 田中 雅人, 柏原 輝彦, 川口 慎介, 石橋 純一郎, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 1A05
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    モリブデン(Mo)とタングステン(W)は環境中での存在形態など化学的性質が類似しているが、現在の酸化的環境における鉱物への吸着挙動は異なっており、海洋への溶解性に影響を与えている。本研究では還元的海洋でのMo、Wの溶解性を明らかにするため、還元的環境でのパイライトへの吸着実験を行い、ICP-MSによる分配係数(Kd)の算出、及びXAFS解析による吸着形態の比較を行った。実験の結果、パイライトへはMoの方が強く分配していおり、Mo・W共に溶液中の硫化物イオンの存在が吸着量、吸着形態に関わっている事が示された。これはオキソアニオンとして存在するMo・Wが硫化物化することによりパイライトへの親和性を強くすることを示す。また量子化学計算によりMoの方がWよりも硫化物として安定であり、パイライトへの吸着挙動の差を生んでいると示唆された。地球の酸化還元状態の変遷に伴い、Mo・Wの海洋への溶解性が変化していると考えられる。
  • 井上 美南, 坂口 綾, 柏原 輝彦, 臼井 朗, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 1A06
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    HFS元素であるZr-Hf、Nb-Taのペアはその化学的性質の類似から、分別を起こさない元素ペアとして認識されているが、これまでの研究結果より海水-鉄マンガンクラスト間で大きな濃縮とともに元素分別が起きていることがわかってきた。本研究では、物理化学情報の少ないこれらHFS元素のうち、特にZrとHfに着目しその分別挙動を明らかにするために、共沈実験およびXAFS分析を行った。その結果、Zrは細屑性物質の代表鉱物として、陸源物質混入の指標に用いられるジルコンとしての混入ではなく、鉄やマンガン酸化水酸化物と共沈して鉄マンガンクラストに濃集していることがわかった。また、共沈時におけるZr-OとHf-O距離はHf-Oが短く、より安定に海水から取り込まれ濃集している可能性が示唆された。
  • 後藤 孝介, 下田 玄, Ariel D. Anbar, Gwyneth W. Gordon, 針金 由美子, 仙田 量子, 鈴木 勝彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 1A07
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    熱水性MnクラストにおけるMoの起源解明を目的に,琉球弧の前弧海盆より採取された熱水性MnクラストのMo同位体分析を行った.試料のMo同位体は,海水起源のマンガン酸化物と同様の値を示すが,起源物質の候補とされる熱水や海水の同位体比よりも有意に低かった.得られた同位体比は,海水に溶存するMoが熱水性Mn酸化物に吸着し,その際,化学種の違いに伴い約2.7‰軽いMoが選択的に取り込まれたことを示唆する.したがって,熱水性MnクラストにおけるMoは,熱水由来のMoではなく,堆積時・初期続成過程において主に海水より取り込まれた可能性が高い.
  • 大竹 翼, 鈴木 陵平, 山田 亮一, 申 基澈, 昆 慶明, 佐藤 努
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 1A08
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    本研究では,黒鉱鉱床のような大規模塊状硫化物鉱床の形成要因と当時の海洋環境の関係性をレアアースパターンと鉄安定同位体比を用いて調べた。黒鉱形成後に堆積した鉄に富む化学堆積岩には、レアアースパターンがCeの負異常を示し,また大きな鉄の同位体分別を示すものが存在することから,当時の海洋は酸化還元環境に関して成層化していたと考えられる。このことは,大規模塊状硫化物鉱床の形成において還元的な海洋環境が重要な要因の一つであることを示唆している。
  • 秋澤 紀克, 田村 明弘, 荒井 章司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 1A09
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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     本研究では、オマーンオフィオライトの海洋地殻-マントル境界付近で発見された、グロシュラー(Ca-Alに富むガーネット:Ca3Al2Si3O12)やクロマイトを含む“mantle diopsidite”や、ウバロバイト(Ca-Crに富むガーネット:Ca3Cr2Si3O12)やクロマイトを含む“crustal diopsidite”を報告する。記載岩石学的な視点から、これらの岩石サンプルは、熱水循環の関与で形成されたことが示唆されている。そこで、熱水循環最下部の実体を明らかにするため、特に微量元素に着目してこれらの岩石の成因を考察する。その成因には、Naが重要な関与をしたと考えられるため、その点に焦点を当てる。
  • 水上 知行, 林 竜太郎, 石神 慎太郎, 大柳 良介, 岡本 敦, 福士 圭介, 奥野 正幸, 荒井 章司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 1A10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    かんらん岩から蛇紋岩を形成する水-岩石反応により、還元的もしくは高pHの特異な流体を生じる。そのような流体は、元素の溶解度や反応速度を通じて変形や変成反応といった岩石の挙動を支配するだろう。プレート境界過程を理解するためには地質試料から流体の化学的情報を読み取ることが重要となる。反応生成物である蛇紋石(アンチゴライト、リザーダイト(Liz)、クリソタイルなど)とブルース石(Brc)、磁鉄鉱、硫化鉱物などのなす微細構造には、関連する流体の性質が記録されている可能性がある。本発表では、顕微ラマン分光分析を用いた天然の解析と水熱実験からの試みを報告する。
  • 井尻 暁, 若木 重行, 村山 雅史, 稲垣 史生
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 1A11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    国際統合掘削計画(IODP)第323次航海によりベーリング海のバウワーズ海嶺(Site U1341, 掘削深度1189 m)と大陸斜面域(スロープ海域) (Site U1343, 掘削深度860 m; Site U1344, 掘削深度791 m)で掘削された堆積物試料から抽出した間隙水の化学組成分析、および粘土鉱物組成分析、粘土鉱物サイズフラクション(<2µm)の化学組成分析を行い、スロープ海域堆積物中の海底下200m~300m以深の40℃以下の環境でスメクタイト-イライト反応が起きている可能性を示す兆候を見つけたので報告する。
  • 小林 幹佳, 藤田 洋輔, 山田 健太, 杉本 卓也, 本荘 雄太
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 1A12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    我々のグループでは,土壌・水環境の保全・利用に必要な技術に資するため,基礎的観点から,コロイドの界面化学特性(特に凝集分散特性と帯電特性)がコロイドの輸送挙動におよぼす影響を明らかにすることを目指している.そのために,コロイド粒子・固液界面の帯電特性,粒子間相互作用,凝集・付着プロセスを実験とモデル解析により研究している.本講演では,これまで我々のグループが実施してきた研究,すなわち,固液界面の帯電特性(表面電荷と表面電位)の評価,土壌侵食の発生と土壌コロイドの界面化学特性の関係,砂中のコロイド輸送におよぼす帯電特性の影響,静電斥力存在下での流れ場におけるコロイド粒子の凝集速度について紹介する.
  • 牛山 智樹, 福士 圭介
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 1A13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    鉛は有害元素としてよく知られており溶存体は人体に入ると知能症や神経症を引き起こす危険な物質である。そのため休廃止鉱山に残された鉱山廃石から溶出する鉛が土壌・水質汚染をもたらすことが懸念されている。鉱山廃石から溶けだした鉛は微量であるため、鉛の移動は地球表層に存在する鉱物の吸着により支配されると考えられる(Derivr, 1997)。地球表層には微結晶アルミニウムケイ酸塩(NAS)が多く存在するが(Manaka, 2006)鉛に関するNASの吸着挙動は研究されていない。また、吸着挙動は水質により大きく変化する。土壌における吸着実験に関して陰イオンを変化させると価数が等しくても吸着挙動が異なるという報告がある(Pinskii, 2014)。本研究では様々な水質条件下、特に電解質陰イオンの違いに注目してNASにおける鉛の吸着実験を行い、得られたデータから表面錯体モデリングにより吸着化学反応を特定化することで、水質条件が及ぼす吸着挙動への影響を理解することを目的とした。
  • 田中 雅人, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 1A14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    有機ヒ素化合物は農薬などとしての使用や地中などへの投棄によって環境中に存在し、井戸水の汚染による健康被害を引き起こし、また微生物による毒性の高い無機態への変換の可能性も示唆されている。従って、ヒ素の地下水汚染の主な原因である無機ヒ素化合物に加えて、有機ヒ素化合物による土壌や水質汚染も深刻な問題である。しかし、有機ヒ素化合物の土壌中における吸着挙動についてはあまり研究がなされていない。そこで本研究では、吸着量の測定、広域X線吸収微細構造(EXAFS)測定および量子化学計算により有機ヒ素化合物の土壌中における吸着挙動の理解を試みた。具体的には、土壌へ吸着させた有機ヒ素化合物のEXAFSスペクトルをフェリハイドライトおよびギブサイトへの吸着させたものと比較し、土壌中におけるこれらの水酸化鉱物への吸着割合の見積もりを行った。また、過酸化水素によって有機物を除去した土壌との比較により、有機物の影響についても調べた。
G09 生物と有機物の地球化学
  • 渡邉 泉, 羽田 徳士, 佐藤 望, 岡久 雄二, 上田 恵介, Roman Gula, Ralph Kuehn, Jörn Theuerk ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 基調講演
    セッションID: 1B01
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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     ニューカレドニアの国鳥である飛べない鳥カグーの羽における微量元素レベルを測定した。ニューカレドニアは超苦鉄質土壌を有し、ニッケル資源が豊富であるが、カグーの羽からも高濃度のニッケルおよびクロム、バナジウム等が検出された。これらの高濃度蓄積が、種特異性による濃縮現象なのか、環境汚染の結果なのか、今後の研究が求められる。
  • 瀬戸 繭美
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 生物と有機物の地球化学
    セッションID: 1B02
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    本研究では有機物を酸化することでエネルギーを得る6つの代謝群(好気性細菌、脱窒菌、マンガン還元細菌、鉄還元細菌、硫酸還元菌、メタン生成菌)を対象とし、ボックスモデルを用いて有機物を巡る細菌群の競合が代謝群の棲息環境(地球化学的ニッチ)に及ぼす影響について検証した。細菌群衆の増殖動態と有機物ならびにその酸化剤の濃度動態を連立微分方程式で記述し、環境条件毎に棲息可能な代謝群を数値シミュレーションによって調べた結果、ギブス自由エネルギー変化のみに基づく代謝群の存在の予測は不十分であり、細菌群集間の競合や反応速度の律速について考慮する必要があることが示唆された。
  • 上野 振一郎, 杉谷 健一郎
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 生物と有機物の地球化学
    セッションID: 1B03
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では、岐阜県美濃赤坂石灰岩地帯の土壌における生物地球化学的サイクルの特徴について報告する。まず日本全国の土壌と比較を行いながら金生山の土壌特性と化学組成の特徴を述べる。その後、難移動元素濃度による規格値を用いて土壌の深さ方向に示す特徴やリターの寄与について評価を行う。これらの結果に基づいて、金生山の土壌が植生の生育に良好であること、土壌中のCaは主にリタ―から供給され、Si、Mg、Pはリタ―と無機成分の両方から供給されることを示す。また、Caの大部分は植物から供給され、その多くが植物に吸収されるという一連のサイクルを繰り返しながら土壌‐植生系の中で保たれているとする推測についても報告する。
  • 菊池 早希子, 牧田 寛子, 今野 祐多, 白石 史人, 高井 研, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 生物と有機物の地球化学
    セッションID: 1B04
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    微生物由来の水酸化鉄は表層環境で広くみられる鉱物だが、これらが長年堆積した後の鉱物種変化や有機物分解については不明瞭な点が多い。そこで、本研究では微生物由来の水酸化鉄からなる堆積物を対象とし、微生物活動により堆積物中で生じる鉄・炭素の循環についてXAFS測定および16S rDNA解析から明らかにした。結果として、(i)堆積物中の有機物分解は上層では鉄還元菌および発酵菌が担うが、下層ではメタン生成菌が担うこと、(ii)有機物分解に関わる微生物が鉄還元菌からメタン生成菌へと変化する理由は、堆積物中に存在する水酸化鉄の周囲を二次鉱物であるシデライトが覆うことで、鉄の利用性が低下するためであることがわかった。
  • 横内 陽子, 宮崎 雄三, 河村 公隆, 日浦 勉
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 生物と有機物の地球化学
    セッションID: 1B05
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    成層圏オゾン破壊物質である塩化メチルの最大の発生源は熱帯林であるが、その放出量を支配する要因や発生源が熱帯域に偏っている理由については、不明である。最近、亜熱帯~冷温帯に自生するゼンマイの葉が大量の塩化メチルを放出していることが明らかになり、単一種からの塩化メチル放出量を異なる気候条件下で比較することが可能になった。本研究では、つくば、苫小牧、屋久島においてゼンマイからの塩化メチル放出量を調べた。その結果、つくばでは有意な季節変化は認められない一方、苫小牧では6月の放出量は8月の1/10以下であること、屋久島では採取地点によるバラツキが極めて大きいこと等が分かった。また、塩化メチル放出量と葉内の塩化物イオン濃度との間に正の相関(R=0.70)が見られた。
  • 小島 侑也, 森泉 純, 山澤 弘実
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 生物と有機物の地球化学
    セッションID: 1B06
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    森林生態系は陸域における最大のCO2吸収源かつ放出源であることから、気候変動の将来予測において森林内炭素収支の機構を定量的に理解することは必要不可欠である。なかでも森林土壌は森林全体の約2/3の炭素を貯留する巨大な炭素貯蔵源である。土壌中の微生物による有機物分解の速度は温度や含水量などの環境因子で変動することが知られている。本研究では、有機物分解のCO2濃度依存性の解明を目的として、採取した土壌を異なるCO2濃度で培養し、生成されたCO2の生成率と炭素同位体比を分析した。
  • 宮内 貴規, 大山 拓也, 角皆 潤, 中川 書子, 小松 大祐
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 生物と有機物の地球化学
    セッションID: 1B07
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    Tsunogai et al. (2011)では、貧栄養湖である摩周湖において、湖水中の硝酸イオンの三酸素同位体異常(D17O値)から窒素循環速度が定量できることを示した。しかし、摩周湖は数少ない貧栄養塩湖であり、流出入河川を持たないなど一般的なものとは異なる湖である。そこで本研究では、より一般的な中栄養湖である琵琶湖において、硝酸イオンのD17O値を指標に用いて湖内の総硝化速度や総同化速度の定量化に挑んだ。同化速度が最も大きかった期間は春季から夏季の間であり、年間の総同化量の40%を占めた。一方、硝化速度が最も大きかった期間は夏季から秋季で、年間の総硝化量の40%を占めた。また、河川や大気から直接供給される硝酸イオンが一次生産に占める割合は15%以下であり、湖内の一次生産で消費される硝酸イオンの大部分は湖内で生成された再生硝酸であることが明らかになった。
  • 松下 俊之, 角皆 潤, 中川 書子, 小松 大祐
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 生物と有機物の地球化学
    セッションID: 1B08
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
     海洋や湖沼といった水圏環境下で起きる微生物によるメタン酸化は、海底・湖底から大気へのメタン放出過程を理解する上できわめて重要である。こうしたメタンの酸化過程の解析には、濃度だけではなく炭素安定同位体比(d13C)が酸化分解と希釈の区別などに効果的に用いられてきた。しかし、d13C値を用いても、生成・分解・希釈などの3つ以上の素過程が同時に進行する場合は解析が困難であった。本研究ではメタンのd13C値に加えて、水素安定同位体比(dD)を同時に分析して指標として加えることで、起源推定や反応解析の精度を向上させたメタンの挙動解析を行った。 具体的には光によるメタン酸化の抑制が報告されている琵琶湖において、各深度において採取した湖水試料を制御された光環境下で一定時間培養し、その間のメタン濃度変化、炭素および水素の安定同位体比変化を分析して指標として用いることで、天然環境下の湖水中で進行するメタン酸化過程や光による抑制過程の詳細を解析した。
  • 力石 嘉人, 高野 淑識, 大河内 直彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 生物と有機物の地球化学
    セッションID: 1B09
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,インゲン(C3植物)とトウモロコシ(C4植物)の苗の土壌に0.1mMの13C-15Nロイシン水溶液100mLを与え,苗葉中のアミノ酸の13C,15N濃度の変化を調べた。その結果,(1) C3植物では土壌アミノ酸の直接的な摂取が行われていないことを確認し,また一方で,(2) C4植物はC3植物とは異なり,土壌中のアミノ酸を直接取り込み,それを利用する能力があることがわかった。
  • 大河内 直彦, 力石 嘉人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 生物と有機物の地球化学
    セッションID: 1B10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    タンパク質を構成しているアミノ酸の窒素安定同位体比は,栄養段階の指標として用いることができる。現在,海棲生物,陸上C3植物系,陸上C4植物系の3種類の式が知られており,いずれの応用例もこれまでの生態学で得られた知見と非常によく一致する。本講演では,この方法論を現代人の爪に応用し,現代人の食性解析を行った結果を報告する。測定対象となったのは,日本人だけでなく欧州や南北アメリカ大陸の人々から採取さいた試料である。さらに日本人については,マーケットで売られている肉,野菜,魚などの多数の食品についても分析し,それらとの関係について考察する。
  • 國田 圭佑, 中村 俊夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 生物と有機物の地球化学
    セッションID: 1B11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    1950年代後半から1960年代前半にかけて汎世界的に行われた大気圏内核実験により劇的に増加した14Cはヒト歯牙エナメル質中にも固定されている.本研究では,そのような高濃度14Cを用い,人体の誕生年推定が可能であるか検討を行った. 日本人歯牙試料27点の測定結果では, 平均して1.7±1.2年の誤差で年齢推定を行うことができた.実際の誕生年との差が大きくなる場合,歯牙エナメル質形成期間の個人差や炭素の吸収,固定までのタイムスパン,食性や地域効果による希釈または濃縮の可能性が挙げられるが,いずれも年齢推定ができなくなるほど大きな影響を与えないことが示唆され,日本におけるヒト歯牙エナメル質中14C濃度を用いた年齢推定は可能であると結論付けられた.
  • 阿部 涼平, 沢田 健, 中村 英人, 新家 弘也, 鈴木 石根, 白岩 善博
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 生物と有機物の地球化学
    セッションID: 1B12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    アルケノン合成種であるハプト藻の乾燥粉末を真空下で加熱すると、アルケノンの熱分解により生成されると考えられる炭化水素が生成されたことから、ハプト藻のバイオ燃料への応用が検討されている。E. huxleyiの培養試料の熱分解実験により、ハプト藻が合成する脂質の分解過程を検討し、バイオ燃料生産への応用を検討した。E. huxleyiの細胞試料は、加熱処理時間に伴いアルケノンが減少し、48時間以上では消失した。アルケノン粉末のみの場合、構造変化により多くの分子量の等しい異性体が検出された。モンモリロナイト添加実験では、C13~C21アルカンが主要成分として検出され、粘土鉱物の触媒効果によりアルケノンのクラッキング反応が促進されることを示した。ハプト藻脂質の炭化水素への熱分解効率を粘土鉱物の添加で促進できることを証明し、バイオ燃料生産における有用な方法を提案する。
  • 安藤 卓人, 沢田 健, 高嶋 礼詩, 西 弘嗣
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 生物と有機物の地球化学
    セッションID: 1B13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    北海道苫前地域の蝦夷層群堆積岩は低熟成で有機物の保存状態が良いが,このような低熟成な堆積岩と南東フランスVocontian堆積盆CTB層準の堆積岩から,藻類や陸上植物に由来する易分解性のトコフェロール(ビタミンE)を検出したので報告する。比較的低熟成なThomel層準の黒色頁岩試料,朱鞠内沢・大曲沢川の苫前地域試料の極性画分において,トコフェロール類が検出され,高熟成な大夕張地域白金沢試料からは全く検出されなかった。Thomel層準と大曲沢川ほとんどの試料でδ体が50%以上占め,朱鞠内沢試料ではα体が6~39%と比較的多く検出された。より低熟成な朱鞠内沢試料中においては,α体の分解が進んでおらず,組成の違いが生じた可能性がある。一方,各層準内での組成の変動については,堆積時のトコフェロール組成の違いを反映していると考えられる。
G10 水圏環境の地球化学
  • 高橋 嘉夫, 武市 泰男, 菅 大暉, 井波 暢人, 宮本 千尋, 坂田 昂平, 光延 聖, 朱 鳴, 櫻井 岳暁, 守友 浩, 上岡 隼人 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 水圏環境の地球化学
    セッションID: 1C01
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    走査型透過X線顕微鏡(Scanning Transmission X-ray Microscopy: STXM)は、主に軟X線領域(おおよそ4 keV以下)において、フレネルゾーンプレートで集光した30 nm程度のサイズのX線を用い、透過配置で試料を走査あるいはエネルギーをスキャンして、元素あるいは化学種の分布や吸収スペクトルを測定する手法で、環境科学、微生物学、地球惑星科学、高分子化学、磁性材料などへの広い応用範囲を有する。我々のグループでは、独自の設計により市販品よりも大幅に小型で運搬が可能な装置(compact-STXM)を開発し、主に高エネルギー加速器研究機構Photon Factory (PF)のBL-13Aでの運用を開始し、その性能テストを行うと共に、様々な応用研究、特に環境化学・サステナブル科学に関する研究への応用を進めている。講演では、この装置の概要と利用研究について紹介する。
  • 朱 鳴, 光延 聖, 坂田 昌弘, 高橋 嘉夫, 武市 泰男, 小野 寛太
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 水圏環境の地球化学
    セッションID: 1C02
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    微生物-金属-鉱物相互作用は、微生物の普遍性や反応速度が大きい点などから地球表層における物質や元素の循環機構に大きな影響を与えている。例えば、バクテリアによる硫化鉱物溶解反応の場合、溶解速度は無菌状態の数十倍にも達することが報告されており、硫化鉱物溶解による鉱山周辺環境で問題となる酸性廃水生成などに大きく寄与している。しかし、直接分析の困難さなどから、この微生物による金属-鉱物相互作用には未解明な点が多い。つまり、反応は微小領域である微生物-鉱物付着面で起きており、従来のバルク分析だけでは微生物-金属-鉱物相互作用を詳細に解明できない。本研究で我々は、走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用いることでナノスケールで微生物細胞周辺の有機物成分を決定し、より詳細に反応メカニズムを解明することを試みた。
  • 堀 まゆみ, 小豆川 勝見, 松尾 基之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 水圏環境の地球化学
    セッションID: 1C03
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    都立大島小松川公園の地中には、還元処理が施されたクロム鉱滓が埋められている。しかし、還元処理を施したにもかかわらず、現在もCr(VI)を含んだ環境水が公園周辺で検出されている。大島小松川公園周辺で環境調査を行い、高レベルCr(VI)汚染を発見し、その流出原因について考察したので報告する。大雪が降った2013年1月、高濃度のCr(VI)が歩道上の滲出水から検出され、その濃度は最大で37.0 mg/Lであった。晴天が続いた日に採取した試料からはCr(VI)は検出されず、雪の日には検出されたことから、この地点では、大雨や雪が降ると鉱滓中のCr(VI)が溶出し、地表面でCr(VI)が検出されると考えられる。また、公園周辺の別地点の集水桝中の水からは、Cr(VI)が133 mg/Lと高濃度で検出された。集水桝では、歩道に滲出した水とは異なり、常に高濃度のCr(VI)が流入していることが示唆される。今なおCr(VI)が基準値を超過して検出されることから、埋立て当時の還元処理の不十分さが指摘できる。
  • 太田 充恒
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 水圏環境の地球化学
    セッションID: 1C04
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    元素形態別地球化学図作成に向けて、信頼性の高い形態分析の確立が必要不可欠である。これまで、堆積物中の銅および亜鉛の存在形態解析について、逐次溶解法とX線吸収端構造(XANES)を併用した結果について報告を行ってきた。本発表ではクロムの形態情報の解析結果について報告を行う。
  • 山西 惟, 江藤 真由美, 宮崎 あかね, 横山 拓史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 水圏環境の地球化学
    セッションID: 1C05
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    土壌圏における重金属元素の動態のモデルとして、アルミナに対するZnイオンの吸着が研究されてきた。Znと同族のCdは生体に有害な重金属であり、土壌環境中における挙動の解明が求められる。そこで本研究では水酸化アルミニウムによるCdイオンの共沈実験を行うことで、水酸化アルミニウムの沈殿が生じる際のCdの挙動を明らかにすることを目的とした。共沈実験は硝酸カドミウムと硝酸アルミニウムの混合溶液にNaOH水溶液を滴下することによって行った。得られた沈殿物についてXRD, 27Al及び113Cd MAS NMRの測定を行った。測定の結果、Cdには2種類の化学状態があり、Cd(OH)NO3・H2OとAl-O-Cd結合を含む化学種であることが示唆された。溶液中のCdはまずAl-O-Cd結合を含む化学種を形成すると考えられるが、これらCdとAlからなる沈殿物の生成過程は検討中である。
  • 山口 紀子, 大倉 利明, 牧野 知之, 橋本 洋平, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 水圏環境の地球化学
    セッションID: 1C06
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    水田土壌では、微視的には酸化的環境と還元的環境が混在している。酸化・還元領域の局所分布が、AsやCdの溶解性の決め手となる化学形態にどのように影響しているかについては不明な点が多い。還元領域では、鉄鉱物からFe(II)イオンが溶出するが、酸化的領域でFe(III)水酸化物として再沈殿する。Fe(III)水酸化物が再沈殿した領域は、赤く着色するため、局所的な酸化的領域は、周辺領域との色の違いから判別可能である。水田土壌、特にイネの根の周辺において酸化・還元的領域の分布をFe(III)水酸化物の着色から判別するとともに、As・Cdの集積部位と集積部位における化学形態を明らかにすることを目的とした研究を紹介する。
  • EVEN Emilie, 野島 あき, 益田 春恵, 中野 孝教, 山中 寿朗
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 水圏環境の地球化学
    セッションID: 1C07
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    北大阪の余野川、茨城川と箕面川の水では環境基準制限の上記で有害な元素の高濃度を報告されている。河川環境は、河川水中の微量元素の自然発生と周囲の地質との関係を確立することができる。古生代・中生代の堆積岩は、微量金属の根源岩(コバルト、クロム、ニッケル、カドミウム、鉛、ヒ素)である。茨城花崗岩複合体は希土類元素の根源岩(Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、EU、Gd、Tb、Yb、Lu)である。ヒ素(>10ppb以下)と微量金属の濃度は砂岩と石英閃緑岩の間を流れる川の水で観察された。アダメロ岩からの堆積物は、低微量元素を含んでいますが、川の水はREEの最高濃度を持っていた。ろ過無しとろ過し川の水は希土類元素の大異なる濃度を示した。希土類元素は、FeとAl-コロイド粒子または他の懸濁粒子で輸送される。微量金属はろ過し水に存在した。溶存有機物(サイズは<0.45μm)微量元素の輸送に重要な役割をではない。H / Oの同位体件のデータは、川の水は降水からであることを示した。
  • 真中 卓也, 牛江 裕行, 荒岡 大輔, 大谷 壮矢, 稲村 明彦, 鈴木 淳, H. M. Zakir Hossain, 川幡 穂高
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 水圏環境の地球化学
    セッションID: 1C08
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    近年、世界各地の河川表層より、大量の炭素がCO2の形で大気に直接放出されていることが報告されている。本研究では河川が炭素循環の中で果たす役割を解明することを目的に、上流に世界有数の風化卓越地域であるヒマラヤをもつ大河川であるガンジス・ブラマプトラ・メグナ川に着目し、採水調査を行った。主に炭酸系の化学分析の結果、これらの河川では特に下流域で土壌呼吸が卓越し、世界の他の大河川に匹敵する量のCO2を大気に放出していることが示唆された。また雨季は河川の氾濫と中間流出の卓越に伴い、溶存CO2分圧(pCO2)が大きくなることが示された。
  • 角皆 潤, 南 翔, 佐久間 博基, 大山 拓也, 小松 大祐, 中川 書子, 梅田 信, 田中 敦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 水圏環境の地球化学
    セッションID: 1C09
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、貧栄養環境である支笏湖や倶多楽湖、さらに中栄養環境である琵琶湖北湖で、DOの三酸素同位体組成の鉛直分布の時間変化を定量化することで、混合層深度の季節変化が三酸素同位体組成を指標に用いた総一次生産量定量に与える影響を評価したので、結果を報告する。
  • 木村 浩之, 松下 慎, 石川 修伍, 金子 雅紀, 高野 淑識, 大河内 直彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 水圏環境の地球化学
    セッションID: 1C10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    西南日本の太平洋側の地域は厚い堆積層からなる。これらの堆積層は、“付加体”と呼ばれている。西南日本の付加体は主に白亜紀から第三紀にかけて堆積した太古の海底堆積物に由来しており、高濃度の有機物を含んでいる。また、付加体の深部地下圏には天水に由来する豊富な地下水が存在する。さらに、付加体の深部帯水層には大量の天然ガスが含まれている。 我々は、静岡県中西部の付加体が分布する広範囲の地域に構築された温泉用掘削井を調査し、深部地下水および付随ガスを採取した。そして、地下水の環境データの測定、各種イオン濃度の測定、付随ガスの組成分析、炭素安定同位体比分析を実施した。また、地下水に含まれる微生物群集を対象とした16S rRNA遺伝子解析および嫌気培養を試みた。さらに、地下水に含まれるメタン生成菌の現場活性を推定するために、メタン生成菌に特異的な補欠分子族(F430)の検出・定量を試みた。そして、付加体の深部地下圏における微生物ポテンシャルと炭素・窒素循環を明らかにするための研究を実施した。
  • 岡部 宣章, 村松 康行, 天知 誠吾
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 水圏環境の地球化学
    セッションID: 1C11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    海洋における有光層ではヨウ素の還元反応が起きることが知られているが、詳細に関しては不明な点も多く存在している。そのため、本研究では実際の海水を培養し、ヨウ素の化学形態変化を観察した。実験の結果、LED光源ではヨウ素酸イオンの減少は確認できたが、ヨウ化物イオンの増加は見られなかった。一方、太陽光で培養した結果ではヨウ素酸イオンの減少とヨウ化物イオンの増加が見られた。このことから、海洋におけるヨウ素の還元反応は中間体を経た二段階反応であることが推測される。
  • 萩原 直樹, 千賀 康弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 水圏環境の地球化学
    セッションID: 1C12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    円石藻は炭素循環や硫黄循環を考える上で重要な微生物である。2007年10月3日に筆者らは駿河湾において円石藻ブルームを発見し、翌年から観測を続けている。2014年5月の観測航海において黒潮系外洋水における円石藻の出現特性について以下のことが分かった。1.駿河湾ではゲフィロカプサが表層ではなく25m層に多く出現した。2.黒潮本流では25m層にエミリアニアが出現し、屋久島の北東海域では同種が優占した。3.出現特性として20℃以下ではゲフィロカプサが、20℃以上ではエミリアニアが出現しやいことが分かった。
  • 牧田 寛子, 布浦 拓郎, 平井 美穂, 高木 善弘, 菊池 早希子, 光延 聖, 土岐 知弘, 山中 寿朗, 宮崎 淳一, 中村 謙太郎, ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G10 水圏環境の地球化学
    セッションID: 1C13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
     近年、世界各地の深海底において、酸化鉄で覆われた海底面が確認されている。それらは、海底の岩石(玄武岩)や地殻内に含まれる鉄を直接的あるいは間接的に利用する微生物の生理・生態を理解する上で最適な研究フィールドであると考えられている。鉄利用微生物は海底や海洋地殻の規模を踏まえると圧倒的な存在量を誇り、光の届かない栄養の乏しい環境での生態系を支える重要な一次生産者であると予想される。このような考えから、鉄利用微生物の一次生産活動や物質循環における役割が注目されるようになり、各地の酸化鉄被膜地帯での微生物調査が実施されている。 しかしながら、いまだ培養や試料採取の困難さなどから、酸化鉄被膜地帯での微生物の多様性、それぞれの存在量、エネルギー獲得様式、さらに生息環境における役割についてほとんど明らかとなっていないのが現状である。本研究では酸化鉄被膜地帯に生息する微生物群について新たな知見を得るべく、沖縄とマリアナの深海底熱水活動域に存在する酸化鉄被膜地帯での微生物学的調査を行った。
G06 炭化水素資源の地球化学・深部炭素循環
  • 大友 陽子, 井尻 暁, 稲垣 史生
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G06 炭化水素資源の地球化学・深部炭素循環
    セッションID: 1D01
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    地球温暖化の主要因である大気への人為的CO2排出量削減技術の一つとして、メタン生成菌が行うCO2のメタン変換を促進し、CO2を再資源化しようとの試みが為されている。本研究では、鉄腐食に伴う水素生成でメタン生成菌がどの程度活性化するかを実験的に検証した。実験では、嫌気環境下でシリカビーズと鉄粉末(4-5g)を熱収縮チューブに詰めた反応カラムにメタン生成菌を植菌し、リアクターに設置した後CO2と嫌気培地の混合流体を通過させた。カラムを通過した溶液は保圧状態で回収した後、溶存ガスの定量分析を行った。実験の結果、鉄添加カラムを通過した溶液に水素濃度及びメタン濃度の増加がみられ、メタン生成活性は0.2-3.7µmol/mL/dayであった。本研究成果は、CCS現場環境や類似の陸上CO2変換施設において、CO2還元型のメタン生成活性を促進させる手法の一つと考えられる。
  • 片山 泰樹, 吉岡 秀佳, 坂田 将, 村本 良幸, 宇佐美 潤
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G06 炭化水素資源の地球化学・深部炭素循環
    セッションID: 1D02
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    南関東ガス田は、関東平野南部一帯に賦存する日本最大の水溶性天然ガス田である。計24ヶ所の生産井からガス付随水を採取し、ラジオトレーサーを用いたメタン生成速度の測定、大規模遺伝子配列解析による原位置及び集積培養物のメタン生成微生物の特定を行った。本件では、これらの結果に基づき、南関東ガス田での天然ガス開発生産による物理化学的作用が、深部地下帯水層中のメタン生成活性及び経路に与える影響について報告する。さらに、本フィールドと地質・地化学的類似性を持つ海底メタンハイドレート堆積環境における生物起源メタンハイドレートの形成についても考察する。
  • 吉岡 秀佳, 片山 泰樹, 坂田 将, 天羽 美紀
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G06 炭化水素資源の地球化学・深部炭素循環
    セッションID: 1D03
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    近年日本近海の海底下に、メタンハイドレート(MH)が広く分布していることが分かってきた。MHの成因については、地化学研究から主に微生物起源のメタンで構成されていると推定されているが、どこでメタンが生成されどのように集積してMHが形成されたか、多くの点で不明である。我々は、海底堆積物中の微生物のメタン生成能力を評価し、MH集積メカニズムの解明に貢献するために、東部南海トラフの表層から濃集帯を含む深度までのボーリングコア試料を採取し、堆積物中のガスや間隙水の地化学分析や、培養実験によるメタン生成及び酸化活性評価試験、堆積物の遺伝子解析を行った。
  • 原 修一, 角皆 潤, 小松 大祐, 中川 書子, 芦 寿一郎, 中村 光一, 砂村 倫成, 土岐 知弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G06 炭化水素資源の地球化学・深部炭素循環
    セッションID: 1D04
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    高知県沖の足摺海丘(山頂水深543m)直上の海水中ではメタンの高濃度異常が観測されており、この海丘から海水中にメタンが放出されているものと考えられている。本研究では、この足摺海丘のメタン湧出フラックスや、大気へのメタン漏出の可能性の有無を検討することを目的として、2013年9月に足摺海丘およびその周辺において海水試料を採取し、海丘直上及び周辺海水中のメタン濃度分布を定量化した。更にメタンの炭素・水素安定同位体比も同時に分析し、その成因が微生物起源か、それとも熱分解起源であるのか、また海水中における微生物酸化分解の有無に関する考察を行った。分析の結果、足摺海丘直上の試料から高濃度のメタンが検出された(最高145 nmol/L)。また海水中のメタン濃度分布から、海丘から見て北東方向の水深450 m~660 mの範囲に、メタンプルームが広がっていることが明らかになった。
  • 齋藤 裕之, 鈴木 德行
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G06 炭化水素資源の地球化学・深部炭素循環
    セッションID: 1D05
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,北海道に分布する新生代露頭炭を用いてガス分析を行い,微生物起源コールベッドメタンの可能性を検討するとともに,炭素同位体組成から石炭内部での微生物起源コールベッドメタンの分布について考察した.石炭から自然に脱着するガス,及び粉砕時に得られたガスの炭素同位体組成は,微生物起源メタンは主にクリートやマクロ孔に,熱分解起源メタンは主にメソ孔やマイクロ孔に存在していることを示唆する.
  • 鈴木 德行, 星野 太一, 齋藤 裕之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G06 炭化水素資源の地球化学・深部炭素循環
    セッションID: 1D06
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    古地温や変成温度が150~600℃の範囲にある一連の頁岩や泥質変成岩に注目して,それらに含まれる遊離H2の起源について考察した.残留ガス中のH2はメタンのグラファイト化によるものと共存するH2Oに由来している.被熱温度が300℃以下では有機物の環化反応,芳香族化,グラファイト化によって生成したH2が寄与している.
  • 早稲田 周, 黒川 将貴, 西田 英毅, 奥村 文章, 冨田 覚
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G06 炭化水素資源の地球化学・深部炭素循環
    セッションID: 1D07
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    米国テキサス州に分布する白亜系Eagle Ford層は現在シェールガス・オイルを開発中のシェール層である。その根源岩性状を把握する目的でテキサス州西部に露出するEagle Ford シェールの地表試料について、有機物分析を実施した。その結果、以下の結果を得た。試料はType II(油生成指向)ケロジェンからなる優秀な石油根源岩である。有機物の保存されやすい還元的な海成環境に堆積した。通常の根源岩に較べて抽出性有機物量が高い。その抽出性有機物は試料内部で生成したものではなく、より熟成したケロジェンから生成した後、試料中に移動してきたものである可能性が高い。
  • ダニエレ ピンテイ, アンジャ モリツ, ソフィー レタヨオ, ヂオゴ バルネチェ, マリ ラロクゥ, ジェアーフランソ エリエ, イヴェ ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G06 炭化水素資源の地球化学・深部炭素循環
    セッションID: 1D08
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    Continental fluxes of methane are not well constrained except for specific environmental compartments (e.g., wetlands). However, the methane seepage rate from continents is an important step of the global carbon cycle that needs to be quantified. The recent development of shale gas exploitation in several countries is a unique opportunity to obtain measurements on the global methane seepage rates.
  • 佐野 有司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G06 炭化水素資源の地球化学・深部炭素循環
    セッションID: 1D09
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    地球深部のマントルから火山・地熱活動を通じて炭素やヘリウムは地表に放出されている。地震の発生する断層地帯でもこれらの揮発成分は脱ガスされている。ここでは後者を非火山性フラックスと呼ぶ。本講演では、初めに北米のサンアンドレアス断層やトルコ北部のアナトリア断層などから定常的に放出されている炭素とヘリウムについてまとめる。次に1995年の神戸地震や2011年の東北沖地震でカタストロフィックに放出された炭素とヘリウムについて議論する。
  • 兼岡 一郎
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G06 炭化水素資源の地球化学・深部炭素循環
    セッションID: 1D10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    地球表層における炭素の挙動に関しては、これまでにも多くの研究がされてきているが、地球深部に関する炭素については不明な点が多い。その理由としては、深部起源の炭素と浅部起源の炭素を明確に識別できる基準が明確でないことが大きく影響している。炭素同位体比だけでは不十分で、他の元素や同位体比(例、窒素、希ガス)などを組み合わせて考察することが重要である。しかしこれまでに、地球深部の情報を担っているマントル物質や火成岩などを対象として十分に研究されているとは言いがたい。こうした点を含めて、深部炭素に関する問題について検討する。
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