日本地球化学会年会要旨集
2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
選択された号の論文の347件中201~250を表示しています
G16 海洋化学・大気化学(全般)
  • 奥 菜津美, 武田 光市, 張 勁, 宗林 由樹, 中口 譲
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 海洋化学・大気化学(全般)
    セッションID: 3B16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    白鳳丸KH-10-02次研究航海の際に採取したエアロゾル試料を使用し、日本海洋上の大気エアロゾルに含まれる生体活性微量金属とイオン成分についての分析を行い、日本海洋上における化学成分の分布とその起源の解明を目的とした。また分析結果から日本海への生体活性微量金属の乾性沈着量を見積もった。
  • 清水 悠作, 大木 淳之, 久万 健志, 大西 広二, 亀井 佳彦, 小林 直人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 海洋化学・大気化学(全般)
    セッションID: 3B17
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    CH2I2などの海水中の揮発性有機ヨウ素化合物(Volatile organoiodine compound;VOI)は、海洋から大気へのヨウ素の主なキャリアーとして知られるが、生成過程などは明らかになっていない。本研究では、VOIと生物生産性や有機物分解との関係を明らかにするため、VOIと生物化学パラメータのモニタリングを行った。北海道噴火湾にて、VOI(CH2I2、CH3I、CH2ClI)濃度や、生物科学パラメータの定点測定を、2012年3月から2014年6月まで行った。春季の植物プランクトンブルームが終焉し、植物プランクトンが老化、死滅する時期に、VOIが多量に生成されることがわかった。CH2I2増分が2013年は2012年の半分であったことより、VOI生成量には経年差がみられた。
  • 大森 裕子, 谷本 浩志, 猪俣 敏, 和田 茂樹
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 海洋化学・大気化学(全般)
    セッションID: 3B18
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    大陸棚にある貧酸素水塊上部において、硫化ジメチル(DMS)極大層の形成が確認されていることから、無酸素ストレスは海洋表層のDMS分布に影響を及ぼす環境要因のひとつだと考えられる。そこで、本研究では、無酸素状態のときのDMS生成プロセスを調べた。沿岸海水を用いて、平衡器と陽子移動反応質量分析計を組み合わせた実験を実施した。その結果、無酸素ストレスによってDMSPの微生物分解が促進され、植物プランクトンのブルーム時よりも活発なDMS生成が起きることが示唆された。
  • 中山 典子, 小畑 元, 蒲生 俊敬, 佐野 有司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 海洋化学・大気化学(全般)
    セッションID: 3B19
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    海水中の硫化物の存在状態とその生物地球化学的な役割を明らかにすることを目的に、遊離の硫化物および酸添加により金属硫化物をH2Sに変換して濃度を測定する分析手法の確立、また実際の酸化的な海水中における硫化物の存在形態別濃度測定を行った。Capillary GC-FPD法による微量硫化水素濃度の検出限界は0.1 pmol/kg以下、繰り返し測定の標準偏差はピコモルレベルの測定で5%以内であり、酸素を十分に含む酸化的な海洋環境における硫化物濃度の測定に適用可能であることを確認した。確立した分析システムを用いて、2014年6月に行われた新青丸KS-14-10次研究航海において、九州鹿児島市の南方約90kmに位置し、薩摩硫黄島および竹島を含む東西約22km、南北19kmの国内でも有数の大きさをもつ鬼界カルデラにおける海水中の遊離および金属硫化物濃度の鉛直分布観測を行った結果について報告する。
  • 大野 宗祐, 門野 敏彦, 黒澤 耕介, 羽村 太雅, 境家 達弘, 重森 啓介, 弘中 陽一郎, 佐野 孝好, 渡利 威士, 大谷 一人, ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 海洋化学・大気化学(全般)
    セッションID: 3B20
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    約6600万年前(白亜紀末)の生物大量絶滅は、巨大隕石の衝突により引き起こされたと考えられている。しかし、天体衝突が引き起こした環境変動と大量絶滅の具体的なメカニズムは全く決着がついておらず、様々な仮説が乱立している。重要な鍵となるのは、海洋での絶滅記録、特に海洋プランクトンの絶滅の理解であるが、これまでに提案されている絶滅機構の仮説では、地質記録に残る海洋生物の絶滅を説明することは非常に困難であった。本研究では、大阪大学の高出力レーザーを用い、世界初となる宇宙速度での衝突蒸発・ガス分析実験に成功した。実験結果から、先行研究で想定されていた二酸化硫黄ではなく、短期間で硫酸になる三酸化硫黄が隕石衝突で放出されることがわかった。さらに理論計算を行ったところ、衝突で放出された三酸化硫黄は数日以内に酸性雨となって全地球的に降ることと、その結果起こる深刻な海洋酸性化が明らかになった。
  • 野村 大樹
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 基調講演
    セッションID: 3B21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    高緯度海域に分布する“海氷”は、海洋の約1割の面積を占めており、地球規模の気候変動を制御する要因として大きな役割を担っている。物質循環の観点からは、海氷は単なる大気-海洋間の物質交換の“障壁”として認識されてきた。しかし、海氷は、普段我々が目にする淡水氷とは異なり、多孔性の構造を持ち、気体や物質のやり取りが起きる可能性を示した基礎的研究が、過去に報告されていた。近年では、地球温暖化の影響による極域での急激な環境変動が懸念され、海氷が物質循環に果たす役割を把握する必要性が認識されつつあった。このような背景の中、発表者の研究グループでは、海氷の生成と融解が極域海洋の物質循環に与える影響を把握するため、室内実験や現場観測を実施してきた。本発表では、これまで実施してきた発表の研究グループの成果を中心に述べる。
G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
  • 植松 慎一郎, Jean Wannijn, May Van Hees, Lieve Sweeck, Erik Smolders, Hilde ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3C01
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    福島県の農耕地を中心とした表層から採取した51点の土壌に対して、放射性セシウム捕捉ポテンシャル(RIP)および土壌理化学性を分析した。RIPと最も有意な相関が見られたのは、強熱減量(土壌有機物含量)および酸性シュウ酸抽出アルミニウム(共に負の相関)であった。
  • 室田 健人, 斉藤 拓巳, 田中 知
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3C02
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    放射性セシウムを含んだ除染土壌の処理や処分には土壌からのセシウムの脱離速度を知ることが不可欠である。セシウムは、土壌中のイライトなどの粘土鉱物に取り込まれ、固定化されることが知られている。従来行われてきた抽出・脱離実験は、一度脱離したセシウムが土壌に再吸着するため、脱離率や脱離速度が過小評価されていると考えられる。そこで本研究では、吸着剤を用い液相中のセシウム濃度を低く抑えることで土壌への再吸着を抑制した条件で、事故から約40日後に福島県内で採取された土壌試料を用いて20週間という長期間の脱離実験を行った。それにより、土壌からのセシウムの脱離速度定数を求めるとともに、競合イオンが脱離に与える影響や、安定セシウムと放射性セシウムの脱離挙動の違いを評価した。
  • 田上 恵子, 内田 滋夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3C03
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    東京電力福島第一原子力発電所の事故により環境中に放出された放射性セシウム(Cs)の長期的な環境挙動を予測することは非常に重要であるが、現在は過渡的な状況であり、確からしい将来の環境影響評価を行う上で、適切な環境移行パラメータを得ることは難しいかもしれない。できる限り同じサンプリングポイント・対象物について継続的にデータ収集することで、長期予測に必要なデータの抽出が可能になるが、そのような研究は限られている。我々は千葉県千葉市の放医研敷地内において事故後1ヶ月から植物サンプリングを継続的に行っており、広葉常緑樹、広葉落葉樹および草本植物についての経時変化を調べてきた。その結果、草本植物の環境半減期は二成分で表され、長期成分の半減期として3-4年であること、一方で、樹木では現在も一成分で表されることがわかった。長期予測に資するためには、今後も継続したモニタリングが必要である。
  • 菅 大暉, Qiaohui FAN, 武市 泰男, 田中 万也, 坂口 綾, 加藤 憲二, 井波 暢人, 間瀬 一彦, 小野 寛太, 高橋 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3C04
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    セシウム (Cs) は一部の粘土鉱物の層間に内圏錯体として取り込まれることが分かっている。そのためCsは粘土鉱物から脱着しにくい。しかし有機物が多く共存する環境では、有機物が粘土鉱物を覆うことによる阻害効果が起きるため、Csが粘土鉱物の層間に侵入し難くなること、脱着しやすい外圏錯体として吸着される割合が増えることなどが示唆されている。よって、有機物による阻害効果がよくはたらく環境では、溶存Csが増加し、結果的に河川や海に多くのCsが流出することにつながる。 このような背景を受けて、本研究ではナノスケールでの有機物のキャラクタリゼーションが可能な軟X線顕微鏡 (compact STXM) の開発を行い、有機物による阻害効果がよくはたらくと考えられるウクライナ・チェルノブイリ地域の河川懸濁粒子と、阻害効果があまりはたらいていないと考えられる福島地域の河川懸濁粒子を対象として、STXMによる単一粒子中の有機物-粘土鉱物複合体を分析した。
  • 青井 裕介, 福士 圭介, 富原 聖一, 糸野 妙子, 朝日 一成, 長尾 誠也, 柏谷 健二
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3C05
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波により福島県第一原子力発電所が水蒸気爆発を起こし、Csを主とする放射性元素により広範囲にわたる放射能汚染をもたらした。福島県(2013)は、ため池底質の放射性Csの濃度を調査し、その中でも非常に高い放射能を示すため池があることを報告している。これはため池集水域の汚染土壌が降雨などにより連続的に侵食・運搬され、ため池に堆積したからと考えられる(Aoi et al. 2014JMPS)。福島の農業を復興する上でため池への放射性Csの堆積が懸念されており、ため池への放射性Cs堆積過程の理解が課題の一つとされている。そこで我々はセディメントトラップを用いてため池堆積物を一定期間ごとに採取し、ため池に堆積する放射性Cs汚染堆積物の堆積過程及び堆積過程の変化の要因を検討した。
  • 丸岡 照幸, 川武當 崇正, 大野 剛, 村松 康行, 松本 拓也, 松崎 浩之, Pradeep Aggarwal
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3C06
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    つくば市の降水を原発事故後1年間採取し、そのトリチウム、ヨウ素129の濃度を得た。それらの濃度は一般的には低下傾向にあるが、ヨウ素129濃度はパルス状に上昇することがあった。その要因を議論するために、溶存陽イオンの濃度と比較を行った。
  • 村松 康行, 松崎 浩之, 大野 剛, 遠山 知亜紀, 楠野 葉瑠香
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3C07
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    福島原発事故の際、大量の放射性ヨウ素(主としてI-131)が放出された。放射性ヨウ素は甲状腺に濃縮されるため、原発事故に起因する被ばく評価を行うことが大変重要である。しかし、I-131は半減期が8日と短いため、放射性ヨウ素の沈着量や分布に関するデータが少ない。そこで我々は、不足しているデータを補う目的で、I-131と同時に放出されたI-129(半減期1570万年)を指標にして、放射性ヨウ素の沈着量を復元することを試みた。試料としては文科省が集めた土壌や我々が独自に集めた試料を用いた。I-129は微量であるため、化学分離した後、加速器質量分析法 (AMS)で測定した。約700箇所から採取された土壌についてI-129濃度を得た。今までI-131データが殆どなかった福島原発から20km圏内や南西側の地域を中心に、I-131沈着量を推定した。
  • 山田 正俊, 科研費ISET-R 海洋班一同
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 基調講演
    セッションID: 3C08
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    福島第一原子力発電所事故によって環境中にどの程度放射性物質が放出されたか、また、どこにどのように移行していくかを明らかにすることは、喫緊の重要な課題である。科研費新学術領域研究(放射能環境動態; ISET-R)の計画研究のひとつである海洋班では、海洋および海洋底における放射性物質の分布状況、要因を把握し、外洋まで含め、海洋および海洋底にどの程度放射性物質が分布しているか、その物理、化学、生物過程を細密に調査し、モデル化を図ることを目的とした。(1)海水中の放射性セシウムの分布、(2)海水中の3H、90Sr、129I、Pu同位体の分布、(3)海底堆積物中の放射性セシウムとPu同位体の分布、(4)粒子による放射性セシウムの沈降過程、(5)海洋における放射性物質の移行過程のモデル化、について得られた研究成果を報告する。
  • 本多 牧生, 川上 創
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3C09
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    西部北太平洋の観測定点K2の水深500mと4810mに設置したセジメントトラップにより沈降粒子を捕集し、福島第一原子力発電所事故由来の放射性セシウム(Cs-137)を測定した。水深500mで捕集されたCs-137総量と4810mで捕集されたCs-137総量が同じで水平方向からの付加はないと仮定し、4810mにおける徐々に増加する蓄積量と経過時間から粒状態Cs-137の沈降速度分布(変化)を算出した。その結果、粒状態Cs-137の1%の沈降速度は約260 m day-1、3%は約156 m day-1と算出されたが、5%では約66 m day-1となり、その後はほぼ50 ± 15 m day-1、粒状態Cs-137全体の沈降速度は約54 m day-1と算出された。
  • 乙坂 重嘉, 佐藤 雄飛, 鈴木 崇史, 成田 尚史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3C10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    福島第一原発事故によって海洋に放出された放射性セシウムの海底付近での輸送過程を把握するため、福島第一原発から約100 km東方の沖合に、2011年8月から約2年間にわたってセジメントトラップを設置し、沈降粒子を採取・分析した。放射性セシウムの粒子束は、主に2つのモードで制御されていた。一つ目は表層水中で放射性セシウムを取り込んだ粒子の急速な鉛直輸送(鉛直モード)であった。このモードは、特に事故後の早い段階で支配的だったと考えられ、観測点付近の海底における放射性セシウムの分布を形成したと推測された。二つ目のモードは、海底付近に運ばれた粒子状放射性セシウムの再移動であった(水平モード)。このモードにおける粒子状放射性セシウムの輸送は、大規模ではないものの、放射性セシウムの再分布を長期にわたって制御する主要機構として注目すべきと言える。
  • 田副 博文, 山形 武靖, 増田 雄基, 永井 尚生, 山田 正俊
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3C11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    2011年に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故から3年が経過したが、環境中のモニタリングを継続することは汚染水などの海洋への漏えいや原子炉の状況を把握する上でも重要である。本発表では2013年および2014年に行った原発近海におけるSr-90およびCs-137濃度の分布に関する講演を行う。
  • 中村 俊夫, 緒方 良至, 箕輪 はるか, 佐藤 志彦, 渡邊 隆広
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3C12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力福島第一原発事故により大量の放射性物質が環境中に放出された.大気粉塵,土壌,植物などの放射能分析から大気中に放出された核種とおおよその量が見積もられている.一方,地質学・考古学試料について約5万年までの高精度年代測定に利用されている放射性炭素(14C;半減期:5730年)の放出に関しては,その放出の形態や数量はきちんと確認されてはいない. 事故のあった福島第一原発付近への立入は制限されており,採取できる試料には限りがあるが,2012年に,福島第一原発から南に20~30km離れた広野町の海岸付近で海産物などを採取した.また,2011年秋には,福島第一原発から北西に約60km離れた福島大学金谷川キャンパスにおいて植物を採取し,それらの14C濃度を測定した.測定結果からは福島第一原発事故の影響は検出されなかった.
  • メイリンズ・ アレックス, 奥村 雅彦, 斎藤 公明, 町田 昌彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3C13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    モンテカルロ輻射輸送モデリングシミュレーションは、原発事故によって放出された放射性核種の環境動態の理解のために不可欠なツールである。この手法は、空間線量率から地表の汚染密度への変換係数の導出に使用され、それを用いれば、環境中に放出された放射性核種の活性や分布の定量化が可能である。逆に、環境中の放射性核種の動きや崩壊を予測するモデルの結果から将来の空間線量率を予測するためにも用いられる。我々はPHITSコードを用いて、地表から高度300mまでの範囲にわたって地形が空間線量率に及ぼす影響を評価した。地形は、円錐を切って表現した台地と盆地、二つの斜面に挟まれた谷の二つを考えた。前者は円錐の頂点の角度を、後者は水平面からの斜面の角度を変えて、地表の表面汚染密度と空間線量率の関係を求めた。その結果、地表における空間線量率よりも、高度が高い所の空間線量率の方が地形の影響を受けやすい事が分かった。
  • 小田 好博, 山口 正秋, 新里 忠史, 北村 哲浩
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3C14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    日本原子力研究開発機構では、事故由来の放射性物質の中で、空間線量率の支配的核種である放射性セシウムの将来分布を予測するために、土壌に吸着された放射性セシウムが土砂とともに移動するものとして土壌流亡予測式(USLE)に基づいて土壌の侵食量を計算し、更に地表流による侵食・堆積を伴う土砂移動をモデル化した手法を開発した。この手法では、データの解像度に結果が影響される。そこで、解像度が異なる土地利用分布と数値標高モデルをそれぞれ用意して、その組み合わせによる結果への影響を評価した。
G13 最先端計測・同位体地球化学
  • ダニエラチェ セバスチアン
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 基調講演
    セッションID: 3C15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    光化学過程における質量非依存分別のメカニズムと最近の研究
  • 藤井 俊行
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 基調講演
    セッションID: 3C16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    汎用量子化学計算プログラムGaussianを用い、密度汎関数法により、鉄、ニッケル、銅等の第一遷移金属の種々の水和錯体の分子構造及び振動解析を行った。得られた計算結果から換算分配関数比を算出した。天然試料や実験試料に観測される同位体分別の大小は、計算から得られる換算分配関数の大小と比較し、議論されることが多いが、本研究ではこのことを踏まえ、関係する化学種の錯生成定数を導入し、同位体分別の大きさを、酸性度(pH)や電位(Eh)等の関数として評価した。実測報告されている同位体分別の発現過程の解釈に対する、本評価法の有効性について検討した。
  • 永井 友一朗, 横山 哲也
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 最先端計測・同位体地球化学
    セッションID: 3C17
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    近年の質量分析技術の発展により,元素によっては分析誤差10 ppm以内の同位体異常を測定できるようになった.モリブデンには,隕石中の同位体異常が報告されている一方で,同位体異常がないことを支持するデータも存在する.本研究では,隕石中のモリブデン同位体異常の評価に向けて,表面電離型質量分析計(TIMS) による分析法の開発を行った.本研究による測定では,酸素同位体組成を同時にモニターすることにより,モリブデン同位体比シフトを補正した.それにより,97Mo/96Mo = 0.23×10-4100Mo/96Mo = 0.28×10-4のくり返し再現性(n = 12)を得られた.
  • 石川 厚, 山崎 真由香, 梅元 悠, 三浦 朋子, 保柳 康一, 吉野 和夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 最先端計測・同位体地球化学
    セッションID: 3C18
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    塩素同位体比の地球化学研究が近年増えてきた。同位体比分析にはCs2Cl+分子イオンを使う方法(表面電離型質量分析TIMS)とCH3Cl+分子イオンを使う方法(気体質量分析)の二つがあるが、これらの方法に基づく報告値には、著しい不一致がある場合がある。そこでTIMS測定における塩素同位体の分別効果、およびその効果を抑える改良測定法を研究した。改良により塩素同位体比の測定値は定常値を与えるようになった。標準試料の塩素同位体比を繰り返し測定したところ、値に再現性があり、信頼のおける値が得られた。地質学的応用としてIODP317の大陸棚掘削試料(ニュージーランド南島沖)を測定した。塩素同位体比の年代変化は、ユースタシー曲線の海進・海退周期に対応した。
  • 服部 祥平, 豊田 朱梨, 豊田 栄, 石野 咲子, 上野 雄一郎, 吉田 尚弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 最先端計測・同位体地球化学
    セッションID: 3C19
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
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    本発表では、OCSを安定質量分析計(IRMS)に導入した場合にイオンチャンバー内で精製されるS+フラグメント(m/z: 32, 33, 34)を測定することで、簡便にOCSの硫黄同位体組成を計測する方法を報告する。5-8 nmol程度の試料を導入した場合の繰り返し測定精度(1σ)は、δ34S、Δ33Sに対してそれぞれ0.4‰、0.2‰であった。一方、5 nmol以下の試料に対しては、硫黄同位体組成の両依存性が見られた。本手法で測定されたOCSの硫黄同位体組成と、OCSをSF6に化学変換しデュアルインレット法で求めた硫黄同位体組成を比較したところ、測定精度の範囲内で等しい結果となった。このことは、本手法は従来法と比較可能な測定法であることを意味している。
  • 中小司 和広, 松崎 浩之, 三宅 泰斗, 本多 真紀, 坂口 綾
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 最先端計測・同位体地球化学
    セッションID: 3C20
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    ウラン236は,原発事故起源の核燃料の飛散状況の評価のために有用である.一方,元素としてのウランは,海水中に3ppb含まれる等,地球上に遍在している.したがって,U-236/U-238同位体システムは,地球環境中の物質動態研究においても重要な研究対象となり得る.一般にはU-236は極微量しか存在しないため,幅広い同位体比に渡ってこれを検出するためには,加速器質量分析(AMS)が必要である.そこで,われわれは,東大MALTにおいて,U-236-AMSシステムの開発を開始した.
  • 若木 重行, 谷岡 裕大, 若杉 勇輝, 壷井 基裕, 石川 剛志
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 最先端計測・同位体地球化学
    セッションID: 3C21
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    海水のSr安定同位体組成は、気候変動に伴う陸域風化の質的量的変化や炭酸塩生成率の変化などによる、海洋のSr収支バランスの変化に対応して変動する新しい環境指標として注目されつつある。海洋のSr収支バランスをモデル化するためには、供給源の同位体組成分布を求める必要があるが、岩石の風化に伴うSr同位体分別挙動や主要な河川水や陸域そのもののδ88Sr値分布に関するデータの蓄積は十分でない。 本研究では、河川水へのSr供給源である岩石のうち火成岩にフォーカスし、Sr安定同位体組成分布の様相を詳細に明らかにする事を目的として、様々な種類の火成岩類に対してSr安定同位体組成の分析を行った。本研究では65試料の火成岩の分析を行い、1.4‰にわたる有為な変動が検出された。同位体組成の変動はfelsicな岩石で大きくmafic岩では小さい。本発表ではSr安定同位体分別を生じた素過程に付いても考察を行う。
  • 大野 剛, 廣野 睦, 村松 康行
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G13 最先端計測・同位体地球化学
    セッションID: 3C22
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    福島第一原子力発電所の事故で様々な種類の放射性核種が放出された。放出量の多い放射性セシウム・ヨウ素の汚染実態については東日本全域の汚染実態が明らかになりつつある。一方、放射性ストロンチウムに関する知見は極めて限定的である。本研究では、ICP-MS/MSを用いてストロンチウム90測定法の検討をおこなった。ICP-MS/MSは四重極を二つ持つため、アバンダンス感度は改善されることになる。このため、安定ストロンチウムのテーリングによるスペクトル干渉の問題が解決できると考えられる。安定ストロンチウム溶液を用いて、質量数90の妨害信号/88Sr比を測定したところ、5×10^-12の値が得られた。これは土壌中に安定ストロンチウムを含んでいてもICP-MS法に比べ影響が少ないこと意味している。本発表では福島原発事故により汚染された土壌試料の測定例を紹介し、ICP-MS/MSを用いた極微量放射性同位体分析の有用性について議論を行う予定である。
S1  北陸地方を中心とした大気水圏化学-高低差4000mの地球化学
  • 渡辺 幸一, 矢地 千奈津, 平井 泰貴, 山崎 暢浩, 上原 佳敏, 朴木 英治
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  北陸地方を中心とした大気水圏化学-高低差4000mの地球化学
    セッションID: 3D01
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    立山やヘリコプターを利用した大気環境観測を実施している。微量気体成分、エアロゾル粒子、霧水・降水化学などの計測を行ってきた。高濃度の越境大気汚染や黄砂粒子が度々検出されている。立山においては、気塊がアジア大陸の工業地帯等から輸送されてきた場合に、霧水が強く酸性化されていた。酸性霧中には高濃度の硫酸イオンや過酸化物も含まれていた。黄砂粒子は、春期だけでなく、夏期や秋期にも輸送されていた。また、秋期における黄砂輸送量には年度による大きな違いがみられた。ヘリコプターによる上空大気中の過酸化物濃度測定を行った。過酸化物濃度は上空で高く、地表付近で低濃度であった。また、夏期の過酸化物濃度は2013年に高く、2012年等にくらべて越境大気汚染の影響を大きく受けているためであった。
  • 久米 篤, 上原 佳敏, 中野 孝教, 中島 春樹, 石田 仁, 朴木 英治, 渡辺 幸一, 申 基澈
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  北陸地方を中心とした大気水圏化学-高低差4000mの地球化学
    セッションID: 3D02
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    中部山岳国立公園の立山・浄土平(標高2839m)において、ハイマツ林冠の物質動態を測定した結果、針葉表面に付着した無機窒素成分の約70%を吸収していた。一方、多量の陽イオン成分が針葉表面から溶脱しており、針葉の濡れ時間とSO42-イオン供給に比例していた。ハイマツ林内雨の87Sr/86Srは、大気沈着や海塩の値と非常に近く、葉枝・リターでは、黄砂の値に近かった。美女平のスギ林(標高977m)、ブナ平のブナ林(1200m)、弥陀ヶ原のオオシラビソ林(1930m)では、スギ林とオオシラビソ林の林内雨と樹幹流の87Sr/86Srは、いずれも大気沈着の値に近かったが、ブナ林では黄砂の値とほぼ一致した。これらの結果は、立山ではいずれの森林地帯でも大気からのイオン供給が重要で、基岩の影響は小さいこと、また、黄砂が重要な陽イオン供給源になっている可能性を示した。
  • 松木 篤, 岩本 洋子, 木ノ内 健人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  北陸地方を中心とした大気水圏化学-高低差4000mの地球化学
    セッションID: 3D03
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    東アジア地域は世界的に見ても高いエアロゾル濃度が観測される地域として認識されているが、その粒子の化学成分と雲凝結核(CCN)としての活性を同時に長期間観測した例は限られている。能登半島の先端において微小エアロゾルの化学成分とCCN活性の同時観測を継続して行った結果、粒子のCCNとしての働きやすさを示す吸湿度パラメータと粒子中に含まれる有機物の割合には良い対応が見られたほか、それらが季節によって変動することが明らかになった。また、粒径に応じて異なるCCN活性が観測されたことから、粒子に含まれる有機物の比率がサイズにより変化することが示唆された。
  • 朝日 裕也, 牧 輝弥, 石川 輝, 青木 一真, 松永 智樹, 堀内 周, 長谷川 浩, 岩坂 泰信
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  北陸地方を中心とした大気水圏化学-高低差4000mの地球化学
    セッションID: 3D04
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    海洋に沈着した黄砂は、海水の化学組成を変動させ、海洋微生物群を消長に影響を及ぼす。しかし,その影響を直接的に実証した培養実験例は乏しい。そこで、本研究では、黄砂を海洋試水に添加する船上培養実験を実施した。黄砂は、富山県立山連峰の室堂平(2450m)において、春季に積雪断面調査を実施し、積雪のよごれ層から、黄砂鉱物粒子を含む積雪試料を採取した。また、比較のため、純白層の積雪試料も採取した。よごれ層の積雪試料は、粗大粒子密度が高く、高濃度の硝酸窒素が含まれていた。 紀伊半島沖合の70km地点で採取した海水に、よごれ層の試料を添加した海水では、硝酸窒素及び珪酸濃度が著しく減少するとともに、20μm以上の画分でChl.a濃度が著しく増えたため、大型珪藻類が生長促進されたと推察できる。また、細菌細胞密度の増大もみられ、超並列シーケンサーを用いて、細菌群集構造の動態解析も試みた。
  • 河合 賢人, 牧 輝弥, 小林 文尚, 陳 彬, 石 廣玉, 青木 一真, 金 亮勲, 洪 天祥, 長谷川 浩, 岩坂 泰信
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  北陸地方を中心とした大気水圏化学-高低差4000mの地球化学
    セッションID: 3D05
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    近年、黄砂と共に風送される微生物群(黄砂バイオエアロゾル)が及ぼす人健康への影響が懸念されている。しかし、黄砂による微生物の長距離輸送を直接実証した研究は殆どない。そこで、黄砂時の大気粒子から細菌株を分離培養し、細菌株の飛来源をMLST(遺伝子多型解析)を用いて推定した。黄砂発生地(敦煌)及び飛来地(珠洲,金沢,立山)において採取したエアロゾル試料を,高塩分の液体培地に接種し、全177の環境ストレス耐性細菌株を分離培養した。全株の16S rDNA塩基配列を決定し、系統分類学的に解析すると、64株がバチルス属に属し、バチルス サブチリスと近縁となった。更に、本種と近縁な細菌株を株レベルで比較する為、5種のハウスキーピング遺伝子配列を解析した。結果、バチルス サブチリス群の中で、敦煌大気と立山及び金沢の黄砂粒子から得た株が、一つのクラスターを形成し、本菌株の黄砂による越境輸送が示唆された。
  • 中川 毅
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  北陸地方を中心とした大気水圏化学-高低差4000mの地球化学
    セッションID: 3D06
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    水月湖の年縞堆積物に対しては、年縞の計数と800点以上の放射性炭素年代測定により、世界でも最高精度の年代軸が与えられている。そうして作られた水月湖の年代目盛りは、IntCal(国際的に共有される放射性炭素較正モデル)の主要構成要素として、2013年からは全世界の研究者に使用されるようになった。次のステップとしては、この年代目盛りを用いた過去の気候変動の復元、さらに水月湖で復元された変動パターンの、ほかの地域との対比および比較が待ち望まれる。本公演では、水月湖の堆積物の花粉分析によって復元された気候変動の概要と、とくに北大西洋周辺地域と比較した場合の特殊性について概説する。その上で、完新世開始時の温暖化は、ベーリング期開始時の温暖化とはメカニズムが異なることを主張する。
  • 小平 智弘, 堀川 恵司, 池原 研, 村山 雅史, 張 勁
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  北陸地方を中心とした大気水圏化学-高低差4000mの地球化学
    セッションID: 3D07
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    約7千年前日本海表層は対馬暖流の影響下となり,現在のような海洋表層環境が成立した。対馬暖流の日本海への流入は,表層水温だけでなく周辺地域の気候や植生に大きな影響を与えた可能性が高い。しかし,環日本海地域の過去の気候を復元する上で極めて重要な定量的な表層水温記録は未だ得られていない。そこで本研究では,佐渡沖において,浮遊性有孔虫N.incomptaのMg/Ca比から,定量的な過去の表層水温復元を試みた。本研究で復元した過去7千年間の表層水温は約6℃の幅で変動しており,特徴的な温暖期と寒冷期がそれぞれ4回確認された。表層水温の変動傾向は,対馬暖流流域で多産する珪藻種の産出頻度に対応した傾向を示し,佐渡沖の表層水温が対馬暖流の流入強度に規制されていた可能性が示された。また,新潟地域で復元された過去の降水・降雪量とも類似した傾向を示し,日本海表層水温が周辺陸域に影響を与えていたことが示唆された。
  • 張 勁
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  北陸地方を中心とした大気水圏化学-高低差4000mの地球化学
    セッションID: 3D08
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は河川から沿岸海洋への栄養塩輸送状況を解明するため、急流河川である富山県東部の早月川・角川・片貝川の水文特性、主要化学成分濃度、酸素・水素・硝酸態窒素同位体比を測定した。酸素・水素同位体比は富山県での天水線の範囲内であり、河川ごとに季節変化がみられ、角川・片貝川では春期と夏期の全地点の平均値が等しく、早月川に比べて流下時間の長いことが示唆された。また、早月川と片貝川の涵養源標高は全地点で変わらず、山地森林域の降水がそのまま流下しているが、角川では流下に伴い硝酸濃度が上昇した。富山湾への硝酸態窒素の輸送量は、早月川で15×103t/年、角川で6×103t/年、片貝川では19×103t/年と見積もられ、早月川と片貝川は全域で自然起源が9割以上、角川は下流域で人為起源の影響が認められた。
  • 浦沢 知紘, 張 勁, 稲村 修
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  北陸地方を中心とした大気水圏化学-高低差4000mの地球化学
    セッションID: 3D09
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    他海域に比べ、地球温暖化に伴う海水温の上昇率が高い日本海は温暖化の影響をいち早く反映すると予測される。日本海の縮図として、富山湾は今後の温暖化の影響をモニタリングする地域に適しているといえる。富山湾において温暖化による生態系への影響を明らかにするためにはまず、富山湾の食物網の特徴を把握する必要がある。本研究では富山湾の代表種シラエビPasiphaea japonicaの炭素・窒素安定同位体比解析を行い、その食物網の特徴把握と環境指標種としての有効性を検討した。シラエビPasiphaea japonicaの炭素・窒素安定同位体比は1年を通して大きな変化がないことから、一定の餌環境であると推測された。また、頭胸甲長と窒素安定同位体比の間に正の相関が見られた。食物網解析の結果から、シラエビPasiphaea japonicaは植物プランクトンを起点とした二次消費者であり、陸域の影響は受けていないことが示唆された。個体間の値のばらつきが小さいことから、環境指標種としての有効性が示された。
G11 地球内部流体の化学
  • 中村 仁美, 岩森 光, 千葉 紀奈, 中井 俊一, 木村 純一, 常 青, 風早 康平
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 地球内部流体の化学
    セッションID: 3D10
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    近年,我々は,初めて有馬温泉水中の希土類元素(REEs)の定量とともに,Sr-Nd-Pb同位体比組成を得ることに成功した(Nakamura et al., accepted).これは,低温(~500度)で脱水したスラブ起源流体の組成と河川水の混合で説明することができ,スラブ起源流体は非火山域であっても,構造線などの大断層沿いに上昇している可能性があることを示唆する.本研究では,溶存イオン種と濃度,軽元素同位体情報を基に,中央構造線沿いの有馬型温泉水を調査・採水し,標準添加法によりREEs組成を定量分析する.これらの結果に基づき,スラブ起源流体を含む有馬型温泉水の特徴が,非火山域である西南日本から,火山域も含む中部日本にかけて,どのように変化するかについて制約を与える.
  • 石川 剛志, 廣野 哲朗, 松多 範子, 河本 和朗, 藤本 光一郎, 亀田 純, 西尾 嘉朗, 前川 由佳, 本多 剛
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 地球内部流体の化学
    セッションID: 3D11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    中央構造線安康地域の断層帯の岩石および鹿塩・遠山・山室の冷湧水の微量元素・同位体分析を行った。地震時の断層すべり帯である黒色ガウジはLiに顕著に富み,高いSr同位体比を示すなど周囲とは異なる組成的特徴を示す。また,この地域の冷湧水は非常に高いLi/Na比で特徴づけられる。平均的な冷湧水組成を仮定してモデル計算を行うと,黒色ガウジの組成的特徴は最高250℃の流体との相互作用でよく説明される。このことは,地震時の断層すべりが高Li/Naの深部流体の存在下で起こり,摩擦熱で加熱された流体と断層岩の相互作用が生じたことを示している。
  • 土岐 知弘, 蝦名 直也, 新城 竜一, 石橋 純一郎
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 地球内部流体の化学
    セッションID: 3D12
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    海底熱水系において,熱水の温度構造と固相側の岩質に関する情報は,熱水循環の規模や様式を理解するために極めて重要な情報である。本研究では,沖縄トラフにおける海底熱水系の熱水中のホウ素同位体比を調べることによって,熱水が堆積物と反応した温度を推定した。ホウ素濃度も中央海嶺における海底熱水系よりも高く,同位体比は10Bに富んでいることが示された。また,フィールド間においても違いが見られ,海底熱水中のホウ素同位体比(δ11B)は,これまで報告されているメタンの炭素同位体比と極めて高い相関性を示した。このことから,メタンが有機物の熱分解起源に卓越している海底熱水系では堆積物が高温で熱水と反応しており,メタンが微生物起源に卓越している海底熱水系では低温で熱水が堆積物と反応していることが示唆された。これらのことから,海底熱水中のδ11Bは涵養域における熱水と堆積物の反応温度を推定する良い指標となる可能性がある。
  • 篠崎 彩子, 鍵 裕之, 平井 寿子, 大藤 弘明, 岡田 卓, 中野 智志, 八木 健彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 地球内部流体の化学
    セッションID: 3D13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    マントルに相当する高温高圧下において水素流体が共存するケイ酸塩鉱物の相関係、融点に与える影響を明らかにするため、レーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用いた高温高圧実験を行った。約3GPaから15 GPa, 1400 KでMg2SiO4-H2系ではforsteriteのSiO2成分が水素に溶け込んでpericlase(MgO)が生成した。MgSiO3-H2系でも同様にorthoenstatite中のSiO2成分が溶けてforsteriteとpericlaseが生成した。水素流体へとSiO2成分が溶け、共存するケイ酸塩鉱物の組成が大きく変化することが示された。
G12 地球化学の人文科学への応用
  • 堀内 晶子
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 地球化学の人文科学への応用
    セッションID: 3D14
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    古代人の食生活を調べる為、脂質分析、分子レベル同位体分析及び炭素・窒素安定同位体分析を使って、縄文晩期に東北地方で栄えた亀が岡文化圏の3つの遺跡から出土した土器片を分析し、環境特異性や共通性を化学の視点から検討した。 その結果、海岸に位置する二つの遺跡からは海洋性生物と陸生動植物が共通した食材として使われ、その内、製塩遺跡から出土した用途不明の壺は、製塩過程で使われた可能性が示唆された。また、内陸遺跡では主にC3植物と一緒に陸生動物が煮炊きされた事が推察された。
  • 宮田 佳樹, 堀内 晶子
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 地球化学の人文科学への応用
    セッションID: 3D15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,とくに,縄文時代全般にわたって,さまざまな海産物に依存していた海岸近くに暮らしていた人々の生活を,遺跡出土土器に残存する有機物組成や土器付着炭化物の安定同位体組成,炭素年代値を用いて復元することを目的とした。礼文島浜中2遺跡,石川県真脇遺跡,愛知県渥美半島にある保美貝塚,伊川津貝塚などの出土土器を用いて,土器型式や部位,器種を考慮して,脂質組成と調理食材との関係を考えていくつもりである。
  • 冨山 慎二, 南 雅代, 中村 俊夫, 鍵 裕之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 地球化学の人文科学への応用
    セッションID: 3D16
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    炭化物は、長期間の埋没環境下でも化学的に安定であるため、遺跡の14C年代測定の試料として有用である。化学処理では、ABA処理が一般に用いられている。しかし近年、ABOX処理が注目されている。両者の方法によって14C年代値が異なる例が報告されているが、その要因について、処理後の試料の化学構造の違いという視点からの議論はされていない。本発表では、ABA処理とABOX処理後の炭化物の化学構造の違いと、それによる14C年代値への影響について述べる。各処理後の試料に対し、赤外吸収スペクトルの観測、C・H・Oの元素含有率の測定、および14C年代測定を行った。以上の分析結果より、ABOX試料では分子量が大きな多環芳香族を得ることができるため、外来炭素による汚染のない、より信頼性のある14C年代を示す可能性があると考えられる。
  • 南 雅代, 鈴木 和博, 中村 俊夫, 池田 晃子
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G12 地球化学の人文科学への応用
    セッションID: 3D17
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    キツネは50年ほど前まで里山の至る所に生息していた最もポピュラーな野生動物であり、愛知県豊田市の市街地から北東に約17 km離れた山間集落である小手沢にも、1960年代初めまでは多くのキツネが生息していた。しかし、キツネは1960年代後半から次第にいなくなり、現在では全く目撃されなくなっている。そこで、本研究では、小手沢集落の旧地蔵堂の解体(2010年1月17日)中に床下から見つかったキツネ遺骸の歯および骨の14C濃度から、それぞれ誕生および死亡年代を求め、キツネが里山から消えた時期を明らかにすることを目的とした。このキツネの遺骸の脇には1971-1983年版のチキンラーメンの袋が見つかっていることから、キツネが消えた時期を解明する鍵になると推察された。本発表においては、14C年代測定の他、C・N・Srの安定同位体比の測定も行ない、キツネの食性を推定することにより、キツネが里山から消えた原因も考察する。
G17 固体地球化学(全般)
  • 川邊 岩夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G17 固体地球化学(全般)
    セッションID: 3E01
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    LnF3とLnO1.5の間のLn(III)配位子交換反応のΔG(T)を, 関与する化学種のGibbs free energy functions を用いて,T=298-1200Kの温度範囲で求めた.このΔG(T)の系列変化は上に凸な四組効果を示し,Jorgensen-Kawabe式で記述出来きる.四組効果の大きさは900Kを越える高温で,減少し始め,約1400K付近でゼロとなることが推定できる.
  • 久保田 蘭, 太田 充恒, 岡井 貴司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G17 固体地球化学(全般)
    セッションID: 3E02
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    自然の中に存在する元素は幾つかの形態で存在しており,特に重金属元素の毒性はその存在形態によって変化することが知られている.(独)産業技術総合研究所では,人為的汚染などの環境評価に資するために,陸海域における元素のバックグラウンド濃度を示した地球化学図を公表しており,現在は存在形態別地球化学図の作成に向けて研究を進めている.国際的に規定された逐次溶解法(BCR法)を用いた地球化学標準試料中の元素存在形態分析については,2010年度および2013年度年会にて信頼性および再現性に関する議論を行い,38元素の存在形態について基準となる値を報告した.本研究では,懸案となっていた「年月を経ることによる変化」および「試料の乾燥方法による結果の差異」の有無を検証した結果を報告する.
  • 安川 和孝, 中村 謙太郎, 藤永 公一郎, 大田 隼一郎, 高谷 雄太郎, 町田 嗣樹, 岩森 光, 加藤 泰浩
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G17 固体地球化学(全般)
    セッションID: 3E03
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    講演者らは,深海底堆積物の包括的な地球化学組成データセットに対し,比較的新しい統計解析手法である独立成分分析を適用して解析を実施した.独立成分分析では,主成分分析や因子分析とは異なり,データ構造の非正規性に着目してデータが内包する特徴的な成分やプロセスの情報を抽出するため,堆積物が持つ真に独立な地球化学的情報の分離が可能になると期待される.本発表ではこの解析結果に基づき,抽出された独立成分が持つ地球化学的意義について議論を行う.
  • 仙田 量子, 石川 晃, 森下 知晃, 鈴木 勝彦, 石井 輝秋
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G17 固体地球化学(全般)
    セッションID: 3E04
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    海洋プレート下部地殻については、近年その構造が明らかになっているものの、物的証拠の少なさなどからその形成については未だ議論がなされている。トロクトライトは、オリビンとCa-斜長石を主構成鉱物とし少量の輝石を含むガブロの一種として、海洋プレート下部地殻やそれに類するオフィオライトなどで観察されており、海洋プレート下部地殻の形成あるいはマントルとの相互作用についての情報を持つと期待して全岩化学分析を行った。分析した試料は、太平洋中央海嶺とココス-ナスカプレート境界の三重会合点付近のヘスディープ海盆で行われたODP147 site 895で採取された掘削コア試料の一部を用いた。Osを含むPGE濃度と全岩Os同位体比はどちらもハルツバーガイトとMORBの間に分布し、これらの2成分混合でPGE成分を説明できる可能性を示している。
  • 板野 敬太, 常 青, 飯塚 毅, 木村 純一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G17 固体地球化学(全般)
    セッションID: 3E05
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/12
    会議録・要旨集 フリー
    本研究はアフリカの巨大河川の砕屑性モナザイトのU-Pb年代分析により, アフリカ大陸の形成を司った汎アフリカ造山運動の詳細な年代情報をより詳細に得ることを試みた. 年代分布は, 汎アフリカ造山運動の時期にピークを持ち, 河川ごとにも違いが見られた. このような年代ピークの違いは, ジルコンを用いた先行研究では見られなかったもので, モナザイトのより高いU-Th濃度のために高精度で年代測定が可能となったことに起因する. この河川ごとの違いは,それぞれの河川流域における造山運動の時期が同時ではなかったことを示し,アフリカ大陸の形成は,現アフリカ北東部(ナイル流域)の衝突から進み,北西部(ニジェール流域),中央部~南東部の衝突合体が続いたことを示唆する.また, 砕屑性モナザイトにのみ500Ma付近に明瞭なピークが存在することから, ジルコンには記録されない低変成度の造山運動イベントが存在したことが示唆された.
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