日本地球化学会年会要旨集
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基盤セッション
G1 大気とその境界面における地球化学
  • 梶野 瑞王
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 1-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    今年度科研費に採択された研究プロジェクトについて発表する。本研究では、代表的な雲底高度(1000 m程度)に山頂を持つ孤立峰である筑波山を活用してエアロゾルと雲の多角的な連続直接観測を行い、高い非線形性を有する気象化学の諸過程において与えられた変化に対する応答を正確に記述できる数値モデルを併用することで、エアロゾルと雲の相互作用がもたらす大気の物理・化学現象すなわち気象・環境変化の包括的な理解を目指すものである。まだ成果は無いが2023年9月8日に予定されているキックオフ会合の内容をベースに、参画者のこれまでの研究活動を含めた背景、プロジェクトの進捗、計画について概説する。

  • 高橋 嘉夫, 山川 庸芝明, Qin Haibo
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 2-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    有機酸エアロゾルは吸湿性を示し、雲凝結核(CCN)として働くため、雲の生成を促進し、その雲が太陽光を散乱することによる地球の冷却効果(間接的冷却効果)をもつとされている。本研究では、(1) 間接的冷却効果のより正確な評価に貢献するため、不溶性シュウ酸金属錯体の割合のより正確な見積もりと吸湿性の評価を目的に、シュウ酸金属錯体の大気中濃度の測定およびシュウ酸エアロゾルの吸湿パラメータの計算を行った。

  • 田中 祥太, 栗栖 美菜子, 名取 幸花, 乙坂 重嘉, 飯塚 芳徳, 高橋 嘉夫
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 3-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    産業革命以降の人間活動は地球環境に大きな影響を与えてきた。これは大気中のエアロゾルについても同様であり、過去のエアロゾルは堆積コアやアイスコアに記録されている。こうした記録の解明は、人新世の議論において重要である。本研究では、グリーンランドのSEドームのアイスコア(SE-IIコア)と東京の皇居お堀の堆積物コアに対して幾つかの化学分析を行い、これらの化学記録がグローバルな記録からローカルな記録まで、様々なスケールの人間活動記録を反映していること解明した。SE-IIコアの微量金属元素濃度から人為起源元素を確認したほか、XAFSによるFeやZnの化学種分析を行い、人為起源の化学種の割合の変化を検出した。また、Ca化学種から先行研究に整合的な中国のSO2排出を示す結果を得た。皇居お堀堆積物についてはZn同位体を測定し、ローカルな人間活動の記録を反映していることを解明した。

  • 伊藤 彰記
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 4-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    人為起源、森林火災起源、及び鉱物起源のエアロゾルは、海洋表層へ重要な栄養塩(鉄)を供給することで、植物プランクトン(一次生産者)を起点とした食物連鎖を通して海洋生態系および気候へ影響を与える。しかし、それらの発生源の栄養塩供給量算出には多大な不確実性が存在する。特に南大洋で、エアロゾル中溶存鉄の質量濃度の観測データを過小評価することから、数値モデルで考慮されていない発生源の存在及び鉄溶出速度の過小評価などの問題点が指摘されている(Ito et al., Science Advances, 2019)。本発表では、大気エアロゾル中の鉄が大気中(発生・変質・放射・沈着過程)から沈着後(生物利用可能性としての海水への溶出過程)、どのように海洋生態系に影響を及ぼすのか、についてレビューし、今後の研究課題に関して報告する。

  • 角皆 潤, 織田 舞保, 平野 一哉, 許 昊, 伊藤 昌稚, 中川 書子, 山神 真紀子, 谷本 浩志
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 5-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    一酸化窒素(NO)から硝酸に至る複雑な大気中の反応過程を実測に基づいて定量的に理解するため、都市大気中の一酸化窒素、二酸化窒素、ガス状硝酸および粒子状硝酸の各成分について、分子別の三酸素同位体組成を同時測定し、これを指標に解析した。三酸素同位体組成は一般の同位体分別過程では変化せず、反応経路上で各分子中に加わったオゾン由来の酸素原子数を直接的に反映するため、反応過程追跡の指標となる。観測は若宮大通公園 (都心域) と名大環境共用館 (郊外域) の2地点で昼夜別に行った。

  • 丁 瑋天, 角皆 潤, 三歩一 孝, 阮 文鏵, 中川 書子
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 6-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    一酸化二窒素 (N2O) は、二酸化炭素、メタンに次ぐ長寿命温室効果気体であり、最も主要な成層圏オゾン破壊物質である。近年大気中のN2O濃度は、年々増加しており、土壌中におけるN2Oの生成メカニズムやその時間変化を把握することは、土壌からのN2O放出量を削減する上で極めて重要である。N2Oの濃度観測だけでは、N2Oの起源推定は困難である。そこで、本研究はN2OのΔ17O値を用いて、土壌N2Oの起源推定に挑戦した。硝化反応で生成したN2Oであれば、そのO原子は大気中の酸素分子(O2)を起源としているので、O2と同様の低いΔ17O値(Δ17O = - 0.44‰)が期待される。一方、脱窒反応で生成したN2Oであれば、そのO原子は亜硝酸を起源とすることから、亜硝酸と同様の高いΔ17O値が期待できる。そこで本研究では、土壌より放出されるN2O、その直下の土壌を一年以上に渡ってサンプリングし、N2Oの放出フラックスとΔ17O や土壌中の亜硝酸のΔ17Oを分析した。その結果、観測点におけるN2Oの放出フラックスは、3.8 ± 3.1 μg N m-2 h-1となり、先行研究で報告されているのと同様の放出量を示した。晴天時に放出されるN2OのΔ17O値は、平均-0.32 ± 0.09 ‰となり、O2と同様の低いΔ17O値を示したため、N2Oの大部分が硝化によって生成していることが明らかになった。一方雨天時の放出フラックスは、有意に高くなり、Δ17O値も有意に高くなった(+0.12± 0.14 ‰)。このN2OのΔ17O値は、観測された土壌亜硝酸のΔ17O値(平均+0.23 ± 0.12 ‰)と近いため、降雨に伴って土壌N2Oの生成メカニズムが硝化主体から脱窒主体に移行したことがわかった。N2OのΔ17Oは、土壌N2Oの起源推定に有用である。

  • 渡辺 幸一, 三辻 奈波, 茶谷 通世, 赤堀 泰晟, 鍛治 柊兵, 髙橋 立, 篠原 和将, 篠崎 大樹, 大河内 博, 速水 洋, 米持 ...
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 7-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    富山県内(射水市)および首都圏(東京都新宿区、埼玉県加須市)においてH2O2などの測定を行い、各地点における濃度変化の特徴などについて考察した。射水市におけるH2O2やHCHO濃度は夏季(7, 8月)に極大となる季節変化が観測され、H2O2やHCHOは光化学反応による二次生成の寄与が大きいものと考えられる。一方で日中のO3濃度の極大は5月に観測され、北陸地方の特徴と考えられる。都心部など大都市域と異なり、北陸地方ではO3濃度は越境汚染の影響を受けやすい初夏に、H2O2やHCHO濃度は紫外線量が強く気温も高い夏季に最も高濃度となると考えられる。2022年7月に実施した新宿区と加須市での同時観測の結果、H2O2やO3濃度は、加須市の方が高く、新宿区でNOX濃度が高かったことに加え、卓越する南風によりO3やH2O2が光化学生成されながら大気が内陸へ輸送されたためと考えられる。

  • 藤本 一晶, 崔 天暢, 金谷 有剛, 竹谷 文一, 高島 久洋, 岩本 洋子, 竹田 一彦, 関谷 高志, 大木 淳之
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 8-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    海水とO₃の反応から発生する有機ヨウ素ガス(VOI)が全地球に与える影響の定量化やVOIが発生するメカニズム解明のため、オゾン検知管を用いたO₃と海水の反応実験システムを開発した。本実験ではCH₂I₂に着目し、O₃とCH₂I₂の量的関係とO₃通気後に海水中で増加するCH₂I₂濃度を調べた。本実験結果から、海水中でCH₂I₂生成に関わるヨウ素化合物はIO₃⁻ではなくI⁻であることが判明し、I⁻がO₃と反応することで発生するI₂が海水中有機物に働きかけることで、ヨードホルム反応に類似した化学反応から発生する可能性が示唆された。

  • 蒲 惟吹, 大木 淳之, 野村 大樹, 薮下 彰啓
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 9-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    対流圏オゾンを減少させる物質として臭素原子が知られている。臭素原子を大気へ供給する物質の1つに揮発性有機臭素のブロモホルムがある。極域の海氷表面では高濃度のブロモホルムが見つかっており、その要因として光化学反応やオゾンによるBr⁻の酸化などが考えられる。北海道のオホーツク海海岸にある汽水湖であるサロマ湖で積雪と海氷中のブロモホルム濃度の鉛直分布を調べたところ、海氷表面では有機ヨウ素のヨードエタンが高濃度であったが、ブロモホルムは低濃度であった。この原因として、極域とサロマ湖の気温の違いに着目し、海氷表面でのI⁻とBr⁻の反応に温度依存性があると考え、この仮説の検証のためにオゾンと海氷を反応させる実験手法を開発した。実験室で海氷中のBr⁻とオゾンの反応によるブロモホルムの生成を確認するために人工的に海氷を作成して海氷表面へオゾンを供給した。その結果、海氷表面で高濃度のブロモホルムが検出された。

  • 遠嶋 康徳, 丹羽 洋介, 向井 人史, 笹川 基樹, 町田 敏暢, 伊藤 昭彦, Patra Prabir, 坪井 一寛, 齊藤 和幸
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 10-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    人為起源温室効果ガスの排出削減を検証するため、大気観測に基づく排出量推定は有力な手法の一つと期待されている。本発表では、波照間島(北緯24.1度、東経123.8度)および与那国島(北緯24.5度、東経123.0度)で1~3月に観測される大気中CO2とCH4濃度の変動比(ΔCO2/ΔCH4比)を用いて中国の化石燃料起源CO2(FFCO2)排出量の推定結果について発表する。大気輸送モデルを用いた解析から推定された排出量の変化とΔCO2/ΔCH4比の変化の関係を用いて、観測されたΔCO2/ΔCH4比をFFCO2/CH4排出比に変換することで、中国からのFFCO2の変化を推定する。この方法を用いて推定された中国における2020~2023年におけるFFCO2排出量の変化率の変化について報告する。

  • 中川 書子, 織田 舞保, 角皆 潤, 伊藤 昌稚, 阮 文鏵, 許 昊, 山神 真紀子
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 11-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    亜硝酸ガス (HONO) は昼間容易に光分解してOHラジカルを生成し、対流圏の光化学反応を駆動する。都市大気中のHONOの主要供給源として, ①自動車や工場からの直接排出, ②一酸化窒素 (NO) との均一反応, ③二酸化窒素 (NO2) との不均一反応、の3つが考えられる。本研究は、三酸素同位体組成 (Δ17O値) を指標として、HONO、NO、NO2の実測に基づいてHONOの主要発生源を解明することを目的とした。HONOの濃度とΔ17O値の関係について昼夜別・季節別に解析し、都市大気中のミッシングソースを探った結果、昼と夜のいずれにおいてもNO2由来のHONOが6割程度占める必要があることが分かった。したがって、NO2の不均一反応は都市大気中のHONOの主要起源の1つとして機能しており、これがミッシングソースを説明できる可能性が大きい。

  • 渡辺 幸一, 赤堀 泰晟, 鍛治 柊兵, 樋掛 辰真, 三辻 奈波, 茶谷 通世, 牧 ちさと, 中西 彩水, 和佐田 有希
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 12-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    富山県の地上および上空大気中のH2O2とHCHOの測定をO3やSO2計測と共に行い、大気中の濃度変化特性やSO2の液相酸化への影響について考察した。本研究では、富山県立大内(富山県射水市)および、R44型ヘリコプターを利用した射水市上空の大気観測を行った。寒候期における観測では、SO2に対してH2O2が低濃度であり、酸化剤が不足している状況であった。ただし、HCHO濃度が比較的高く、HMSA塩が生成されやすいと考えられる事例もみられた。一方、暖候期の上空では、SO2濃度よりもH2O2濃度が高く、SO2の液相酸化が促進されやすい状況であったと考えられる。2022年5月25日や2023年6月25日に実施した上空観測においてもH2O2濃度が十分に高く、暖候期の中部日本上空ではSO2濃度に対して酸化剤が十分に存在しているものと考えられる

  • 渡辺 幸一, 樋掛 辰真, 赤堀 泰晟, 鍛治 柊兵, 中西 彩水, 牧 ちさと
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 13-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    4月の立山・室堂平において積雪断面観測、イオン成分の分析を行った。また、融雪期の室堂周辺において「赤雪」や「黒雪」など着色した表層雪試料の採取・化学成分の分析を行った。冷蔵保存中の成分の変質についても評価した。さらに、9月を中心に室堂平において霧水の採取・分析を行った。融雪期の室堂周辺で採取した表層雪のイオン成分は通常低濃度であったが「赤雪」試料については、NH4+濃度やK+濃度が比較的高く、リン酸イオンや有機酸類も検出された。ハイマツ林からの栄養塩の溶出が雪氷藻類の生育に影響している可能性が考えられる。また、着色した表層雪試料について、未ろ過状態で冷蔵保存している間にpHが大幅に低下し、SO42-濃度が大きく増加する現象がみられた。近年の室堂平における霧水ではSO42-濃度の低下、pHの上昇傾向がみられており、NO3-に対するnssSO42-の濃度比も低下している。ただし、2021年9月の霧水については、特にNO3-濃度が高かった。中国の大気汚染排出量の変遷の影響も考えられる。

  • 松本 悠太, 熊井 勇喜, 横内 晃希, 松本 潔
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 14-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    雲粒核として作用するなど大気環境における重要な役割が指摘されているエアロゾル中の糖類について、フェノール-硫酸法により全糖を定量し、その濃度や水溶性有機炭素(WSOC)濃度への寄与、発生源について考察した。エアロゾル試料は、甲府市の市街地域(都市域)と富士山北麓のアカマツ林(森林域)で採取した。全糖は粗大粒子よりも微小粒子に多く含まれ、また、森林域よりも都市域で濃度が高かった。その発生源として、粗大粒子では植物片の飛散による一次発生が、微小粒子ではバイオマス燃焼が重要であると考えられる。WSOC濃度に占める全糖濃度の割合はおよそ10~20%であり、粗大粒子で高く、また森林域よりも都市域で高かった。これらの結果より、全糖がWSOCの重要な構成成分であることが明らかになった。

  • 妹尾 翔汰, 野村 大樹, 猪俣 敏, 谷本 浩志, 大森 裕子
    専門分野: G1 大気とその境界面における地球化学
    p. 15-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    【背景・目的】アセトンやアセトアルデヒドなどの含酸素揮発性有機化合物(Oxygenated Volatile Organic Compounds: OVOC)は大気中に遍在し、対流圏オゾンなどの生成に寄与する(Folkins et al., 1998)。海洋はアセトアルデヒドの放出源、アセトンの放出および吸収源であり、海洋表層におけるOVOCの濃度分布やその支配要因の解明が求められている。海洋表層におけるOVOCの主な生成過程は、微生物による代謝活動や溶存態有機物(Dissolved Organic Matter: DOM)から太陽光による光化学反応が知られている。全球のアセトン濃度のモデル計算の結果、高緯度域よりも低緯度域の方が高いことが示唆された(Wang et al. 2020)。この緯度間の差は太陽光の照射強度と照射時間に起因すると考えられるが、これまで照射時間のみの違いによる光照射量に注目した研究が大半であり、照射強度の違いに注目したものはない。そこで、OVOC生成量への光照射の影響を調べるために、照射強度の異なる光を海洋DOMへ照射し、光生成されるOVOCの定性および定量評価を行った。また、深度の異なる海水を比較することでDOMの構成成分の違いによるOVOC生成量の変化を調べた。【試料・方法】本研究では北海道沖(北緯42.5度、2023年2月採水)の5、20、200、600 mの4深度から採取した海水試料を用いた。孔径0.2 µmのメンブレンフィルターでろ過したろ液に、人工光照射装置を用いて光照射を行った 。300 W m-2と600 W m-2の照射強度の光を、それぞれ0、3、6、12時間、0、6、12、24時間照射した。光照射を行った試料のOVOC濃度を飛行時間型プロトン移動反応質量分析計で測定を行い、光照射によるOVOC濃度の変化を調べた。DOMの光学特性を調べるため、吸光光度計と蛍光分光光度計を用いた。【結果・考察】 光照射実験の結果、5 m、600 m深度の300 W m-2光照射と200 mと600 m深度の600 W m-2光照射において照射量とアセトン光生成量が正の相関関係にあった(R2>0.9)。また、照射量に対する光生成量は200 m深度の300 W m-2光照射で6.73×10-6 ppb/(kJ/m2)、600 W m-2光照射で2.50×10-6 ppb/(kJ/m2)、600 m深度の300 W m-2光照射で8.66×10-6 ppb/(kJ/m2)、600 W m-2光照射で4.41×10-6 ppb/(kJ/m2)となり、300 W m-2照射の方が生成量が大きかった。このことから、アセトンの光生成は光強度の影響を受け、光強度が強いと生成が阻害されることが考えられる。

G2 環境地球化学・放射化学
  • 田中 万也, 栗原 雄一, 富田 純平, 山﨑 信哉, 徳永 紘平, 香西 直文
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 16-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    人形峠ウラン鉱山跡地周辺におけるラジウム(Ra)の地球化学的挙動評価を行うために堆積物及び水試料を採取し、Ra-226放射能濃度の分析を行った。堆積物は、主にフェリハイドライトやゲーサイトなどの鉄水酸化物からなることがXRDやXAFS分析などから分かった。堆積物と水試料のRa-226濃度分析結果から見かけのRa固液分配係数を見積もったところ、鉄水酸化物に対して報告されている実験値よりも一桁から二桁程度高い値が得られた。すなわち、鉄水酸化物と表層水の間の単純な吸着平衡では堆積物中のRa-226濃度を説明できないことが分かった。現在のところはっきりとした要因は分からないが、堆積物中に微細な鉱さい片が含まれているか、もしくは下層堆積物間隙水からの拡散によるRa-226供給が可能性として考えられる。

  • 大隅 多加志
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 17-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    1989年に沖縄トラフの海底で発見された天然の二酸化炭素水和物の産状をナチュラルアナログと考えたハイドレート利用CCS技術が多く提案されている。これらはCO2-H2O二成分系において二酸化炭素水和物が安定な温度圧力条件(代表的には4.4MPa以上かつ10℃以下)の堆積物中にまで、人為的に貯留された二酸化炭素が移行することを前提にしている。日本海で存在が確認されている表層型メタンハイドレートについては、海底面へハイドレートが到達している理由が、ハイドレート塊の実効的な浮力が十分大きくなるほどの、メタン気体の供給とハイドレート塊成長メカニズムとが存在することにある。二酸化炭素液体については、これらメカニズムが欠落しているために自己トラップ作用が十全に作用するものと推定される。以上のメカニズム推定を裏付けるべく、液体CO2を堆積物中に圧入する原位置試験を提案する。広く実用に供されている海域での地殻熱流量測定プローブを参考にした。

  • 菊池 早希子, 柏原 輝彦, 栗栖 美菜子, 若木 重行
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 18-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    本研究では、微生物由来の水酸化鉄(Biogenic Fe oxyhydroxides: BIOS)と無機水酸化鉄でヨウ素の吸着能に違いが生まれる要因を明らかにすることを目的とし、XANES法を用いて天然のBIOSに吸着したヨウ素の化学形態およびホスト相を調べた。2カ所の海底熱水域で採取したBIOSのI K-edgeおよびLIII-edge XANESスペクトルは有機ヨウ素と類似し、BIOS中でヨウ素は有機態として存在することが明らかになった。これに対して、無機水酸化鉄へのヨウ化物イオンの吸着は固相と化学結合を持たない外圏錯体であることが報告されている。したがって、有機物の有無と、ヨウ素の吸着様式の違いがBIOSと無機水酸化鉄のヨウ素吸着能の違いを生み出していると考えられる。

  • 斉藤 拓巳, 西 柊作, 佐藤 颯人, 宮川 和也, 別府 光里, 天野 由記
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 19-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    深部地下水中の溶存有機物(DOM)の起源や特性は,表層水環境のDOMと比べて,不明な点が多い.本研究では,励起発光マトリクス (EEM)と多変量解析を用いて,三次元的に広がる深部地下環境において,異なるDOM成分の寄与やそれらと金属イオンとの結合性が,広範な生物地球化学パラメータとどの様に関係するか調べることを目的とした.

  • 折戸 達紀, 三步一 孝, 伊藤 昌稚, 中川 書子, 角皆 潤
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 20-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    溶存無機態リン酸(以下PO4と表記)は、海洋や湖沼といった水圏環境下において光合成を律速する栄養塩として重要な物質であり、PO4の濃集や枯渇などは、生態系の激変に直結する。そのため、各水圏環境におけるPO4の起源や循環、その経時変化などを理解することは、地球環境変化の生態系影響などを評価する上で重要である。水圏におけるPO4の起源や循環を解明するトレーサーとして2000年頃からδ18Oが用いられてきた。しかしながら、異なるδ18O値を持つ供給源が3種以上存在する場合は、δ18O値だけでは区別できない。また同じ供給源でもδ18O値の分散は大きいことが多かった。これに対して近年、PO4中の三酸素(16O,17O,18O)の相対比であるΔ’17O (=ln(δ17O+1) - 0.528×ln(δ18O+1)) 値を追加で測定して、これも指標として併用する試みが始まっており、陸水では成果を挙げている (Sambuichi et al., 2023)。しかし、PO4のΔ’17O値をトレーサーとして用いるには20×10-6以内の超高精度のΔ’17O定量が必要であり、これを実現するには150 µmol以上のPO4が必要である。このためPO4濃度が5 µMかそれ以下の海洋環境下では、未だにΔ’17O値の実測データが存在しない。そこで本研究は、海水中のPO4のΔ’17O値を定量することに世界で初めて挑戦した。

  • 益田 晴恵, 岡崎 香生里
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 21-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    大阪平野東〜南部の山地周辺で採取した土壌の水銀濃度を分析した。209試料の水銀濃度の平均値は135 µg/kg、中央値は86 µg/kgで、200 µg/kgを超えるものが25試料あった。水銀の起源は調査地域東南部では鉱床形成と関係するかもしれない。一方、周辺よりも高濃度の水銀が検出されることがしばしばあった活断層直上または近傍の土壌には、地下深部に由来する気体状水銀の寄与があるかもしれない。

  • 大浦 一貴, 中澤 暦, 永淵 修, 手塚 賢至, 篠塚 賢一
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 22-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    屋久島の樹木の年輪コア中水銀濃度の2000年以降の上昇の原因を明らかにするため、大気中水銀 (Hg (0)) 濃度の検証を行った。検証には、2013年1月から6月の屋久島の西部と中央山岳地域の4地点 (標高217 m、410 m、800 m、1800 m) で観測した Hg (0) のデータを用いた。217 m、800 mで観測したHg (0) 濃度の平均±標準偏差 ( ng / m3) は、それぞれ1.12 ± 0.53 ng / m3 ( n = 39 ) と1.22 ± 0.52 ng / m3 ( n = 36 ) であり、平均値の差の検定 (Welchのt検定) を行った結果、有意な差はなかった。217 mで高濃度のHg (0) (1.96 ng / m3、1.97 ng / m3、2.32 ng / m3) が観測された時は、空気塊の移入経路に傾向は見られなかった。一方で800 mおよび1800 mでの高濃度Hg (0) (1.89 ng / m3、1.97 ng / m3、2.99 ng /m3、5.04 ng / m3) 観測時は、東アジア大陸由来の空気塊の移入経路が優先していた。この大陸由来のHg (0) が屋久島の樹木に取り込まれた結果、2000年以降の年輪コア中水銀濃度の上昇に反映されている可能性が示唆された。

  • 平山 耕太郎, 砂村 倫成, 石水 浩喜, 大音 周平, 板井 啓明
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 23-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    水圏のバクテリア種組成解析は、次世代シーケンサーの普及により飛躍的に増加した。その結果、群集組成データは物理化学データと近い時空間分解能で得られるようになったが、両者の関係解析は、水温、pH、DO、塩分、主要栄養塩などに限定された事例が多い。本研究では、夏季に成層構造が形成される国内9湖沼の季節別サンプリングから取得した16S rRNAに基づき、バクテリア群集の多様性を評価し、生物必須微量元素を含む物理化学データとの関係性を統計解析した。

  • 山口 保彦, 霜鳥 孝一, 中村 光穂, 早川 和秀
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 24-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    水圏環境中の溶存有機物(DOM)の特性・動態については、分子サイズと生分解性が関連する傾向がこれまで明らかになっているが、両者の詳細な対応関係や、関係性のメカニズムについては、依然として謎が多い。本研究では、琵琶湖の様々な地点・水深・季節における天然湖水DOM(合計17試料)について、長期生分解実験(400日以上)を実施した。時系列試料のサイズ排除クロマトグラフ-全有機炭素計(SEC-TOC)分析から、分子サイズ別にDOM生分解速度を推定した。高分子および低分子の溶存有機炭素(DOC)の分解速度定数を、SEC-TOC測定値から経験的に予測できるモデル式を作成した。さらに、湖水中の分子サイズ別DOC濃度と分解速度定数予測値の月々変動から、分子サイズ別にDOCの生産フラックスと総分解フラックス(=生産フラックス+正味分解フラックス)を計算する手法を考案した。

  • 佐藤 佑磨, 石水 浩喜, 高橋 嘉夫, 伊地知 雄太, 板井 啓明
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 25-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    淡水生堆積物のMn/Feは、古環境の酸化還元指標としてしばしば用いられる。産総研が発行している地球化学図では、国内3000ヶ所以上の河川堆積物のデータが用いられており、Mn/Feの平均値は、48 μmol/molである。これと比較して、野尻湖と琵琶湖の湖心では例外的に高いMn/Fe (>200 μmol/mol) が認められた。この濃集の原因として、欧州のグループが提唱した“Geochemical focusing”というプロセスが挙げられるが、現状のモデルは定性的であり、focusingの発生条件は不明な点が多い。本研究では、長野県北部に位置する野尻湖と木崎湖を比較し、Geochemical focusingの発生条件を制約することを目的に、(1) 湖水・堆積物調査、(2) マイクロビーム蛍光X線および電子顕微鏡分析、(3) 生元素の動態シミュレーションを実施した。

  • 板井 啓明, 長谷川 菜々子, 佐藤 佑磨, 大音 周平, 平山 耕太郎, 石水 浩喜, 砂村 倫成
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 26-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    恒常性 (ホメオスタシス) とは、「生物体の体内諸器官が、外部環境の変化や主体的条件の変化に応じて、統一的・合目的的に体内環境をある一定範囲に保っている状態、および機能」として定義され、生体必須元素がある一定のレベルに保たれる現象も含まれる。演者は、陸水の停滞場である湖沼が、環境中で類似の役割を担っていると考え、湖沼の有する微量元素恒常性維持機能を評価することを目的にデータを取得してきた。講演では、(1) 主成分元素の先行研究との比較 (小林, 1961), (2) 主成分分析による河川水質の分類、(3) 溶存微量元素濃度と産総研公開の河川堆積物データとの関係解析、(4) 溶存微量元素濃度/河川堆積物濃度で評価した”Local solubility trend”の国外河川との比較、(5) 火成岩認証物質 (産総研公開, n=13)、河川堆積物試料 (産総研公開, n=3024)、河川試料 (n=30)、湖沼試料 (n=200)で算出された微量元素濃度の相対標準偏差比較を示し、各リザーバーの有する各元素の恒常性について考察を示す。

  • 田柳 紗英, 長谷川 菜々子, 石水 浩喜, 佐藤 佑磨, 板井 啓明
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 27-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    停滞生水域は、生物性ケイ酸 (BSi) の生成によりケイ素 (Si) のシンクとして働くため、海洋へのSiフラックスに及ぼす湖沼の役割が注目されている (e.g., Frings et al., 2014; Maavara et al., 2014)。しかし国内では琵琶湖や霞ヶ浦などの重点調査湖沼を除くと、Siの動態が系統的に調べられた湖沼は少ない。本研究では、夏期に成層が形成される複数の国内天然湖沼について、 (1) 湖水中鉛直分布と季節変化の解析、(2) 堆積物中生物性ケイ酸 (BSi) の定量、(3) Si安定同位体比の測定を実施し、Si動態を解析した。

  • 石水 浩喜, 古荘 皓基, 丸岡 照幸, 高橋 嘉夫, 板井 啓明
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 28-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    湖沼の生物生産性は一般にリン制限と考えられており、湖沼中のリン濃度の規制要因の理解は、生物地球化学物質循環の基本的課題である。湖沼を閉鎖系と捉えた場合、湖水中のリン濃度は湖水-堆積物間の吸着平衡で決定されるはずである。実際の湖沼は滞留時間が数ヶ月から数年の開放系であるが、定常状態におけるリン濃度と、吸着平衡から予測されるトレンドとの対応解析は、リン循環機構の理解において重要である。本研究では、国内14湖沼から採取した湖底表層堆積物に対し、(1) リン酸の吸着等温線の作成と固液分配係数の決定、(2) シュウ酸可抽出態リンと鉄の定量、 (3) 湖水中平均P濃度の計測、を実施し、湖沼のリン濃度の規制要因について考察した。

  • 平山 耕太郎, 佐藤 佑磨, 大音 周平, 砂村 倫成, 板井 啓明
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 29-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    閉鎖性水域では、水温や保存性化学成分は水平方向に高い均質性を示すことが知られているが、反応性の高い化学成分は不均質になることが予想される。生物必須元素が不均質分布を示す場合、それに対応して微生物群集が不均質性を示す可能性がある。水圏生物の群集組成解析は、次世代シーケンサーの普及により飛躍的に増加し、群集組成は物理化学データと近い時空間分解能で解析できるようになった。本研究では、野尻湖 (長軸距離 : 2900 m) における鉛直水質の水平方向変化を季節別に計測すると共に、細菌類と真核生物類の群集組成について環境DNAを指標に解析することで、中型湖沼における生物地球化学的パラメータの水平均質性について包括的に解析した。

  • 長谷川 菜々子, 高橋 嘉夫, 板井 啓明
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 30-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    海洋生態系の鉄循環において、低次栄養段階生物の役割は重要である。動物プランクトンについては、細胞内の化学種と外殻に吸着・付着した化学種を区別する必要がある。細胞外微量金属の洗浄法については、X線を用いた非破壊個体別分析法を応用すれば、(1) 同一個体での除去効率比較、(2) 局所分布と化学形態の変化解析、が可能である。本研究では、放射光X線マイクロビームを用いた蛍光X線分析 (μXRF)、X線吸収端近傍構造分析 (μXANES) を用いて、生態必須微量金属 (Fe, Cu, Zn) の洗浄効率と化学形態について評価した。洗浄前後の個体で元素分布を比較した結果、Fe, Cuでは分布に大きな変化は見られなかった。一方、Znは頭部の濃集領域以外ではバックグラウンドと同等のカウント数まで減衰した。濃集領域におけるFe K端μ-XANESは、洗浄前後で大きな違いはなく、非晶質鉄 (III) 水酸化物に近いスペクトルが得られた。これは、脊椎動物において2価のFe (ヘム鉄) が多いことと対照的である。本研究の結果は、ヘム鉄に対して大過剰のフェリチンを保有している可能性を示唆しており、低次生態系生物の鉄獲得戦略や、動物プランクトン捕食者への吸収効率を議論する上で重要な結果と思われる。

  • 米原 大雅, 和田 茂樹, 大森 裕子, 板井 啓明
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 31-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    溶存有機炭素(DOC)が湖水中の水銀濃度と相関することは世界各地の湖沼で観測されている (Lavoie et al., 2019)。本研究では、湖沼の生物生産性に着目し、関東平野に分布する富栄養型の浅層湖沼群と、貧栄養から富栄養型の湖沼が分布する富士湖沼群を対象に、総水銀と溶存態水銀を定量するとともに、粒子状有機物 (POM)、粒子状有機炭素 (POC)・窒素 (PON)、溶存有機炭素 (DOC)、蛍光性溶存有機炭素 (FDOM) を定量し、水銀濃度の支配要因を解析した。

  • 中澤 暦, 永淵 修, 川上 智規, 大浦 一貴, Isrun Nur, Basir―Cyio Muhanmad, Napitupulu M ...
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 32-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    水銀はごく微量でも生物やヒトへ重篤な影響が現れる。本研究ではパッシブサンプラー単体で大気中水銀濃度を換算可能とするため、沈着速度 (Sampling rate (SR) ) を試算した。試算のために水銀の室内暴露試験を行い、さらにインドネシアのASGM地域の一つで2023年3月に野外試験を行った。パッシブサンプラーは30 nm 厚の金を蒸着させたϕ15 mmとϕ25 mmの石英繊維ろ紙 (水銀パッシブろ紙) をテフロン製の容器に格納し、環境大気中に一定期間曝露させる仕組みである。曝露時間は6~24 hrとした。SR値を試算すると今回の暴露時間では概ね 1000 ng/m3以上でSR値の変動が小さくなった。SR値の平均値を算出するとϕ15 mmは0.015±0.004 m3/dayでϕ25 mm は0.026±0.009m3/dayであった(各n= 18)。これを用いてASGM地域で野外試験を行うと、大気中水銀濃度は 11.1~496 ng/m3 の範囲で変動した。

  • 三好 陽子, 月村 勝宏, 金子 信行, 鈴木 正哉
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 33-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    会議録・要旨集 フリー

    スメクタイトは粘土鉱物の一種であり、土質材料として様々な用途に使われている。本研究は、土質材料中のスメクタイト含有量を評価することを最終目的として、小角X線散乱測定とメチレンブルー吸着量測定を実施した。小角X線散乱測定では、2θ=0.1 - 9° に非晶質ナノ粒子の散乱が、2θ=5 - 7° にスメクタイトの最強線ピークが現れた。Tsukimura and Suzuki (2020)に従って規格化散乱強度に変換し、ナノ粒子の散乱を簡単な関数で近似してナノ粒子散乱とスメクタイトピークを分離した。メチレンブルー吸着量はJIS Z 2451 (2019)の比色法に従って測定した。日本粘土学会参考粘土試料JCSS-3101、JCSS-3101b、JCSS-3102などの試料のスメクタイトピークの積分強度とメチレンブルー吸着量は原点を通る直線上に相関した。

  • 栗林 千佳, 宮川 和也, 伊藤 茜, 谷水 雅治
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 34-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    会議録・要旨集 フリー

    234U/238U同位体比は、地下水流動を把握するための有用なトレーサーとして研究がすすめられている。本研究では、低流動性かつ還元的な北海道幌延地域の深層地下水においてUの放射能比を測定することで、地下水中に溶存するUの起源について考察した。分析の結果、地下水中のUは放射非平衡状態であり、放射能比とU濃度の逆数との間に正の相関関係が認められた。この直線関係から二成分の地下水の混合が示唆され、古海水およびオパールAからオパールCTへの相変化の際の脱水反応により生じた水に由来するAR 1かつ高濃度にUが含まれる流体と、UO2の沈殿によりARが上昇しU濃度が低下した天水起源の流体が端成分として考えられた。

  • 宮川 和也, 柏谷 公希, 小村 悠人, 中田 弘太郎
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 35-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    会議録・要旨集 フリー

    厚い海成堆積層の深部には、地層堆積時に取り込まれた海水が埋没続成過程で変質した地下水(化石海水)が存在することがあり、このような場は地層の隆起を経ても天水浸透の影響を受けず、地下水流動が緩慢であると判断される。続成過程ではケイ酸塩からの脱水などにより間隙水の塩濃度の低下などの変化が生じる。しかしながら、鉱物からの脱水反応のみでは水質変化を定量的に説明できず、水質進化の過程が明らかではない。本研究では、埋没過程におけるケイ酸塩からの脱水反応および圧密による間隙水の上方移動を考慮した解析モデルを構築し、埋没過程で生じ得る間隙水の水質進化について検討した。その結果、オパールAから石英に至る脱水反応及び粘土鉱物からの脱水影響を強く受けた水質は、ボーリング調査による観測結果と近い値を示した。本解析結果は、地層の埋没続成過程において形成された化石海水が地層の隆起以降現在まで保持されている可能性を示唆するものであり、化石海水が存在する場の地下水流動が緩慢であることを支持するものである。

  • 西村 大樹, 浦井 暖史, 松井 洋平, 宮原 裕一, 高橋 嘉夫, 高野 淑識
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 36-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    陸上生態系に次ぐバイオマスを持つ生命圏として、地殻中微生物生態系が近年注目されている。しかし、地下での代謝活動が駆動する地球化学的諸過程については未知な面が多い。我々は、メタン生成アーキアによる地下深部での活発なメタン生成能を有する諏訪盆地に着目した。糸魚川-静岡構造線と中央構造線の交点に位置する諏訪盆地は、深層基盤岩とその上部の有機質な堆積物から構成される。また、プレート境界上という特徴から多数の活断層や温泉が分布し、盆地内の水理地質構造は不均一である。この様な背景から、諏訪盆地の深部帯水層には多様な生理機能や群集構造を有する地下生命圏が存在すると考えられる。そこで本研究では、7地点の温泉(最深度:1000m)と3地点の観測井戸由来の地下水試料(同:100m)を対象に、微生物群集構造解析と原核生物の膜脂質分析によるバイオマス比の定量評価を目的とした。

  • 長岡 壮太, 福本 学, 鈴木 正敏, 木野 康志, 岡部 宣章, 大野 剛, 深海 雄介
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 37-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    会議録・要旨集 フリー

    福島原発事故により放出された放射性核種は、2023年現在でも環境中に残存している。本研究では、陸生態系内での放射性核種の動態に関する考察の一例として、福島県で捕獲されたニホンザル、および土壌について129I濃度、および137Cs濃度の測定を行った。土壌は深度別に測定を行い、土壌表層における放射性核種の半減期と、サル中放射性核種の生態学的半減期との関係性等を検討した。その結果、ニホンザル中の129I/127I比は捕獲日が新しくなるにつれ減少しており、その速度は表層土壌における129Iの減少速度と近いことが明らかになった。またサル各個体の129I/127I比と捕獲地点から最も近い地点における土壌試料の129I/127I比とを対応させると、両者は正の相関を持つことも明らかになった。総じて、ニホンザル中の129I量は表層土壌における129Iの減衰や汚染程度を反映していることが示唆された。

  • 諌本 和士, 伊藤 茜, 森本 貴裕, 谷水 雅治
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 38-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    会議録・要旨集 フリー

    海洋堆積物に記録されたCr同位体比(53Cr/52Cr)は過去の海洋や大気の酸化還元状態を示す可能性がある。一方, 海洋中のCrの供給源である河川と海洋を繋ぐ汽水域ではCrの挙動や同位体比の変動に関する知見が不足している。本研究では汽水域の河床堆積物間隙水中でのCrの挙動を全CrおよびCr化学種の定量により調査した。分析の結果, 還元的条件ではCr(Ⅵ)がCr(Ⅲ)に還元されて沈殿するが, 有機物に富む堆積物では還元されたCr(Ⅲ)が有機錯体として溶存している可能性が示唆された。また, 汽水域のような高Cl-共存下においてもCr化学種の同時定量を行えるHPLC-ICP-MS法の開発を行った。

  • 永淵 修
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 39-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    マイクロプラスチック(MPs)は,都市域のみならず,エベレスト山の雪やマリアナ海溝の堆積物,北極圏の雪など地球上のあらゆるところで発見されている.しかし,その輸送経路については未知の部分が多い.ここでは,北および西風が卓越する冬季に人為汚染のない自由対流圏にある高山で樹氷と積雪を採取し,MPs の有無についてμFTIR とμラマン分光を用いて検証した.その結果,積雪と樹氷中にMPs の存在が明らかになった. MPsはその浮力と残留性から長距離輸送される。しかし、MPsのインベントリの推定はない。そこで大気中での寿命が長いHg(0)をトレーサーとして九重山系に到達するHg(0)の起源を推定した。水銀インベントリはAMAP(2010)を使用した。その結果、樹氷が着氷した時に同時に高濃度の水銀が中国大陸から到達していることが分かった。このことからMPsも中国大陸起源であることが示唆された。

  • 髙橋 誠拓, 栗林 千佳, 相原 泰斗, 細野 高啓, 谷水 雅治
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 40-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    会議録・要旨集 フリー

    地下水中に溶存する硝酸性窒素や有害元素の濃度上昇の原因を特定するためには、地下水の起源を正確に把握する必要があり、元素の同位体比がトレーサーとして利用されている。特にリチウム同位体比は、海水や熱水を起源とする地下水の流入の有無の推定に有用である。本研究では、熊本地域の地下水について微量元素濃度および7Li/6Li比を分析し、その起源を把握することを試みた。ICP-MSを用いて分析を行った結果、熊本市北部に位置する金峰山の東部で、先行研究で得られた熊本地域地下水の代表的なδ7Li値と整合的な値をとった。また、金峰山の北側から東側にかけて高Li濃度かつ低δ7Li値をとる地点が複数存在した。これは火山性熱水が浅層地下水に流入している可能性がある。一方、金峰山の南側から有明海にかけて高Cl/Li濃度比かつ高δ7Li値をとる地下水が存在しており、地下水に化石海水が混入している可能性が考えられる。

  • 片岡 賢太郎, 南 雅代, 池盛 文数, 淺原 良浩
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 41-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    会議録・要旨集 フリー

    炭素成分は大気エアロゾルの主要成分の一つであり、その発生源を推定する有力なツールの一つとして、放射性炭素(14C)がある。大気エアロゾルの14C濃度から、炭素成分における化石燃料起源炭素(FC)と現生生物起源炭素(non-FC)の寄与率を推定することができる。一方、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)などの微量金属元素は、化石燃料などの燃焼過程で排出された大気エアロゾルに含まれるため、大気エアロゾル中の化石燃料起源物質の指標として有効である。本研究においては、2019年から2020年の名古屋市の大気エアロゾル試料について、14C濃度、δ13C、微量金属元素濃度を組み合わせて分析することで、同期間の大気中での炭素成分、金属元素の挙動や季節変動を詳細に分析し、コロナ禍における産業活動等の変化による大気エアロゾル中の化石燃料起源物質の影響の変化を調べることを目的とした。本発表では、その結果について紹介する。

  • 村上 拓馬, 玉村 修司, 上野 晃生, 猪股 英紀, 青山 秀夫, 山口 眞司, 富山 眞吾, 五十嵐 敏文
    専門分野: G2 環境地球化学・放射化学
    p. 42-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
    会議録・要旨集 フリー

    幌延地圏環境研究所では、これまで北海道天北地域の未利用資源に着目し、調査・研究を実施してきた。その中で、宗谷夾炭層(第三紀中期中新世に堆積した陸成層)中の地下水にIを高濃度(40から105 mg L-1)に濃集することを発見した。この濃度は国内のヨウ素鉱床と同程度であることから、将来の有用な資源となる可能性がある。本発表では、地下水中のIと同じハロゲン元素である臭素(Br)に着目し、Iの起源物質とその濃集過程について報告する。

G3 海洋の地球化学
  • 橋濱 史典, 安田 一郎, 隈部 あき, 佐藤 光秀, 笹岡 洋志, 飯田 洋介, 塩崎 拓平, 齊藤 宏明, 神田 穣太, 古谷 研, B ...
    専門分野: G3 海洋の地球化学
    p. 43-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    西部北太平洋亜熱帯域において有光層内の純群集生産を支える栄養塩供給プロセスを明らかにした。従来法では純群集生産に必要な下層から表層への栄養塩供給が把握できなかったが、高感度分析法により表層まで届くナノモルレベルの窒素・リン供給を捉えることに成功した。大気・下層からの窒素・リン供給と窒素固定のデータを用いて純群集生産に必要な窒素・リン供給量を計算したところ、窒素については生物要求を満たす供給があったが、リンについては生物要求の1割程度の供給しかなかった。亜熱帯域ではリンは窒素に比べて再生されやすいため、ナノモルレベルのリン供給であっても活発な純群集生産を維持できることが示唆された。

  • 吉川 知里, 重光 雅仁, 山本 彬友, 岡 顕, 大河内 直彦
    専門分野: G3 海洋の地球化学
    p. 44-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    近年、魚類の蓄積性組織の時系列窒素同位体比と窒素同位体比地図から、回遊経路の復元が行われている。先行研究で用いられた窒素同位体比地図は、時空間的にまばらな海洋観測の実測値から作成されていた。このため、地球化学的手法であるアイソロギングによる経路推定の精度は、不正確な地図がボトルネックとなって、バイオロギングに代表される水産学的手法に遠く及んでいないのが現状である。本研究では、海洋窒素同位体モデルを用いて一次生産者(植物プランクトン)の窒素同位体比地図を作成した。モデルによる植物プランクトンの年平均窒素同位体比は、窒素固定が起こっている亜熱帯海域(0.6‰)と鉄律速のため植物プランクトンの硝酸利用効率が低い亜寒帯海域(2.2‰)で低い値を示し、硝酸利用効率が高い黒潮親潮移行域(4.0‰)と不完全な硝化起こっているベーリング海峡付近(6.7‰)で高い値を示した。

  • 清水 幸大, 深澤 徹, 小畑 元, 南 秀樹, 中口 譲, 則末 和宏
    専門分野: G3 海洋の地球化学
    p. 45-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    微量元素は水に溶存している溶存態と粒子状物質に吸着している粒子態の2態として存在している。粒子状物質は、溶存態微量元素を吸着し粒子態に変換し、沈降を通して微量元素を鉛直下方向へ輸送している。沈降過程においても、粒子への溶存態の吸着と粒子からの脱着が起こっている。このため微量元素の循環像を真に理解するには、溶存態のみならず、粒子態の研究も重要となる。本研究では研究船白鳳丸のKH-22-7次航海およびKH-23-2次航海において、採水しろ過を行うことで得られた西部北太平洋(東経155度線)のサンプルを分析した。この分析による懸濁粒子態微量元素(Al, P, Ti, Mn, Fe, Co, Cu, Zn, Mo, Cd, Pb, Bi)の南北縦断面分布について報告する。

  • 佐藤 航, 鄭 臨潔, 野坂 裕一, 入野 智久, 西岡 純, 南 秀樹, 宗林 由樹
    専門分野: G3 海洋の地球化学
    p. 46-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    海洋における溶存アルミニウムの鉛直分布は,一般的にスキャベンジング型を有し,表層において高濃度で下層にいくにつれて減少する傾向を示す。平均滞留時間も数十年と極めて短いのが特徴である。ただし,海底境界層付近や大陸斜面などでは濃度が上昇する傾向を示し,海底からの粒子の巻き上がりなどが供給減と考えられている。この海底付近での底層水中の濃度変化と堆積物中のアルミニウムの分布および鉱物組成の関係について,主に太平洋の横断および縦断観測によって得られら結果から考察する。

  • 榊枝 優真, 中島 朗久, 永井 歩夢, 細川 浩由, 横山 明彦, 羽場 宏光, 南部 明弘, 重河 優大, 鄭 建, 瀬古 典明, 保科 ...
    専門分野: G3 海洋の地球化学
    p. 47-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    海水循環トレーサーへの利用が期待されている237Npは、海水中の濃度が極微量であること、測定のための化学分離が煩雑であること、更には「スパイク」の欠如により、その濃度定量すら困難な状況であった。本研究では、237Np測定のためのスパイクの製造および海水からの簡便なNp濃集法を検討し、海水中の237Npの質量分析法について包括的に提案することで新たな海水循環トレーサーとしての確立を試みる。

  • 山田 正俊, 鄭 建
    専門分野: G3 海洋の地球化学
    p. 48-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    本研究は、東シナ海大陸棚縁辺域において、セジメントトラップ実験により得られた沈降粒子および表層堆積物中の241Am、239+240Pu、210Pb濃度と240Pu/239Pu同位体比を測定し、大陸棚縁辺域における241Amのスキャベンジング過程を明らかにすることを目的とした。結果として、セジメントトラップ係留深度が増すにつれて沈降粒子中の241Am濃度が増加した。この増加傾向は210Pb濃度の増加とよく一致した。この結果は、水深が深くなるにつれて241Amと210Pbが沈降粒子に蓄積していることを示している。この粒子による除去は、ネフェロイド層において繰り返される再懸濁と陸棚斜面を下方輸送される微細粒径の粘土粒子などに241Amと210Pbが吸着して起こっていると考えられる。

  • 大井 麻由, 下島 公紀, 尾張 聡子
    専門分野: G3 海洋の地球化学
    p. 49-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    これまでヨウ素の化学形態別分析は、海水を陸上の研究施設に輸送した後に行われてきた。しかし、ヨウ素の化学形態はその場の酸化還元環境の変化に敏感に変化しやすいため、船上分析により正確なヨウ素の挙動を明らかにすることができる。したがって本研究では、試薬や試料処理にかかる時間・空間が限られる船上環境における、迅速かつ正確な化学形態別分析法を確立した。これまで海底堆積物の分析に用いられていた比色法を、海水の低いヨウ素濃度での分析に適用した。さらにヨウ素の化学形態を揃えるための臭素水を添加する場合としない場合に分けることにより、処理工程や試薬を増やすことなく化学形態別に分析できるようになった。MR22-03(2022/04/16から05/20)とMR23-05(2023/07/27から08/27)において、海洋地球研究船「みらい」によって採取した海水を、確立した分析法を適用し、化学形態別分析を行った。

  • 山口 三亜佳, 下島 公紀
    専門分野: G3 海洋の地球化学
    p. 50-
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/01
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    今日における海洋のpH測定技術は、主に海洋酸性化のモニタリングや海底下二酸化炭素貯留(Carbon Capture and Storage: CCS)の環境影響評価などに利用され、注目されている。これらの調査には、長期間・広範囲の連続したpHデータが必要であり、適したpH測定技術として「現場型pH/pCO2センサ」が挙げられる。本研究では、外洋における鉛直連続計測に加え、長崎県橘湾や千葉県館山湾の沿岸における連続多点観測、JAMSTEC むつ研究所や北海道の紋別市、亜寒帯の観測定点(K2)における数か月から1年間の長期係留を行った。さらに、Wi-Fiを使ったセンサの遠隔操作による長期観測を行った。それぞれの観測で得られた結果を踏まえて、観測環境に合わせたデータの補正方法や調査目的に応じた観測方法を検討する。

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