地球統計学で用いられるヴァリオグラムを得るには,全データから取り出されるすべての対についてその値の差の二乗を計算しなければならないので,計算時間はデータ数の2乗に比例して長くなる.そこで,通常の統計処理と同様にランダムに抽出した一部のデータを用いてヴァリオグラを計算することが考えられる(一部データ部分計算).ここでは,それ以外に,データは全部使うが対の相手は先頭部分しか使わない先頭優先部分計算,各データとも近隣のデータとの対しか使わない近隣順部分計算,ほぼ同数のデータからなるグループに分けて,各グループで得られたヴァリオグラムを重ね合わせて全体のヴァリオグラムとするグループ化部分計算法も試みた.部分計算の評価に利用したデータは,小笠原母島付近の8891点の標高に当てはめた平面からの残差である.各部分計算の精度は,部分計算と完全計算で得られたヴァリオグラム間の相関係数で行なった.その結果,一部データ部分計算と先頭優先部分計算の精度は低く,近隣順部分計算とグループ化部分計算の精度は高かった.今回の例では,対の数が完全計算の約1/100である近隣順部分計算とグループ化部分計算の場合,完全計算で得られたヴァリオグラムとの相関係数は0.99以上であった.近隣順部分計算を途中で打切る場合,現段階と1段前の直交ヴァリオグラムの相関係数が0.9s(sは小数点以下に並ぶ9の数)ならば,現段階と完全計算の直交ヴァリオグラムの間の相関係数は0.9s/2(9の数がsの1/2程度)が保障される.
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