堆積シーケンスの時空間の変化を解釈するために, 堆積相間の垂直変位が, マルコフ過程として取り扱われてきた.乱雑さの程度を表すエントロピーは, 等確率状態からのずれの量を表す
D1成分と, 独立状態からのずれの量を表す
D2成分とに分けられる (Gatlin, 1972) ことを応用し, 房総半島の上総層群に見られるマルコフ過程を示す堆積相の推移確率行列を用いてエントロピー解析を行った.
次に, 上総層群における乱泥流堆積物中のブーマ・シークエンスの区分a~eを要素とする推移確率行列を用いて, クラスター解析を行った.各堆積環境におけるエントロピー解析とクラスタ解析の結果を総合すると, Katsura (1984) による堆積環境モデルの妥当性は明らかである.特に, 網状チャネルによる“上部海底扇状地”と分流チャネルによる“中部~下部海底扇状地”との堆積様式の差異が明白になり, “斜面”や“堆積盆底”での底層流による浸食や再堆積 (伊藤・青木, 1995) による影響が示唆される.
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