情報地質
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8 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • ―古生物の生存期間と年代区分―
    塩野 清治, 山口 久美子
    1997 年 8 巻 4 号 p. 227-237
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2011/04/19
    ジャーナル フリー
    全順序集合 (A, ≦) の区間 [a, b] = {x|axb} やその前後関係:
    [a, b] ≦ [a′, b′] ⇔aa′かつb≦b′
    [a, b] ≪ [a′, b′] ⇔ba′または[a, b] =[a′, b′]
    を基礎にして生層序学的諸概念を定式表現するための数学的枠組みを提案する.
    一定期間Tに生存する古生物の個体の集合Σ0の分割をS0とする.σ∈S0を構成する個体の生存期間の和集合τ (σ) がすべてTの区間となるとき, S0の元を個体類とよび, τ (σ) を個体類σの生存期間とよぶ.このような枠組みを設定するといくつかの基礎概念が容易に数学表現できる.たとえば, 時刻tに生存する個体類の組み合わせはs (t) = {α|t∈τ (α) } で表現される.T上の関係~を
    p~qs (p) =s (q)
    で定義すると, ~に関する同値類は同じ組み合わせの個体類が同時に生存する時間帯を表す.また, 個体類は
    ακβ⇔τ (α) ≦τ (β)
    で定義される関係κによって順序づけることができる.
    最後にS0のなかから3つの条件を満たす個体類を選択した場合を例にとって, 個体類の生存期間による年代区分に関係する諸性質を詳細に議論し, 上記の数学的枠組みが生層序学的方法の定式化に有効であることを示した.
  • 中野 司, 中村 光一, 染谷 利明, 大塚 浩士
    1997 年 8 巻 4 号 p. 239-255
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    X線CT (Computerized Tomography) 画像を用いた岩石内部構造の観察や解析の基礎となる画像再構成の原理と手法, および画素値として得られたCT値 (物体によるX線の線吸収係数) の密度検定における問題点を実例に即して説明・検討する.多種の岩石サンプルを撮像した3次元CT画像を高い透過能のX線を用いた産業用CTスキャナで得たX線強度データからFBP法 (フィルタ補正逆投影法) によって再構成した.この画像の空間解像度とサイズはそれぞれ0.2×0.2×1mmおよび1024×1024×320画素で, その各画素には再構成計算で得たCT値を16 bitsにデジタイズして格納した.密度が既知の20個以上の標準サンプルを画像処理によって識別し, それぞれに対して求めた平均CT値から画像上でのCT値と物体密度の関係式を決定した.その際, サンプルの縁辺領域に見られる低いCT値がサンプル全体の平均CT値に与える影響について考察し, それを補正 (edge補正) するための新しい手法を適用した.ここで求めた関係式によって画像上のCT値から物体密度を求めると0.3g/cm3程度の決定精度を持つことがわかった.
  • 塩野 清治
    1997 年 8 巻 4 号 p. 257-267
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    地質情報の有効なコンピュータ処理法を開発するには, 多様な地質学的データの解析法を体系づける基礎理論を確立する必要がある.本論文では地質学の基本的な法則である「初性的水平性の原理」, 「初性的側方連続性の原理」, 「地層累重の法則」および「化石による地層同定の法則」を組みあわせた生層序学の理論体系を構築するための予備的研究として, カードの集合B, 数字の集合Z, 記号の集合F, 集合間の関係およびいくつかの公理からなる数学モデルを提案する.B上の関係の性質として, 塩野・弘原海 (1992) で述べた地層累重の法則に関連する公理系と形式的に同じ3つの仮定A1, A2, A3に加えて, 「化石による地層同定の法則」を単純化した仮定A4を公理として導入する.
    A1, A2, A3の仮定から塩野・弘原海 (1992) と同様の結果が導かれるので, 塩野・弘原海 (1992) の公理と同値であることを確認した.また, A4にもとついて, 同じ属性をもつカード群に関するいくつかの推論規則を導いた.それらは生層序学における基本的手続きを数学表現したものであると解釈できる.さらに, B上でA1~A4が成り立つとき, 同じ記号が書かれているカード群の集合上でもA1~A3に相当する性質が成り立つことという重要な性質がえられた.
    本論文で対象とした数学モデルは比較的単純なものであるが, 化石を含む地層の基本的特徴をよく反映しており, 生層序学の数学的基礎を体系づけるための重要な手がかりを与える.
  • 辜 彬, 小池 克明, 大見 美智人
    1997 年 8 巻 4 号 p. 269-279
    発行日: 1997/12/25
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    2次元あるいは3次元空間内に分布し, 位置が不規則なデータの補間に多層ニューラルネットワークの適用を試みた。ネットワークの学習においてデータの空間的分布則を表すセミバリオグラムを考慮し, ネットワークからの出力値とデータとの差, およびそれらのセミバリオグラムの差を小さくすることを学習の基準とした。この手法をNeural Krigingと称し, 領域からランダムに選んだデータに基づいて分布モデルを復元する問題を設定した。等方性および直交異方性を仮定したセミバリオグラムに基づく分布モデルにNeural Krigingを適用したところ, セミバリオグラムを学習に加えていないニューラルネットワークやOrdinary Krigingよりも分布モデルに近い補間結果が得られた。
    さらに, Neural Krigingを豊肥地区における熱水の温度とpHの分布解析に適用し, それらの分布傾向は当地区での主要な断裂系の方向と調和していることを明らかにした。
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