トルコの基盤地質は, アラビア・プレートとユーラシア・プレートにはさまれた新・旧テチス海の発生, 分化, 閉塞によって生じた付加体, 陸棚礁性堆積物およびオブダクションの産物であるオフィオライトが合体したものからなり, 複雑を極めている. Hatay地域は, トルコの領土が地中海最奥部に沿って楔のようにパレスチナ地方に入り込んでいるところで, 地体上は, トルコ・プレートの南部を構成するトロス帯の南縁に位置し, 左ずれの活断層(東アナトリア断層の延長)をもってアラビア・プレートに接している(第1図).
この地域には, 後期白亜紀(Campanian)のアラビア・プレートとの衝突の際に北からオブダクトした150~110Maのクズルダー・オフィオライトのナップが広く分布する(Yazgan et al., 1994). このオフィオライトはキプロス島のTroodosオフィオライトの北東延長にあたる. ナップの北東-南西の一般方向にほぼ直交する直線的な海岸に沿っては, 新鮮な露頭が連続しており, 最上部を除く海洋地殻の全層序を見ることができる(第2図の▼の区間). この海岸線沿いの観察事項(一部は内陸で観察, 第2図の▽の地点)を報告する. 説明文に撮影位置が記されていないものは, すべて海岸沿いの露頭. 現地での調査研究, 資料収集に全面的な援助を賜ったMTA関係者に厚くお礼申し上げる.
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