地質学雑誌
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106 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 冨岡 伸芳, 石渡 明, 棚瀬 充史, 清水 智, 加々美 寛雄
    2000 年 106 巻 5 号 p. 313-329
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    荒島岳コールドロンは, 中央深成岩体・火山岩類・環状岩脈よりなる径7.5×5 kmの同心円状火山・深成複合岩体であり, 周囲に岩脈群を伴う.約20 Maに岩脈群と玄武岩・安山岩質成層火山体が形成され, 約18 Maに円筒状に陥没し, 環状岩脈と中央の石英モンゾ閃緑岩(SiO2=63 wt.%)が貫入した.火山岩類および随伴する堆積岩類はコールドロンの外側へ傾斜し, 再生ドームの形成が示唆される.火山・深成岩類の多くは, 中~高カリウムのカルクアルカリ系列に属し, Sr同位体初生比(SrI)は0.705-0.707で, 日本海底や能登半島の第三紀玄武岩(≦0.704)より高い.SrIとSr含有量の関係は, アルカリ玄武岩質とソレイアイト質のマントル起源マグマの混合および地殻における泥質片麻岩など高87Sr/86Sr物質の同化を示唆する.
  • 岡村 聡, 関根 治彦, 新井 計雄, 山元 正継, 西戸 裕嗣, 八幡 正弘
    2000 年 106 巻 5 号 p. 330-346
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    中央北海道西縁部の浜益地域周辺では, 前期中新世から鮮新世末期まで火山活動が生じた.前期中新世火山岩は高アルカリソレアイト玄武岩, 中期~後期中新世火山岩はカルクアルカリ・ソレアイト両系列の安山岩・デイサイト・流紋岩からなる.一方, 鮮新世火山岩はカルクアルカリ系列の安山岩・デイサイトとアルカリ玄武岩からなる.前期~後期中新世(19-7 Ma)火山岩は高Sr同位体比, 低Nd同位体比, 低Zr/Nb比, 後期中新世~鮮新世(7-2 Ma)火山岩は, 低Sr同位体比, 高Nd同位体比, 高Zr/Nb比を示す.このことは, 火山岩の起源物質が後期中新世を境にそれ以前はエンリッチなリソスフェア, それ以降は枯渇したアセノスフェアマントル由来であり, この化学組成の変化がアセノスフェアから上昇するマントルプリュームによってもたらされたと考えられる.これらの火山活動は, 千島弧と東北日本弧との会合部における特異な現象であり, 千島海盆の形成をともなうユーラシアプレートとオホーツクプレートの衝突が深く関与していたと推察される.
  • 小野 晃
    2000 年 106 巻 5 号 p. 347-352
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    大洗層の礫の供給源を解明する研究をおこなった.花崗岩礫のほかに変成岩礫と堆積岩礫が多く, それらの岩相は筑波-八溝山地のものに類似していた.変成岩礫の変成度は領家帯の黒雲母帯の低~中温部に相当する.黒雲母片岩の黒雲母のK-Ar年代は99.6 Maであった.2個の黒雲母花崗岩礫のK-Ar年代は, カリ長石と全岩について, それぞれ73 Maと64 Maであった.岩相と放射年代から, 大洗層の礫の供給源は領家変成帯の低温部の変成岩が露出していた白亜紀後期から古第三紀の筑波-八溝山地と推定された.この推定は屈折法地震探査に基づく関東北東部の地殻構造に矛盾しない.
  • 辻森 樹, 石渡 明, 坂野 昇平
    2000 年 106 巻 5 号 p. 353-362
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    蓮華変成帯, 新潟県青海町上路(あげろ)地区湯ノ谷にエクロジャイト質藍閃石片岩が産する.この岩石は主として藍閃石(37%), ざくろ石(21%), オンファス輝石(19%), 緑れん石(19%)と少量の石英, 曹長石, フェンジャイト, 緑泥石, ルチル, チタン石から構成される.エクロジャイト相鉱物組み合わせ 'ざくろ石+オンファス輝石+藍閃石+緑れん石+石英+ルチル' はマトリクスの片理(S1)を構成し, わずかに二次的な緑泥石, 曹長石, 方解石に置換され, S1片理形成以前の緑れん石青色片岩相の鉱物組み合わせ '藍閃石+緑れん石+チタン石+石英+曹長石' の包有物列(S0)がざくろ石のコアに観察される.蓮華変成帯では, これまでにも残存エクロジャイト相鉱物の報告はあったが, 今回, 岩石組織と鉱物化学組成・累帯構造から, 初めて, 緑れん石青色片岩相からエクロジャイト相への累進変成作用を読みとることができた.
  • 中野 司, 中島 善人, 中村 光一, 池田 進
    2000 年 106 巻 5 号 p. 363-378
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    X線CT(Computerized Tomography)はサンプル物質のX線線吸収係数(LAC)の空間分布を示す画像(CT画像)を再構成する手法で, 岩石の精密な3次元内部構造の非破壊観察・解析に利用できる.LACは物質の密度・状態・化学組成とX線のエネルギーで決まる物性定数で, 医療用X線CTスキャナで使われるエネルギーレベルのX線では特に化学組成依存性が高い.CT画像の再構成にはフィルタ補正逆投影法(FBP法)もしくは畳み込み逆投影法(CBP法)が用いられ, 再構成フィルタの選択により観察対象の組織を強調表示できる.白色X線で撮影したCT画像には光線硬化と呼ばれる偽像が生じるが, サンプル周囲に緩衝材をつめたり, 撮影に用いたX線のスペクトルとサンプルの密度・化学組成のデータを使った補正によりその影響を軽減できる.X線CTによる岩石内部構造の観察・解析ではその原理や手法を十分に理解して処理を行う必要がある.
  • 山本 裕雄, 栗田 裕司, 松原 尚志
    2000 年 106 巻 5 号 p. 379-382
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Geologic age of the "Miocene" Iwaya Formation in Awajishima Island is examined by means of calcareous nannofossils and dinoflagellate cysts. Calcareous nannofossil flora indicates biozone NP 17 to NP 20 or CP 14 b to CP 15 b and a late Middle Eocene to Late Eocene age. The dinoflagellate cyst assemblages also show approximately the same age. These results reveal that the Iwaya Formation is the constituent of the Eocene-Oligocene Kobe Group.Molluscan assemblages resembling those from the Iwaya Formation have been known from the "Setouchi Miocene Series" in the coastal area of the eastern Seto Inland Sea. Molluscan fauna and stratigraphic correlation of the "Miocene" in this area should also be re-examined on the basis of precise geochronologic data.
  • 林 愛明, 楊 提宇, 孫 知明, 楊 天水
    2000 年 106 巻 5 号 p. IXI-X
    発行日: 2000年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    莫高窟(千仏洞ともいう)は中国北西部の甘粛省敦煌市の南東部に位置しており(第1図), 秦の時代(紀元366年)から元の時代までの約千年にわたって, 総面積45,000m2の彩色壁画と大小2,000体以上の彫刻仏像が莫高窟の492個の洞窟の中に造り上げられてきた. これらの洞窟は阿尓金断層帯(Altyn Tagh Fault Zone)の敦煌-安西断層の活断層崖の上に造られており(第1, 2図), 総延長1.6kmの洞窟壁崖になっている(第3, 4図). 阿尓金断層帯は, 最大で30mm/年の水平変位速度と0.8mm/年の垂直変位速度を有する左横ずれ活断層であると推定されている(Xu and Deng, 1996). 敦煌-安西断層については, その変位速度や累積変位量などがまだ不明である. 莫高窟周辺地域の地質は先中生代の貫入岩と先カンブリアの変成岩からなる基盤岩とそれを覆う更新世の弱固結の砂礫層・粘土層・砂層の互層および沖積層から構成される(第1, 5図). 莫高窟はシルク・ロードの仏教芸術博物館として古代社会の研究に貴重な資料を与えており, 世界遺産に指定されているが, 砂漠化や壁崖の風化が進んでおり, 莫高窟の保存・修復が最重要な課題になっている. 莫高窟の地質構造や活断層の活動度などを明らかにすることは阿尓金断層帯全体の活動性・累積変位量の解明や莫高窟の研究・保存(耐震対策)などに基礎資料を提供することができると期待される。本研究は中国地質科学院地質力学研究所・地質力学開放研究実験室の科学研究費により行われた.
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