我々は1998年以来, ミャンマー中央部に分布する中部始新統上部のポンダウン層の哺乳類化石発掘調査を続けている. ここでは, この調査と発掘採集した哺乳類化石について紹介する. ポンダウン層からは, 多くの陸生哺乳類化石を産出することが, 1916年から知られていた. 特に, 20世紀前半に報告された二種類の霊長類化石は, 最古の真猿類とみなされており(Pilgrim, 1927; Colbert, 1937), 現在も真猿類の起源という観点で, 霊長類学者・人類学者の注目を集めている. しかし, その哺乳類相の研究は, 1938年以来さまざまな理由により殆ど行われていなかった. 1997年, ミャンマーの研究者らがポンダウン層の化石発掘調査を再開し, 原始的真猿類化石を含む多数の哺乳類化石を発見した. その後も, アメリカ, フランス, 日本の研究者らが発掘調査を行っている. これまでの3回の発掘調査で, 我々も多くの哺乳類化石を採集した. 現在はそれらの化石の記載およびポンダウン哺乳類相の解析を行っている. 現在までに, 約20属の哺乳類の存在を確認している. 今後も, 真猿類の起源・進化の解明と, 新生代前半の東アジアの哺乳類の進化の解明に向けて, 調査を続けていく.
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