上越地域の中・古生界中に断続的に分布する低変成度片状岩体は,地質構成,変成作用,変形作用の類似性に基づいて,かつて存在した低変成度片状岩帯を構成していたものであることが明らかになった.検討された片状岩体は,代表的な岩体である川場変成岩類と水無川変成岩類で,両者とも特徴的な珪質層泥質層の細互層を原岩として含み,緑色片岩相の変成作用を受けている.さらに,川場変成岩類の変形小構造,伸長線構造やそれらのファブリック,変形機構,延性度のデータの比較から,左走向すべり成分をもつ前期変形時相と右走向すべりをもつ後期変形時相が抽出され,水無川変成岩類のそれらと対比された.復元された低変成度片状岩帯は,上越地域の中・古生界の白亜紀以降の構造改変が起こる前の基本構造を示していると考えられる.
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