地質学雑誌
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108 巻, 12 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 花方 聡, 三輪 美智子
    2002 年108 巻12 号 p. 767-776_4
    発行日: 2002/12/10
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    青森県の深浦地域において今回新たに採取した試料の分析結果と既存資料の再解釈に基づいて放散虫化石層序,有孔虫化石層序および堆積環境の検討を行った結果,大童子層が中部中新統から上部鮮新統,赤石層が上部中新統から下部鮮新統,舞戸層が鮮新統であることが明らかとなった.さらに底生有孔虫群集の層序変化に基づいてForam. Sharp Line(FSL)が大童子層中に確認された.FSLより下位の多様性に富む有孔虫群集は温暖な堆積環境を示し,これより上位の群集からは高い一次生物生産性のある海洋環境もしくは貧酸素水塊の存在が推定される.
  • 遅沢 壮一
    2002 年108 巻12 号 p. 781-793
    発行日: 2002/12/10
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    仙台市の市街地西部の茂庭と青葉山丘陵には,鈎取-愛子線と呼んだ北西-南東走向の単斜と青葉断層帯と呼んだ南北走向の断層帯がある.鈎取-愛子線は北東-南西の水平短縮により,仙台層群堆積後に形成された.青葉断層帯のうち,青葉中央断層と青葉西断層は断層の東側上がり成分をもつ右ずれ断層で,青葉東断層はこれと逆のセンスをもつ断層である.青葉中央断層と青葉西断層は引き続く北東-南西圧縮応力場で,青葉東断層は後の第四紀の北西-南東圧縮応力場で,それぞれ仙台地方に延長される双葉破砕帯が再活動することにより生じた.
  • 竹之内 耕, 高橋 浩
    2002 年108 巻12 号 p. 794-805
    発行日: 2002/12/10
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    上越地域の中・古生界中に断続的に分布する低変成度片状岩体は,地質構成,変成作用,変形作用の類似性に基づいて,かつて存在した低変成度片状岩帯を構成していたものであることが明らかになった.検討された片状岩体は,代表的な岩体である川場変成岩類と水無川変成岩類で,両者とも特徴的な珪質層泥質層の細互層を原岩として含み,緑色片岩相の変成作用を受けている.さらに,川場変成岩類の変形小構造,伸長線構造やそれらのファブリック,変形機構,延性度のデータの比較から,左走向すべり成分をもつ前期変形時相と右走向すべりをもつ後期変形時相が抽出され,水無川変成岩類のそれらと対比された.復元された低変成度片状岩帯は,上越地域の中・古生界の白亜紀以降の構造改変が起こる前の基本構造を示していると考えられる.
  • 三上 禎次, 向井 健一, 戸倉 則正, 井本 伸廣
    2002 年108 巻12 号 p. 806-812
    発行日: 2002/12/10
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    丹波帯の層状チャートにおいて,X線回折チャートから求めた石英結晶度と石英平均粒径の間に正の相関が成立することが判明した.また,層状チャートの石英粒径の変化と被熱条件の差異によって,コノドントの色調変化を対応させることで変成温度を推定し,変成度図を作成した.丹波層群のI型地層群とII型地層群のチャートについて変成度図を適用したところ,丹波帯中央部で構造的上位にあるII型地層群の層状チャートは,地質年代が古いにも関わらず,構造的下位にあたるI型地層群の年代の新しいチャートに比較して,変成度が低いことが明らかになった.
  • 亀尾 浩司, 三田 勲, 藤岡 導明
    2002 年108 巻12 号 p. 813-828
    発行日: 2002/12/10
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    房総半島中部に分布する安房層群天津層の石灰質ナンノ化石を検討し,その地質時代を考察した.天津層からは指標種を含むさまざまな石灰質ナンノ化石が比較的豊富に産出する.おもな石灰質ナンノ化石種の層位分布に基づけば,天津層に計14の化石基準面とバイオイベントが認定できる.その結果,天津層は石灰質ナンノ化石帯CN5帯(NN6帯)からCN10帯(NN12帯)に相当し,中部中新統から下部鮮新統に対比される.相当する年代は概ね13Maから5Maである.今後,天津層でその他の微化石層序や古地磁気層序が詳しく検討されることによって,中緯度海域における中新統複合年代尺度を設定できると考えられる.
  • 小栗 一将, 伊藤 雅史, 平野 聡, 久光 敏夫, 坂井 三郎, 村山 雅史, 北里 洋, 小泉 嘉一, 福井 学, 平 朝彦
    2002 年108 巻12 号 p. XXIII-XXIV
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    鹿児島県上甑島に位置する貝池は, 礫洲によって外海と隔てられた汽水湖である. 湖の表層水は陸水の影響を受け約20PSUの低塩分を呈するが, 水深約3m以深は礫洲を通した海水の侵入により30PSUを越える. このため湖水は恒常的な密度成層状態にあり, 水深5mから湖底までの溶存酸素量はOml/1を示した. 水深4.5~5.0m には光合成バクテリアと思われる微生物の濃密な分布が確認され, 堆積物最表層部分には繊維状の微生物による赤黒色のマットが形成されていることが明らかになった. 不撹乱採取された堆積物コアから, 厚さ1mm未満のマット状の構造が約3cm にわたり積層していることが確認された. これらのマットは赤黒色で繊維質, 青緑色で均質, 黄黒色で繊維質など, 各々の構造は異なる. また堆積物内部には細かいラミナが何枚も観察された. 今後の研究によって無酸素環境におけるバクテリア活動と, 形成されたマットが堆積物中に保存されていく過程の解明が期待される.
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