"跡倉ナップ"の構成地質体のうち埼玉県寄居-小川地域に分布する寄居層,寄居溶結凝灰岩は西南日本内帯起源の異地性岩体であると考えられている.荒川左岸の露頭に見られる寄居層,寄居溶結凝灰岩の境界断層破砕帯は,その構造解析から正断層成分を伴う中規模の右横ずれ断層と推定され,この断層破砕帯もまた異地性である可能性の大きいことが明らかになった.断層ガウジは23.6±0.6MaのK-Ar年代を示し,断層破砕帯は寄居層,寄居溶結凝灰岩とともに少なくとも23.6±0.6Maまでは西南日本内帯にあり,この時期より後に移動して三波川帯に定置したと考えられる.寄居層の受けた回転を復元した断層の走向は,日本海開裂以前の西南日本における中央構造線の走向,N30°Eに一致し,中央構造線の赤石時階(15-27Ma)の活動により形成された断層群の一つであったと考えられるが,後に本地域に移動したものと考えられる.
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