四国南西部に分布する中新統三崎層群竜串層から,多数のLockeia siliquaria James 1879を発見した.この生痕化石は,層理に平行な断面では,長径9-22mm,短径2.5-11mm程度の楕円型あるいはアーモンド型の形態をとり,砂岩の上面では窪み,あるいは,台状の隆起部に見え,底面ではやや突出した隆起部となる.その形態ならびに内部構造の検討そして母岩の堆積相解析から,この生痕化石は,砂質網状河川システムのうち,小規模なポイントバーで形成された二枚貝類の逃避痕であることがわかった.この生痕化石は,多くの場合,高い密度で産出し,かつ,層理面上において,定向配列する.これは濾過食の二枚貝類が,一方向の流れに対して呼吸や摂餌に最適な体の向きを取っていたためと考えられる.これを応用すると,この生痕化石の定向配列から地層形成時の古流向を知ることができる.
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