地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
110 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
論説
  • —栗駒南部地熱地域, 更新統管ノ平層の例—
    大竹 正巳
    2004 年 110 巻 6 号 p. 331-347
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/07
    ジャーナル フリー
    赤倉カルデラの陥没盆地 (古赤倉カルデラ湖) を埋積した更新統管ノ平層には, 軽石に富む火山砕屑性重力流堆積物 (PT-1, PT-2) が挟在する. PT-1とPT-2は, 下位より岩相A (火山礫~火山岩塊サイズの軽石と石質岩片からなる無層理淘汰不良部), 岩相B (火山礫~火山岩塊サイズの軽石に富む層と石質岩片に富む層の互層), 岩相C (火山礫サイズの軽石に富む層と石質岩片に富む層の互層), 岩相D (成層した粗粒火山灰), 岩相E (塊状細粒火山灰) に区分される上方細粒化シーケンスを示す. このシーケンスは, 流れが分化を繰り返すことによる希釈・減衰過程で形成される高密度混濁流堆積物の堆積相 (Lowe, 1982) に類似するが, トラクションカーペットが欠如することと最上部で皿状構造が発達するという相違点が挙げられる. これは, 火山砕屑物が水底火砕噴火で生じた噴煙柱から供給され, 砕屑物の拡散を抑制する閉塞したカルデラ湖に堆積したことに起因すると考えられる.
  • 原 英俊, 柏木 健司
    2004 年 110 巻 6 号 p. 348-362
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/07
    ジャーナル フリー
    黒又川周辺地域に分布する足尾帯ジュラ紀付加コンプレックスは, 下位の黒又川コンプレックスと上位の大白川コンプレックスに区分される. 黒又川コンプレックスは, 主に緑色岩・チャートの中~大規模岩体と砂岩頁岩互層からなる. 大白川コンプレックスは, 混在岩を主体とし, 緑色岩・石灰岩・チャート・砂岩の小規模岩体を伴う. 頁岩から産する放散虫化石によると, 黒又川コンプレックスは中期~後期ジュラ紀 (late Bathonian - Oxfordian) に, 大白川コンプレックスは前期ジュラ紀 (late Sinemurian - early Pliensbachian) に形成されたと考えられる. 岩相の特徴と形成年代に基づくと, 黒又川・大白川コンプレックスは, 西南日本内帯の丹波-美濃帯ジュラ紀付加コンプレックスへの対比が可能である. 前期ジュラ紀に形成された大白川コンプレックスは, 丹波-美濃-足尾帯の中で, 形成年代が古く, かつ構造的最上位に位置するコンプレックスの一つである.
  • 鹿園 直建, 武藤 逸紀
    2004 年 110 巻 6 号 p. 363-371
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/07
    ジャーナル フリー
    東濃砂岩型ウラン鉱床地域の中新世瑞浪層群の堆積岩は, 湖成層である土岐累層 (20~18 Ma), 海成層である明世累層 (16~15 Ma), 生俵累層 (5~0.7 Ma)凝灰岩質泥岩, シルト岩相よりなる. 土岐累層中の黄鉄鉱の量は多く, 自形—半自形を呈し, 硫黄同位体組成は非常に高い (δ34S=+10~50‰). 一方, 明世累層中の黄鉄鉱は量が少なく, フランボイダル状を呈し, 硫黄同位体組成は低い (−28~−5‰). この東濃地域の硫黄同位体の特徴と大きな砂岩型ウラン鉱床を胚胎するアメリカ西部のモリソン湖成層との鉱物学的・地質学的類似性より, 中期中新世 (18~16 Ma)の瑞浪地域での堆積・続成・ウラン鉱化作用は, アルカリ条件下で生じたことを示している. 土岐累層の自形—半自形黄鉄鉱の高δ34S値は, 高δ34S値を持つ硫酸イオンの還元により生じたものであろう. 海水が湖水に浸入し, 溶液中の硫酸イオン濃度が減少し, この硫酸イオンがバクテリアにより還元され, 高δ34S値の黄鉄鉱が生成したのであろう. 日本海が拡大し, 西南日本の時計回りの回転が起こった中期中新世に, 湖水環境から海洋環境へ変化し, 低温から高温—乾燥気候へと変化した時に, 湖水環境がアルカリ条件になったと考えられる.
  • —周防帯と三波川帯との並列—
    西村 祐二郎, 廣田 佳子, 塩崎 大介, 中原 伸幸, 板谷 徹丸
    2004 年 110 巻 6 号 p. 372-383
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/07
    ジャーナル フリー
    長崎県茂木地域の長崎変成岩類は, 茂木スラスト (新称) を介して, ユニットIとIIに区分される. ユニットIはスラスト上盤に相当し, 千枚岩から無点紋片岩, 変斑れい岩および変花崗岩からなる. ユニットIIはその下盤にあたり, 点紋帯の片岩で構成されている. 前者はパンペリー石—アクチノ閃石相から緑色片岩相の緑泥石帯に, 後者は緑色片岩相の黒雲母帯に相当する. 泥質変成岩中の炭質物d002値はユニットIが3.550—3.414Å (broad) を, ユニットIIが3.3619—3.3569Å (sharp) を示し, 白雲母K-Ar年代は前者が214—162Maを, 後者が87—86 Maを示す. 以上のデータから, 茂木スラストは野母半島南西部地域の脇岬—深堀スラストの延長であり, ユニットIが内帯の周防帯に, ユニットIIが外帯の三波川帯にそれぞれ帰属すると結論される. また, 茂木スラストと脇岬—深堀スラストを一括して, 野母構造線と新称し, 古中央構造線に対比する.
短報
口絵
feedback
Top