地質学雑誌
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112 巻, 1 号
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論説
  • 林 広樹, 笠原 敬司, 木村 尚紀
    2006 年 112 巻 1 号 p. 2-13
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    関東平野の地下に分布する先新第三系の地体構造に制約を与えるため,新第三系を貫通した深層ボーリング,および反射法地震探査のデータを収集した.収集したデータはボーリング49坑井,反射法地震探査31測線である.坑井ではコアまたはカッティングス試料により岩相を観察し,地体構造区分上の帰属を足尾帯,筑波花崗岩・変成岩類,領家帯,三波川帯,秩父帯,四万十帯およびこれらを覆う中生界の堆積岩類に区分した.また,坑井におけるVSP法またはPS検層データによって基盤岩の物性を調べたところ,より年代の古い地質体ほど大きなP波速度を示すことが明らかになった.この性質を用いて,反射法地震探査による地下構造断面を地体構造の観点から解釈し,関東平野地下における地体構造区分分布図を作成した.
  • 高橋 雅紀
    2006 年 112 巻 1 号 p. 14-32
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    関東地方に分布する中新統の地理的および年代層序学的分布を総括し,現在の利根川を挟んで岩相,層厚,地質構造,堆積様式,構造方向等に顕著な不連続を認めた.この地質学的不連続は,西は赤城山の南麓下から伊勢崎と太田および館林の間を通り,さらに利根川に沿って柏付近から東方へ成田と竜ヶ崎の間に延び,さらに多古の北東付近で南東に向きを変え,銚子の南の片貝海底谷へと延びる伏在断層である.この断層を挟んで東北日本弧と西南日本弧が大きく斜交しつつ接しており,その起源は前期中新世の日本海拡大時期に形成されたものと考えられる.断層に沿って相対的に東北日本弧が海溝側(東側)に数10 km以上ずれており,また断層の西半部では落差の大きい南落ちの断層として,平野側に厚い海成層を堆積させている.この断層をもって,従来の利根川構造線を再定義した.
  • -とくに吉見変成岩の露出と利根川構造線の西方延長-
    高橋 雅紀, 林 広樹, 笠原 敬司, 木村 尚紀
    2006 年 112 巻 1 号 p. 33-52
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    関東地方の中新統の地質,層序,岩相,層厚変化,堆積様式,変形等に基づく層序・構造モデルを構築し,その視点に立脚して関東平野西部の反射法地震探査断面(朝霞-鴻巣-邑楽測線)の地質学的解釈を試みた.関東地方の中新統~鮮新統は庭谷不整合を境に“N.8期堆積層”(16.5~15 Ma)と“post N.8期堆積層”(15 Ma~)の堆積ユニットに大別される.前者はハーフグラーベン埋積堆積物の有無により層厚が側方に変化し,基盤の起伏の主要な要因となっている.一方,後者は下位層をほぼ一様に被覆するが,利根川中流低地帯の地下では海退に伴うデルタ堆積物が厚く伏在する.関東平野の基盤構造は,中新世(N.8期末)に形成されたハーフグラーベンにより非対称な起伏が形成されている.吉見丘陵に先中新統基盤岩類(吉見変成岩類)が露出しているのは,日本海拡大時に吉見地域がハーフグラーベンを形成した傾動ブロックの非沈降部に位置していたためであると考えられる.
  • 高木 秀雄, 鈴木 宏芳, 高橋 雅紀, 濱本 拓志, 林 広樹
    2006 年 112 巻 1 号 p. 53-64
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    埼玉県岩槻市で1971年に防災科学技術センターによって掘削されたボーリングコアの最深部(3,505.0~3,510.5 m)およびその上部(2,943~3,327 m)の基盤岩類について,岩石記載と鉱物のEPMA分析ならびに放射年代測定を実施した.その結果,最深部基盤岩類は主にざくろ石トーナル岩質および緑簾石角閃岩質マイロナイトから構成され,そのざくろ石,角閃石,斜長石の化学組成と角閃石年代(70~83 Ma)から,領家帯に属するものと結論された.また,その上部は石英斑岩からなり,その黒雲母年代(17.7 Ma)から西南日本中央構造線に沿った瀬戸内火山岩類よりも古い値をとることが明らかになった.最深部の再結晶石英粒径に基づくマイロナイト化の程度区分と,基盤岩類全体のカタクレーサイト化から,関東平野の中央構造線は岩槻コアの基盤岩の深度位置から南側500 m以内にあることが推定された.
  • 高木 秀雄, 高橋 雅紀
    2006 年 112 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    石油資源開発(株)によって1957年に掘削された松伏SK-1の先中新統基盤岩コアについて,岩石学的,年代学的検討が加えられた.1,922~1,948 m区間の8つのコアは主に弱くマイロナイト化した角閃石黒雲母トーナル岩と細粒苦鉄質岩から構成される.前者の角閃石のK-Ar年代は約67 Maであった.トーナル岩の鉱物組成と組織および随伴する苦鉄質岩と年代から,これらの基盤岩は中部地方や関東山地比企丘陵の中央構造線沿いに分布する非持トーナル岩に対比可能であり,再結晶石英の粒径から推定される中央構造線の位置は,コアの位置から500~1,500 m南に,またその地表延長は,コアサイトから1~3 km南に位置すると推定される.
  • 久田 健一郎, 太田 佳奈子, 奥澤 康一, 棚瀬 充史
    2006 年 112 巻 1 号 p. 72-83
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    江戸崎観測井は茨城県稲敷郡江戸崎町で掘削され,掘削深度は1234.0mに達した.この観測井の層序は,上位より,下総層群,上総層群,先新第三系である.先新第三系は砂岩や泥岩からなり,正確な年代は不明なまま扱われてきた.この区間の砂岩のモード組成と砕屑性ザクロ石の化学組成を検討した.また江戸崎観測井先新第三系と比較のため,関東地方に分布する白亜系-暁新統の砂岩についてもそのモード組成を検討した.その結果江戸崎コアの砂岩は,QmFLt図ではDissected-Transitional Arc起源の砂岩組成領域に集中し,跡倉層にモード組成では比較的類似することが判明した.さらに砕屑性ザクロ石は跡倉層から報告されているその化学組成と一部類似している.跡倉層は,関東山地では三波川変成岩の上にクリッペとして累重していることから,江戸崎観測井は領家帯上ではなく,三波川帯上に位置していることを示唆する.
  • 安藤 寿男
    2006 年 112 巻 1 号 p. 84-97
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    関東平野東端には下部白亜系銚子層群,最上部白亜系那珂湊層群,古第三系大洗層が孤立して分布し,東北日本,西南日本の地帯構造を考える上で重要な情報をもたらす.3つの地層群の研究の現状をまとめた上で,それらの地質学的意義を考察した.東北日本の蝦夷堆積盆の北上および常磐亜堆積盆における上部アプチアン以上の白亜系~古第三系には,時代・層序・堆積相の上で3地層群に比較可能な地層は見られない.銚子層群は層序分布から関東山地北部の西南日本外帯秩父帯の山中白亜系の東方延長と見なされる.那珂湊層群は西南日本内帯南縁の和泉層群との共通性が高い.大洗層は礫の放射年代,植物化石などから白亜系ではなく古第三系の可能性が高い.那珂湊層群と大洗層は棚倉構造線の南方延長の破砕帯に含まれた古期岩類の断層隆起地塊をなしており,西南日本の要素と見なされる.大洗層は,関東山地北部の寄居層および神農原層とに対比できる可能性がある.
  • 戸邉 恵里, 高木 秀雄, 高橋 雅紀
    2006 年 112 巻 1 号 p. 98-103
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/05/01
    ジャーナル フリー
    銚子地域は,関東平野周辺で先白亜系が露出しているきわめて限られた地域である.銚子において付加体の特徴を有することからジュラ系と想定されている愛宕山層群の帰属の問題を考察するために,その中の礫岩中に含まれる花崗岩類の岩石記載とK-Ar年代測定を実施した.花崗岩礫は中粒角閃石黒雲母花崗閃緑岩~トーナル岩からなり,初生的な磁鉄鉱を含む.比較的新鮮な2試料から得られたK-Ar年代は,黒雲母につき255 Ma,角閃石につき270 Maとなった.このようなペルム紀の年代は,関東山地の古領家帯を特徴づける金勝山石英閃緑岩や,南部北上帯~黒瀬川帯のペルム系中に存在する薄衣式礫岩中の花崗岩礫の年代と一致することが明らかとなった.このことは,西南日本の古領家-黒瀬川帯と東北日本の南部北上帯をつなぐ証拠の一つとして重要である.
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