地質学雑誌
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112 巻, 3 号
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総説
  • 太田 亨, 新井 宏嘉
    2006 年 112 巻 3 号 p. 173-187
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/14
    ジャーナル フリー
    岩石・鉱物の化学組成,砕屑物の粒度組成やモード組成,生物の群集組成などで利用される組成データは変数の総量が一定であるために定数和制約を受ける.このような形式のデータを対象とした統計学的推定,検定の方法論は最近まで確立されていなかった.しかし,近年,組成データの厳密な統計学的解析方法が急激に進歩した.本論では,このような手法の1つである対数比解析と単体解析を実例を交えて紹介する.対数比解析は,組成データを単体空間から実空間に写像する方法である.単体解析は,単体空間に属する組成データに対して,新たに統計量や解析方法を開発する試みである.今後はこのような解析方法を用いて,より適切な論理的基盤から地質学的諸現象を解析することが重要となるであろう.
論説
  • 小松原 琢, 中澤 努, 宮地 良典, 中島 礼, 吉見 雅行, 卜部 厚志
    2006 年 112 巻 3 号 p. 188-196
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/14
    ジャーナル フリー
    川口町田麦山地区は2004年新潟県中越地震によって最も甚大な被害を受けた地区の一つである.当地区の家屋の大部分は,姶良Tnテフラ降下前に形成された魚野川の河成段丘面と,段丘面を開析した谷を埋めて分布する扇状地面上に立地する.扇状地堆積物は地すべり地形が発達する鮮新統~更新統の堆積岩に由来し,軟弱な腐植まじりの砂泥互層を主体とする.地震動による家屋の被害は,扇状地堆積物の厚さが約20 mに達する扇状地中央部で最も激しく,礫層を主体とする段丘と扇状地の縁辺部では比較的軽微であった.地震被害と細粒な扇状地堆積物の厚さの密接な関係は,この堆積物が地震動を増幅し,局地的に激しい被害を引き起こしたことを示す.このことは地震ハザードマップ作成の上で注意すべき事実である.
  • 石田 直人, 村田 正文
    2006 年 112 巻 3 号 p. 197-209
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/14
    ジャーナル フリー
    関東山地南東部の秩父累帯南帯に分布する海沢層から,時代の異なる放散虫化石が同一単層中に含まれる混在放散虫化石群集が産出した.混在群集は中部ジュラ系(Aalenian~Bathonian)チャート・珪質泥岩中の4試料から認められ,極少数のペルム紀・三畳紀放散虫化石と多数の中期ジュラ紀放散虫化石から構成される.ペルム紀・三畳紀の放散虫化石は6属12種が識別され,その時代は前期三畳紀を除く前期ペルム紀の後期から中期三畳紀にわたる.混在群集中のペルム紀・三畳紀化石は,遠洋・半遠洋域において化石単体で再堆積したと見られる.中央太平洋の遠洋性堆積物における再堆積した微化石の事例を参考にすると,再堆積化石の供給源は海山の様な大洋底上の地形的高まり側面の堆積物である可能性が考えられる.
  • 小竹 信宏, 藤岡 導明, 佐藤 茜, 伊藤 泰弘
    2006 年 112 巻 3 号 p. 210-221
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/14
    ジャーナル フリー
    千葉県房総半島南端地域に分布する完新統沼層において,露頭では視覚的に存在が全く確認できない鬼界-アカホヤテフラを研究対象とし,それ起源の火山ガラスの層位分布を明らかにするとともに,降灰層準を詳しく検討した.火山ガラスの形態的特徴と化学組成の結果は,鬼界-アカホヤテフラの火山ガラスが,津波堆積物T 3.1よりも上位の泥層中に存在することを示唆した.また,火山ガラスの存在する層準が物理営力の及ばない静穏な内湾の海底で堆積したこと,堆積場周辺の陸域面積が現在のそれよりもはるかに小さいことを重視し,海底に降灰・堆積した後の火山ガラスの挙動を支配するとともに,最終的な層位分布に最大の影響を及ぼした営力は生物攪拌であったと判断した.そして,生物攪拌による火山ガラスの拡散メカニズムを考慮し,鬼界-アカホヤテフラの降灰層準は津波堆積物T 3.1の約15 cm上位付近の層準に位置するものと推定した.
  • 淡路 動太, 山本 大介, 高木 秀雄
    2006 年 112 巻 3 号 p. 222-240
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/14
    ジャーナル フリー
    棚倉破砕帯の断層ガウジの分布様式と微細組織の詳細を明らかにし,脆性領域における運動像と古応力の変遷を議論した.断層ガウジの微細組織から,脆性破壊の特徴をもった粒径分布と,延性変形の特徴をもったフラグメントの定向配列という2つが認められた.断層ガウジの姿勢と剪断センスを用いて多重逆解法による古応力解析を行い,棚倉破砕帯の左横ずれ運動(D1)と右横ずれ運動(D2)という2つの変形ステージが得られた.古第三紀に断層ガウジは左横ずれ運動に伴う基本構造を形成し,破砕帯の上昇とともに活動を繰り返して,17 Maには左横ずれ運動(D1)を経験し,15 Maには右横ずれ運動(D2)へと運動方向の変換を経験したことが明らかとなった.このことから,関東山地から東北日本前弧域の南西部で知られていた17~15 Maにおける応力場の変遷は,棚倉破砕帯を含むような規模であったと考えられる.
口絵
エラータ
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