地質学雑誌
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112 巻, 7 号
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総説
  • 新井 宏嘉, 太田 亨
    2006 年 112 巻 7 号 p. 439-451
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/08
    ジャーナル フリー
    変数の総和が一定となる組成データには定数和制約と呼ばれる数学的制約が存在し,通常の手法を用いたデータ解析を行うことができない.この問題を回避するための方法として,対数比変換を行いデータを実空間に写像する対数比解析法と,単体空間に留まって解析する単体解析法が考案されている.しかしいずれの方法においても,組成データに0値や欠損値が含まれると,数学的な問題から解析を実行できないという問題がある.このため,これまでにいくつかの0値および欠損値置換法が考案されてきた.本論では,組成データにおける0値の種類を明確にした上で,これらの0値置換方法と,その長所および短所について詳しく言及した.また,0値置換の問題点にも触れ,外れ値の検定法についても解説した.また,代表的な0値置換法と,外れ値を検定するための不適合度を計算するためのフリー統計環境R用プログラムを作成した.
論説
  • 平内 健一, 久田 健一郎, 伊庭 靖弘
    2006 年 112 巻 7 号 p. 452-458
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/08
    ジャーナル フリー
    関東山地北西部において山中白亜系白井層と蛇紋岩が不整合関係を示す露頭を発見した.これにより,関東山地の黒瀬川帯の蛇紋岩には,断層帯の構成要素としての蛇紋岩と,山中白亜系の基盤岩としての蛇紋岩が存在することが明らかになった.不整合面は凹凸をなし,白井層基底部は不整合面と高角に斜交してアバットしている.白井層に含まれる蛇紋岩礫はアンチゴライトを主体とすることが多く,下位の蛇紋岩と組織と構成鉱物の点で異なる.よって,蛇紋岩礫のほとんどは,堆積場の比較的近傍に露出していた,アンチゴライトを主体とする蛇紋岩体からもたらされたと考えられる.白井層の堆積年代であるHauterivianには,粗粒堆積物で構成されるような汽水域に蛇紋岩が露出していたと考えられる.
  • 笹尾 英嗣, 岩野 英樹, 檀原 徹
    2006 年 112 巻 7 号 p. 459-468
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/08
    ジャーナル フリー
    岐阜県南東部に分布する中新統瑞浪層群土岐夾炭層について,本層中部の凝灰質砂岩のフィッション・トラック年代測定と記載岩石学的性質に基づいて,その堆積年代を検討した.
    凝灰質砂岩および土岐花崗岩中の斜長石の屈折率分布から,凝灰質砂岩は安山岩質の火山灰と花崗岩起源の砕屑物の混在物であることが明らかになった.また,凝灰質砂岩中のジルコンの粒子年代分布を統計的に解析し,同一年代と見なされる粒子集団を分類した結果,17~21 Maおよび56~67 MaのFT年代が識別された.古い方の年代は土岐花崗岩のFT年代(59~61 Ma)と一致しており,基盤から供給されたジルコンの年代を示し,若い方の年代は安山岩質火山灰の形成年代,すなわち瑞浪層群土岐夾炭層中部の堆積年代を示す.これまでに報告された本層上部のFT年代(約18 Ma)を考慮すると,基底礫岩を除く土岐夾炭層は約18~20 Maに堆積したと推定される.
  • 堀川 英隆, 吉田 孝紀
    2006 年 112 巻 7 号 p. 469-477
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/08
    ジャーナル フリー
    宮城県登米町皮袋に分布する三畳系稲井層群平磯層の基底部は赤色砂質泥岩を含む,礫岩・砂岩などの砕屑岩から構成される.これは下部では礫岩相が卓越し,上部では砂岩と赤色砂質泥岩からなる複数の上方細粒化サクセッションから構成され,赤色砂質泥岩には干裂痕や炭酸塩ノジュールが認められる.堆積相の検討の結果,これらの堆積物は河川環境や潮汐の影響を受ける河川環境で堆積したと考えられる.また,鏡下の観察から赤色砂質泥岩は凝灰質な堆積物を起源とすることがわかる.砂岩と赤色砂質泥岩の境界は明瞭であり,砂質泥岩の赤色化は堆積後ではなく,後背地において既に進行していたと考えられる.同時に赤色泥質岩中の生物擾乱構造や炭酸塩ノジュールの存在は,乾燥した気候下での土壌化の進行を示唆する.
短報
討論
口絵
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