地質学雑誌
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113 巻, Supplement 号
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日本地質学会第114年学術大会 2007年 札幌 見学旅行案内書
  • 宮坂 省吾, 山崎 茜, 岡村 聡, 英 弘, 石井 正之, 小板橋 重一
    2007 年 113 巻 Supplement 号 p. S19-S28
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/01/27
    ジャーナル フリー
    札幌市の西に広がる後志火山性台地は,中新世後半から更新世にかけて形成された溶岩台地で,平坦面溶岩が広く分布しその火山原面が残されている.また,活発な火山活動は変質作用を伴い,多くの金属資源が開発されてきた.
    これらの地質要因を背景とする大規模地すべりを含む地すべり地形が広く分布し,時には自然災害としてあるいは開発行為を契機に地すべり活動が発生している.
    この見学コースでは,地質時代に発生した山体崩壊と岩屑なだれ堆積物,周氷河斜面堆積物を母材とした地すべりを観察する.
  • 小山内 康人, 大和田 正明, 豊島 剛志
    2007 年 113 巻 Supplement 号 p. S29-S50
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/01/27
    ジャーナル フリー
    世界でもっとも若い高温型変成帯の一つの典型であり,下部地殻物質の構成と変動過程を直接観察することが可能な日高変成帯主帯の中でも,峻険な地形によって良好な露頭条件を保持する日高山脈中部地域を中心に見学する.同地域の下部地殻岩石は,泥質および苦鉄質グラニュライト,部分溶融にともなう各種リューコゾーム,含斜方輝石トーナル岩類などから構成されており,それらの産状,反応過程,部分溶融現象,衝上期の変形運動過程などを観察する.
  • 田近 淳, 小板橋 重一, 大津 直, 廣瀬 亘, 川井 武志
    2007 年 113 巻 Supplement 号 p. S51-S63
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/01/27
    ジャーナル フリー
    石狩平野・夕張山地・富良野盆地を横断し,山麓に分布する変動地形を観察するとともに,夕張山地の大規模地すべり地形とその移動体を貫通したトンネルの見学を行なう.石狩低地東縁断層帯では,ブラインドスラストが形成した段丘面の緩やかな傾動や撓曲変形を観察する.断層帯周辺は縄文時代以降の遺跡の密集地帯であり,発掘により多くの地震性地すべりの痕跡が発見されている.それらも観察できるかもしれない.富良野断層帯では盆地の両側に分布する断層崖や地形面の傾動を観察するとともに,傾斜した十勝火砕流堆積物とこれを覆う砂礫層や断層の剥ぎ取り標本を観察する.一方,両断層帯に挟まれた夕張山地の蛇紋岩や白亜系蝦夷累層群・新第三系の分布域には大規模な地すべり地形が分布する.道道夕張新得線赤岩トンネルは蛇紋岩と付加体構成岩類からなる大規模地すべり移動体を貫くトンネルである.本コースは,活断層・地すべり・トンネルなど,変化に富む巡検となっている.現地での様々な議論を期待する.
  • 高清水 康博, 岡 孝雄
    2007 年 113 巻 Supplement 号 p. S65-S79
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/01/27
    ジャーナル フリー
    この見学旅行では,褐炭層を挟む地層で特徴づけられる十勝平野の下部更新統を観察する.とりわけ,芽登凝灰岩を鍵層としてその上下の堆積物の層相変化を観察する.ここで観察する地層は堆積学的解析から,後背湿地,潮汐干潟,内湾,バリアー,海浜-外浜環境で形成されたものである.露頭から不攪乱試料を採取し,室内透水試験を行った結果,堆積相と透水性に関連性があることが分かってきた.これらのことを合わせて十勝平野の下部更新統の堆積相と地下水帯水層として見た場合の評価を考える.
  • 吉本 充宏, 宝田 晋治, 高橋 良
    2007 年 113 巻 Supplement 号 p. S81-S92
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/01/27
    ジャーナル フリー
    国内でも有数の爆発的噴火を繰り返す北海道駒ヶ岳火山の最新活動期の噴出物を中心に,爆発的噴火の堆積物の特徴や構造,それらの織りなす地形を見学するとともに,日本で最初にハザードマップが作成された火山防災先進地域の活動を視察する.
  • 岡村 聡, 永田 秀尚
    2007 年 113 巻 Supplement 号 p. S93-S102
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/01/27
    ジャーナル フリー
    本コースでは,小樽から積丹半島東海岸に分布する多様な水底火山噴出物を見学し,それらの産状観察から海底火山活動の定置環境や噴火機構について考察する.これらは新第三紀中新世に活動した玄武岩,安山岩,流紋岩の多様な岩石種からなり,変質作用や変形をほとんど受けていない.特に玄武岩質マグマの噴出による枕状溶岩や溶岩噴泉によって降下堆積した水冷スパッターの産状など,浅海下で生じた火山噴火の定置環境の復元が可能な地域である.
    本地域に分布する新第三紀の水底火山噴出物は,高く連続する海食崖を形成しており,そこではしばしば岩盤崩壊が発生している.岩相的にはそれほど大きな差はないが,海食崖の高さや波食ノッチの発達程度,既存の亀裂の頻度や方向性,風化程度などの地形的,地質的な条件の違いによって,さまざまな規模や破壊,運動形態の異なる岩盤崩壊が発生しているのを観察する.
  • 榊原 正幸, 安元 和己, 池田 倫治, 太田 努
    2007 年 113 巻 Supplement 号 p. S103-S118
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/01/27
    ジャーナル フリー
    北海道の中軸部を占める神居古潭変成帯は,従来から多くの研究者によって地質学的,構造地質学的,変成岩岩石学的および年代学的に研究されてきた.本巡検では,これまでの研究成果を総括し,神居古潭変成岩の原岩層序およびその形成プロセス,沈み込み帯深部における海山・海洋島などの海洋性地殻や遠洋性堆積物の底付けプロセスおよびその際の変形・変成作用を観察する.また,同変成岩から発見された沈み込み帯変成作用後に流入した流体による交代作用についても観察する.
  • 新里 忠史, 舟木 泰智, 安江 健一
    2007 年 113 巻 Supplement 号 p. S119-S135
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/01/27
    ジャーナル フリー
    北海道北部地域の西部には,新第三紀以降の堆積物の全層厚が約6,000mに及ぶ天北堆積盆が分布する.同堆積盆の後期鮮新世以降におけるテクトニクスは,ユーラシア(アムール)プレートと北米(オホーツク)プレートとの相互作用により基本的な枠組みが形作られており,その枠組みのもと,西フェルゲンツをなすfold-and-thrust帯の地質構造の形成や,堆積中心の西方への移動が進行したと考えられる.また,最終氷期の4.2 ~1.2万年前にかけて不連続的永久凍土帯にあったと考えられる幌延地域では,下刻作用に加えて周氷河作用が合わさり,現在の地形と表層地質が形成されたと考えられる.
    見学旅行では,天北堆積盆の南東部に位置する幌延地域西部において,新第三系および第四系に発達する割れ目群と堆積相,それら地層を覆う風成堆積物,周氷河成と考えられる堆積物,およびそれら地層のボーリングコアを観察する.また,日本原子力研究開発機構,幌延深地層研究センターにおいて,周氷河地形の観察と地下施設関連設備の見学を行う.
  • 植田 勇人
    2007 年 113 巻 Supplement 号 p. S137-S152
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/01/27
    ジャーナル フリー
    当見学コースでは,神居古潭帯南部において海山沈み込みに伴って形成された前期白亜紀の高圧変成付加体(岩清水コンプレックス)の岩相と,これが前期白亜紀末に地表まで上昇したことを示す前弧海盆(蝦夷累層群)中の不整合を観察する.岩清水コンプレックスでは,底付け付加体と考えられる高圧変成緑色岩や混在相,剥ぎ取り付加体が沈み込み帯深部へ搬入されたものと考えられる砕屑岩卓越ナップ,前期白亜紀の海洋プレート層序などを観察する.蝦夷累層群では,不整合や高圧変成岩の砕屑粒子の産状などを観察する.これらの形成過程を,沈み込み帯の前弧域における固体物質移動という観点から統合的に捉えることを目指して議論したい.
  • 櫻井 和彦, 臼杵(小野) 昌子, 古沢 仁, 加納 学, 東 豊土, 澤村 寛
    2007 年 113 巻 Supplement 号 p. S153-S165
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/01/27
    ジャーナル フリー
    北海道の各地にある博物館や資料館の中には,地質や化石から地域の生い立ちを紹介する館園も数多くある.今回はその中から,北海道を横断する行程上にある五館を見学する.
    三笠市立博物館(Stop2)・むかわ町立穂別博物館(Stop5)では,白亜紀に海だった北海道中央部を泳いでいたアンモナイトや,長頸竜・モササウルスなどの海生爬虫類化石を観察する.足寄動物化石博物館(Stop4)・札幌市博物館活動センター(Stop1)では,新生代に海だった北海道で進化を遂げたクジラやデスモスチルス,カイギュウなどの海生哺乳類化石について観察する.日高山脈館(Stop3)では,北海道の背骨とも呼ばれる日高山脈に産するさまざまな岩石を通じ,島弧的地殻の形成過程などについて考える.
    このほか,日本の近代産業を長い間支えてきた石炭産業に関わる展示や,日高山脈など各地の自然環境に関する展示にもふれる.また移動途中には車窓より北海道の自然景観を実際に観察できるであろう.
    各地域の生い立ちを地質・化石から紹介する博物館を,各館の学芸員による案内で見学しながら,北海道の生い立ちを思い浮かべてほしい.
  • 新井田 清信, 高澤 栄一
    2007 年 113 巻 Supplement 号 p. S167-S184
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/01/27
    ジャーナル フリー
    幌満かんらん岩体は,日高山脈の南端部に露出する8×10kmの大きな岩体で,新鮮なかんらん岩からなる造山帯レルゾライト岩体として良く知られている.岩体内部には顕著な層状構造が認められ,ダナイト・ハルツバージャイト・スピネルレルゾライト・斜長石レルゾライト・輝岩および少量の苦鉄質岩からなる.岩体は,これら全ての岩石タイプが成層して層厚3,000mに達する複合岩体を構成し,全体的に滑らかに湾曲したスラブ状の形態を示す.ここでは,幌満かんらん岩体の層状構造に焦点をあてて全ての岩石タイプとその産状を観察し,上部マントルでつくられた層状構造の起源を考察する.
  • 安藤 寿男, 栗原 憲一, 高橋 賢一
    2007 年 113 巻 Supplement 号 p. S185-S203
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/01/27
    ジャーナル フリー
    北海道中軸部の空知-蝦夷帯に広く分布する蝦夷層群は,白亜紀アプチアン~古第三紀暁新世の間に,サハリン南部から本州中部鹿島沖にまで続いた長大な前弧堆積盆にもたらされた堆積物で,北東アジアの海成層の模式層序となっており,当時の古環境変遷を復元するには重要な地層である.この巡検では,蝦夷層群が層序的に厚くかつ広域に分布する三笠-夕張地域において,陸海断面方向や時間層序学的にどのような堆積相変化を示すのかに注目して,セノマニアン~チューロニアン階の三笠層と佐久層,およびカンパニアン~暁新統の函淵層を中心に見学する.三笠層と函淵層では,様々な堆積構造を観察した上で,河川~浅海成堆積相や堆積シーケンスの特徴を把握する.また,三笠層の浅海生軟体動物群集やそのタフォノミーについても注目する.一方,東方同時異相である佐久層では,沖合成の泥質岩相やタービダイト相に加えて,セノマニアン/チューロニアン境界の海洋無酸素事変層準やアンモナイト群集の特徴も取り上げる.さらに,白亜紀のアンモナイトコレクションを三笠市立博物館で,古第三系始新統石狩層群の石炭層を夕張市石炭博物館で見学する.
  • 保柳 康一, 川上 源太郎, 宮坂 省吾
    2007 年 113 巻 Supplement 号 p. S205-S215
    発行日: 2007年
    公開日: 2009/01/27
    ジャーナル フリー
    産炭地であった夕張は様々な地層と岩石が分布し地質学的魅力にあふれ,さらに日本における地質学の発展に大きな貢献をしてきた地域である.なかでも20世紀前半の夕張炭田地質構造の解明とクリッペ・ナッペの発見は,20世紀後半に日高造山論として結実し発展した.さらに,現在では地殻深部の探索,活構造や地形形成との関連,白亜紀以降の地球環境変遷と地層・資源形成の関連などが追及されている.
    この見学コースでは,白亜系の最上部から夾炭層である古第三系をへて新第三系までの堆積岩を堆積学とシーケンス層序学の視点から観察する.
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