地質学雑誌
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114 巻, 3 号
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論説
  • 川村 喜一郎, 川村 紀子
    2008 年 114 巻 3 号 p. 97-108
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/02/24
    ジャーナル フリー
    本論では,初期圧密段階での半遠洋性粘土の微細組織の進展について論じた.研究に用いた試料は,沖縄トラフ底の表層から採取された均質な半遠洋性粘土からなる長さ約30 cmのコアである.コア試料中の間隙比,剪断強度,帯磁率異方性が測定され,構成粒子の構造が解析された.間隙比は,埋没深度約5 cmまでで,約6-4から4-2まで減少し,剪断強度は,埋没深度約10 cmまでで,ほぼ0kPaから約6 kPaに増加した.帯磁率異方性パラメータは,コア試料を通してほぼ一定で,圧密による劇的な磁性鉱物の粒子再配列はないことを示す.埋没深度による試料の微細組織は,団粒とそれらを接続する粒子からなる接続体によって説明できる.表層6 cmまでで,接続体を構成する粒子は,端-端や面-端で接続されているが,埋没とともに面-端か面-面接続に変化する.圧密に起因する間隙比の減少や剪断強度の増加は,接続体を構成する細粒粒子の接続変化によるものである.
  • 山崎 新太郎, 千木良 雅弘
    2008 年 114 巻 3 号 p. 109-126
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/02/24
    ジャーナル フリー
    地すべり移動体を貫いて採取した不攪乱コア試料を用いて,新鮮岩石から風化岩石までの密度・間隙率,鉱物・化学,岩石組織の鉛直変化を解析し,それらにより,泥質片岩の風化プロセスとメカニズムを明らかにし,風化と地すべりとの関係を議論した.
    風化帯内部には,下方浸透する酸化的な水と岩石との反応によって酸化フロントが形成され,酸化フロントでは緑泥石がAl-バーミキュライトに変化し,ゲーサイトが生成され,黄鉄鉱と石墨は酸化消失する.黄鉄鉱の酸化は酸化フロント直下においてもFe3+イオンによって起こる.黄鉄鉱の酸化により生じる硫酸は,下方へ浸透して岩石と反応し,おそらく上載荷重の解放によって形成された亀裂とともに岩盤強度を急低下させる.強度低下した岩盤では,剪断が容易になり,それが地すべり破砕帯の形成を助長する.一方,この破砕帯は低透水性であり,酸化的地表水の下方浸透を妨げ,以深への風化の進行を妨げる.
  • 藤井 正博, 早坂 康隆, 堀江 憲路
    2008 年 114 巻 3 号 p. 127-140
    発行日: 2008/03/15
    公開日: 2009/02/24
    ジャーナル フリー
    九州東部野津原地域の基盤岩類は,高温低圧型変成岩からなる朝海ユニットの上位に,蛇紋岩からなる超苦鉄質岩ユニットを介し,非変成砕屑岩類からなる日方ユニットが重なるナップ構造で特徴づけられる.朝海ユニットの変成分帯,および黒雲母とザクロ石の化学組成から,朝海ユニットの変成作用は,荷尾杵花崗岩の貫入による接触変成作用であることが明らかとなった.その変成条件は荷尾杵花崗岩近傍で約610℃,2 kbarと見積もられる.また,荷尾杵花崗岩のジルコンのSHRIMP U-Pb年代は134.7±2.8 Ma(2σ)を示す.日方ユニットは朝海ユニットにおける荷尾杵花崗岩の接触変成作用による熱構造を切っていること,また,上部白亜系大野川層群に不整合に覆われることから,ナップ運動は荷尾杵花崗岩の貫入(約135 Ma)以降,大野川層群の堆積開始前(セノマニアン: 約100 Ma)の期間に生じたと考えられる.
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