地質学雑誌
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114 巻, 9 号
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論説
  • 河野 俊夫, 中野 聰志, 下林 典正
    2008 年 114 巻 9 号 p. 435-446
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル フリー
    滋賀県大津市田上花崗岩体小ペグマタイト中にできている長径数cm程度のマントル長石は,白色コア部を薄い無色透明リム部が包んでいるアルカリ長石である.鏡下では,コア部は汚濁を伴ったラメラ-パッチマイクロパーサイト組織を示しているが,リム部はほぼ均質であり清澄である.鏡下での汚濁・清澄の違いはコア部にはマイクロポアが圧倒的に多いこと,清澄なリム部には殆どないことに対応する.本長石の形成過程は,次のようである.最初に,550~600℃程度(PH2O=2~3 kb)でOr76Ab24のコア部が晶出した.その後,450℃前後で離溶クリプトパーサイトが形成されそれが少しずつ粗大化した.クリプトパーサイトは,熱水反応によりマイクロパーサイトへと変化し,200℃程度でリム部のカリ長石がコア部アルカリ長石にオーバーグロースした.同時期に,コア部ではマイクロパーサイトにおけるAb-rich相の曹長石化作用とOr-rich相のカリ長石化作用が進行した.
  • 堀内 悠, 久田 健一郎, Lee Yong Il
    2008 年 114 巻 9 号 p. 447-460
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,白亜系関門層群塩浜層の堆積相解析と塩浜層中の古土壌の記載を行い,塩浜層の古土壌の形成環境を明らかにした.調査地域の塩浜層は,岩相をもとに下部層,中部層,上部層の3つに区分される.堆積相解析の結果,下部層では,古土壌が厚く累積して発達するような扇状地末端部,あるいは平原の河川システムの安定した氾濫原に堆積物重力流が流入する環境であった.中部層は堆積物重力流の流入が頻繁な扇状地中部から上流部であった.上部層は,シート状流などの水流による堆積物の卓越する扇状地の中部付近の環境であった.氾濫原堆積物に含まれる赤色岩層は下部層と上部層でよく発達し,古土壌の特徴を示す.カルクリートや鏡肌などの特徴から,本研究地域の古土壌は,雨季と乾季が繰り返す半乾燥~半湿潤気候下で形成されたと考えられる.
  • 道口 陽子
    2008 年 114 巻 9 号 p. 461-473
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル フリー
    房総半島南部,館山市西川名に分布する上部中新統~下部鮮新統の西岬層の整然層内において,以下のような特徴をもつ混在岩体が含まれることを見出した.1)異なる構造で区分される大小さまざまな6つのドメインが整然層中に集中して含まれること,2)各ドメイン中には局所的な地層の逆転,褶曲,断層が多数発達していること,3)混在岩体と周辺地層の整然層との間は断層で境し,液状化層が挟まれること,4)周辺の整然層の地層と混在岩体中の地層は一つの例外を除いて対比できないこと,などである.露頭の産状・変形構造の形態,薄片観察などから,この混在岩体は液状化で生じた海底地すべりによってもたらされたと解釈できた.すべり方向は,褶曲軸の姿勢から南から北方向であったと推察され,その方向は,古相模トラフの方向に直交していることから,混在岩体は伊豆弧前弧斜面で生じた海底地すべり移動体であると考えられる.
  • 高橋 健一, 近藤 康生, 小竹 信宏
    2008 年 114 巻 9 号 p. 474-492
    発行日: 2008/09/15
    公開日: 2009/05/30
    ジャーナル フリー
    島根県浜田市の中部中新統下部唐鐘累層畳ヶ浦砂岩部層における海進海退サイクルの内部構造と化石相の垂直変化を調査した.各サイクルの厚さは0.9~6 mで,外浜から内側陸棚の堆積環境を示す.一般に各サイクルは下位より,化石密集層や化石の多い堆積物(海進期の堆積物),生物攪拌が顕著で保存のよい化石が散在する層準(最大海氾濫面を含む層準),ストーム堆積物および大型化石の少ない堆積物(高海面期の堆積物)が重なる.各サイクルは,数万年周期で,50 m未満の海水準変動によって形成されたと推定される.貝化石は,海進期堆積体ではGlycymerisが卓越し,最大海氾濫面付近ではAnadaraDosiniaClementiaが卓越する.また,高海面期堆積体ではTurritellaPanopeaが卓越する.こうした化石相の変化は海進海退に伴う,浅海域での堆積作用の変化に起因すると考えられる.
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