地質学雑誌
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115 巻, 8 号
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論説
  • 長谷川 健, 岸本 博志, 中川 光弘, 伊藤 順一, 山元 孝広
    2009 年 115 巻 8 号 p. 369-390
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/08
    ジャーナル フリー
    後屈斜路カルデラ(アトサヌプリ,中島,摩周)火山の噴火史を検討するため,最新の屈斜路カルデラ形成噴火(KpI: 35 ka)以降のテフラを対象に,道東の根釧原野と斜里平野を調査した.KpIと,最初の摩周カルデラ噴出物(12 ka)の間には,根釧原野で24層(上位からMl-a~-b, Ch-a~-d, Nu-a~-r),斜里平野で10層のテフラが堆積し,この他に薄いスコリア層等が20層以上挟在する.層位や岩相から,斜里地域の8層が根釧地域のテフラと対比できた.岩石学的手法等により,Nu-qは道央の御鉢平カルデラ起源であり,Nu-e,Nu-gなど10層がアトサヌプリ・中島火山,それ以外は全て摩周火山起源のテフラである事が分かった.35 ka以降の火砕噴火は,アトサヌプリ・中島火山で10回(16 km3)であるのに対し,摩周火山では,数千年以上の休止期を挟まずに50回以上(90 km3)頻発している.
  • 佐藤 友彦, 磯崎 行雄, 松尾 基之
    2009 年 115 巻 8 号 p. 391-399
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/08
    ジャーナル フリー
    地球史前半を通して還元的であった主要海洋の深海は,原生代末に酸化的になったと推定されるが,その程度や時期の詳細は不明であった.遠洋深海チャート中の含有鉄化学種を,57Feメスバウアー分光法を用いて同定し,堆積当時の海洋の酸化の程度を検討した.試料として,付加体中に産する,後期原生代末(英国・ウェールズ州),エディアカラ紀-カンブリア紀(ロシア・ゴルニアルタイ山地),オルドビス紀(カナダ・ニューファンドランド),そしてデボン紀(モンゴル・バヤンホンゴル地域)の遠洋深海チャートを用いた.測定した試料中には,主要な鉄鉱物として赤鉄鉱が含まれ,黄鉄鉱は欠如することを確認した.このことより,検討した遠洋深海チャートは全て,初生的にFe(III)/Fe(II)(水酸化鉄/溶存Fe2+境界)の酸化還元電位より酸化的な条件下で堆積・固結したと推定される.本結果は,遅くとも原生代末期には,主要海洋の深海が,酸化鉄の安定晶出を起こす程度に酸化的に変化していたことを示唆する.
  • 向井 理史, 三宅 康幸, 小坂 共栄
    2009 年 115 巻 8 号 p. 400-422
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/08
    ジャーナル フリー
    美ヶ原高原とその周辺地域には小滝山層群などを基盤岩として塩嶺火山岩類の最初期頃の火山噴出物である和田牧場火山岩類,唐沢川火山岩類,美ヶ原火山岩類,三峰火山岩類,和田峠火山岩類が分布する.この地域の塩嶺火山岩類は約2.1 Maに火山活動を開始した.その後,約1.3 Maまで玄武岩質安山岩~安山岩質マグマとデイサイト~流紋岩質マグマがそれぞれ活動し,複数の火山体を形成した.
    唐沢川火山岩類は停滞水域が存在する環境で,その後の火山岩類は陸上で噴出・堆積した.塩嶺火山岩類は北西-南東方向の狭長な凹地内で噴出しており,その凹地の南東延長上には引張応力場で形成された追分火山性地溝,八柱火山群が存在する.したがって,美ヶ原高原地域の火山活動はそれらと同様に北西-南東方向の構造の影響を受けて活動しており,八ヶ岳-中信高原地域に膨大な量のマグマを噴出した一大マグマ生成場に関連した構造運動が後期鮮新世~前期更新世にあった可能性がある.
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