地質学雑誌
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115 巻, Supplement 号
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日本地質学会第116年学術大会 2009年 岡山 見学旅行案内書
  • 巽 好幸, 谷 健一郎, 川畑 博
    2009 年 115 巻 Supplement 号 p. S15-S20
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    小豆島には,瀬戸内火山帯の一部をなす中新世の火山岩類(瀬戸内火山岩類)が分布する.これらは,他地域の瀬戸内火山岩類と比べて以下の特徴を有する:(1)比較的規模の大きい複成火山体をなす.(2)水中火山活動の証拠が顕著に認められる.(3)玄武岩から流紋岩までの広い化学組成を有する.(4)斑状火山岩と比較的無斑晶質な火山岩(サヌキトイド)まで,岩相変化に富む.(5)サヌキトイドの複合溶岩流が存在する.(6)初生的な安山岩(高Mg安山岩),玄武岩が産する.ここでは,主にこれらの特徴を簡略に説明する.
  • 山口 飛鳥, 柴田 伊廣, 氏家 恒太郎, 木村 学
    2009 年 115 巻 Supplement 号 p. S21-S36
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    1970年代後半~80年代の層序・年代学的研究,1980年代後半~90年代の構造地質学的研究・熱履歴解析を経て,四万十帯のテクトニックメランジュは地震発生帯の化石であるとの認識がなされた.本巡検では四国東部の牟岐地域において,非対称剪断組織をもつテクトニックメランジュ,海洋地殻の底付け付加に伴う断層帯とその周辺に密集する鉱物脈,さらにシュードタキライトやウルトラカタクレーサイトなどの断層岩を観察し,沈み込み帯地震発生帯浅部の変形・流体移動像について議論を行う.
  • 岡本 和明, 青木 一勝, 丸山 茂徳
    2009 年 115 巻 Supplement 号 p. S37-S49
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    三波川変成帯のテクトニクスは,四国中央部での地質学的,岩石学的研究により論じられてきた.しかし沈み込み帯深部で形成された三波川変成岩は上昇し,板状構造を呈して地表では帯状に分布している.そのため三波川変成岩のテクトニクスを理解にするには,上下境界の認定,源岩の起源,変成,源岩年代の決定が重要である.案内者を含む研究グループにより,大歩危地域に三波川変成岩と下盤の四万十帯相当層の境界が存在することが明白になった.さらに四万十相当層の変成条件が青色片岩相の温度圧力条件に達していることが明らかにされた.これは三波川変成岩が,沈み込み帯上面に沿って上昇したことを示す.三波川変成岩の上盤境界の特定は,詳細な年代学的研究により進められてきた.上盤境界が三波川変成岩の上昇に伴う低角正断層運動を起こしたことが明らかになった.源岩岩層単位の地質構造の解析から,三波川変成岩の内部構造は,付加体構造が複数回褶曲作用を受けている.そして,マントルウエッジからのテクトニックブロックやナップと考えられてきた中核部のエクロジャイト,角閃岩も,詳細な地質調査の結果,巨大海山(海台)や海山上の陸源細屑物質の付加体であることが明らかになった.
  • 沢田 順弘, 門脇 和也, 藤代 祥子, 今井 雅浩, 兵頭 政幸
    2009 年 115 巻 Supplement 号 p. S51-S70
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    山陰地方には主として玄武岩とデイサイトからなる第四紀火山が分布する.本見学旅行では,山陰中部の対照的な第四紀火山であるデイサイトからなる大山と,玄武岩からなる大根島-江島を見学する.大山は中国地方の最高峰,剣ヶ峰(1729 m)を主峰とする.火山活動は中期更新世(約100万年前)から始まり,1万7千年ほど前に終息している.一方,大根島-江島火山は宍道地溝帯中軸部において,19万年前に陸上で噴火した火山である.大山はデイサイト溶岩円頂丘や側火山,それらの周辺の火砕流や土石流堆積物,崩壊ないし崖錐堆積物,降下火山灰からなる.大根島は著しく粘性の低い玄武岩溶岩を主とする.給源の一つであるスコリア丘,天然記念物である溶岩トンネル,様々な形態の溶岩,火山地形,大山や三瓶山起源の広域テフラが観察できる.また,火山島の地下に普遍的に存在する淡水レンズを実感できる.
  • 佐野 弘好, 〓山 哲男, 長井 孝一, 上野 勝美, 中澤 努, 藤川 将之
    2009 年 115 巻 Supplement 号 p. S71-S88
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    山口県西部秋吉台には,秋吉帯のペルム紀付加体を特徴づける秋吉石灰岩(下部石炭系~中部ペルム系)が広く分布する.秋吉石灰岩はパンサラッサ海大洋域に位置していた海山の頂部で堆積した浅海成石灰岩からなり,約8000万年間の気候・海水準変動を記録している.本見学旅行では,サンゴ礁相,ウーライト質石灰岩で示される石炭紀古世中期の温暖・高海水準環境,大型生物礁の衰退と離水堆積物で示される石炭紀新世後期における寒冷化と離水・古カルスト形成,干潟相および離水砂浜相で特徴づけられる堆積サイクルが示すペルム紀中世の短周期海水準変動などについて現地討論を行う.また本年で創立50周年を迎える美祢市立秋吉台科学博物館を訪れ,学術研究,自然保護に対する同館の貢献をふり返る.
  • 藤田 勝代, 横山 俊治
    2009 年 115 巻 Supplement 号 p. S89-S107
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    多くの風化花崗岩には,ミリメートルオーダー間隔のクラック群であるラミネーションシーティングが発達し,ラミネーションシーティングに取り囲まれた未風化核岩がしばしば分布している.ラミネーションシーティングは地形・構造(節理)・岩石(岩相)・鉱物と,スケールの異なる因子に規制されて形成されている.本見学会では,ラミネーションシーティングと未風化核岩を観察し,これらの規制因子について議論する.小豆島には大坂城改築城時の丁場跡が多数点在し,矢孔で穿かれた種石や切石(残石)が散在する.風化花崗岩の地質・岩石構造と地形の観点から,当時の採石の立地条件と方法について観察し,当時の石工道具や運搬用具をみなとオアシス大坂城残石記念公園で見学する.また,現在稼業している小豆島石の採石丁場で石工職人から石目と石割りの方法について伺う.
  • 横田 修一郎, 田中 元, 山田 琢哉
    2009 年 115 巻 Supplement 号 p. S109-S122
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    地すべりは,斜面崩壊や落石,土石流などに比較して突発的な災害を発生させることは少ないものの,大小様々な地すべりによる被害は今日でも後を絶たない.岡山県西部に分布する上部トリアス系成羽層群の分布域は地すべり多発地帯であり,農地や家屋等の被害に対して調査と対策が繰り返されてきた.これらの地すべりは“成羽層群地すべり”とよばれ,成羽層群の砂岩・泥岩中に挟まれる薄い炭層や特有の小褶曲構造がその発生に関与していると考えられている.本見学コースでは当地域のこうした地すべりの形態と構造の特徴をとらえ,発生にかかわる地形・地質条件を地質学あるいは応用地質学の立場から考えることを目的とする.
  • 竹村 静夫, 菅森 義晃, 鈴木 茂之
    2009 年 115 巻 Supplement 号 p. S123-S137
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    岡山県東部から兵庫県西南部には舞鶴帯と超丹波帯を構成する地層・岩石が広く分布する.舞鶴帯の主体をなすペルム系舞鶴層群は,その岩相と層序から付加体とみなすことは難しいが,地理的にはペルム紀の付加体と解釈される秋吉帯と超丹波帯の構成岩類に挟まれて分布している.このように中国地方東部から近畿地方北部の西南日本内帯には,ほぼ同年代でかつ性格の異なる地帯が狭い地域内に並列して分布する.この見学コースでは,ともにペルム紀の陸源砕屑岩を主体とする舞鶴層群と超丹波帯の上月層,舞鶴層群を不整合に覆う三畳系福本層群など,舞鶴・超丹波両帯に属する地質体の岩相や地質構造等を観察する.そして,それらが堆積・形成されたテクトニクスの重要性を再確認したい.
  • 鈴木 茂之, 松原 尚志, 松浦 浩久, 檀原 徹, 岩野 英樹
    2009 年 115 巻 Supplement 号 p. S139-S151
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    吉備層群(いわゆる「山砂利層」)は,ほとんど中~大礫サイズの亜円礫からなる,谷埋め成の地層である.時代決定に有効な化石は得られず,更新統とされていたが,稀に挟まれる凝灰岩層を対象とするフィッション・トラック年代測定によって,地層の定義や対比が行えるようになってきた.いくつかの堆積期があることが分かってきたが,岩相では区別しがたく,地層区分は高密度の踏査による地層の追跡が必要である.各層の基底は,地層を構成する礫を運んだ当時の河の谷地形を示す.この復元された古地形は,底からの比高が150m以上に達する深い谷地形である.これは一般的な沈降を続ける堆積盆に形成された地形より,むしろ後背地側の地形である.すなわち吉備層群には,一般的な沈降する堆積盆の地層に対する区分や定義の方法とは異なる,新しい取り組みが必要であり,堆積の要因についても考えなくてはならない.これらは案内者一同を悩ませ続けている課題であり,見学旅行を通じて議論をいただきたい.
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