地質学雑誌
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116 巻, 10 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 森下 知晃, 山口 龍彦, 眞柴 久和, 神谷 隆宏
    2010 年 116 巻 10 号 p. 523-543
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
    微小甲殻類の一種である貝形虫は低マグネシウム方解石の殻を持っており,この殻の微量元素量および,その比は古環境指標として利用されている.一般に海棲の貝形虫の殻のMg/Ca比は,生息場の水温と強い相関があり,淡水棲の貝形虫の殻のMg/Ca比およびSr/Ca比は生息場のMg, Sr量を反映している.既存の研究を総括した結果,次のことが明らかになった.1)続成作用による殻のMg/Ca比およびSr/Ca比の変化を評価する方法は確立されていない.2)殻のMg/Ca比およびSr/Ca比の分配係数の範囲は分類群,生息場,系統によって異なる.3)これらの分配係数の範囲は種内の成長ステージによって異なる場合がある.4)海棲種のMg/Ca比の分配係数から見積もられる水温は約2~4℃の誤差を伴う.5)殻内の微小領域でのMgの分布の不均一性は殻全体のMg/Ca比に影響する.貝形虫殻のMg/Ca比,Sr/Ca比をより精密な環境指標として確立するためには,生息環境のMg/Ca比,Sr/Ca比,続成作用や試料の前処理の厳密な評価,およびより多くの分類群のデータが必要である.
論説
  • 伊藤 久敏, 田村 明弘, 森下 知晃, 荒井 章司
    2010 年 116 巻 10 号 p. 544-551
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
    野島断層とその周辺の花崗岩質岩から得たジルコンを用い,FT年代とLA-ICP-MSによるU-Pb年代を求めた.その結果,52~78 MaのFT年代と83~88 MaのU-Pb(238U-206Pb)年代が得られた.今回の結果と既存の放射年代結果から,淡路島北端部の花崗岩質岩が貫入した時代から現在に至るまでの冷却史を明らかにした.今回,U-Pb年代を求めるために,FT年代測定用に準備したジルコンを用いるとともに,Fish Canyon TuffをU-Pb年代の補正に用いた.その結果,Buluk Member Tuffで精度と信頼性の高いU-Pb年代(16.3±0.1 Ma)が得られた.国内外でジルコンのFTに関する論文は多数あるが,今回用いた方法により,FT年代測定用に準備したジルコンを再利用し,ジルコンの晶出年代を付加することに道を拓くことができたと思われる.
  • 小林 紀彦, 鹿野 和彦, 大口 健志
    2010 年 116 巻 10 号 p. 552-562
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
    男鹿半島西岸では,火山岩を主とする上部始新統門前層と下部中新統野村川層の堆積期に,岩脈が多数貫入している.それらは珪質であるほど厚く,走向はN39°Eに集中する.この卓越方位は共存する正断層と平行で,当時の応力場が北西-南東方向の引張場であったことを示唆する.また,岩脈の貫入だけで地殻が約9%伸長したと考えられる.門前層形成期後期に貫入した岩脈の厚さの総計は,全岩脈の厚さの総計の2/3を占めており,その時期に岩脈の貫入による地殻の伸長は極大となった.この後,日本海開裂が急速に進むにつれて岩脈の貫入が地殻の伸長に寄与する割合は低下したと考えられる.
  • 亀尾 浩司, 新藤 亮太, 高山 俊昭
    2010 年 116 巻 10 号 p. 563-574
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
    本論では,房総半島の中部に分布する安房層群清澄層の地質時代を決定するために,清澄層から産出する石灰質ナンノ化石を検討した.併せて,西部赤道太平洋の深海底コアであるHole 806Bの下部鮮新統のReticulofenestra属の大きさの変化を検討し,その大きさが変化するバイオイベントを明らかにして,標識種に乏しい清澄層の年代決定に役立てた.本研究の結果,清澄層からは多くの石灰質ナンノ化石の産出が確認できたが,確認された化石基準面は石灰質ナンノ化石帯CN10帯とCN11帯の境界(Amaurolithus spp.の産出上限)のみであった.また,清澄層に見られるReticulofenestra属の大きさの変化によるイベントは,西部赤道太平洋の下部鮮新統に見られるそれと同様であり,それに基づく年代推定は古地磁気層序の結果と調和的である.このことはReticulofenestra属の大きさの変化に基づく化石イベントが年代決定に適用可能であることを示している.
短報
  • 佐藤 峰南, 尾上 哲治
    2010 年 116 巻 10 号 p. 575-578
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
    The magnetic fraction of a lower Norian claystone layer (ca. 5 cm thick) in a radiolarian chert succession within the Mino Terrane, Inuyama area, Central Japan, contains a large number of small euhedral to subhedral crystals of oxidized Ni-rich spinels. The stratigraphic position of this concentration of Ni-rich spinels is clearly indicated by a sharp increase in magnetic susceptibility at the claystone layer. These spinels are distinguished from typical igneous spinels by their high Ni and Fe3+ contents, and show large variations in composition. The textures and chemical compositions of the spinel crystals are similar to those of Ni-rich spinels at the Cretaceous-Paleogene boundary. The discovery of Ni-rich spinels in a lower Norian claystone suggests an important sedimentary record of an extraterrestrial impact in the Late Triassic.
口絵
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