地質学雑誌
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116 巻, 5 号
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論説
  • 飯泉 克典, 国府田 良樹, 小池 渉, 西本 豊弘, 安藤 寿男, 伊達 元成
    2010 年 116 巻 5 号 p. 243-251
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    茨城県つくば市の花室川河床から海生哺乳類である鰭脚類の化石骨を発見し,ニホンアシカZalophus japonicusオスの左上腕骨と同定した.また,中島ほか(2002)に中手骨あるいは中足骨と報告されていた標本を再検討の結果,Z. japonicusメスの左距骨と同定した.Z. japonicusの左上腕骨の骨組織について14C年代測定を行い,27,900±120 14C BPの年代値と31,950~31,300 cal BPの暦年較正年代値が得られ,この化石の供給源は化石の産状も考慮して桜川段丘堆積物に相当する緩斜面堆積物であると推定された.この年代は,ナウマンゾウPalaeoloxodon naumanniに代表される花室川の哺乳類化石群の含有層の年代が後期更新世末期であることを裏付けるものである.また,陸生哺乳類を主体とする花室川の哺乳類化石群から鰭脚類の左上腕骨と距骨が産出した理由については,後期旧石器時代人による人為的行為の可能性を検証する必要性が指摘される.
  • 田辺 晋, 中西 利典, 中島 礼, 石原 与四郎, 内田 昌男, 柴田 康行
    2010 年 116 巻 5 号 p. 252-269
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    中川開析谷の沖積層には泥質な海成層が厚く分布する.この海成層は完新世中期の海水準高頂期以降の奥東京湾奥から湾口にかけたデルタの前進によって形成されたと考えられてきた.開析谷を横断する3本のボーリングコア堆積物の堆積相と放射性炭素年代値を検討したところ,中川開析谷における沖積層の埋積過程は,ステージ I(~10 cal kyr BP):蛇行河川性堆積物の累重(aggradation),ステージ II(6~10 cal kyr BP):エスチュアリー性堆積物の開析谷中軸において厚く,開析谷縁辺において薄い累重,ステージ III(0~6 cal kyr BP):デルタ性堆積物の湾奥から湾口,開析谷の西縁から東縁にかけた前進(progradation),に分けられることが明らかになった.ステージIIからIIIにかけて開析谷中軸では潮流が強く影響し,デルタ性堆積物の西縁から東縁にかけた堆積もこれに起因すると考えられる.
  • 草野 有紀, 宮下 純夫, 池田 和也
    2010 年 116 巻 5 号 p. 270-282
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    新潟県五泉市早出川周辺地域には,緑色岩類をブロックとして多数含む足尾帯ジュラ紀付加コンプレックスが分布する.本地域の緑色岩は変玄武岩からなり,記載岩石学的にPl,Pl+Ol,Pl+Ol+Cpx,Pl+Cpx,無斑晶質の5タイプに分けられる.10試料の全岩組成からは,変玄武岩はMORBではなく,海洋島玄武岩であると判別される.各岩石を(La/Yb)Nで比較すると,海洋島ソレアイト質玄武岩と海洋島アルカリ玄武岩の2つのグループに識別される.16試料中の単斜輝石組成からも,全岩組成と同様にTiO2含有量の違いなどからアルカリ岩とソレアイトに区分されるが,Mg#の高い部分では重複した組成を示す.クロムスピネルの組成もMORBよりは海洋島玄武岩中に存在するスピネルに類似した組成を示す.したがって本地域に分布する変玄武岩は,海洋プレート上の海洋島ソレアイト質玄武岩および海洋島アルカリ玄武岩が付加体中にブロックとして取り込まれたものであると考えられる.
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