丹沢トーナル岩体中の石英中のヒールドマイクロクラック(HC)およびシールドマイクロクラック(SC)の三次元方位分布ならびに流体包有物の形成条件の検討から,古応力方位とその変遷を推定した.HCおよびSCの全データの方位はNNE-SSW方向のσ
Hmaxを示す.HCを構成する流体包有物のマイクロサーモメトリーから,丹沢周辺の地温勾配30~50℃/kmを考慮すると275~410℃,0.20~0.29 GPaの形成条件が推定され,K-Ar黒雲母年代の5~4 Ma頃にはHCは形成していた.丹沢トーナル岩体は1 Maの伊豆ブロックの衝突によって10℃の時計回りの回転を被っているため,マイクロクラック形成時にσ
HmaxはN-S方向であったと考えられる。丹沢トーナル岩体中の原位置応力測定でも同様のσ
Hmaxが得られていることから,同地域の応力場は5~4 Ma以降,現在まで大きく変化していないと推察される.
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