地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
118 巻, 5 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集 東北地方太平洋沖地震:統合的理解に向けて
総説
  • なぜM 9が発生したのか?
    飯尾 能久, 松澤 暢
    2012 年118 巻5 号 p. 248-277
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    東北地方太平洋沖地震の発生過程を明らかにして,なぜM 9が発生したのかという問題に答えることは,今後の地震発生予測とそれによる災害軽減のために大変重要である.本総合報告では,この最終目的へ向けて,既に公表されている色々な解析結果をレビューし,総合的に考察するとともに,今後の課題を示した.最初に,東北地方太平洋沖のプレート境界断層とその周辺における地震発生場の特徴を,主に非地震性すべりの時空間的な変化に着目して調べた.次に,東北地方太平洋沖地震の地震前,地震時,地震後のすべり分布を調べた.これらの知見に基づき,これまで提案された東北地方太平洋沖地震の発生過程に関するモデルを検証した.その結果,M 9の地震を引き起こした鍵は,海溝近傍においてプレート境界断層が長期間にわたって固着していたことか,あるいは,震源から海溝軸にかけての領域において地震時に動的弱化が起こったことである可能性が高いことが指摘された.
論説
  • 西村 卓也
    2012 年118 巻5 号 p. 278-293
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震以前の120年間の東北日本の地殻変動分布の特徴と時間変化を明らかにするため,測地観測(三角・三辺測量,水準測量,験潮,GPS連続観測)データの整理を行った.東北地方で卓越する水平歪みは,約90年間では南北伸張,最近10年間では東西短縮であるが,東北地方中軸部と日本海東縁歪み集中帯の顕著な東西短縮は両期間に共通していた.上下変動については,太平洋側の沈降が顕著であり,沈降速度は概ね一定であったが,福島県の太平洋側では,1939年から20年程隆起する時期があった.1994年のGPS連続観測開始以降の太平洋側の変動は,福島県において2000年頃から東西短縮速度の鈍化が見られた.この鈍化はプレート間固着分布の推定に基づくと,福島県・茨城県沖の固着が低下したことが原因と考えられる.このような変化は,巨大地震に至る一連のプロセスとして震源域の一部で固着の剥がれが進行していたことを示唆する.東北日本では,測地学的に計測された地殻変動と地学的に求められた地殻変動に矛盾があることが知られているが,測地学的歪み速度の中でもその時間スケールによりかなりの差がある.地殻変動の矛盾は東北地方太平洋沖地震の発生した今も完全に解消しておらず,現在進行中の余効変動が矛盾を解消する鍵になるかも知れない.
総説
  • 池田 安隆, 岡田 真介, 田力 正好
    2012 年118 巻5 号 p. 294-312
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    東北日本弧においては,測地学的観測で検出された水平短縮歪み速度が地質学的に観測される歪み速度よりおよそ一桁大きい.同様の不一致は垂直変動速度に関しても存在する;太平洋岸で急速な沈降が観測される一方で,第四紀後期の旧汀線高度は緩慢な隆起を示す.これは現在急速に蓄積している地殻歪みの大部分が弾性歪みであり,プレート境界の固着部分がすべることで解消されるということを示している.しかし,過去100年間に起こったMw 708級の海溝型地震は歪み解放に寄与していない.したがって,プレート境界の固着面全体がすべる巨大歪み解放イベントが存在するはずであり,2011年東北地方太平洋沖地震はこのような固着解放イベントであると考えられる.東北日本では幅広い固着領域の浅部のみが地震時にすべり,割れ残った深部固着域で余効すべりが起こるらしい.このような深部固着は,他の超巨大地震発生帯には存在しない可能性が高い.日本海溝に沈み込んでいるプレートの年齢は極めて古く従って低温であるから,このように深い固着域が存在するのは熱的な原因によると考えられる.
  • 松浦 充宏
    2012 年118 巻5 号 p. 313-322
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    プレート境界地震を引き起こす応力は震源域でのすべり遅れの増大に伴って蓄積される.地震間のすべり遅れに起因する地殻変動をGPS観測網で捉えて逆解析することで,南千島−日本海溝沿いのプレート境界には5つの顕著なすべり遅れ領域が存在することが確認されていた.一方,東北沖超巨大地震に伴うGPS変位データの逆解析から,この地震の断層すべりは宮城沖と福島沖の2つのすべり遅れ領域に及んでおり,最大すべり量は宮城沖で25 m,福島沖で6 mに達すると推定された.宮城沖のすべり遅れ領域では,過去200年間以上にわたり,M 7.5クラスの地震が40年間隔で繰り返してきた.その同じ領域でMw 9.0の超巨大地震が発生したことは,スケールに依存するマルチ地震サイクルの可能性を示唆すると同時に,これまで物理的実体とされてきたアスペリティが断層摩擦特性の空間的不均一を表す概念に過ぎないことを意味する.
論説
  • 武藤 潤, 大園 真子
    2012 年118 巻5 号 p. 323-333
    発行日: 2012/05/15
    公開日: 2012/10/05
    ジャーナル フリー
    東北地方太平洋沖地震後の余効変動の定量的解析にとって重要な東北日本弧の東西レオロジー強度断面を,地球物理学的観測および近年の実験岩石力学結果を用いて作成した.得られた強度プロファイルは,地震前に得られていた奥羽脊梁山脈への測地学的歪み集中や地震の深さ変化を説明する.さらにプレート境界型地震から推定される応力変化量を仮定することで,東北日本弧の粘性構造を求めた.地球物理学的観測から推定されている部分溶融帯や断層深部延長など低強度帯の存在は,内陸地震後の余効変動から推定された東北日本弧の粘性率を説明する.異なる余効変動機構の分離とそれぞれの定量的解析には,東北日本弧粘性構造の著しい不均質性を考慮する必要がある.
feedback
Top