渡島小島火山は西南北海道渡島半島沖の西方30 kmの海上にあり,背弧側火山列に位置する.その活動年代,形成過程,噴出物の岩石学的特徴を明らかにするため,新たに調査・サンプリングを行い,噴出物の鏡下観察・K–Ar年代測定・全岩化学組成分析を実施した.本火山は,中期~後期更新世の十数万年前に海中で活動を開始し,山体を徐々に海面上にまで成長させた.顕著な休止期を挟むことなく,火口位置を変えながら活動を継続し,非爆発的噴火を最後に活動を終えた.噴出物は玄武岩からデイサイトで構成され,その組成多様性は複数のマグマの混合が成因と考えられる.初期の活動に比べて,後期の活動時期には,複数のソース由来の多様な玄武岩質マグマが形成され,より多様な組成のマグマが噴出した.噴出物は,東北日本弧の背弧側火山に特有の高いK
2O量を示し,同位体組成も他の背弧側火山と同様に海溝側火山よりも枯渇した組成を有する.
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