地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
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120 巻, 10 号
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特集 地層処分と地質科学(その1) 地質環境とバリア機能
総説
  • 吉田 英一, 山本 鋼志
    2014 年 120 巻 10 号 p. 327-343
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    放射性元素の移動・遅延に直接影響を及ぼす可能性のある,地下環境中での鉄(Ⅲ)水酸化鉱物について検討を行った.その結果,1)鉄(Ⅲ)水酸化鉱物の形成は,岩体内に発達する水みちとなる割れ目ネットワークに基本的に規制され,岩体深部ほど鉄(Ⅲ)水酸化鉱物の分布,幅は減少する.2)岩体マトリクス中に形成された鉄(Ⅲ)水酸化鉱物は,還元状態になった後も残存する.3)地質環境中の鉄(Ⅲ)水酸化鉱物は放射性元素を吸着し,地下水シナリオにおける遅延効果に寄与する可能性が高い.そして4)地下環境で鉄(Ⅲ)水酸化鉱物を確認した場合でも,それは‘現在’の地表からの酸化水の到達を示しているのでなく,また岩体の有する還元機能が失われていることを示すものでもないことが分かった.サイト特性調査においては,これらを念頭に調査対象とする地質環境の総合的な調査を行うことが重要である.
  • 笹尾 英嗣
    2014 年 120 巻 10 号 p. 345-359
    発行日: 2014/10/15
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    わが国の高レベル放射性廃棄物の地層処分概念では,地質環境には長期的な安定性,人工バリアの設置環境および天然バリアとしての機能が期待されている.本研究では,ウラン鉱床を地層処分システムのアナログと見なして,わが国の地質環境がこれらの機能を有することを例証するため,ウラン鉱床の分布と産状に関する情報をまとめた.
    ウラン鉱床は様々な年代の地質体に胚胎し,ウランの大部分は様々な鉱物などに収着して存在すること,酸化帯でもウラン鉱物に6価のウランが固定されていることがわかった.
    ウランは高レベル放射性廃棄物中の核種の多くと酸化還元条件での化学的挙動が類似する.ウラン鉱床を保存してきた地質環境は地質学的な時間スケールで安定に還元環境を保持してきたと推定されることから,地層処分に適した地質環境は広く分布することが示唆される.ウランの産状からは,わが国の様々な地質環境において天然バリア機能が期待される.
論説
口絵
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