地質学雑誌
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120 巻, Supplement 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
日本地質学会第121年学術大会(2014年・鹿児島)巡検案内書
  • 尾上 哲治, 西園 幸久
    2014 年 120 巻 Supplement 号 p. S1-S17
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    九州西部の黒瀬川帯以南に分布する中・古生代の地層群は,1945年以降から精力的に層序・年代・地質構造について研究がなされ,日本列島形成史の研究に大きな影響を与えてきた.1970年代後半からは放散虫・コノドント化石年代が詳細に検討され,これらの地層群がジュラ紀の沈み込み-付加作用によって形成されたジュラ紀付加体であることが明らかになった.本巡検では,九州西部の球磨川沿いに分布する秩父・三宝山帯を対象として,この地帯を構成するジュラ紀付加体の起源と形成過程を議論する.秩父・三宝山帯の陸源砕屑岩類は,玄武岩・チャート・石灰岩などの雑多な岩相・年代の海洋性岩石を異地性・異時代の岩塊として含むことが知られている.本巡検では特に,これら海洋性岩石の付加以前の初生的な層序や付加過程について焦点をあてる.また,ジュラ紀付加体を被覆すると考えられる上部ジュラ系海溝斜面堆積物の岩相・層序についても観察する.
  • 小松 俊文, 三宅 優佳, 真鍋 真, 平山 廉, 籔本 美孝, 對比地 孝亘
    2014 年 120 巻 Supplement 号 p. S19-S39
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    甑島列島には,上部白亜系の姫浦層群が分布し,非海生~海生の化石を多産する.下甑島北部の姫浦層群では,下部~中部カンパニアン階の河川成堆積物や潮汐堆積物,波浪堆積物を伴う外浜や陸棚などの浅海相が繰り返しており,非海成層からはマガキ類のカキ礁や脊椎動物化石が産出し,外浜や陸棚堆積物には二枚貝やアンモナイトなどの大型化石や放散虫などの微化石が含まれている.中甑島の姫浦層群は,主に中部~上部カンパニアン階からなり,浅海相を伴うものの土石流堆積物やスランプ層が特徴的な陸棚斜面相が主体で,半遠洋性の泥岩からイノセラムスや放散虫などが産出する.また,土石流堆積物には,マガキ類の破片殻が含まれており,陸域から運搬されてきたと考えられる脊椎動物の骨片を伴う.
    この巡検では,これらの化石の構成や産状,保存状態を観察することや堆積環境を復元する上で鍵となった堆積構造を観察する.また,イノセラムスやアンモナイトを用いて明らかになった下部~中部カンパニアン階の層序や動物相にも注目する.なお,鹿島地域から産出した脊椎動物化石については,鹿島支所内に保管されている標本を見学する.
  • 石原 与四郎, 髙清水 康博, 松本 弾, 宮田 雄一郎
    2014 年 120 巻 Supplement 号 p. S41-S62
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    宮崎県の日南海岸沿いには,古第三系~新第三系の深海相がよく露出する.このうち日南市の猪崎には,古第三系日南層群がオリストリスとして見られる.その内部はチャネル・レビーシステムのタービダイトサクセッションから構成されるが,ソールマークや生痕化石が顕著に観察できるとともに,様々な液状化・流動化構造がよく発達していることで知られている.日南層群を不整合で覆う宮崎層群は,前孤海盆充填堆積物であり,粗粒な“宮崎相”と砂岩泥岩互層からなる“青島相”からなる.“宮崎相”は河川~浅海および,狭い陸棚をもつ斜面上に形成されたファンデルタシステムで,相対的海水準の変動と対応した堆積相の分布を示す.これらには石灰岩や波浪を特徴付ける堆積相,さらに重力流堆積物が顕著である.一方,“青島相”は海岸沿いによく露出し,全体的に単調な砂岩・泥岩互層からなる“タービダイト”サクセッションをなす.これらの“タービダイト”は,通常とは異なる堆積構造をもち,その重なりは通常のタービダイトサクセッションとは違う層厚分布を示す.そして一部には津波堆積物と考えられる厚層理砂岩層も挟在する.●本巡検では,主に日南海岸沿いに分布するこれらの深海相・タービダイトサクセッションをめぐり,様々な重力流堆積物やそれらが構成する地層を見学する.
  • 小林 哲夫, 佐々木 寿
    2014 年 120 巻 Supplement 号 p. S63-S78
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    桜島火山は鹿児島湾最奥部を占める姶良カルデラの後カルデラ火山であり,その誕生は26,000年前である.歴史時代にも多くの噴火を繰り返したが,ちょうど100年前の大正噴火(1914年)で流出した溶岩で瀬戸海峡が埋め立てられ,大隅半島と陸続きとなったのは有名である.その後も山頂~山頂付近に生じた火口で活発な噴火活動を続けており,日本を代表する活火山である.本コースでは,桜島火山の歴史時代の噴出物や最新の火山地形を観察する.特に大正噴火の西側火口から噴出した火砕物質と溶岩流の産状を詳しく観察し,噴火の推移を考える.
  • 小山内 康人, 中野 伸彦, 吉本 紋, 亀井 淳志
    2014 年 120 巻 Supplement 号 p. S79-S100
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    九州中西部に点在する変成岩分布地域の中で,西南日本外帯に位置する黒瀬川構造帯と同内帯に位置する肥後変成帯の各種変成岩類、および木山変成岩を訪ねる.黒瀬川構造帯では,蛇紋岩メランジュ中にブロックとして産する高圧変成岩類(カンブリア紀の海洋地殻起源とみなされる青色片岩,ヒスイ輝石-藍閃石変ハンレイ岩など)と高温変成岩類(オルドビス紀の活動的大陸縁における火山弧火成活動に由来するザクロ石-単斜輝石グラニュライト,ザクロ石角閃岩など)を見学する.緑色片岩相からグラニュライト相にいたる一連の地殻断面を示す肥後変成帯では,部分溶融現象を伴う泥質グラニュライトや過アルミナ質のサフィリングラニュライトなど,ペルム紀末の変成作用を受けた下部地殻(一部は白亜紀の重複変成作用)を見学する.また,木山変成岩では,石炭紀の高圧変成岩(青色片岩)を見学する.これらを通して,日本列島形成に関する古生代テクトニクスについて現地討論する.
  • 安間 了, 山本 由弦, 下司 信夫, 七山 太, 中川 正二郎
    2014 年 120 巻 Supplement 号 p. S101-S125
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    世界自然遺産・屋久島の生物多様性を支えるのは海洋性の環境の中に現出する高山地形である.多くの海洋島が火山からなるのに対して,屋久島の基盤を構成するのは四万十帯の砕屑性堆積岩類と屋久島花崗岩である.本巡検では高山を形成する屋久島花崗岩の貫入機構を,正長石巨晶の定方向配列,岩脈の分布,貫入に伴う母岩の変形と接触変成作用の観察を通して議論する.母岩の四万十帯の地層や枕状溶岩の産状,付加体中での圧密,メランジュやデュープレックス構造の形成,地震による液状化構造がどのような順序で発達したかを観察し,付加体の変形史とメランジュの認定基準について議論する.また鬼界カルデラの噴火に伴う火砕流堆積物の産状,噴火による地震が引き起こした液状化などの構造を観察し,海中における爆発的噴火がもたらしうる災害のシナリオを検討する.
  • 内村 公大, 鹿野 和彦, 大木 公彦
    2014 年 120 巻 Supplement 号 p. S127-S153
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    鹿児島湾沿岸は現在もリフティングを続ける地域であるが,湾奥にあってマグマが集積して隆起している姶良カルデラ縁や,開析が進んだ姶良や国分の谷などで,リフトを充てんする火砕流堆積物と湖沼成堆積物,内湾~浅海堆積物が観察できる.このサクセッションは,鹿児島リフトのリフティングと火山活動,そして海水準変動とが連関したプロセスの中で形成されたもので,複雑な火山堆積システムをなしているように見える.いまだ未解明な点が多々あるが,島弧内リフトの火山堆積システムを紐解くひとつの事例として観察すると,思わぬことが見えてくる可能性がある.
  • 井村 隆介, 石川 徹
    2014 年 120 巻 Supplement 号 p. S155-S164
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    霧島山は,南九州の鹿児島・宮崎の県境に位置する,第四紀の複成火山である.本コースでは,2010年に日本ジオパークネットワークに登録された霧島ジオパークのジオサイトを巡りながら,霧島山の噴火史や2011年1月に始まった新燃岳(しんもえだけ)噴火について紹介する.巡検では,まず,麓から霧島火山全体の地形や生い立ちを学び,その後,高千穂河原(たかちほがわら)や新湯(しんゆ)付近にて,2011年の噴出物や噴火による地形の変化などを観察する.噴出物に覆われた地域の植生回復の様子も見どころのひとつである.
  • Osamu Fujiwara
    2014 年 120 巻 Supplement 号 p. S165-S184
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2014/12/26
    ジャーナル フリー
    南海トラフや相模トラフでは,大きな津波を伴う巨大地震(M8クラス)が過去に繰り返し発生し,沿岸の地域に被害を及ぼしてきた.2011年東北地方太平洋沖地震を受けて国の地震・津波の想定が見直され,「最大クラスの巨大地震・津波」が公表された.その結果,一部の自治体などでは巨大津波を想定した防災・減災対策も進みつつある.この地域では巨大地震と津波の履歴解明のために,歴史記録の解読とともに津波堆積物の調査研究が進められてきた.しかし,過去の地震・津波の規模や再来間隔を解明して,将来発生する地震・津波の規模や時期などを予測し,防災対策に役立てるにはまだ情報が不足しており,さらなる研究が必要である.本巡検では,東海地震や関東地震の痕跡を伝える建物や地層・地形を巡る.また,自治体等による防災対策の状況を視察する.これらを通じて,古地震・津波に関する研究の意義と,今後の方向性について議論する機会としたい.
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