大分県に分布する津井層(上部ジュラ系)中の礁性石灰岩の岩相と化石相を定量的に検討した.層厚35 mのセクションの中で,生物相は下部のサンゴ−層孔虫主体の群集からレクイエニア亜目の厚歯二枚貝(
Epidiceras)とケーテーテスを含む群集へと変化する.石灰岩の岩相,サンゴ群体の骨格の形状,造礁生物の構成要素から,堆積環境は炭酸塩マウンド上に存在した貧栄養の静穏な極浅海域であったと考えられる.
Epidicerasはサンゴとともにセクション上部で厚さ0.5-1.5 mのバイオストロームを作る.津井層の
Epidicerasのバイオストロームの産状は三畳紀のメガロドン目のもの,白亜紀のレクイエニア亜目のものと類似する.一方,愛媛県の鳥巣式石灰岩から報告された初期のヒップリテス亜目の産状とは大きく異なる.このことは,厚歯二枚貝の生態が出現してから比較的早い時期にすでに多様化していたことを指示する.
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