地質学雑誌
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121 巻, 8 号
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巡検案内書:第122年学術大会(2015・長野)
  • 田辺 智隆
    2015 年 121 巻 8 号 p. 265-278
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/08/29
    ジャーナル フリー
    長野市の北西部にある戸隠地域は,標高1,908mの戸隠山を中心に平安時代から山岳信仰の霊場となってきた場所である.地質学的には,北部フォッサ・マグナ地域の中央に位置し,新第三紀鮮新世の海成層が隆起してできた地域で,江戸時代から化石の産地として記録が残っている.「なぜ戸隠から化石がみつかるのか?」をテーマに,廃校になった小学校を利用した戸隠地質化石博物館が2008年に開館した.このコースでは,このユニークな博物館を見学するとともに,裾花川沿いの新第三紀の地層や化石の産出状況,地形などを見学し,長野の大地の生い立ちを学びたい.
  • 関 めぐみ, 保柳 康一
    2015 年 121 巻 8 号 p. 279-292
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/08/29
    ジャーナル フリー
    東北日本弧と西南日本弧の会合部に位置する北部フォッサマグナ地域には,日本海形成時に形成された堆積盆地を埋積して,厚い新第三系が堆積している.その内,長野県上水内郡小川村から大町市にかけての高府向斜西翼地域に分布する中新統から鮮新統は,砂岩を主体とする層準と泥岩を主体とする層準が周期的に繰り返している.小川村小川川沿いでは周期的に繰り返す砂岩卓越部と泥岩卓越部が観察できる.泥岩卓越部に挟まれる砂岩卓越部は,a砂岩タング,b砂岩タング,c砂岩タング,d砂岩タングの順に累重する.砂岩タングの堆積相は陸棚斜面環境から陸棚上の外浜環境を示し,次第に浅海化していく様子が観察できる.小川川で観察される沖側の堆積環境に対して,大町市美麻を流れる金熊川では陸側の環境が観察でき,デルタ上の前浜,網状河川や海進時のエスチュアリーで堆積した砂岩が卓越する地層を断続的に観察することができる.
    今回の巡検では北部フォッサマグナ地域における中新統の斜面堆積物と陸側のデルタ堆積物を海水準変動と関連させたシーケンス層序学的なアプローチをもとに観察する.
  • 短縮テクトニクスによる傾動山脈隆起の典型例
    原山 智
    2015 年 121 巻 8 号 p. 293-308
    発行日: 2015/08/15
    公開日: 2015/08/29
    ジャーナル フリー
    北アルプス北部,鹿島槍ヶ岳から爺ヶ岳,蓮華岳一帯には,第四紀前期更新世の火山-深成コンプレックスの断面が広く露出している.この一帯では火山活動と花崗岩マグマの上昇定置の直後にあたる1.6-0.6Maの間に傾動を伴う隆起が生じており,爺ヶ岳火山岩類と黒部川花崗岩が80°前後の直立に近い状態まで南北水平軸回転している.この巡検では,北アルプス稜線の爺ヶ岳南峰と中央峰の間においてほぼ直立した湖成堆積物や溶結凝灰岩層を観察するほか,爺ヶ岳火山岩層中に貫入した黒部川花崗岩の接触境界,黒部川花崗岩中に多量に含まれる暗色苦鉄質包有岩を観察する.さらにカルデラ外に流走したアウトフロー堆積物である大峰火砕流堆積物を大峰山地において観察する.
    大峰火砕流堆積物は東に40°前後傾斜している.北アルプスの隆起に引き続き,中期更新世以降に松本盆地東縁断層に沿った衝上運動が生じ,大峰帯の傾動隆起を引き起こした.北アルプスも大峰帯も第四紀以降の北部フォッサマグナと北アルプス一帯を支配した短縮テクトニクス場での構造運動により生じている.なお2.2-0.8MaのジルコンU-Pb年代値が報告された第四紀黒部川花崗岩が,定置直後の傾動隆起によりどのような熱年代学的応答をしたのかについても解説を行う.
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