地質学雑誌
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123 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特集 125周年記念特集:深海掘削計画(IODP)10年の成果(その1)
総説
  • 森下 知晃
    2017 年 123 巻 4 号 p. 185-205
    発行日: 2017/04/15
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    本論では,2003年-2013年の10年間のIntegrated Ocean Drilling Program(IODP)で行われた掘削のうち,中央海嶺で形成された海洋プレートの深部起源である斑れい岩やかんらん岩が採取された航海について,記載岩石学的,地球化学的内容を中心にまとめた.主要な貢献は(1)海洋コアコンプレックスの成因に関する1400mを超える斑れい岩が採取された大西洋アトランティス・マッシーフにおける掘削孔U1309(304/305航海),(2)高速拡大系ココスプレートで世界初の海洋斑れい岩採取された掘削孔1256D(206, 309, 312, 335航海),(3)高速拡大系の東太平洋海膨ヘス・ディープからの層状斑れい岩が採取された掘削孔U1415(345航海)である.また掘削調査船「ちきゅう」を用いた将来的なマントル掘削を含む海洋深部岩石掘削計画について紹介した.

  • 佐野 貴司
    2017 年 123 巻 4 号 p. 207-223
    発行日: 2017/04/15
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    21世紀に入ってから,2つの海洋LIPs(オントンジャワとシャツキー海台)で基盤溶岩を採取する掘削が行われた.基盤溶岩は大陸洪水玄武岩の塊状層状溶岩流と類似していた.元来,両LIPsはプルーム頭部がプレート境界に衝突して生産されたと考えていたが,40Ar-39Ar年代は熱プルームモデルから想定されるよりも長期間の活動を示した.岩石学的に見積もられたマントルの温度(ポテンシャル温度)も熱プルームモデルから期待される温度(>400°C)よりは低温であった.両LIPs溶岩には様々に肥沃化した微量元素および同位体組成が認められ,これはプルームに起源を持つことを示していが,明瞭な下部マントルの特徴(例えば,高3He/4He比)は確認できなかった.また両LIPsの形成後の沈降量は熱プルームモデルから推定される値に比べると少ないことが分かった.単純な熱プルームモデルでは,両LIPsのマグマ成因を説明できなく,まだ沢山の課題が残っていることが分かった.

  • 高井 研
    2017 年 123 巻 4 号 p. 225-235
    発行日: 2017/04/15
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    IODP331次調査は,深海熱水域における海底熱水直下生命圏の直接証明を目指し,沖縄トラフ伊平屋北フィールドの海底熱水噴出域の掘削・コアサンプルの回収,人工熱水噴出孔の創成を行った.3つのサイトにおいて人工熱水噴出孔を創成するとともに,1つのサイトには掘削によって創成された新しい熱水噴出孔を形成した.掘削後5年以上に渡るポストドリリング研究から,人工熱水噴出孔における熱水の噴出パターンや鉱物沈殿の形成パターン,熱水の化学組成や沈殿物の鉱物組成の時間的変動が明らかになり,海底硫化金属鉱床成因に対する重要な科学的知見を提示するだけでなく,今後の現場計測や海底工学実験,海底金属資源開発における新しい可能性を提示した.また,世界で初めて科学掘削による環境変化が熱水化学合成生物群集に及ぼす影響が調べられた結果,掘削によって熱水噴出パターンに大きな変動が観察され,化学合成生物群集に新しい生息場の提供と移住をもたらすことが明らかになった.

  • 石橋 純一郎, 柳川 勝紀, 高井 研
    2017 年 123 巻 4 号 p. 237-250
    発行日: 2017/04/15
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    統合国際掘削(IODP)331次航海は,中部沖縄トラフの伊平屋北海丘を対象として2010年9月に実施された.熱水噴出を伴うマウンド直近のSite C0016では,黒鉱鉱床に比する熱水鉱化作用を見出した.マウンド東側数百mに位置するSite C0013,Site C0014からは,かなり浅い深度の堆積層にまで熱水成分が広がることを示す様々な証拠が得られた.一方,1550m離れたSite C0017では,50mbsfに至る海水の浸入が明らかになった.熱水域の海底下には,熱水によって支えられる高温で還元的な環境と海水の浸入によって形成される低温で酸化的な環境が出会う領域がキロメートルに及ぶスケールで広がっており,そのような領域に海底下生命圏が発達している.本掘削によって,火山性砕屑層が分布する地質学的環境に発達する海底熱水系の新たな描像を示すことができた.

  • 山崎 俊嗣, 山本 裕二, 金松 敏也
    2017 年 123 巻 4 号 p. 251-264
    発行日: 2017/04/15
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー

    2003年の統合深海掘削計画開始以降の古地磁気・岩石磁気学の進歩について,堆積物による相対古地磁気強度推定を中心に紹介した.北大西洋の掘削コアから得られた古地磁気強度データは,過去150万年間の高分解能古地磁気強度スタックの確立に結びついた.従来300万年以前の記録はほとんどなかったが,赤道太平洋の掘削コアから始新世〜中新世の相対古地磁気強度記録が得られ,古地磁気強度の年代層序への適用可能年代が拡大した.一方,古環境変動に伴う堆積物の岩相変化,特に生物源・陸源磁性鉱物の割合や堆積速度の変化が,相対古地磁気強度推定に混入する問題が明らかとなった.この解決へ2つの方策を提案した.混入のない古地磁気強度変動記録が得られるようになれば,地磁気強度と逆転間隔の関係や,地磁気変動,地球軌道要素,および気候変動の間のリンケージなど,長年の問題の解決につながると期待される.

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