地質学では地球の探求によって得た知識や考え方を社会に還元することも重要である.応用地質学はその役割を担う分野として成立しているが,それに向けた分野独自の見方や方法等が確立されているわけではない.このことは,学問体系の不明確さも加わって,応用地質学分野が網羅する内容や地質学内での位置付け等のあいまいさにつながっている.役割を果たすための分野の機能として,社会と地質学との相互関係の理解,時間・空間スケールの違いに基づいた情報の変換と伝達,既存の地質学の不足部分の補充などが挙げられ,これらの部分の研究がバランスよく進展していく必要がある.さらに地質学各分野の細分化を考慮すれば,社会への窓口として各分野との情報交換を経て知識の統合ができることも必要である.それらのもとでのサイエンスとエンジニアリングの組み合わせが応用地質学の学問的価値をもたらすであろう.
岩石の風化は,地表の形態を変化させるプロセスと速度に大きな影響を及ぼすため,応用地質学的に重要な問題のひとつである.岩石の風化研究は,(1)風化のプロセスに関する研究,(2)風化物質と岩石の物性変化に関する研究,(3)岩石の風化速度に関する研究,に分けられる.岩石の風化生成物の物理的・力学的・化学的性質は密接に関連しており,風化研究にとって重要である.しかしながら,風化研究では,岩石に風化が及んだ時間の特定が困難という問題を持つ.日本における風化研究は,新しい分析技術を導入し,実験的手法において進展してきた.最近は,塩類風化が岩石物性に及ぼす影響に関する研究が進展している.岩石の風化速度に関する研究では,形成年代が既知の段丘堆積物を用い,段丘の離水から現在までを風化時間と見なす方法を用いて議論されている.今後の風化研究の発展には,岩石の風化速度と風化による物性変化に関するデータの蓄積が必要である.
二重(多重)山稜,山向き小崖,谷向き小崖,山上凹地などの地形は,1970年代までは周氷河地形と考えられていたが,斜面が重力により深部から変形(英語ではdeep-seated gravitational slope deformation: DSGSDと呼ばれる)した結果できる山体重力変形地形であると考えられるようになった.近年の航空レーザ測量技術の進歩により,山体重力変形地形は森林限界より上の高山にのみ発達するわけではなく,低山の森林の下にも無数に存在することが明らかにされた.本総説は,日本における山体重力変形地形の用語,研究の歴史,形成要因,将来展望についてまとめたものである.
2000年代以降に進展した,造構応力よりは重力が主に作用する場で形成されるノンテクトニック地質構造の日本での研究をレビューした.ノンテクトニック断層には重力性のもの,地震動によるもの,火山活動によるものなどがあることが明らかになった.ノンテクトニック褶曲にはノンテクトニック断層に関連する重力性の座屈褶曲,曲げ褶曲やバレーバルジングによる谷背斜が報告された.応力解放に伴うシーティング節理も,細密に発達するラミネーションあるいはマイクロシーティングを含めて研究が進展した.典型的なものを除けば,形成場が共通するノンテクトニック構造をテクトニック構造と識別することは,両者の複成,複合構造もあることから難しいことが明らかになってきた.ある構造の形成機構や発達史をノンテクトニックな過程を含めて総合的に明らかにすることが,地質学の知識を社会に生かす応用地質学の立場からも重要である.
日立地域の鮮新統久米層基底礫岩の礫から報告されたペルム紀腕足類フォーナ(石名坂フォーナ)に新たにレプトダス・ノビリスが追加され,合計17属18種となった.石名坂フォーナは中期ペルム紀(ワード期)のボレアル型-テチス型混合腕足類フォーナで,東北日本(南部北上帯),ロシア東部(プリモリエ南部),中国北部(内蒙古)のフォーナと種構成が似ており,古生物地理学的にこれらと近縁なフォーナである.日立地域は南部北上地域と共に,中期ペルム紀には北中国(中朝地塊)東縁の大陸棚の一部であったと推定される.また,日立古生層のうちとくに鮎川層は南部北上帯のペルム系の延長部で,地体構造的には南部北上帯に属すると考えられる.
筆者らは三重県に分布する中新統一志層群の上部について浮遊性有孔虫・珪藻化石層序を検討した.大井層三ヶ野部層上部と片田層茶屋部層から得られた浮遊性有孔虫化石群集は亜熱帯的な性質を持ち,それらは今回調査した堆積岩セクションが浮遊性有孔虫化石層序のN.7帯~N.8帯下部に対比されることを示す.今回調査したセクションにおいて,N.7帯/N.8帯境界は大井層/片田層境界の約19m下位に位置することが判明した.N.7帯/N.8帯境界より下位の三ヶ野部層上部は珪藻化石層序のCrucidenticula sawamurae帯(NPD2B帯)に対比可能である.今後,N.7帯/N.8帯境界と磁気極性層序との対応関係およびその境界年代を今回調査したセクションで解明できる可能性があり,それが解明されれば17~15Maの古地磁気-微化石年代尺度の精度と確度が向上すると期待される.
Back-arc basin basalts from the Shikoku Basin were recovered at DSDP Leg 58 Sites 442-444 and ODP Leg 131 Site 808. The geochemistry of these volcanic rocks was initially reported soon after their recovery (from the 1980s to the early 1990s), and therefore many of these data suffered from limits of accuracy inherent in data at the time. We reanalyzed archived samples of Sites 442-444 and 808 using recent analytical techniques of XRF and ICP-MS and reported these highly accurate results herein.
Boulders of biotite-phenocryst-rich, high-K basaltic rock were discovered in the upper stream of the Kuzuryu River in Katsuyama City, Fukui Prefecture. The biotite phenocrysts are zoned, with pale brown cores and dark brown margins. Relics of mafic minerals, replaced by carbonate minerals, contain chromian spinel. Although the primary chemical composition is affected by the formation of secondary minerals such as carbonate, the SiO2 and K2O contents of the studied rock are 48-49 wt% and 3.6 wt%, respectively, which are within the chemical range of absarokite. Chondrite-normalized rare earth element and primitive-mantle-normalized trace element patterns of the studied volcanic rocks are characterized by high LREEs/HREEs, high concentrations of LILEs, and negative anomalies of HFSEs (Nb, Ti). These petrological and geochemical characteristics represent a primary composition that has never before been reported in the Hokuriku district.