地質学雑誌
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124 巻, 4 号
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125周年記念特集:水蒸気噴火の地質学的研究の進展
前文・表紙説明
総説
  • 及川 輝樹, 大場 司, 藤縄 明彦, 佐々木 寿
    2018 年 124 巻 4 号 p. 231-250
    発行日: 2018/04/15
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー

    噴出物中に本質物を含まない水蒸気噴火は,地球上でもっともありふれた噴火の一つである.我々は水蒸気噴火の各種特徴のレビューを行った.水蒸気噴火は,過熱水が急激に水蒸気に変化することで発生する噴火である.水蒸気噴火の噴出物は,粘土分に富んだ火山灰と変質ないし未変質の火山礫・火山岩塊で構成される.一回の水蒸気噴火は1時間から1日程度で終了することが多いが,同程度の規模の噴火を数年間にわたり繰り返すこともある.一回の水蒸気噴火における噴出物量は108m3(見かけ体積)以下である.水蒸気噴火で発生する現象は,降下テフラ,投出岩塊,比較的低温(概ね100°C程度)の火砕流,火口噴出型ラハールなどである.このうち低温の火砕流,火口噴出型ラハールの詳しい記載は少ない.層相からそれらの現象を判断し復元できるようにすることは今後の課題である.

  • 寺田 暁彦
    2018 年 124 巻 4 号 p. 251-270
    発行日: 2018/04/15
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー

    草津白根火山の山体各所で湧出している温泉水は,高温火山ガスが凝縮することで形成された共通の熱水に由来すると考えられる.温泉流動は浅部に広がる粘土層に規制されている.火口周辺直下では,流体供給を反映した微小地震活動が認められ,湯釜火口湖の直下数100mに広がる釣鐘型の不透水層の下方に接続している.その付近には,LP地震や地球磁場変動の源も求められる.この領域は浅部熱水だまりに相当し,水蒸気噴火は,この熱水だまりや,その流体流動経路から地表へとクラックが形成されることで発生するのであろう.草津白根火山では,噴火先行現象がたびたび観測されてきたが,その内容は,噴火場所や規模と無関係であり,時期とともにその内容も変化している.近代的観測が始まった1970年代以降,顕著な火山活動の変化が観測されても噴火に至らないケースもある.定常的な火山観測データに現れる変化の中から,噴火前兆現象を識別することは容易ではない.

論説
  • 水蒸気噴火とマグマ噴火の時空間的関連
    伊藤 順一, 濱崎 聡志, 川辺 禎久
    2018 年 124 巻 4 号 p. 271-296
    発行日: 2018/04/15
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー
    電子付録

    岩手火山およびその周辺域における水蒸気噴火の発生履歴を解明するために,山麓部および登山道沿いでの詳細な地質調査に加え,14C年代測定および噴出物の構成物分析(特に,変質鉱物種分析)を行った.また,水蒸気噴火とマグマ噴火との関連性を検討するために,山麓部の火山灰層序を再確認しつつ,新たに年代測定を実施した.その結果,約8.4cal. ka以降の噴出物として,12ユニットの水蒸気噴火堆積物と,1ユニットの水蒸気噴火による火砕流あるいは熱水変質地域を源とする火山性流れ堆積物を認定した.約9千年前の大規模山体崩壊以降に発生した薬師岳のマグマ噴火と水蒸気噴火の時間的関連性については,両者が連続的に発生したイベントがある一方で,互いの休止期に発生するイベントもあり,一貫した関連性は確認できなかった.一方,数百~千年スケールでの活動推移に着目すると,爆発的マグマ噴火の活性期には水蒸気噴火の発生頻度が高まる傾向が認められる.

  • 石毛 康介, 中川 光弘, 石塚 吉浩
    2018 年 124 巻 4 号 p. 297-310
    発行日: 2018/04/15
    公開日: 2018/06/30
    ジャーナル フリー

    大雪火山群で活動を続ける旭岳について,後期更新世~完新世のマグマ噴火および水蒸気噴火堆積物の層序を明らかにした.旭岳のマグマ噴火は,1.5万年から9千年前頃が最盛期で,それ以降,マグマ噴出率は低下していく.約5,000年前以降にマグマ噴火は発生していない.その後旭岳では,約2,800年前に規模の大きな水蒸気噴火があり,現在の地獄谷爆裂火口が形成された.最後の噴火は,約700年前の小規模な水蒸気噴火である.旭岳は現在噴気活動が活発ではあるが,最近2,800年間でみると噴火頻度は低い.しかしながら多数の観光客や登山者が訪れる現状を考慮すると,小規模な噴火の可能性に留意しておく必要がある.

口絵
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