地質学雑誌
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126 巻, 6 号
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論説
  • 菊地 瑛彦, 長谷川 健
    2020 年 126 巻 6 号 p. 293-310
    発行日: 2020/06/15
    公開日: 2020/10/14
    ジャーナル フリー

    栃木県北部,那須火山群から発生した余笹川岩屑なだれ堆積物の層序・年代を明らかにし,運搬過程を考察した.余笹川岩屑なだれ堆積物は,那珂川流域を中心に広く分布し,塊状で基質相・岩塊相からなる層相を示す.主要な岩塊相として石英含有輝石安山岩~デイサイト質溶岩(SiO2:58~63wt.%)を含む点で黒磯岩屑なだれ堆積物と識別でき,単層でも追跡可能である.層序的には,中部日本を起源とするKMT(0.62Ma)の上位,APm(0.33-0.36Ma)の直下に位置することから,少なくとも33万年前以前に発生したことが分かる.遠方下流域に至っては茨城県北部の粟河軽石層に対比可能で,合計するとその流走距離は100km以上に及ぶ.下流域において,堆積物下部に溶岩岩塊および礫が濃集する(一部で礫支持構造を示す)ことから,河川を流走中に水に飽和して流動化しラハールに変化したため,長距離を流走できたと考えられる.

  • 中澤 努, 長 郁夫, 坂田 健太郎
    2020 年 126 巻 6 号 p. 311-326
    発行日: 2020/06/15
    公開日: 2020/10/14
    ジャーナル フリー

    一般に地盤が良いとされるローム台地において,ローム層が地盤震動特性に与える影響を知るために,栃木県宇都宮地域で段丘面ごとに微動アレイ観測を行った.その結果,調査地域の段丘を覆うローム層はS波速度が130~150m/sと低いこと,また古い段丘ほどローム層が厚いために深度30mまでの平均S波速度は低く,H/Vスペクトルのピーク周波数も低周波側にシフトすることが明らかになった.一方で,鬼怒川や五行川などの河床は主に礫質堆積物からなりローム層を欠くため,河川沿いの低地では平均S波速度は高く,H/Vスペクトルでは高周波にピークがみられた.つまり調査地域では,低地面や低位の段丘ほど堅固な地盤であり,高位の段丘ほどローム層が厚く,軟らかい地盤であるといえる.高位の段丘では,地震の際にやや低周波の揺れが大きく増幅される可能性がある.

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