日本地質学会学術大会講演要旨
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第128学術大会(2021名古屋オンライン)
選択された号の論文の352件中301~350を表示しています
R15(ポスター)古生物
  • 横尾 彩花, 藤崎 渉, 高橋 唯, 上松 佐知子, 丸岡 照幸
    セッションID: R15-P-3
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    顕生代には複数回の氷河時代が生じたことが知られているが、その中でも古生代後期の氷河時代(Late Paleozoic Ice Age; LPIA)は、超大陸パンゲアの形成、大気中の酸素/二酸化炭素濃度の増加/減少、熱帯雨林の進化と拡大といった様々な地質イベントで特徴付けられる(e.g., Berner, 2006; Montañez et al., 2007; Montañez and Poulsen, 2013)。さらに近年LPIAの期間、特に前期石炭紀(mid-Visean)から前期ペルム紀(late Asslian)の間に、生物種が急激に増加(10.75%/Myr)した生物多様性イベント(Carboniferous–earliest Permian Biodiversification Event; CPBE)が報告されている(Fan et al., 2020; Shi et al., 2021)。この生物種の増加率は、中期から後期オルドビス紀にかけて生じた生物多様性イベント(Great Ordovician Biodiversification Event; GOBE)に匹敵する(11.60%/Myr)と推定されており、CPBEの全容解明は古生代に生じた生物多様性を包括的に理解する上で非常に重要な研究課題である。CPBEによる生物種の増加は大きく2回のイベントに分けられ、1回目は前期石炭紀(mid-Visean)から後期石炭紀(early Bashkirian)、そして2回目は後期石炭紀(early Bashkirian)から前期ペルム紀(Late Asselian)に相当する(Fan et al., 2020; Shi et al., 2021)。これらの期間では、コノドントや頭足動物といった生物群は緩やかに減少する一方で、有孔虫や腕足動物といった生物群は急激に種の数を増やしていったことが報告されている。しかし、これらの議論は、主に中国、インドネシア、カザフスタンといったテチス海を囲む大陸縁辺部の化石記録に基づいて展開されており、当時の海洋の大部分を占めていたパンサラッサ海での化石記録はほとんど含まれていない。 そこで本研究では、超海洋パンサラッサ中央部にて堆積した古海山頂部起源の環礁複合体と考えられる岡山県井原地域に産する日南石灰岩に着目した。先行研究では、層厚約50mに及ぶ一連の石灰岩セクションから約1 m間隔でコノドント化石が抽出・記載され、前期–後期石炭紀境界(Mississippian-Pennsylvanian Boundary; MPB)を跨ぐ6属16種のコノドント相が報告されている(Mizuno, 1997)。一方で、我々が新たにcmスケールの詳細な地質柱状図の作成及び岩石記載を行った結果、同セクションから先行研究では記載されていなかった断層が新たに2箇所確認された。本研究では、これら断層間の年代ギャップの評価に加え、これまで主にテチス海浅海部の化石記録から評価されていたCPBEに、新たにパンサラッサ海中央部での化石記録を加えることで、CPBEの中でも1回目の生物種増加イベントが生じたMPB近傍での全球的な描像を捉えることを目標としている。今回の発表では、これまでに行った日南石灰岩の露頭記載に加え、コノドントやフズリナといった化石記録の最新の結果を紹介する予定である。

  • 土井 信寬, 亀尾 浩司
    セッションID: R15-P-4
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    新生代を通して最も普遍的に産出する石灰質ナノ化石Reticulofenestra属と,それに近縁な分類群であるDictyococcites属は,短冊形の方解石結晶からなる微小なエレメントが楕円上に配列した円盤2枚を重ねた構造を持っている.両者の円盤の中央部には中央開口部という穴があり,Dictyococcites属はその穴を覆う方解石の構造物をもつ点でReticulofenestra属と区別される.ただし,この構造物はReticulofenestra属の円盤に方解石結晶の装飾が付加したものという考えもあり(Bown and Young, 1997),同じ属として扱われることもある.実際,新第三系で見られる両者の円盤の大きさや形は非常に似ていることが,計測結果から明らかにされている(Henderiks, 2008).一方,古第三系,特に始新統で産出する両者の形状は近いものの,大きさにやや違いが見られることがわかっており,この時代の両者の関係性は良く分かっていない.これに対し,筆者らは始新統のReticulofenestraグループ(Reticulofenestra属とその近縁種)の形態を調べ,中央開口部の形状が両者では明確に異なる可能性が高いことを明らかにしたので,その結果を報告する.

    本研究ではインド洋,南大西洋で実施された国際深海掘削計画(Leg 115,208)の深海底コアを用いて,Dictyococcites属が多産する上部始新統を重点的に検討した.一層準につきDictyococcites属50個体を電子顕微鏡で無作為抽出して,観察および撮影を行った後,画像解析ソフトImageJで円盤の外形と中央開口部について楕円解析(長軸,短軸の計測)を行い,その形状を示す指標として扁平率も算出した.また,比較対象として同時に産出するDictyococcites属以外のReticulofenestraグループ50個体にも同様の計測を行った.

    本研究の結果に基づくと,Dictyococcites属のサイズ分布は同時期のReticulofenestraグループが小さいものから超大型の個体まで様々であるのに対し,比較的大型のものに偏っていたが,その扁平率はほぼ同一である.一方で,Dictyococcites属の中央開口部の長軸の長さは3–5 µmでほぼ一定であったが,Reticulofenestraグループは2–7 µmと幅広い値を示した.また,中央開口部の扁平率はDictyococcites属の方が比較的大きい傾向にある.しかし,両者が最も大きく異なる点は円盤の大きさと中央開口部の大きさとの関係であり,Dictyococcites属の中央開口部は,その円盤の大きさに関わらずほぼ一定であった.一方で,この時のReticulofenestraグループは円盤の大きさと中央開口部の大きさがほぼ比例的に分布していた.これらのデータを踏まえると,Dictyococcites属の中央開口部の形状はどのような個体も近いものになることが示唆される.この結果はインド洋や大西洋でほぼ同じであって,海域ごとの違いはあまり見られなかった.

    従って,少なくとも後期漸新世におけるDictyococcites属は同時代のReticulofenestraグループとは中央開口部の形状が異なっていることは明らかで,石灰質殻,すなわちココリスの形成は中央開口部における結晶配列から始まると考えられていることを考慮すると,両属の結晶化プロセスは明らかに異なっている.これはこの時代における両者が明確に異なる分類群であることを示す根拠となり得る.今後はDictyococcites属が存在していた時代全域に研究対象を広め,その形態的特徴に変化があるのか明らかにする必要がある.

    引用文献

    Bown, P. R., and Young, J. R., 1997. Proposals for a revised classification system for calcareous nannoplankton. Journal of Nannoplankton Research, 19(1), 15-47.

    Henderiks, J., 2008. Coccolithophore size rules—reconstructing ancient cell geometry and cellular calcite quota from fossil coccoliths. Marine micropaleontology, 67(1-2), 143-154.

  • 三浦 倫裕, 亀尾 浩司
    セッションID: R15-P-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    石灰質ナノ化石Sphenolithus属は新生代を代表する石灰質ナノ化石のグループである.この分類群は,暁新世に出現して鮮新世に絶滅するが,様々な形態の種が出現し,新生代を区分する標識種とされる(例えばOkada & Bukry, 1980).このSphenolithus属の形態は塊状,あるいは棘状の方解石結晶が放射状に配置された円錐形であり,proximal cycle, lateral cycle, apical cycleの3つの要素で構成され,中にはapical spineと呼ばれる大型の突起物が発達している個体もある.原則として,これらの結晶の形状と組み合わせの特徴に基づいて分類が行われるが(Young, 1998),しばしば偏光顕微鏡での観察だけでは微細な構造の認識が難しい場合もある(例えばRio et al., 1990).そこで本研究では始新世–中新世において,Sphenolithus属の微細構造と変化を明らかにすることを目的として,走査型電子顕微鏡の詳細な観察による結晶の計測とそれによる分類を考察した.研究試料は国際深海掘削計画(Ocean Drilling Program: ODP)で得られた深海底コアのうち Hole 1265A(大西洋), Hole 711A(インド洋)およびHole 1209A(太平洋)の約45–10 Maに相当する堆積物を使用した.対象の試料に含まれるSphenolithus属を無作為に50個体抽出し,走査型電子顕微鏡で観察・撮影した.撮影した画像からImage Jを用いて観察した個体の全長,base(lateral cycleとproximal cycle)の幅,proximal cycleの長さを計測した.

     本研究の結果に基づくと,Sphenolithus属は前期漸新世と前期中新世にそれぞれ大型の個体が現れる傾向がある.大型化する層準では個体の全長とbaseの幅が6 µmを越える個体が増加し,特に前期中新世において個体の大きさは最大である.前期中新世以降は小型化する傾向にあるが,後期中新世にこれが顕著になり6 μm未満の個体だけが産出する.形態上の特徴としては,Sphenolithus属はapical spineがある個体とない個体とに分類される.apical spineがある個体はspineの構造と産出する年代によって特徴的な個体が確認できる.一方,apical spineがない個体は方解石結晶の形・配列によって分類され,層準によって異なる形態が観察された.始新世では塊状の方解石結晶をもつ個体が優勢だが,漸新世と中新世では棘状の方解石結晶をもつ個体が観察される.特に中新統から産出する個体はapical spineを持たない多様な形態が出現し,10種類の形態に分類することができる.これらの形態の分類基準に従うと,前期漸新世・前期中新世の大型化の際に出現した個体は方解石結晶の配列の違いによって区別できる.さらに,後期中新世における小型化は,規則的に配列された塊状の方解石結晶が特徴の大型個体が消滅し,棘状の方解石結晶をもつ小型個体が優勢になることで特徴付けられ,特定の形態の出現・消滅がSphenolithus属のサイズ変化に関連していると考えられる.

    引用文献

    Okada, H. & Bukry, D., 1980, Supplementary modification and

    introduction of code numbers to the low-latitude coccolith biostratigraphy (Bukry, 1973; 1975), Marine Micropaleontology, 5, 321–325

    Rio, D., Fornaciari, E., and Raffi, I., 1990, Late Oligocene thorough early Pleistocene calcareous nannofossils from western equatorial Indian Ocean. In Proceedings of the Ocean Drilling Program, Scientific Results, 115, 175–235, College Station, TX

    Young, J. R., 1998, Neogene. In P. R., Bown ed., Calcareous Nannofossil Biostratigraphy, Kluwer Academic Publishers, 8, 225–265

R16(ポスター)ジュラ系+
  • 伊藤 剛, 市澤 泰峰
    セッションID: R16-P-1
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    人間の活動は,しばしば地質や地形と関連する.日本の歴史では多くの城郭が築かれ,その建築に関しては地質学・地形的要素が考慮されたと考えられる.演者の1人伊藤は,足尾山地南西部「桐生及足利」において5万分の1地質図幅を作成中である.城郭と地質の関係を検討するために,「桐生及足利」地域の地質図上に,城郭29城(山城及び平山城)の位置をプロットした.このうち24城が足尾帯ジュラ紀付加体の分布域に位置しており,この中で13城はチャートの上に築かれている.またチャート以外の分布域に位置する城郭についても,本丸周辺ではチャートがみられる例がみられた.築城に当たり,チャートが他の岩石より硬く急峻な地形を形作ることが利用されたと考えられる.

  • 川尻 啄真, 松岡 篤
    セッションID: R16-P-2
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    【はじめに】砕屑岩の組成は後背地の検討において重要な指標となるが, 砕屑物の運搬過程や堆積環境などの要因によって組成が変化することが知られている (千々和, 1992).

     富山県・長野県・新潟県の三県にわたって分布する下部ジュラ系来馬層群について, 砂岩組成の層位変化について報告する. 来馬層群は, 犬ヶ岳地域,小滝・大所地域, 来馬地域の3地域に分かれて分布する. 白石 (1992) は小滝・大所地域と来馬地域の本層群を下位より, 蒲原沢層, 大所川層, ヨシナ沢層に区分した. 長森ほか (2010) は, 大所川流域の岩相から白石 (1992) がヨシナ沢層と区分した部分が大所川層にあたるとし, 大所川層を下部, 中部, 上部に細分した.

     新潟県糸魚川市に分布する来馬層群は, 堆積相の検討により河川成堆積物からなるとされている (長森ほか, 2010). しかしながら, Hayami (1957) は小滝川流域および大所川流域より海生二枚貝化石の産出を報告しており, 本地域において海成層が存在することは明らかである. 本報告では大所川流域の大所川層に着目して砕屑物組成の層位的変化を示すとともに, 産出化石により推定される堆積環境との関連について議論する. 砂岩のモード組成については, Gazzi-Dickinson法を採用し, 一枚の薄片につき500ポイント測定した. 砂岩のモード組成の測定結果をもとにQm-F-Ltダイアグラムを作成した.

    【調査結果】大所川流域の来馬層群について柱状図を作成し, 下位から蒲原沢層, 大所川層下部, 大所川層中部, 大所川層上部に区分した. また, 汽水生二枚貝化石の密集層を大所川層下部より1層準, 大所川層上部より2層準発見した. Hayami (1957) による海生二枚貝化石の産出層準は, 大所川層中部に相当する. 本地域の砂岩は, Qm-F-Ltダイアグラム上ではTransitional Arc からDissected Arcにプロットされる. 砂岩のモード組成における層位的変化は以下の通りである. 蒲原沢層から大所川層下部にかけてはLtが減少し, QmとFが増加する. 大所川層下部から中部にかけてはQmとFがやや減少し, Ltがやや増加する. 大所川層中部から上部にかけてはFがやや減少し, QmとLtが増加する.

    【考察】蒲原沢層から大所川層下部にかけての組成変化は, 火成弧の削剥の進行を示す. 大所川層下部から中部にかけての堆積環境は, 上位に向かって氾濫原堆積物 (長森ほか, 2010) から汽水生二枚貝化石密集層, 海生二枚貝産出層準付近 (Hayami, 1957) へと変化することから, 河川, 汽水, 浅海と移り変わっていったと考えられる. 砂岩組成変化はQmとFがやや減少し, Ltがやや増加する. ところが, この変化は後背地の成熟にともないQm, Fが増加する (Dickinson et al. 1983) というとらえ方では説明できない. 加えて, 高エネルギー環境下ではLtが減少しQm, Fが増加することが報告されているが (千々和, 1992), この結果とは逆の傾向を示している. よって, 本検討の結果は堆積環境が砂岩組成に与える影響よりもテクトニックな要因が強くはたらいていることを示唆している. 竹内ほか (2017) は来馬層群の堆積速度が速いことを指摘しており, 高エネルギー環境下で物理的に不安定な岩片が石英・長石に分解されるよりも速く砕屑物が供給されたと考えられる. 大所川層中部から上部にかけての組成変化は, Dickinson et al. (1983) や千々和 (1992) のとらえ方では説明できない.

    千々和, 1992, 地質雑, 38, 311-327. Dickinson et al., 1983, Geol. Soc. Amer. Bull., 94, 222-235. Hayami, 1957, Trans. Proc. Palaeont. Soc. Japan, N. S., 28, 119-127. 熊崎・小嶋, 1996, 地質雑, 102, 285-302. 長森ほか, 2010, 図幅「小滝」, 産総研地質調査総合センター, 134p. 白石, 1992, 地球科学, 46, 1-20. 竹内ほか, 2017, 地質雑, 123, 5, 335-350.

  • 田村 翼, 松岡 篤
    セッションID: R16-P-3
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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  • 原田 一輝, 高津 琴博, 佐野 晋一
    セッションID: R16-P-4
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    福井県大野市九頭竜地区に分布する,中部ジュラ系九頭竜層群貝皿層からは多様なアンモノイドを産し,バトニアン~カロビアンのアンモノイド群集帯が設定されている(Sato and Westermann, 1991).九頭竜地区下山地域には,貝皿層の主要な岩相である暗灰色頁岩層のほかに,ウミユリや二枚貝などの無脊椎動物化石を多産する粗粒砂岩層が分布するが,その層序学的・古生物学的検討は十分には行われていなかった.今回,大野地球科学研究会によって採集・保管されていた,ウミユリや二枚貝などの無脊椎動物化石の分類学的検討を行うとともに,粗粒砂岩の堆積環境に着目して現地調査を実施した結果,化石を多産する粗粒砂岩部は貝皿層の一部で,ウミユリなどが生息する浅海域に一度堆積した粗粒砂が, 何らかのイベントによって, より低エネルギーの陸棚環境へと運搬され, 再堆積してできたと考えられることがわかったので,予察的に報告する.

     本地域の貝皿層は主に暗灰色頁岩からなるが,まれに粗粒砂岩部を挟在する.粗粒砂岩部は,様々な形状の頁岩の同時礫を含む層(厚さ約3m)のほか,礫状の砂岩部と頁岩部が混在した層(厚さ約8m)をなすものがある.粗粒砂岩部にはウミユリや内在性二枚貝,腕足類などの化石をしばしば産するが,これらの化石は頁岩部には見出されない.これらのことから,ウミユリや二枚貝は頁岩の堆積場に生息していたのではなく,元来はより浅海の粗粒砂が堆積する環境に生息していたものが,砂とともに,より深い,頁岩が堆積する環境(陸棚)へと運搬され,再堆積したものだと考えられる.なお,鹿澤ほか(2016)は,貝皿層上部に,三角貝Myophorellaなどの二枚貝化石を含む,側方への連続性が悪い礫岩層の存在を報告し,その堆積機構に関して同様の解釈を行っている.

     今回検討した化石標本は, 貝皿層の粗粒砂岩部から採集されたゴカクウミユリ類の骨片73点, アンモノイド類1点, 二枚貝類53点で,全て殻は溶解しており,雌型として産する.ゴカクウミユリには2種あり,それぞれSeirocrinus sp.とIsocrinus (Isocrinus) sp.に同定された. 両属とも,日本からの産出記録は既に存在するが,中部ジュラ系からは初めての記録となる.アンモノイドは,貝皿層の頁岩層中 に多産するPseudoneuqueniceras yokoyamai に同定され,粗粒砂岩部が貝皿層に対比されるという解釈を支持する.二枚貝は離弁で,しばしば破片化しているが,Palaeonucula makitoensisMesosaccella morrisi,Myophorella sugayensis,Fimbria somensisが予察的に同定された.My. sugayensisやF. somensisは南部北上地域の相馬中村層群山上層との共通要素である点で注目される.

     貝皿層における浅海棲化石群集の発見は,貝皿層の堆積場や堆積環境についての新たな知見をもたらすばかりでなく,日本では稀な,中期ジュラ紀の浅海棲無脊椎動物相の存在を示すもので,更なる分類学的・古生物地理学的な検討が期待される.

    (謝辞)

     野外調査実施にあたり,令和2年度深田野外調査助成の支援を受けた.大野地球科学研究会には収蔵標本を研究に利用させていただくとともに,採集時の未公表調査資料を提供していただいた.アンモノイドの同定や野外調査実施にあたり,中田健太郎博士,酒井佑輔氏,海野 奏氏の協力を得た.これらの方々に心より感謝申し上げる.

    (文献)

    Sato, T. and Westermann, G. E. G., 1991. Newsletters on Stratigraphy, 24, 81-108.

    鹿澤優祐・半田直人・酒井佑輔・松岡 篤, 2016. 日本地質学会学術大会講演要旨, 539.

R17(ポスター)情報地質とその利活用
  • 西岡 芳晴, 北尾 馨
    セッションID: R17-P-1
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    1.概要

     MyMap3D Makerは,極めて簡単に3Dウェブページを作成,公開するためのウェブアプリケーションである.MyMap3D Makerでは,各種パラメータ等をグラフィカルユーザーインターフェイスを用いて設定でき,効果をその場で確認できる.設定の完了後は結果をURLとして生成するので,そのURLを他のユーザに紹介するこより完成した3Dウェブページを共有できる.そのURLを自サイトに埋め込むことも可能である.

     MyMap3D Makerは3D表示エンジンとしてMyMap3D APIを利用する.MyMap3D APIは,パソコンのGPUを直接制御するWeb GLを介して3D描画を行い,高速化を図っている.JavaScriptライブラリとしてはthree.jsを使用している.

     MyMap3D Makerは,本稿執筆時点では公開準備中ではあるが,以下のURLから近日中に正式公開予定である.

    https://gbank.gsj.jp/seamless/mymap3d/maker/

    2.操作法

     MyMap3D Makerは画面左側に操作パネル,右側にプレビュー部を持つ.操作パネルにおける各操作項目はグループに分類され、グループごとに操作項目の開閉を可能としている.アプリケーション起動時はすべての項目が閉じた状態である.操作項目の下にはテキストボックスを配置し,生成されたURLが表示される.URLは操作の都度自動で書き換えられる.操作パネル下段には各種ボタンを配置し,それぞれ対応した機能を提供する。

     プレビュー部は操作に応じて自動で書き換えられ,常に設定に応じた描画となっている.ただし,最終的に生成されるページではボタン操作,マウスによる視点移動,3D地形クリックによる凡例表示機能を装備するが,それらの挙動は本件アプリケーションの操作項目の反映と相容れないため,プレビュー部でのイベント処理は無効化している.

     また,2D地図による値設定機能を装備している.2D地図部は操作項目内のボタン操作により,プレビュー部の画面を切り替えて表示する.起動時はMyMap3Dのデフォルト設定(富士山を南の空から俯瞰表示)でプレビュー画面を描画する.

    3.特徴

     MyMap3Dでは,公開されている任意の地図タイルを背景やオーバーレイとして使用できる.また,地形データも変更できる.それらはドラッグ&ドロップマップ(西岡, 2019)の仕様にも対応している.地形データとしては,シームレス標高タイル(https://gbank.gsj.jp/seamless/elev/)として公開されている様々なデータも利用可能である.

     地質図の理解には3D表示機能が有効である.本研究は地質情報利活用を促進することを目的として進められている.関係者のご助言をいただければ幸いである.

    ・引用文献

    西岡(2019) ドラッグ&ドロップマップの考案と試験実装,情報地質,30,111-114

  • 能美 洋介, 田邉 信男, 野瀬 重人, 定金 司郎, 水野 正行, 田中 元, 大嶋 優斗, 清水 英二
    セッションID: R17-P-2
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    2003年(平成15年)に,“岡山県内地質図5万分の1および同説明書”が公開された.この地質図は,故光野千春岡山大学名誉教授と彼の研究室の卒業生たちが岡山県内地質図作成プロジェクトチームを組織して,西部技術コンサルタント株式会社のサポートを得ながら,卒業研究等の資料を再調査・再構成して完成させたもので,PDFファイル化したものが公開された.一つの都道府県で,その県内全域の地質を5万分の1の縮尺でまとめた例は無く,岡山県内地質図は公開後多くの人に利用されてきた.

     岡山県内地質図の公開後,吉備高原地域の各所に分布していた時代未詳の”山砂利層”の年代が明らかにされ,古第三系吉備層群として再記載されるに至ったこと(田中他,2003)や,県西南部の金光町で道路工事中に,古第三系吉備層群にペルム系超丹波層群の泥質岩が衝上している断層が発見されたこと(西部技術コンサルタント,2020)など,当地に関する地質学上の重要な知見の追加があった.また,利用者から地質図の記載事項についての指摘が寄せられた.これらを受けて岡山県内地質図の改訂作業が岡山大学の鈴木茂之教授の監修で進められ,2020年(令和2年)7月に“改訂版岡山県地質図”が完成し,西部技術コンサルタントのホームページで公表され現在に至っている.

     インターネットを媒介として地質図を公開している例としては,産業技術総合研究所の”20万分の1日本シームレス地質図”があり現在V2版が公開されている.改訂版岡山県地質図や日本シームレス地質図は,原図の作成時からCADが使用され,記載変更・修正などの改訂作業はもとより,公開用に作成するPDFへの変換や,サーバーへのアップロードなどの作業が発生するものの,従来の紙ベースの地質図と比べると公開に至るまでの作業が容易である.このため,改訂版岡山県地質図は,新たな露頭の発見情報や利用者からの指摘事項などを元に,現地調査を加えながら今後も加筆・修正を重ね,より高い精度の地質図を目指して公開していく予定である.そのためには,利用者からの意見を収集するための仕組みつくりが重要である.また,公開した地質図の利用に関する権利・制限事項の検討,改訂LOGの公開,GISでの利用を前提としたファイル形式での提供などの作業が必要であり,筆者らによってこれらの作業が進められている.

    文献・URL

    田中元,鈴木茂之,室谷周,山本裕雄,檀原徹(2003)吉備高原周辺の古第三系に関する最近の知見とその古地理学的意義.岡山大学地球科学研究報告,10,1,pp.15-22.

    西部技術コンサルタント(2020)改訂版岡山県地質図(5万分の1・岡山県全域/21図幅)説明書.西部技術コンサルタント,124p.

    20万分の1日本シームレス地質図.https://gbank.gsj.jp/seamless/,産業技術総合研究所.

    岡山県地質図,http://seibuct.co.jp/chishitsuzu/index.html,西部技術コンサルタント.

  • 内藤 一樹
    セッションID: R17-P-3
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    地質図を利用する際、利用目的に応じて、地質図の中から特定の年代及び特定の岩相を抜き出して表示したいことがある。

     産業技術総合研究所地質調査総合センター(GSJ)が公開する国内を網羅したデジタル地質図である日本シームレス地質図V2のビューア(1)には、主な岩相・時代を条件として表示を絞り込む機能があるが、凡例情報の持つさらに詳細な情報を基にした絞り込みと、絞り込み結果の分かりやすい表示方法を実現するため、新たな表示機能の作成を行った。この表示機能は、GSJの公開する地質図ビューア「地質図Navi」(2)に組み込み、一般に利用可能となっている。

     地質図のデータとしては、日本シームレス地質図V2のシェープファイルから出力したSVGタイルを利用した。SVGデータは、多くのウェブブラウザの標準機能で利用できるため比較的手軽に扱うことができる。SVGタイルの構成要素(岩相)には、岩相や形成年代などの凡例情報が属性情報として付属しており、これを利用したキーワード検索が可能である。また、タイル構成要素には、スタイルシート(CSS)により塗色や境界線のスタイル設定が行えるため、地質図全体や抽出した岩相に対する塗り分けをCSSにより操作することが可能である。

     これらの機能(フィルター機能)を実装し、SVGタイルでシームレス地質図V2の岩相抽出及び塗色を実現した。岩相の抽出としては、地質年代の範囲、年代・岩相名のキーワード検索による抽出機能を作成した。岩相の塗色機能としては、抽出された岩相を指定色で塗色し表示する機能を作成した。また、岩相属性を条件分けして塗り分ける機能を作成した。具体例としては、年代値による塗り分けなどがある。

     このフィルター機能を利用可能なシームレス地質図V2は、地質図ビューア「地質図Navi」の、シームレス地質図の種類を選択するプルダウンメニューから「V2(f)」を選択することで利用できる。フィルター機能付きのシームレス地質図V2が表示された地図画面で、任意の地点をクリックすることで、凡例情報表示ウインドウが表示される。このウインドウには、岩相や形成時代、凡例IDの表示に加えて、それぞれの項目にフィルタ実行ボタンが配置されている。このボタンにより、それぞれの凡例項目に対する抽出が実行され、抽出結果となる地図が表示される。同ウインドウ下部の「ツール」表示を展開すると、岩相や年代をキーワードで抽出するための入力フォームが表示される。これを利用することで、任意のキーワードで年代と岩相を抽出した地図の表示ができる。また、抽出結果を指定色で塗色することも可能であり、これを使うことで、例えば、第四紀の堆積岩の分布域を一色で示す地図の表示を行うことができる。

     授業の教材として「白亜紀の火成岩」などの特定の地質の分布を示したり、市民への説明資料に「第四紀の堆積岩」の分布域を示すなど、シンプルで分かりやすい地図が効果的な場面は多くある。そのような場面において、今回作成した表示機能は有用であると考えられる。

    (1) 日本シームレス地質図V2, https://gbank.gsj.jp/seamless/v2/viewer/

    (2) 地質図Navi, https://gbank.gsj.jp/geonavi/

R18(ポスター)環境地質
  • 石谷 祐昌, 北村 有迅, 川端 訓代, 児玉谷 仁
    セッションID: R18-P-1
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    1. はじめに

    温泉水を含めた地下水にはさまざまな成分が溶存しており, それらを用いて地下の状況について議論を行うことが可能である. ラドン濃度を用いたその掘削深度における母岩や断層に関する研究やLi-やCl-を用いたスラブ起源深部流体に関する研究(風早他,2014)などをはじめとしてこのような研究は世界中で数多く行われている. 本研究は鹿児島県北西部で温泉水採取を行い,それらの分析結果における特徴をまとめ, その周辺の断層などの地下構造との関係を議論した.

    2. 方法

    鹿児島県北西部に位置する出水断層帯, 市木断層帯の周辺から温泉地をランダムに選定し,それぞれ10箇所ずつ程度試料の採取を行った.採取に用いる必要な容器を用意し,全て気泡が入らないように採取した.採取した試料は研究室に持ち帰り, ラドンと溶存イオンの分析を行った(川端他,2019). 水素同位体と酸素同位体の分析は昭光サイエンス株式会社に依頼した.

    3. 結果と考察

    出水断層帯と市木断層帯の各周辺地域でラドン濃度が最も高かった地点は花崗岩帯の直上または近傍に見られることから, 花崗岩帯または花崗岩体を起源とする地下水ではラドン濃度が非常に高くなることが推定される(歳弘他,1996). またKGW_20_01, 02, 03は断層近傍に位置しているがラドンは低濃度であることに加え, KGW_20_12でもラドンは低濃度であることから, これらの地点は堆積岩からなる四万十層群に達していることがそのラドン濃度の要因の一つと考えられる. 加えてKGW_20_01, 02, 03の結果と市木断層帯の活動記録を照らし合わせると, この断層帯があまり活動的ではなく亀裂や歪みが少ないことが考えられる(脇田,1996). 水素酸素同位体の分析結果では天水線から大きく外れている地点は見られないことが, 市木断層帯周辺の試料は出水断層帯周辺よりもプラス側に位置していることから, 海水の混入が多いことが考えられる. また溶存イオンを用いた水質分析では市木断層周辺の試料の多くはNa-Cl型に位置しており, Br/Clについても海水に近いものが多い(今橋,1996).

    4. まとめ

    本研究ではラドン, 溶存イオン, 水素酸素同位体を用いて温泉水と地質構造の関係について考察を行ったが, このような研究でよく用いられる3He/4Heなど希ガスの分析を行い, 火山との関連も見る必要がある。またサンプル数が充分とは言えないため, さらに多くの試料の分析が望まれる.

    引用文献

    今橋 正征 (1996) : 天然水の臭化物イオン含量, 安全工学, 35(5), 328-336

    風早 康平・高橋 正明・安原 正也・西尾 嘉朗・稲村 明彦・森川 徳敏・佐藤 努・高橋 浩・北岡 豪一・大沢 信二・尾山 洋一・大和田 道子・塚本 斉・堀口 桂香・戸崎 裕貴・切田 司 (2014) : 西南日本におけるスラブ起源深部流体の分布と特徴, 日本水文科学会誌, 44, 3-16

    川端 訓代・北村 有迅・冨安 卓滋 (2019) : ポリエチレン保存容器から大気への拡散を考慮した水中ラドン濃度推定法の開発, 分析化学, 68, 333-338

    木村 重彦 (1978) : 水中ラドン濃度の測定とその応用 (Ⅰ)水文学, RADIOISOTOPES, 27, 740-746

    歳弘 克史・藤原 美智子・畠中 啓治 (1996) : 山口県における地下水中のラドン濃度, 山口衛生研業報, 17, 22-25

    脇田 宏 (1996) : ラドン観測と地震予知, 保健物理, 31(2), 215-222

  • 北村 有迅, 立岡 大和, 田町 勇気, 川端 訓代, 石谷 祐昌, 松尾 翔一朗, 伊藤 大吾, 寺澤 瞭
    セッションID: R18-P-2
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    温泉水中には多くのイオン,ガスが溶存しておりそれらを基に流体の起源や流路,地下の地質構造,地殻変動について等様々な考察がなされてきた.本研究では,2019年7月から行われている姶良カルデラ周辺温泉定期観測のデータを用い,以前行われた田町(2020)の研究も踏まえ,流体の起源や観測値の変動に関して観測データの増分を含めて考察することが目的である.

     本研究では温泉水の定期観測を2019年7月から月1回間隔で行った.桜島島内 (St.1, St.2), 垂水市(St.3), 鹿児島市街(St.4, St.5)2020年4月から霧島市福山(St.6)で試料水のサンプリングを行った.試料の222Rn 濃度は研究室 にて静電式ラドン測定器(RTM1688-2; SARAD)を用いて即日分析を行った.

     水中222Rn濃度は数十Bq/m3〜数十万Bq/m3とかなり幅広い値を検出した.また水中222Rn濃度はサンプリングポイントや採取した時期によりかなり大きな違いが認められる.特にSt.3では常にほかのサンプリングポイントよりも大きい水中222Rn濃度を検出しており,St.4やSt.5では安定した水中222Rn濃度が検出されていおり,その大小は2019年7月を除いてSt.5のほうがSt.4より高い水中222Rn濃度が検出された.St.3の高濃度の222Rn濃度は,多孔質を含む地層を流路としている,もしくはSiO2を多量に含む岩を流路とする可能性が考えられる。 また,水中222Rn濃度と溶存イオンや水素同位体比,酸素同位体比,炭素同位体比,ヘリウム,ネオン(未公表データ)とは相関関係が認められないことから,水中222Rn濃度は強い独立性をもつ成分であることが言える.

     温泉水中に含まれるイオンや溶存ガスの値から姶良カルデラにおける地球化学的シグナルを検出し,軽元素同位体比や222Rn濃度から姶良カルデラ周辺の地質構造や桜島火山との関係を推定した.垂水市(St.3)において,高222Rn濃度から,近傍に存在する高隈山の花崗岩由来の可能性が考えられ,また222RnとNa+,Cl-の変動の同期から,古海水を帯水層とする新たな裂罅から流体が断続的に供給されているのではないかと考えられる.今後も,定期観測による新たなデータを追加していくことで,考察の信頼性を向上させていく事が望まれる.

    引用文献

    田町勇気(2020MS)姶良カルデラ周辺域における温泉水の地球科学的シグナル時空間分布, 鹿児島大学卒業論文, 85 pp.

R19(ポスター)応用地質学一般およびノンテクトニック構造
  • 津金 達郎, 小坂 共栄, 古本 吉倫, 信州大学 震動調査グループ
    セッションID: R19-P-2
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    平成23年6月30日に長野県松本市の市街地で発生したM5.4の被害地震(630松本地震)から10年の間,我々は,松本盆地地域の地盤の調査を行ってきた.平成24・25年には松本市との共同事業1),平成26・27年の大町市との事業2)として両市の揺れやすさマップや地盤図などを作成したのに続き,平成30・31(令和元)年度は安曇野市との事業として揺れやすさマップや伏在断層分布図等を作成した3)

     安曇野市は西から北アルプス,松本盆地,犀川丘陵にまたがり,盆地東縁部には松本盆地東縁断層(糸魚川-静岡構造線断層帯)が位置する.安曇野市が従来市民に配布していた揺れやすさマップは,長野県が平成27年に作成した「糸魚川-静岡構造線断層帯(全体)を震源とする地震」(想定M8.5)が発生した場合の震度分布図4)であった.この分布図は250mメッシュで,居住地域での揺れやすさは,ほぼ南北方方向の帯状区分(震度6強~5弱)であり,その土地の成り立ちや地質構成を反映した揺れやすさの差異は表現されていない.630松本地震の際,松本市では狭い範囲でも震度3~6強までの揺れが確認されており5),我々の作成した揺れやすさマップからも地盤の違いが揺れに反映されていることが明らかである.

     揺れやすさは表層地盤による地震波の増幅率の違いで決まる(軟弱な地盤程揺れやすい).県の調査4)で使用された安曇野市のボーリングデータは333本であったが,我々は同地域でその4倍強の1364本のボーリングデータを収集した.データ数を増やしたことで,メッシュサイズは250mを基本としながら地形・地盤の複雑さに応じて125mメッシュにまで細分し,2サイズの混合の詳細な地盤モデルの作成が可能となった.揺れやすさマップは,特定の地震を想定せず,各メッシュに兵庫県南部地震(M7.3)相当の地震波を入力し算出された震度値を図化した.その際,震度階には変換せず,多段階の色調表現を採用しているのが特徴である.こう表現にすることによって,巨大地震では一様の揺れやすさに区分される地域の中にあっても,盆地直下のどこで起こるかわからない,中規模の地震の際に,より強く揺れる可能性のある地域(①~④)をあぶり出すことができた.地盤の違いによる揺れ方の違いを明示しておくことは防災・減災のうえで重要である.

     以下に各地域の揺れを増幅する堆積物について述べる.

    ①松本盆地東縁の段丘上;犀川丘陵を起源とする多くの小規模な扇状地中にはN値10以下の砂~泥が10m以上堆積している部分もある.

    ②松本盆地西部の扇状地間の低地;黒沢川,烏川,中房川の各扇状地間の低地から扇端の一部には軟弱な堆積物が5m以上堆積していることが多く,烏川,中房川扇状地間では,有明花崗岩起源のマサ土起源の砂~シルトが特徴的である.

    ③黒沢川扇状地上;砂礫層中にシルト質堆積物を互層状に挟在する地域が見られ,N値5以下のロームを複数挟むこともある.

    ④三川(穂高川・高瀬川・犀川)合流域付近の氾濫原;砂礫層中にN値5以下の砂層やシルト層を不規則に挟み,時に有機質土を挟在する.

    引用文献:1) 信州大学震動調査グループ(2014)「揺れやすさマップ」を活かして地震に備える.2) 信州大学震動調査グループ(2016) 大町市の地震動と地盤に関する調査報告書.3) 信州大学震動調査グループ(2020) 安曇野市地盤と地震動に関する調査報告書.4) 長野県(2015) 第3次長野県地震被害想定調査報告書.5) 信州大学震動調査グループ(2013)「あっ,地震だ」その時、どう揺れた?

    信州大学震動調査グループ; 遠藤正孝・古本吉倫・原田晋太郎・原山 智・井関芳郎・北沢淳史・小松宏昭・小坂共栄(代表)・松下英次・宮沢洋介・小野和行・太田勝一・塩野敏昭・土本俊和・津金達郎・富樫均・高橋康・竹下欣宏・田中俊廣・田邉政貴・山浦直人・矢野孝雄・吉田孝紀

  • 林 宏樹
    セッションID: R19-P-3
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    はじめに

     断層が構造性の断層であるか非構造性の断層であるかを特定することは,その断層が将来に活動するかどうかを判断する上で重要である.近年,国内において断層破砕物質の面構造や粘土鉱物含有量を用いた断層面と地すべり面の判別の試みがなされているが(脇坂ほか, 2012;中村, 2017),信頼性の高い評価手法は確立していない.また,これらの研究対象は現世の陸上地すべりであり,新第三紀など地質時代に発生した海底地すべり(古海底地すべり)のすべり面と構造性の断層面との判別に関する研究事例はない.

     今回,すべり面の鉱物学的性質から構造性の断層面と古海底地すべり面との判別手法を検討することを目的に,秋田県横手市で報告例のある新第三紀の古海底地すべり及び出羽丘陵北部の正断層(藤岡ほか, 1976)を対象に調査を行った.

    横手市の古海底地すべり露頭(新露頭)と出羽丘陵北部の断層露頭

     秋田県横手市南部には層状珪質泥岩と白色凝灰岩の互層からなる後期中新統~鮮新統の山内層及び相野々層が分布し,それぞれ秋田-山形堆積盆の女川層及び船川層に対比される.東方の真昼山地における緩い褶曲構造,横手市南部の盆地東縁に発達する層状泥岩の過褶曲等の多様な構造,さらに盆地内で泥岩角礫を取り込んだ凝灰岩が見られることから,阿部ほか(2005)はこれらの構造の成因を凝灰岩形成時の海底地すべりによるものと考えた.

     今回,横手市南部において層状珪質泥岩と白色凝灰岩の互層からなる2ヶ所の新露頭を記載した.これらの露頭は向斜翼部の階段状すべり面,上盤側に多くの小断層が発達し粘土層を伴う層面すべり,地層の急激な褶曲・逆転といった特徴を示し,いずれも古海底地すべりによるものと推定される.

     また,藤岡ほか(1976)で報告されている出羽丘陵北部の断層について断層トレース上で露頭探索を行い,ほぼ直立した層状黒色泥岩中に最大で幅数十cmのガウジを伴う断層を記載した.本断層は南北走向でほぼ鉛直であり,北に36°プランジした条線を示すほか,地層の引きずりから西側低下の変位が推定される.

    鉱物組成

     横手市の露頭及び断層露頭について,各すべり面の破砕部又はガウジと整然層の試料をそれぞれ複数採取し,XRDによる鉱物組成の分析を行った(図).分析は新潟大学理学部のRigaku製ultima IVで行い,CuKα線源,管電圧40kV,管電流40mAで岩石試料粉末の不定方位分析を行った.鉱物種の同定に当たってはSEM-EDSによる元素分析結果も参考とした.

     横手市の露頭の珪質泥岩はほぼ石英のみからなり,凝灰質な部分は少量のオパールC,斜長石及び粘土鉱物を含む.凝灰岩は石英,オパールC,斜長石,斜プチロル沸石及び粘土鉱物からなる.両岩相ともすべり面の破砕部分では全体的に石英が支配的となるが,原岩が凝灰質な場合には粘土鉱物の増加,斜長石及び斜プチロル沸石の減少,オパールCのピークの消失といった鉱物組成の変化が見られる.

     断層露頭の黒色泥岩はオパールCないしオパールCTと石英のピークが顕著であり,有意量の粘土鉱物と少量の斜長石及び斜プチロル沸石を伴う.ガウジ部分では粘土鉱物が支配的となるが,それ以外の鉱物組成に大きな違いは見られない.

    考察とまとめ

     横手市の古海底地すべり露頭では凝灰岩(整然層)中のオパールCがすべり面破砕部で消失したが,出羽丘陵の構造性断層(整然層・ガウジ)でそのような傾向は確認されなかった.この原因は検討中であるが,①高温流体の流入等による温度上昇でオパールC又はオパールCTの石英への相変化が促進された,②すべり面が水みちとなり続成作用中の珪質セメントの形成が阻害された,③天水によりオパールCが選択的に溶脱した等の可能性が考えられる.

     以上のように,すべり面(断層)破砕部分のシリカ鉱物相を古海底地すべり面と構造性断層の判別指標として利用できる可能性が示された.今後は詳細な鉱物相分布や微細組織の把握,成因の解明,異なる岩相への適用性等を検討する予定である.

    文献

    脇坂ほか,2012,応用地質,52,6,231-247. 中村,2017,地すべり学会誌,54,2,37-45. 藤岡ほか,1976,5万分の1図幅,羽後和田地域の地質. 阿部ほか,2005,地すべり学会誌,41,5,447-457.

    図 各露頭試料のXRD分析結果

  • 中田 英二, 太田 岳洋, 鈴木 素之
    セッションID: R19-P-4
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    1、はじめに

    節理等の割れ目には黒色で幅1 mm から10 mmのマンガン水酸化物が生成していることが多い。山本ほか(2001)は割れ目を充填するマンガン水酸化物を黒色脈と呼び、法面崩落のすべり面になると報告している。中田・太田(2019)は、実際にマンガン水酸化物の表面に滑りの痕跡を示す条線が認められる例を紹介した。このようなマンガン水酸化物はシャーペンの芯でも削ることができるほど柔らかく、弱面となる。 今回、マンガン(Mn)の起源とマンガン水酸化物の成因について考察を行い、法面斜面崩壊や地すべりとの関係について紹介を行う。

    2、地質概要

    調査は山口県西部の下関市豊田町で行った。当該地点には前期白亜紀に堆積した関門層群が分布している。関門層群は韓国慶尚層群に対比され、国内最大の非海成堆積体の一つとされ(歌田・澤田、2005)、礫岩砂岩主体で下位(東部)の脇野亜層群から火山岩主体の下関亜層群(西部)に移り変わっている。赤色強風化岩(以下サプロライト)は下関亜層群の安山岩溶岩を主体とする火砕岩類で認められ、風化帯の厚さはおよそ40 mに及んでいる。 2020年に開削した法面において表層から深部に向かってO層、A層、B層、C層の良好な風化断面が観察できる。A層(厚さ1~2 m)は開口割れ目が発達し、粘土質でマンガン水酸化物は認められない。表層からC層のサプロライトまでの厚さは、およそ3 mで、C層は新 鮮な安山岩まで40 m前後連続している。他方、B層は厚さ0.5~1mでやや灰色を帯び、A層とC層の間に分布している。A層には僅かにギブサイトが認められ、強く赤色風化したC層ではカオリナイトとハロイサイトが認められる。この新しい法面ではマンガン水酸化物に条線は少ない。 一方、1990年に開削された法面ではマンガン水酸化物に充填された割れ目に、斜面方向に条線が多く発達し、一部に重力性のすべりを思わせる円弧状の形状も形成されている(図1)。

    3、マンガン水酸化物の産状とMn含有量

    マンガン水酸化物はB層から深部に増加し始め、反対にC層上部から深部に向かって出現頻度が減少し、深部では節理に沿って斑点状にも産出する。C層上部では節理中央部を幅1㎜程度のマンガン水酸化物が埋め、その周辺1㎜前後が白色化し、赤色化したサプロライトに移り変わっている。マンガン水酸化物中のMnOとFe2O3含有量はそれぞれ3.4%と10.4%であった。

    4、マンガン水酸化物の成因

    安山岩は磁鉄鉱を含む単斜輝石安山岩である。帯磁率は新鮮安山岩に比べて赤色化したサプロライトの方が小さく、風化作用によって強磁性体である磁鉄鉱が、常磁性体の酸化鉄に変化している。新鮮な安山岩に含まれる磁鉄鉱の組成はMn0.2Ti0.6Fe2.3O4(チタノマグネタイト)であり、MnOを3~4%含んでいる。一方、サプロライト化した安山岩中では磁鉄鉱は赤色帯びた不透明鉱物として認められ、MnO含有量が0.1%に減少している。帯磁率の減少と磁鉄鉱の赤色化、Mnの溶出は整合しており、Mnの供給源は磁鉄鉱であると判断できる。 溶出実験ではpHの低い溶液の方が新鮮な安山岩からのMnの溶出量と溶出速度が大きい。この傾向は風化帯を流下している地表水中のMn濃度が大きいこととも一致している。マンガン水酸化物の周辺の白色化した部分にはカオリナイトが生成している。カオリナイトは低pH溶液下で生成することが知られている。Mnイオンは大気と平衡するCO2に富む低pHの地下水が安山岩中の磁鉄鉱を溶解させたことにより供給された。その後、Mnに富む表層水は割れ目を浸透し最初にカオリナイトを晶出させ、続いてMn、Feが割れ目に浸透することで、Mn、Feが沈殿したと推察する。

    5、まとめ

    割れ目を充填する黒いマンガン水酸化物が多く認められる赤色強風化部でMnの供給源と成因に関して推察を行った。Mnは磁鉄鉱(チタノマグネタイト)に多く含まれており、風化作用を受け溶出している。溶液中のMn濃度、Mn溶出速度は低pH溶液中で大きくなることから、Mnは風化によって表層水中に溶出し、割れ目に侵入し沈殿したと推察できる。 黒色で割れ目をフィルム状に充填するマンガン水酸化物は軟質である。一面せん断強度も低いとの報告がされている(山本ほか、2001)。このようなマンガン水酸物が充填する割れ目が多いと、崩落や地すべりの発生する場合があると推察する。

    参考文献 中田・太田(2019)応用地質学会講演集(令和元年度) 山本ほか (2001)地すべり 37, 49-57. 歌田・澤田(2005)地質学雑誌、111、206-216.

  • 松岡 陽司, 大橋 聖和, 田村 亨, 塚本 すみ子
    セッションID: R19-P-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
    会議録・要旨集 フリー

    はじめに

     ルミネッセンス年代測定法は,鉱物中の自然放射線に由来する捕獲電子が熱や光の刺激を受け再結合することを利用した年代測定法である(奥村・下岡, 2011).ルミネッセンス信号が熱によってリセットすることから,ルミネッセンス年代測定法を活断層の活動年代測定に利用できる可能性が唱えられており,実際にKim et al.(2019)やOohashi et al.(2020)などの高速摩擦試験の結果からルミネッセンス信号のリセットが確認されている.天然の断層帯で地震とルミネッセンス信号のリセットの関連性を明らかにするためには,(1) 最新活動時期とその時のすべりパラメータ(例えばすべり速度やすべり量),(2) 最新活動面,(3)熱水などの地震とは関係ないルミネッセンス信号のリセット要因がないこと,の以上3点がわかっている必要がある.

     本研究では,これらの情報が既知である,2016年熊本地震を引き起こした布田川断層の露頭より採取した試料を用いて,ルミネッセンス年代測定を行った.

    布田川断層の等価線量値  

     本研究では,大橋・田村 (2016)で最新すべり面が報告された布田川断層の露頭に暗幕をかけ,遮光状態で断層ガウジ試料,断層角礫試料,母岩である阿蘇-4火砕流堆積物(断層から3 m及び30 m離れた地点)を採取した.断層角礫試料はブロック状で採取し,暗室ですべり面からの距離に応じて1 cmごとにサブサンプリングを行った.

     最初に手でほぐした試料を流水下でふるいにかけ,73~125 μmの粒子を得た.次に,比重2.58~2.63 g/cm³の長石を得るために,2.63 g/cm³の重液を用いて重鉱物を除去し,次いで2.58 g/cm³の重液を用いて火山ガラスなどの軽鉱物を除去した.最後に,マグネティックセパレーターで磁性鉱物を分離し,長石を抽出した.本研究で用いた断層試料および母岩(阿蘇-4火砕流堆積物)に含まれる長石はXRD測定よりAnorthiteが大部分であり,少量のOrthoclaseが存在していた.

     ルミネッセンス測定は産業技術総合研究所のRisø TL/OSL reader を用いpIRIR₂₂₅法で測定した.また,pIRIR₂₂₅法の測定プロトコルのうち低温で励起光を当てる際にIR₅₀測定も実施した.今回の測定は長石試料であるため,人工太陽を用いたフェーディングテストも実施した.

     フェーディングテストの結果より,フェーディング率を表すg値はIR₅₀で平均11.9±3.4 %/decadeと大きな値であるのに対し, pIRIR₂₂₅は平均1.2±1.0 %/decadeであった.フェーディング補正後の等価線量値は,pIRIR₂₂₅で約170~185 Gy,IR₅₀で約90~120 Gyの範囲で求められた.等価線量値はすべり面からの距離とは関係なく全体として一様であったことから,年代値はほとんど同じ値を示すと考えられる.これは,2016年熊本地震および古地震学的に求められている過去数回の活動で,ルミネッセンス信号が完全リセットされなかったことを意味する.

    参考文献

    Kim et al. (2019). Tectonophysics 769 (2019) 228191.

    Oohashi et al. (2020). Journal of Geophysical Research Volume125, Issue10 October 2020, https://doi.org/10.1029/2020JB019900

    大橋聖和・田村友識. (2016). 2016年熊本地震で動いた布田川断層の活断層露頭. 地質学雑誌, 122.

    奥村輔・下岡順直. (2011). ルミネッセンス年代値を開始するための心得. 地質技術, 1, 5-17.

R20(ポスター)地学教育・地学史
  • 矢島 道子
    セッションID: R20-P-1
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
    会議録・要旨集 フリー

    戦後すぐの日本の地質学はGHQがリードしていたことを明らかにした。1945年12月16日と1946年6月9日に東京帝国大学理学部にて在都日米地学者交歓会が行われ、GHQ内のスタンフォード大学のスケンク(H.G. Schenk, 1897–1960)が主導的立場に立った。1946年より日本地質学会は活動を開始し、1947年5月には京都大学理学部で日本地質学会が開催され、やはりスケンクが指導した。 エネルギー資源としての石油探鉱、石炭探鉱は重要で、アメリカの占領政策と共同でPEAC(石油開発促進委員会)、CEAC(炭田探査審議会)という組織を通して1947年から開始された。朝鮮半島、中国北部(満州)に多く進出していた地質学者たちは、GHQの要請もあり、帰国して外地での地質研究をまとめた。米国地質調査所出張所の協力もあり、1952年4月には東亜地質鉱産誌3巻1991頁の大著が出版され、1954~1960年には東亜地質図が東京地学協会から刊行された。

  • 川勝 和哉
    セッションID: R20-P-2
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    1 高校生に求められる資質や能力とは何か

     現代は、与えられた課題を正確に解くだけではなく、自ら課題を設定し、解決の道筋を考えて解決する能力や議論する力が求められており、「探究」が新学習指導要領に取り入れられている。また、優れた女子生徒の発掘・育成や、社会人として必要な科学倫理観の育成にも注力されている。

    2 スーパーサイエンスハイスクール指定で目指すこと

     本校は令和2年度から5年間、文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け、これらの研究課題に取り組む事業を展開している。特筆すべき活動として、(1)1年次生全員(280名)に「自然科学探究基礎」で、地学分野を基礎にした分野横断的な自然科学教育をおこなう、(2)1年次生全員で「理数探究基礎」(課題研究/1単位)に取り組む(2年次生理系で2単位、3年次生理系で1単位)、(3)2年次生理系で「科学倫理」の課題研究に取り組む(2単位)、(4)全国の高校生を対象にした「Girl’s Expo with Science Ethics」を開催して、理系女子の研究発表や科学倫理の研究発表をおこなう、(5)希望生徒を対象に、オーストラリア野外調査(地質調査/2週間)やジョージタウン大学研修(科学倫理/1週間)をおこなう、(6)野外調査で得られた成果はAGU等の国際学会で発表する、(6)科学部の国際的な活動を強力に支援する、等が挙げられる。

    3 多くの探究活動を地球科学(地学)をベースにして実施する

     兵庫県は1995年に阪神淡路大震災を経験した。その後も各地で地震や火山の噴火、津波、台風など、多くの自然災害に見舞われている。我々にはそこから学んだ自然の学びや防災の教訓を継いでいく義務がある。自然災害の理解は、生きた自然の学びでもある。教科書には、ハザードマップを確認しておこう、建物を耐震構造にしておこう、避難場所と避難経路を確認しておこう、防災グッズをそろえておこうなど、防災、減災、自助、共助に関するまとまった記述があり、授業ではその部分ばかりに注目が集まる。しかし、自然災害(自然)を理解するためには、防災と科学的な自然の理解が両輪である必要がある。地学の内容は、自然科学の全領域にわたる学びに力を発揮する分野であるが、一方で地学を深く学ぶカリキュラムを有している高等学校は全国でも数少ない。「自然科学探究基礎」で複眼的、広域的視点に基づく自然科学全般の基礎知識を習得し、さらに「理数探究基礎」(課題研究)で具体的に実践する。

  • 吉田 勝, 学生のヒマラヤ野外実習 プロジェクト
    セッションID: R20-P-3
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    第9回学生のヒマラヤ野外実習ツアー(SHET-9)は今年の3月上旬に15日間、例年通りのプログラムで実施された。当初の参加登録者は定員オーバーの26人であったが、コロナウイルス問題のため出発直前に16人がキャンセルし、実際の参加者は学生7人と一般3人の合計10人であった。学生は北大、山形大、信州大、千葉大、横浜国大と名大で、一般は全員秋川流域ジオの会所属であった。 3月6日から10日間の野外実習ツアーは、例年通りカトマンズ(2泊、予習セミナと市内ツアー)~ポカラ(泊)~カロパニ(泊)~カグベニ(泊、ムクチナート往復)~カロパニ(泊)~タトパニ(泊)~ポカラ(2泊)~タンセン(泊)~ルンビニ(泊)~カトマンズ(2泊、総括セミナーと市内ツアー)の旅程であった。 野外ツアー中は殆ど毎日天気がよく、ヒマラヤの眺望に恵まれた。露頭状態もよく、見事な化石やカイヤナイト片麻岩が採集できた。ポスターではこれらの写真を展示する。 第10回実習ツアーは今回と同様の内容で2022年3月4日から3月18日(前後数日程度の変更の可能性がある)に実施する予定であり、参加者募集は今年5月に開始した(下記URL)。 https://www.data-box.jp/pdir/1ec5fe91685d4c28b2fb55baf4e3aae8 なお、感染症蔓延等の問題等で日ネ両政府による渡航規制や旅行規制等がある場合には、その内容によっては1年後に延期する。 最後になりますが、本プロジェクトにご後援名義を頂いた日本地質学会ほかの6学会、ご寄付を頂いた国際ゴンドワナ研究連合(IAGR)とゴンドワナ地質環境研究所(GIGE)に謝意を表します。

    写真:ダウラギリ峰をバックに、実習ツアーの一行

R21(ポスター)第四紀地質
  • 嵯峨山 積, 星野 フサ, 井島 行夫, 近藤 玲介, 関根 達夫, 井上 隆, 小田桐 亮, 宮入 陽介, 横山 祐典
    セッションID: R21-P-1
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    はじめに 蝦夷富士とも称される羊蹄山(標高1,898 m)の周辺では,古くから淡水生珪藻土の分布が報告されている(河島・素木,1941など).既存報告から,更新世の時代の異なる2つの湖が存在した可能性があり,新しい湖(古倶知安湖)は上部更新統の真狩別層堆積時である.形成時代などを検証するために,放射性炭素年代(以下,14C年代)測定と火山灰,花粉および珪藻の分析を行った.

    地質露頭と試料 調査した地質露頭はG-1,G-2,G-3およびG-4である.G-1は嵯峨山ほか(2020)で報告された倶知安町市街の約3 km南の露頭で,14C年代測定用の試料KC-1(木片)はスコリア(層厚40 cm)直上の泥炭から採取した.G-2は尻別川左岸に位置し,全体の厚さは約4.5 mで,下位より砂礫,泥炭および粘土がほぼ一連に堆積し,それらを不整合で氾濫原堆積物の砂礫が覆う.14C年代測定の試料KC-2(木片)は上記泥炭から採取した.粘土から花粉分析用試料のP20-1,P20-2およびP20-3を,珪藻分析の試料D19-1とD19-2をそれぞれ採取した.G-3はポンクトサン川左岸に位置する露頭で,標高は約210 mである.下位より厚さ約1.5 mの凝灰質粘土,スコリア薄層を挟在する厚さ1.85 mの泥炭,厚さ約3 mの軽石質砂・細砂互層が累重する.粘土から珪藻分析用試料D20-1を,泥炭のほぼ中央部から14C年代測定の試料KC-3(木片)と花粉分析用試料のP20-5をそれぞれ採取した.G-4は羊蹄山北麓に位置し,露頭G-1の1.2 km東方の土取場で,作業広場面の標高は199 mである.火山灰と軽石からなり,斜層理を呈する堆積物で,層厚は約15 mである.火山灰分析用試料は作業広場面より約1 m上で採取した.

    測定・分析の結果と考察 14C年代測定値(1σ range)は露頭G-1のKC-1(採取標高178.3 m)で45,750-45,000 cal BP(42,042±385 yr BP),露頭G-2のKC-2(採取標高169 m)で48,050-46,750 cal BP(44,175±472 yr BP),露頭G-3のKC-3(採取標高208.9 m)で44,500-43,750 cal BP(40,578±336 yr BP)が得られた.火山灰分析では露頭G-4の試料は火山ガラスがほぼ80 %を占め,起原は支笏軽石流堆積物(Spfl;支笏火砕流)の可能性が高い.花粉分析では下位よりA帯はPiceaが74 %,Abiesが24 %で,B帯はPiceaが84~85 %で,AlnusBetulaを伴う.C帯はPiceaが29~48 %でCYPERACEAEが8~35%の出現となり,D帯ではPiceaが48~86 %,E帯ではPiceaが57%で,PinusHap.),LarixQuercusを伴い CYPERACEAEが14 %出現する.14C年代値から得られた約3,280年間は冷涼な環境が続いたと推定される.珪藻分析では,露頭G-2の粘土からは湖沼沼沢湿地指標種群の浮遊性淡水生種Aulacoseira ambigua (Grun.) Simonsenが多産する.堆積環境はCyclotella comta (Ehr.) Kützが多く産したG-1の縞状堆積物と同様に流れの静かな湖沼と考えられ,G-2からG-1にかけてはほぼ一連の堆積環境であったと推定される.一方,露頭G-3の粘土からは浮遊性は少なく,ほとんどが付着性淡水生種で,流れのある堆積環境が想像される. 上澤・中川(2009)は羊蹄山西麓に分布する羊蹄岩屑なだれ堆積物は支笏火砕流(約4.1万年前)の後に形成されたと述べている.更に上澤ほか(2016)は,約5万年前に始まった羊蹄山の火山活動では2回の山体崩壊が発生し,古い方は約3.8万年前としている.今回の検討では,最も古い14C年代値は露頭G-2の湖沼性堆積物直下の泥炭が約47,400 cal BPで,古倶知安湖の形成開始はこれ以前の時代と推定される.このため,羊蹄山の崩壊(約3.8万年前)は古倶知安湖出現の原因とは考えられず,他の地質現象を考える必要がある.なお,中川・星住(2010)では,「岩屑なだれ堆積物を支笏火砕流が覆う」としているが,上澤・中川(2009)に従えば正しくは「岩屑なだれ堆積物が支笏火砕流を覆う」である.

    文献 河島千尋・素木洋一(1941)大日本窯業協會雑誌,49,209-222.中川光弘・星住リベカ(2010)日本地方地質誌1「北海道地方」,朝倉書店,302-303.嵯峨山 積ほか(2020)総合地質,4,1-7.上澤真平・中川光弘(2009)日本火山学会講演要旨集,42.上澤真平ほか(2016)日本地質学会第123年学術大会講演要旨,65.

  • 竹下 欣宏, 関 めぐみ, 近藤 洋一, 花岡 邦明, 宮下 忠, 中川 知津子, 廣内 大助, 野尻湖 地質グループ
    セッションID: R21-P-2
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    長野県信濃町にある野尻湖西方において,西側隆起西傾斜の活断層露頭と変動地形が発見された(竹下ほか,2020;廣内・竹下,2020).この露頭では約68~43kaに噴出堆積した黒姫・妙高火山起源のテフラ層が明瞭に断ち切られている.池尻川岩屑なだれ堆積物で構成される断層隆起側の丘陵を池尻川が先行谷化して流れており,明瞭な変動地形が認められる.

     本研究では断層下盤側の池尻川低地において2地点のボーリング掘削調査を実施し,2本のコア(IJ19・IJ20)を採取した.その結果,池尻川低地には池尻川岩屑なだれ堆積物の上位にテフラ層を挟む水成層が最大で約14m堆積していること,さらに池尻川低地における堆積環境の急激な変化が4回あったことが明らかになった.本報告では池尻川低地の堆積環境を変化させた要因について議論する.

     採取した2本のコアを半割し,柱状図を作成した.IJ19は層相に基づき5層準に区分できる.1)地表から深度1.16mは主に泥炭層からなる.2)深度1.16-1.76mは主に灰褐色シルト層からなる.3)深度1.76~5.58mは主に泥炭層からなる.4)深度5.56-8.97mは主に砂礫層からなる.5)深度8.97-20.00mは安山岩礫を含む凝灰角礫層からなる.IJ20も層相に基づき 5層準に区分できる.1)地表から深度2.22mは主に泥炭層からなる.2)深度2.22-4.84mは主に明灰褐色シルト層からなり,基底部は粗い砂層からなる.3)深度4.87-8.00mは主に泥炭層からなり,ガラス質火山灰層と火山灰の薄層を数枚の挟み,基底部にはスコリア質火山礫が多く混じる.4)8.00-13.81mは主に砂礫層からなり,テフラ層やその再堆積物が挟まれる.5)深度13.81-18.00mは安山岩礫を含む凝灰角礫層からなる.

     両コア中に挟まれるテフラ層について,野尻湖地質グループ(1984)で記載された野尻湖周辺のテフラ層([ ]で囲んだ名称)との対比を試みた.その結果,IJ19の深度1.98-2.03mのガラス質火山灰層は[ヌカⅠ]に,深度5.31-5.41mと5.42-5.53mの黒色スコリア層は[赤スコ]と[青ヒゲ]に,深度8.49-8.64mの灰色粗粒火山灰層と深度8.68-8.88mの赤褐色粗粒火山灰は,[灰ザラ]と[レンガ]にそれぞれ対比される.IJ20の深度5.68-5.63mのガラス質火山灰層は[ヌカⅠ]に,スコリア質火山礫が多く混じる層準(深度7.62-8.00m)は[赤スコ]と[青ヒゲ]に,深度8.25~8.08mの暗灰色スコリア質粗粒火山灰層は[ドライカレー]に,深度8.41~8.25mの紫灰色火山灰層は[粉アズキ]に,深度8.76~8.53mの黄灰色火山礫層は[ブレッチャーゾーン]に,深度9.73~9.15の灰色火山灰層と暗灰色スコリア層の互層は[三点セット]に,深度9.87~9.84mの黄白色軽石質火山灰層は[黄ゴマ]に,深度10.20~10.14mの黒色スコリア層は[ノミ]にそれぞれ対比される.また,IJ19とIJ20の凝灰角礫層は,池尻川岩屑なだれ堆積物に対比される.以上の対比からIJ19とIJ20の層相境界は同層準であり,堆積環境の変化が4回あったことを示している.

     もっとも明瞭な層相境界は,IJ19の深度5.58mとIJ20の深度8.00mにある砂礫主体の地層と泥炭層の境界である.この境界は長橋・石山(2009)により約4.4万年前と推定された[青ヒゲ]の直下に位置する.砂礫が堆積する流水環境から泥炭の堆積する湿地の環境に変化する要因としては,岩屑なだれ,土石流,溶岩,火砕流,地すべりなどの堆積物による塞き止めや断層活動による下流部の隆起が考えられる.早津(2008)によると池尻川低地周辺には池尻川ラハール堆積物と駒爪岩屑なだれ堆積物が分布するが,池尻川ラハール堆積物は約6.1万年前の[三点セット]に対比される黒姫-大平スコリアの噴出にともなう堆積物,駒爪岩屑なだれ堆積物は完新世の堆積物であるため,[青ヒゲ]直下の層相境界と年代が異なる.また,池尻川流域には顕著な地すべり地形も認められない.このため池尻川低地において[青ヒゲ]直下で起きた堆積環境の変化は,堆積物や地すべりによる塞き止めではなく,断層による隆起が主な要因であると考えられる.

    引用文献:早津(2008)妙高火山群,実業公報社,424p.廣内・竹下(2020)日本活断層学会2020年度秋季学術大会講演予稿集,24-25.長橋・石山(2009)野尻湖ナウマンゾウ博物館研究報告,17,1-57.野尻湖地質グループ(1984)地団研専報,27,23-44.竹下ほか(2020)日本活断層学会2020年度秋季学術大会講演予稿集,22-23.

  • 小淵 俊秀, 山田 桂
    セッションID: R21-P-3
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    〔はじめに〕千葉県北部には古東京湾(岡崎・増田,1992)と呼ばれる内湾で堆積した更新統下総層群が広く分布している.本層群の各層は海洋酸素同位体ステージ(MIS)に対比されており,木下層はMIS 5.5前後に相当すると考えられている(中里・佐藤,2001).MIS 5.5は現在よりも温暖であった直近の期間である事から,様々な手法を用いて古環境推定がなされてきた(岡崎・増田,1992など).しかし,具体的な水深や地域的な古環境変遷は不明な点が多い.そこで本研究では堆積相と貝形虫化石群集に基づき,木下層堆積時の古東京湾の古環境変遷を明らかにする事を目的とする.

    〔地質概説および堆積相〕本研究地域は千葉県印西市南部である.ここには下位より,清川層,木下層,常総粘土,新期関東ローム層が分布する.清川層は調査地域東部にわずかに見られ,他の地層は全域に分布する.また,木下層は泥主体の木下層下部と砂主体の木下層上部に細分される.清川層と木下層は最大層厚約2 mの化石密集層が各1枚含まれる。 岩相の特徴に基づいて清川層と木下層を区分し,堆積相Ⅰ~Ⅴの計5つ が認識された.内湾性の貝化石が散在する泥主体の堆積相Ⅰは潟湖の湾央相,泥優勢の砂泥互層主体の堆積相Ⅱは三角州前置面下部相,大量の貝化石を含む化石密集層から構成される堆積相Ⅲは三角州前置面上部相,分級の良い中粒砂主体の堆積相Ⅳはデルタ頂置面相,無構造の泥からなる堆積相Ⅴは塩水湿地相とした.堆積相Ⅴは調査地域西部のみに見られる.清川層は下位より堆積相Ⅱ~Ⅳ,木下層は下位より堆積相Ⅰ~Ⅴに区分され,側方の変化より,三角州が東側(太平洋側)から西側(陸側)に前進する様子が確認された.

    〔貝形虫化石群集〕調査地域内の10地点から合計48試料を採取し,31試料から38属91種の貝形虫化石が産出した.この中で,50個体以上産出した17試料を用いて,Q-modeクラスター解析を実施した.その結果,化石相 A,Bが認識され,さらに,亜化石相A-1, A-2とB-1, B-2の4相に細分された.Spinileberis furuyaensis等の汽水種から構成されるA-1は水深2 m程度の汽水環境, Spinileberis quadriaculeataが多産するA-2は汽水域の水深2~7 m程度の潟湖,Pontocythere subjaponicaなどの河口~沿岸砂底種が卓越するB-1はB-2と比較して藻場が少ない湾沿岸砂底,Sinoleberis tosaensis等の沿岸種が優勢であるB-2は藻場が周囲に存在する外洋に近い浅海域であると推定された.亜化石相B-1は清川層に,亜化石相A-1とA-2は木下層下部, 亜化石相B-2は木下層上部に見られた.

    〔考察〕MIS7.3(温暖期)に堆積した清川層は産出貝形虫より,後述する木下層に比べ,周辺に藻場と岩礁地帯が少ない浅海砂底と推定される.貝化石がMizuhopecten tokyoensisなど木下層から産出する貝化石と比較して寒流系の種が多い点から,木下層堆積時よりも寒冷な気候であったと考えられる.その後, MIS6の海面低下に伴って清川層は陸化し,谷地形が形成され,MIS7からMIS6の海退期の堆積物がこの陸化の時に削剥された可能性が考えられる.MIS5では再び海が東部地域で形成されていた谷地形を埋めるように侵入し,谷埋め分布を示す木下層下部が堆積した.本層下部は堆積相Ⅰとなり,産出貝形虫から堆積環境は下位より汽水域の卓越する水深2 m 程度から水深2~7 m程度と上方へ古水深の増加があったと推定できる.木下層上部は清川層堆積時と同様に三角州が前進する様子が見られる.産出した貝形虫化石から潮流の影響を受ける藻場と岩礁地帯が近傍に存在する湾央砂底と推定された. 以上より,印西地域の木下層は潟湖から三角州と変化する点は岡崎・増田(1992)と一致する.これまで千葉県内の木下層下部の古水深は不明であったが,本研究によって初めて明らかとなった.

    〔引用文献〕中里裕臣・佐藤弘幸(2001)第四紀研究,40,251–257.岡崎浩子・増田富士雄(1992)地質学雑誌,98,235–258.

  • 加藤 真由子, 山田 桂, 野崎 篤, 宇都宮 正志, 間嶋 隆一
    セッションID: R21-P-4
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    はじめに

     房総半島や三浦半島,多摩丘陵などには,後期鮮新世から中期更新世(2.65 Ma~0.45 Ma)の前弧海盆堆積物である上総層群が分布する.上総層群は堆積速度が非常に大きく,古環境の変化を高い時間分解能で検討することが可能である.房総半島に分布する上総層群はこれまで多数の研究がある一方で,三浦半島に分布する上総層群は分布範囲も狭く露出も限られることから研究は限られていた.しかし,近年の研究では,三浦半島に分布する上総層群の堆積年代が従来より最大で50万年程度古くなること(藤岡ほか,2003)や,浮遊性有孔虫殻の酸素同位体を用いた分析により同位体比ステージ64〜49に形成された地層が存在することが示された(Nozaki et al., 2014; 楠ほか, 2014).しかしながら,同地域の古環境変遷は氷期・間氷期スケールでは復元されていない.そこで,本研究では三浦半島南部に分布する大船層と小柴層について,貝形虫化石群集を用いて,氷期・間氷期スケールでの古環境変化を明らかにすることを目的とした.

    調査地域および手法

     本研究地域は神奈川県横浜市南部に位置する「瀬上市民の森」自然公園である.当地域には,上総層群の下部から中部に相当する野島層,大船層,小柴層が東西に広がって分布する.当地域で掘削され酸素同位体比層序の確立に用いられたコアJ(Nozaki et al., 2014)より29試料,当地域の露頭から12試料の計41試料を用いた.ルートから得た試料は硫酸ナトリウム法およびナフサ法を用いて処理し,200個体を目安に貝形虫化石を拾い出した.

    結果および考察

     26試料から少なくとも34属67種の貝形虫化石が確認され,このうち15試料から30個体以上の貝形虫化石が産出した.優占種は,主に暖流影響下の沿岸砂底に普遍的に見られる(山田ほか,2001;Irizuki,2004など)Schizocythere kishinouyeiや,現在の北海道西方沖およびオホーツク海沿岸などの底質堆積物から産出する好冷種の(小沢,2006)Laperousecythere robustaなどである.30個体以上産出した15試料を用いてクラスター解析を行った結果,類似度およそ0.78の水準で3つの化石相に分けられた.化石相AはL. robustaが41%を占め,次いでS. kishinouyeiが産出し,寒冷な下部浅海帯を示唆した.化石相BはS. kishinouyeiが46%,Neonesidea oligodentataが12%,Cytheropteron miurenseが9%を占め,温暖な上部浅海帯を示した.化石相CはS. kishinouyeiが37%,Baffinicythere属が12%,N. oligodentataが9%を占めることから,寒冷な上部浅海帯を示すと考えられた.MIS 57〜49の当地域の堆積環境は全体を通して上部浅海帯であり,少なくとも3回の古水温変動が確認された.浮遊性有孔虫化石の酸素同位体曲線によるMIS と比較すると,間氷期のピークでは温暖な環境が見られた.一方,氷期については,MIS54と52は寒冷,MIS50は温暖な環境が上部浅海帯に卓越していたことが推察された.

    引用文献

    藤岡導明・亀尾浩司・小林信宏,2003,地質学雑誌,109,166–178.

    Irizuki, T., 2004. Geoscience Reports of Shimane University, 23, 65–77.

    楠 稚枝・野崎 篤・岡田 誠・和田秀樹・間嶋隆一, 2014, 地質学雑誌, 109, 53-70.

    Nozaki, A., Majima, R., Kameo, K., Sazai, S., Kouda, A., . . .Kitazato, H., 2014, Isl. Arc, 23, 157–179.

    小沢広和,2006,タクサ, 20,26–40.

    山田桂・入月俊明・中嶋祥江,2001,地質学雑誌,107,1–13.

  • 唐 双寧, 剱持 龍司, 山田 桂, 林 殿順
    セッションID: R21-P-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    Ⅰ.はじめに:

     完新世の気候は比較的安定で穏やかであると考えられてきたが,近年では4.2 kaイベントや小氷期などの数百年から数千年スケールでの急激な気候変動(RCC : Rapid Climate Change )が起きていたことが知られつつある(平林・横山,2020).台湾ではRCCを念頭においた研究が少なく,また貝形虫を用いた詳細な古環境復元がほとんど行われていない.台湾南部における完新世の古環境については,花粉記録を用いたバイオーム復元(Lee and Liew, 2010)がなされているが,過去2000年間のデータがまだ不十分である.そこで,本研究は台湾南部大鵬湾のボーリングコアを使い,貝形虫の群集変化から過去3000年間の台湾南部の古環境の復元を目的とした.

    Ⅱ.研究地域の位置と試料:

     大鵬湾は台湾南西部・屏東県に位置し,湾の東を流れる林辺川と西を流れる東港川の堆積物によって発達した砂州を持ち,台湾海峡と接続する閉鎖型ラグーンである.使用したコアは湾北部のDPW02とDPW05である.コアDPW02はコア長15 mで,下位からシルト,細粒砂,細粒砂と泥の互層,シルト,細粒砂と粘土から構成され,生物砕屑と炭質物を多く含む.炭質物の14C年代測定により,コア深度7.05 mで 535 cal. yr BP,コア深度14.70 mで 2,230 cal. yr BP の年代が得られた.コアDPW05はコア長約10 mで,下位から細粒砂,シルト,細粒砂とシルトから構成される.炭質物が多く見られ,14C年代測定により,コア深度9.36~9.40 m で 1,040 cal. yr BP,コア深度12.33 mで 1,875 cal. yr BPの年代が得られた.

    Ⅲ.結果と考察:

     DPW02から22試料,DPW05から23試料を使用して貝形虫群集解析を行った.DPW02の9試料とDPW05の19試料から12属17種の貝形虫が産出した.主に卓越する種はBicornucythere bisanensis, Hemicytheridea reticulata, Loxoconcha malayensis, Loxoconcha zhejiangensis, Sinocytheridea impressaParacypria inujimensisである.B. bisanensisは中国と日本の沿岸地域の水深10 m前後の汽水環境(Hong et al., 2019)や内湾泥底(池谷・塩崎,1993)に生息している.H. reticulataはインド太平洋地域〜東シナ海の非常に浅い海域で生息している(Hong et al., 2019).S. impressaは本研究で最も多く産出した種である.この種は現在,インド沿岸〜東シナ海の水深20 m以浅の低塩分で栄養豊富の環境に生息している(Hong et al., 2019).L. malayensisはインド太平洋で知られる典型的な熱帯種である(Hong et al., 2019).L. zhejiangensisP. inujimensisは潮間帯種である(Hong et al., 2019 ; Smith and Kamiya, 2003).DPW02ではコア深度730~731㎝でH. reticulata,コア深度1,281~1,282㎝でS. impressaが多産した.DPW05では,コア深度1,000~1,090㎝(約1,300~1,100年前)で,B. bisanensis, S. impressa, L. malayensisL. zhejiangensisが多産し,温暖な内湾環境であったと考えられる.また,コア深度590~591㎝(約500年前)ではP. inujimensisが多産し,水草が繫茂する浅いラグーン環境であったと考えられる.このことから,大鵬湾は過去3000年間で温暖の内湾環境から浅いラグーン環境に変化したと考えられる.

    引用文献:

    平林頌子,横山祐典,2020.第四紀研究,59, 129-157.

    池谷仙之,塩崎正道,1993.地質学論集,39,15-32.

    Lee, C.Y., Liew, P.M., 2010. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 287, 58-66.

    Hong, Y., Yasuhara, M., Iwatani, H., Mamo, B., 2019. Biogeosciences, 16, 585-604.

    Smith, R. J. and Kamiya, T., 2003. Species Diversity, 8, 79-91.

  • 原島 舞, 中澤 努, 小沢 広和, 金子 稔, 石川 博行, 野村 正弘, 上松 佐知子
    セッションID: R21-P-6
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    更新統下総層群木下層は最終間氷期(MIS5e)の浅海性堆積物からなり,谷埋め状に分布する泥層主体の下部と広範囲に分布する砂層主体の上部に分けられる(中澤・遠藤,2002;中澤・田辺,2011).下部は開析谷システム,上部はバリアー島システムで形成されたことが明らかにされている(岡崎・増田,1992;中澤ほか,2006).Nakazawa et al.(2017)は下総台地の木下層の堆積環境について明らかにするとともに,花粉化石からMIS5eを3期に分けた堆積年代を示した.そこで本研究では,木下層の古環境変遷をより詳細に推定するため,有孔虫化石および貝形虫化石を用いた古環境推定を行った.

     使用した試料はNakazawa et al.(2017)で使用されたボーリングコア試料のうち,千葉県成田市松崎で掘削されたGS-NT-1(以下,成田コア)と,千葉県流山市西初石で掘削されたGS-NY-1(以下,流山コア)の2つのコアである.これらのコアは同一の開析谷内で掘削され,成田コアは外洋側,流山コアは河口側に位置している(Nakazawa et al., 2017).成田コアについては41試料を処理し,このうち有孔虫化石は37試料から,貝形虫化石は34試料から産出した.底生有孔虫は60属108種,浮遊性有孔虫は8属35種,貝形虫化石は33属81種の産出が認められた.流山コアは40試料を処理し,このうち有孔虫化石は22試料,貝形虫化石は19試料から産出した.底生有孔虫化石は31属54種,浮遊性有孔虫は5属9種,貝形虫化石は38属77種の産出が認められた.有孔虫・貝形虫化石の産出状況から,成田コアおよび流山コアのそれぞれについて化石帯を区分し,古環境推定を行った.

     成田コアは下位から上位に向かって,有孔虫化石群集はNTFo-I帯~NTFo-VII帯,貝形虫化石群集はNTOs-I帯~NTOs-V帯に分けられる.有孔虫,貝形虫ともに木下層の下部では内湾環境を示し,湾奥部の環境から上位に徐々に水深が増加し湾央部に近くなるが,その後,一旦浅海化した.そして再び上位に向かって水深が増加したことが推定される.木下層上部では沿岸部の環境が推定され,有孔虫化石と貝形虫化石から推定される古環境変遷はおよそ一致する.堆積相と比較すると,下部で浅海化した層準はNakazawa et al.(2017)の砂州相にあたり,砂州の後退による埋め立てが影響している可能性が考えられる.

     流山コアは下位から上位に向かって,有孔虫化石群集はNYFo-I帯~NYFo-V帯,貝形虫化石群集はNYOs-I帯~NYOs-IV帯に分けられる.木下層の下部では単調に湾が大きくなり,上部になると内湾環境から沿岸部の環境へ変化したことが有孔虫化石と貝形虫化石の両者から推定される.Nakazawa et al.(2017)の堆積相と比較すると,化石群集より内湾から沿岸部へ環境が変化したことが推定される時期は,堆積相では開析谷システムの中央盆相からバリアー島システムの上げ潮デルタ相へ変化する時期と一致する.また,化石群集の解析により,中央盆相内をさらに3つに区分することができた.

     全体的に有孔虫化石と貝形虫化石で推定される古環境,特に古水深はおおよそ一致し,堆積相とも矛盾のない結果となった.しかしながら,寒流の影響を示唆する有孔虫化石Buccella frigidaと,暖流の影響を強く受ける亜熱帯種の貝形虫化石Neomonoceratina delicataの両者が多産する層準があり,古水温に矛盾が生じた.これは,木下層堆積時の千葉県沖が寒流と暖流が混じる環境であったため,寒暖の混じる群集になった可能性が考えられる.

     成田コアと流山コアを比較すると,亜熱帯種の貝形虫N. delicataが多産する層準が両者に認められ,成田コアのNTOs-IV帯と流山コアのNYOs-II帯が比較できる.Nakazawa et al.(2017)によれば,この層準は花粉化石群集からMIS5e前期と中期の境界付近に相当する.花粉化石群集からもこの時期は温暖な環境であることが推定されており,本研究の結果は花粉化石から得られる古環境とも矛盾しない.

    文献

    中澤ほか(2006)地質雑,112,349–368.

    中澤・遠藤(2002)大宮地域の地質.5万分の1地質図幅.

    中澤・田辺(2011)野田地域の地質.5万分の1地質図幅.

    Nakazawa et al.(2017)Quat. Int., 456, 85–101.

    岡崎・増田(1992)地質雑,98,235–258.

  • 佐藤 善輝, 本郷 美佐緒, 水野 清秀, 中島 礼
    セッションID: R21-P-7
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    はじめに

     徳島平野は最大幅約10 km,奥行き約75 kmの大きさを有する海岸平野である.大局的にみて,同平野は,北縁の中央構造線断層帯の活動で生じた堆積盆を,吉野川などの供給した土砂が埋積して形成されたと捉えられる.同平野の第四系地下地質は上位から順に徳島層と北島層の2層に大別され,それぞれ沖積層と,それ以前の更新統に対比されている(Kawamura, 2006; 川村・西山, 2019).このうち,北島層は貝化石の有無から複数の海成層が含まれる可能性が指摘されているものの,これまで詳しい堆積年代や堆積環境は明らかにされていない.そこで,本研究では,徳島平野で掘削された長尺のボーリング・コア試料を用いて,堆積物懸濁液の電気伝導度(EC)測定と,花粉化石組成とに基づき,北島層中に含まれる海成層の認定と,それぞれの堆積時期について考察した.

    試料と方法

     本研究では板東観測井コアを対象とした.このコアは地質調査所によって1995年に掘削された掘削深度502 mの試料である.掘削当時に層相記載,花粉分析(計14点)および古地磁気測定(計14点)が実施されており,その結果からコア試料中に複数の氷期・間氷期サイクルが保存されている可能性と,深度339~440 mにBrunhes-Matsuyama境界が位置する可能性が指摘されている(松本・荒井, 2021).本研究では,掘削深度90 m以深の地層から採取した計64点のEC測定と,計8点の追加の花粉化石分析を実施した.

    結果と考察

     EC測定の結果,海成層(0.6 mS/cm以上の測定値が連続的に得られた層準)が計5層準(M1: 深度93.4~102.45 m,M2: 228.08~237.00 m,M3: 258.83~263.98 m,M4: 288.06~288.60 m,M5: 305.50 m)で見いだされた.また,これよりもさらに下位には,連続性が悪いものの0.6 mS/cm以上の測定値を示す層準が計4層準(深度326.48 m,339.43 m,368.98 m,437.92 m)で見いだされた.

     次に,既存・新規の花粉分析結果に基づき,大阪湾周辺の花粉化石層序(本郷, 2009など)との対比から,これらの海成層の堆積年代を検討した.まず,M1層準は,サルスベリ属Lagerstroemiaの花粉化石が最大で約15%と多産することから,海洋酸素同位体ステージ[MIS]5に堆積したと考えられる.また,M3層準ではコナラ属アカガシ亜属Quercus (Subgen. Cyclobalanopsis) が約76%と極めて高率で産出することから,MIS11に対比される.

     仮にこれらの層序対比が正しいとすると,両層準に挟まれるM2層準はMIS7または9に対比される.M2層準では下部から上部に花粉化石組成が変化し,下部ではトウヒ属Piceaやモミ属Abiesなど,上部ではマツ属Pinus,クマシデ属Carpinus/アサダ属Ostrya,ブナ属Fagusが多く産出する.また,スギ属Cryptomeriaなども低率ながら随伴する.これらの組成の特徴は本郷(2009)のPinaceae Cryptomeria超帯下部と類似し,M2層準がMIS9に対比される可能性を示唆する.他方,M4およびM5層準は,いずれもB-M境界よりも上位であることを考慮すると,MIS13,15,17のいずれかに対比されると考えられる.このうちM4層準は,Q. (Subgen. Cyclobalanopsis) がほとんど産出せず,PiceaCryptomeria,ヒノキ科Cupressaceaeが多産する特徴から,MIS13に対比される可能性が高い.M5層準は花粉化石の産出数が少ないものの,メタセコイア属MetasequoiaQ. (Subgen. Cyclobalanopsis) を低率ながら伴うこと,Cryptomeriaが多産すること,下位に比べてコナラ属コナラ亜属Quercus (Subgen. Lepidobalanus)が低率であることから,MIS15に対比される可能性が示唆される.深度437.92 mはQ. (Subgen. Lepidobalanus) が優勢で逆帯磁することから,MIS19より古い可能性が高い.

    引用文献

    本郷美佐緒 (2009) 地質学雑誌 115, 64–79.

    Kawamura, N. (2006) Journal of Geosciences, Osaka City University 49, 103–117.

    川村教一・西山賢一 (2019) 地質学雑誌 125, 87–105.

    松本則夫・荒井 正 (2021) 地質調査総合センター研究資料集, no. 713, 地質調査総合センター.

  • 組坂 健人, 岡﨑 裕典, 山口 直文
    セッションID: R21-P-8
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    植物プランクトンの珪藻は,陸水から海洋までの幅広い水環境に汎世界的に分布している.種ごとに形態の異なる珪藻の生物源オパール殻は堆積物中に保存され,珪藻遺骸群集は過去の水環境を反映する.ただし,珪藻遺骸群集から古環境を復元する際には,珪藻殻の現地性・異地性を評価する必要がある.特に,陸水域や沿岸域の珪藻遺骸群集に異地性の個体が含まれることが知られているが,その運搬・堆積過程に関する知見は限られている.本研究では,陸水域における珪藻殻の運搬・堆積過程を理解するため,茨城県北浦の珪藻殻の現地性・異地性の評価を行った.珪藻殻の現地性・異地性の指標として,殻の破片化率(小杉,1986)と両殻共存率(Sawai, 2001)を用いた.破片化率は種の総殻数のうちの破片の割合で表し,両殻共存率は珪藻1個体が有する2個の殻(上半被殻と下半被殻)が共に産出する割合である.

     北浦において2014年8月から9月に重力式採泥器により採取した計22地点の表層堆積物を使用した.各堆積物試料は,有機物分解後に,懸濁液をカバーガラス上に滴下し自然乾燥した後,マウントメディアで封入しプレパラートを作製した.プレパラートを光学顕微鏡(倍率1000倍)で観察し,種ないし属を同定した上で各試料につき300殻の珪藻殻を計数し,出現頻度,破片化率,両殻共存率を算出した.このとき,出現した珪藻を浮遊性,一時浮遊性,付着性の3グループに分けた.

     顕微鏡観察の結果,流入河川である巴川,鉾田川,山田川および雁通川の河口周辺で付着性種が増加していた.北浦で出現頻度が高かった珪藻は,湖水中に群体を形成するAulacoseira属を中心とした浮遊性種であった.Aulacoseira属の破片化率は流入河川の河口付近で増加したものの,全測点で20 %以下であった.種別ではA. granulateの破片化率は,水深および湖岸からの距離に負の相関を示した.その理由として,湖岸から離れた水深の比較的深い場で生息したA. granulataの殻が湖岸の浅い場へ運搬されたことで破片化したと考えた.湖心付近においてAulacoseira属の破片化率が減少したことは,湖水の鉛直混合が破片化率を増加させないことを示唆している.

     流入河川の河口周辺で付着性種の出現頻度が増加したことは,珪藻殻の運搬過程における河川の重要性を示している.そこで,上下殻で殻構造の異なるCocconeis placentulaおよびPlanothidium lanceolatumに着目し,河川から流入する付着性珪藻殻の運搬過程を明らかにするために両殻共存率を調べた.その結果,両殻共存率は種によって異なる傾向を示した.すなわち,C. placentulaの両殻共存率は,流入河川から離れるにしたがって増加し,さらに距離が離れると減少に転じた.一方で,P. lanceolatumの両殻共存率は流入河川の河口域で最も高かった.また,C. placentulaの破片化率・両殻共存率と平均粒径,水深,湖岸からの距離との相関係数のうち,破片化率と湖岸からの距離の間に正の相関が示された.一方,P. lanceolatumuは破片化率・両殻共存率ともに平均粒径,水深,湖岸からの距離との相関を示さなかった.この違いは,両種の形態と付着の状態によって説明できる.Cocconeis placentulaは下半被殻で基質に付着するため,下半被殻は基質付近に残存しやすく,上半被殻は流されやすい.このため,生息場から離れるにしたがい両殻共存率は低下した.一方,P. lanceolatumは細胞から分泌した粘着質の茎で基質に付着するため,被殻が容易に分離し選択的に下半被殻が残る傾向がなかった.また、C. placentulaの両殻共存率が高い試料のスミアスライドの観察から,植物片に付着した被殻が多く見つかった.上記の結果から,植物片に付着したC. placentulaが,河口付近の強い水流で流されて両殻共存率が低下したことが示唆された.この時,運搬距離の増加に伴い破片化が促進されたことが,破片化率と湖岸からの距離の正の相関が認められた理由であろう.Planothidium lanceolatumは巴川および鉾田川の河口で特に多産するため河口付近でのみ両殻共存率が高く,運搬距離の増加にしたがって被殻が容易に分離し,両殻共存率が低下した.また,巴川および鉾田川河口から離れると稀産となり,湖岸から距離等との相関が認められなかった.

    参考文献

    小杉.1986.Diatom2,169-174.

    Sawai, Y. 2001. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 173, 125-141.

R22(ポスター)地球史
  • 菅沼 悠介, 金田 平太郎, 小山 拓志, 石輪 健樹, 奥野 淳一, 平林 幹啓, 川又 基人, MDML チーム
    セッションID: R22-P-1
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    近年,衛星観測などによって南極氷床の融解や流出の加速が相次いで報告され,近い将来の急激な海水準上昇が社会的に強く懸念されている.しかし,近年融解傾向の加速が顕著な西南極氷床や東南極氷床の一部に対して,東南極ドロンイングモードランド域は氷床質量の増加傾向を示すなど,その動態は南極全体において一様ではない.そもそも,南極氷床の質量収支は,降雪による涵養と沿岸での融解・崩壊によって主に支配されるが,そのメカニズムの理解と定量的な観測は容易ではなく,気候変動予測精度向上における課題となっている.一方,南極氷床周辺や内陸の露岩域から得られる地質学的なデータは,断片的ではあるものの,長期的な南極氷床の質量収支を理解する上で貴重な情報を提供する.その観点において,最終氷期における氷床量やその後の氷床変動過程の復元,そして氷床変動メカニズムの解明は重要な研究課題である. そこで我々は,東南極中央ドロンイングモードランドを対象として,とくに最終氷期以降の氷床変動の復元を試みた.その結果,現地での氷河地形調査と採取試料の表面露出年代から,当該地域における東南極氷床が約8〜6 kaにかけて急激に高度を減じたことが明らかになった.この氷床量減少の規模とタイミングは,ドロンイングモードランド東端のリュツォホルム湾における氷床高度低下データ(9~6 ka)(Kawamata et al., 2020)ともおおよそ一致することから,ドロンイングモードランドにおける普遍的な傾向であると考えられる.つまり,東南極ドロンイングモードランドでは,最終氷期では現在よりも氷床が厚く,広く分布しており,その後約9 kaから急激に氷床高度が低下し,約6 ka頃にはこの急激な氷床融解が停止したと考えられる.今回得られた東南極氷床変動データは,氷床モデルや気候・海洋モデルの較正や,これらを用いた将来予測の高精度化に資するものとなる.

  • 元村 健人, 清川 昌一, 堀江 憲路, 佐野 貴司, 竹原 真美
    セッションID: R22-P-2
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    古原生代(25-16億年前)は地球表層環境が大きく変化した時代の1つである.中でも約24億年前に始まった大酸化事変(Great Oxidation Event; GOE)は地球史上最大の大気酸素濃度急上昇イベントであり,地球表層環境を大きく変えた(Lyons et al., 2014).また22−20億年前の炭酸塩堆積物などからは,一次生産の活発化による+10‰に及ぶ炭素同位体比の正異常(Lomagundi Event)が報告されており(e.g. Melezhik et al., 2007),当時の海洋は酸化的環境であったことが示唆されている.しかしLomagundi Eventの終焉とその後の地球環境変動については未だ不明である.そこで本研究では,カナダ・フリンフロン帯から得られた黒色頁岩を含むコア試料(TS07-01)について,ジルコンU-Pb年代分析による堆積年代の制約と,黒色頁岩中微量元素濃度分析による酸化還元状態の推定を行った.

     研究対象のフリンフロン帯には約19.2–18.4億年前に形成された火成岩・堆積岩が保存されている(Lucas et al., 1996).約18.8億年前の島弧―島弧衝突を境に,衝突前の海洋プレート,島弧火成岩,堆積岩などから構成されるAmisk collage(19.2−18.8億年前)と衝突後の陸上堆積岩から構成されるMissi Group(~18.4億年前)が識別されている.また,フリンフロン帯には断層に挟まれたタービダイトが各地に点在する.本研究で分析試料とした掘削コアはマニトバ州フリンフロン北東に位置するEmbury湖から得られており,約440mのタービダイト性砂岩ー黒色頁岩互層部と約10mの流紋岩(Rhyolite unit)から構成される.先行研究において,Embury湖に分布する砂岩ー黒色頁岩互層は衝突に伴って形成された背弧海盆の堆積物(18.4億年前;Burntwood Group)のクリッペであると考えられてきた(Ordóñez-Calderón et al., 2016).またMotomura et al. (2020)では,コア試料(TS07-01)に含まれる黒色頁岩中の全硫黄−全有機炭素比(TS/TOC)が現世の淡水堆積物の値と同等である事から(~0.04),硫酸イオンに乏しく,硫酸還元菌の活動が著しく制限された環境であったことを示した.

     コア試料(TS07-01)中の砂岩―黒色頁岩互層部は褶曲により上下が大きく4度入れ替わっており,それぞれN1 (~20 m), R1 (~240 m), N2 (~10 m), R2 (~50 m), N3(~120 m) unitを識別した.Rhyolite unitとN3 unitの境界付近は約30mにわたって強い変形を被っている.砂岩は主要鉱物として石英や斜長石を含み,副成分鉱物としてジルコン,アパタイト,チタン酸化物等を含む.黒色頁岩はシルトサイズの石英粒子と粘土鉱物,微量の黄鉄鉱を含む.

     UーPb年代分析の結果,流紋岩から分離したジルコンについて,1880.4±3.7Ma (n=81,MSWD=0.92),1882.6±4.8 Ma (n=49,MSWD=0.94)の年代を得た.流紋岩と接するN3 unit中の砂岩から分離されたジルコンは1862.2±2.6Ma(n=151,MSWD =0.77)を示した.

     N1 unit中の黒色頁岩の元素濃度分析(Mn, V, Cr, Ni, U)により,それぞれMn: 200–500 ppm, V: 80–200 ppm,Cr: 60–200 ppm,Ni: 20–60 ppm,U: 2–6 ppmの結果を得た.これらのRedox-sensitive elements(特にV, Cr, U)は砕屑物指標としたAlとの強い相関を示す(R2>0.7).一方でMnやNiはPAASに比べて低い濃集度(MnEF, NiEF < 0.8)を示す.このことから,堆積環境はMnの酸化や,V,U等 の還元が起こらない貧酸素環境(suboxic)であると推定した.この結果はLomagundi Event後に大気酸素濃度が減少した可能性を示す.

    参考文献

    Lucas et al., 1996, GSA Bulletin, 108, 602–629.

    Lyons et al., 2014, Nature, 506, 307–315.

    Melezhik et al., 2007, Geology, 35, 655–658.

    Motomura et al., 2020, Island Arc, 29, e12343.

  • Mitasari Awalina, Kiyokawa Shoichi
    セッションID: R22-P-3
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    Modern iron-ooidal sands have been considered as one of the most important tools for investigating the history of the earth as its capacity to provides the analogy of the granular iron sedimentation in the ancient ocean. Interestingly, we found that such an ongoing formation process of iron-ooidal sands can be observed at Nagahama Bay of Satsuma Iwo-Jima Island, 38 km south of Kyushu Island, Japan. The minimum influence from seawater (e.g. waves) due to the occurrence of breakwaters and the intense hydrothermal activities causes the water to become orange-brown in color with acidic (low pH), hot (high temperature), and containing a large amount of dissolved iron (generated by mixing volcanic fluids and seawater). These conditions lead to the precipitation of Fe-oxyhydroxide sediments on the floor of the bay; and iron-coated sands on the wharf and along the beach. Therefore, in order to understand the characteristics and formation of iron-ooidal sands, we collect unlithified sand samples from 15 locations: west and east site of the fishing port, original river, the mouth of the river, 9 samples from the sandy beach, and 2 samples from the rocky beach. Sand grains are spheroidal in shape (ooids) with a rust black-brown color, vary from 0.2 to 2 mm in diameter, and exhibit roundness from sub-angular to sub-rounded. Based on our petrography and FE-SEM/EDS data, we found that ooidal sands are consist of volcanic rock fragments (basaltic and rhyolitic rocks) and free crystals (plagioclase, quartz, biotite) on the nucleus; and covered by concentric amorphous Fe-oxide cortex. Three types of Fe-oxide were observed: (1) covering the granules, (2) fracture filling, and (3) void filling. EDS analysis indicates that most of the amorphous Fe-oxide particles are mainly composed of Fe (~58-64%) and Si (~6-9%). Element mapping using FE-EPMA shows that the cortex is composed of Fe-rich which is almost uniform in each layer. Furthermore, high-Ca mineral inclusions in one layer can be a key layer for correlation. The microbial community is well documented in the form of cocci, rod, and filamentous morphology, which responsible for triggering the chemical precipitation of Fe-oxide through their metabolic activity hence results in the formation of iron-ooidal sands.

  • 伊規須 素子, 田中 健太郎, 高畑 直人, 小宮 剛, 佐野 有司, 高井 研
    セッションID: R22-P-4
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    太古代(25億年前以前)堆積岩中の炭質物の研究は、地球の初期生命史を解明するための最も直接的かつ確実な方法である。地質記録から生命の痕跡を探索する強力な手段の一つは、堆積岩に保存された炭質物の化学組成を解読することである。従来、太古代堆積岩中の炭質物から生命活動を認定する指標として炭素の安定同位体比が用いられてきた(例えばSchidlowski, 2001)。 Tashiro et al. (2017)は、カナダ・ラブラドル地域から採取された約39.5億年前の堆積岩中の炭酸塩と炭質物間に安定炭素同位体比のシフトがあること、炭質物から見積もった熟成温度が周囲の鉱物から得た変成温度と調和的であることを報告した。この報告は、地球最古の生命の痕跡を示唆するものとして注目を浴びた。しかし、炭素同位体比は主に全岩から得られたものであり、個々の炭質物については2試料からしか得られておらず、後の時代の有機物混入の問題がある。また、炭質物が堆積時に存在したか否かを判定するために重要な炭質物の熟成温度について、炭素同位体比を得た試料全ての熟成温度を算出した訳ではなく、データに不十分な点があった。

    本研究では、地球最古の生命の痕跡を保持し得るカナダ・ラブラドル地域の炭質物に対し、薄片内での空間分布やラマンスペクトルを考慮し、初生的な炭質物の炭素同位体比を得ることを目的とする。演者らは、Tashiro et al. (2017)において全岩の炭素同位体比が報告された堆積岩29試料中のうち、ラマンスペクトルのデータが欠如していた22試料の顕微ラマン分光分析を行い、炭質物の熟成温度が母岩から見積もられた変成温度と調和的な炭質物と、それらより低い値をもつ炭質物が存在することを明らかにした(伊規須ほか,2019)。本発表では、光学顕微鏡観察と顕微ラマン分光分析の結果から初生的な炭質物、すなわちグラファイトと判断した粒子に対し、二次イオン質量分析計(NanoSIMS)による炭素同位体比(δ13C)分析を行った予察的結果を報告する。

    上述の堆積岩29試料の光学顕微鏡観察を行い、グラファイトを鉱物に包有されるもの・鉱物粒間に存在するものの2つに分類した。泥質岩4試料、チャートノジュール1試料、炭酸塩岩2試料を選定し、NanoSIMSでスポット分析した。その結果、鉱物粒間に存在するグラファイトのδ13Cは、基本的に全岩のそれを支持した。NanoSIMS分析ではプレスパッタリングによって試料表面を洗浄し、スパッタリングによって試料表面から放出される二次イオンを検出するが、包有されるグラファイトでは、分析中に炭素のイオン強度が減少することがあった。これはグラファイトのサイズが長さ数μm幅1μm程度と極めて小さいためと考えられる。そのため、イメージング分析を適用し、プレスパッタリングによる試料の消失を避け、イオンイメージの経時変化をもとに、イオン強度が安定した後のデータを取得することを試みた。イメージング分析の結果、包有されるグラファイトのδ13Cは-5‰から-30‰と見積もられた。包有されるグラファイトは泥質岩で観察される。泥質岩中で、粒間に存在するグラファイトのδ13Cは-15‰から-25‰であるため、包有されたグラファイトの方がより不均質な可能性がある。ただし、イメージング分析では、データ処理の設定を変更することでδ13Cの値に10‰以上の差が生じる粒子や、繰り返し測定においてδ13C値が安定しなかった粒子がある。今後、より正確なδ13C値を決定し、グラファイトの起源を推定するために、試料の再測定やデータ処理法の再検討等を行う必要がある。

  • 佐久間 杏樹, 狩野 彰宏, 柿崎 喜宏, 加藤 大和, 仁木 創太, 平田 岳史
    セッションID: R22-P-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    新生代におけるアジア地域の気候変動は、約5000万年前に起きたインド亜大陸とユーラシア大陸の衝突によるヒマラヤ・チベット高原の隆起と関係することが示唆されてきた(e.g., Manabe and Terpstra, 1974)。東アジア夏季モンスーンの成立によって、東アジア沿岸地域は白亜紀の帯状気候分布から現在のアジアモンスーンの影響下にある気候分布へ変化し、湿潤化したと考えられるが、その時期は曖昧である。最近では、中国南部の低緯度地域において堆積物中の花粉群集や岩相の変化から始新世前期に湿潤化が起きたことが示された(Xie et al., 2020)。しかし、低緯度地域における気候変動は全球的な熱帯収束帯の影響も受けるため、始新世における東アジア沿岸地域の湿潤化とヒマラヤ・チベット高原の隆起の関係を評価するためには、中緯度地域での気候記録が必要である。

     本研究では、始新世に東アジア沿岸域中緯度地域に位置していた九州地方の陸成層から産出する淡水成炭酸塩の産状と同位体比を調べ、その形成プロセスと気候条件を推定した。研究対象は、熊本県天草地方に分布する始新世初期の赤崎層と、佐賀県唐津地方に分布する始新世後期の芳の谷層である。これらの地層の野外調査を行って分析に用いる炭酸塩ノジュール試料を採取し、XRD分析による鉱物種の同定、薄片観察・EPMA分析による構造観察、酸素・同位体比分析による環境水の復元を行った。赤崎層は凝灰岩中のジルコン粒子の年代から始新世前期に堆積したことが分かっているが(Miyake et al., 2016)、芳の谷層は詳細な年代が不明なため、新たに凝灰岩試料を採取してジルコンのウラン–鉛年代測定から堆積年代を推定した(予察分析: 37 Ma)。

     赤崎層のノジュール試料はカルサイト・ドロマイト・石英が主な構成鉱物である。EPMAを用いて微細組織を観察したところ、ドロマイトは粒状のものと、皮膜状のものの2つのタイプがあることが分かった。いずれの場合でもドロマイトの沈殿の後にスパー状カルサイトが空隙を埋めるように沈殿しており、ドロマイトが二次沈殿物である可能性は低い。炭素同位体比は約–10±1‰の範囲に集中しており、炭素の起源は土壌有機物と大気二酸化炭素の混合であることが分かった。一方で、酸素同位体比は–12~–4‰と幅広い値をとり、ドロマイトとカルサイトの構成比率と相関を示した。ドロマイトが多いほど同位体比が高くなるという関係は、土壌中の蒸発作用の過程で最初にカルサイトが沈殿し、土壌水中の16Oの優先的な蒸発とMg/Ca比の上昇が起こっていたと推測される。これらのノジュールの特徴や堆積構造からは、赤崎層のノジュールは土壌中で形成したものであると解釈される。一般に土壌成炭酸塩は年間降水量が1000mm以下の半乾燥~乾燥条件で形成することから(Zamanian et al., 2016)、始新世前期における天草地域は乾燥気候下に位置していたと考えられる。

     一方、芳の谷層のノジュール試料は主に石英・長石・シデライトを含み、鉄酸化物やパイライトも少量含んでいることが分かった。炭素同位体比が1~13‰に達することが大きな特徴で、このような高い炭素同位体比は、メタン生成によって放出された高い炭素同位体比を持つ二酸化炭素を反映していると解釈される。酸素同位体比は–6~–2‰の範囲で変化し、シデライトの温度変換式から計算される環境水の同位体比は降水起源の同位体比であることを示す。このような特徴は湿地帯で沈殿するノジュールのものと一致しており(e.g., Pye et al., 1990)、石炭層の存在とも整合的である。したがって、始新世後期の唐津地域は年間を通じて湿地帯が存在するような湿潤気候下にあったことが示唆される。2つの地層のノジュールの鉱物・同位体的な特徴は、東アジア沿岸域中緯度地域においても始新世中期から後期にかけて湿潤化が起きたことを示唆する。

    *参考文献

    Manabe and Terpstra (1974). Journal of the Atmospheric Sciences, 31(1), 3–42.

    Xie et al. (2020). Review of Palaeobotany and Palynology, 278, 104226.

    Miyake et al. (2016). Paleontological Research, 20(4), 302-311

    Zamanian et al. (2016). Earth-Science Reviews, 157, 1-17

    Pye et al. (1990). Sedimentology, 37, 325-343

  • 尾﨑 和海
    セッションID: R22-P-6
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    近年の地質学的・地球化学的手法の進展により、地球史を通じた大気中酸素濃度の変遷について大局的な描像が描かれるようになってきた.しかしながら、地質記録に基づく推定値には依然として大きな不確定性が残っており、オーダーレベルの議論に留まっているのが現状である.たとえば、原生代中期の時代(およそ18億年前から8億年前)の大気中酸素濃度については現在の0.1%~10%という程度でしか制約ができておらず、活発な議論が続いている.また、古生代カンブリア紀からオルドビス紀の酸素濃度についても、現在よりも有意に低かったという議論と現在と同程度であったという議論が対立している.氷床コアの存在しない100万年前よりも古い時代の大気組成を地質記録から復元することは難しく、また、たとえ正確な推定が可能になったとしても、その背後にある物質循環全体としての振る舞いを明らかにすることはできない.この点で、大気組成を規定する物質循環過程に着目した定量的研究が必要とされている.

    大気中酸素濃度は、生成と消費の動的なバランス(酸化還元収支)によって決まっている.本研究では、大気中酸素量を規定する大気―海洋―地殻間での物質循環過程を包括的に考慮した数値モデルを開発し、酸素生成を規定するリン循環についての系統的な感度実験を行うことで、水圏でのリン濃度と大気中酸素濃度の間にどのような関係があるのかを定量的に調べた.開発された数値モデルは、海洋での生物地球化学過程を組み込んだモデルに大気光化学反応過程や陸域風化作用、および地殻リザーバーの応答が結合された全球酸化還元収支モデルである.このモデル開発によって、億年スケールで生じる地球表層環境の酸化還元状態を議論することが初めて可能となった.

    陸域でのリン風化フラックスについての感度実験を行った結果、海洋リン濃度が低い状況ほど大気中酸素濃度が低くなることが示された.特に、両者の間には非線形関係が存在し、海洋中リン濃度が現在値の10%となる条件では大気中酸素濃度が現在値の1%程度にまで低下することが示された.また、海洋リン濃度が現在の3%を下回ると大気中酸素濃度が太古代レベルにまで低下することが示された.こうした結果は、海洋中リン濃度と大気中酸素濃度の間の関係を定量的に示した初めての結果であり、今後、地質記録から海洋中リン濃度の制約が進めば大気中酸素濃度に制約を与えることが可能となる. また、モデルの含むパラメータについてのモンテカルロシミュレーションを行った結果、大気中酸素濃度には典型的な二つの安定状態が存在する可能性が示された.一つは顕生代に対応する富酸素な大気海洋環境に対応しており、もう一つは現在の1%程度の大気酸素濃度に対応する.後者は原生代に想定される大気中酸素濃度に一致しており、原生代の低大気酸素濃度の状況が地球表層圏の物質循環の特性として説明できる可能性を示している.

    発表では、上記結果に基づいて原生代から顕生代にわたる大気中酸素濃度変遷史について議論する予定である.

R23(ポスター)原子力と地質科学
  • 川村 淳, 賈 華, 小泉 由起子, 丹羽 正和, 梅田 浩司
    セッションID: R23-P-1
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    【背景・目的】高レベル放射性廃棄物の地層処分事業や安全規制において、火山・火成活動、深部流体、地震・断層活動、隆起・侵食といった自然現象の影響を把握するための調査・評価技術の整備は非常に重要である。火山・火成活動に関する調査・評価技術における課題の一つとして、マグマの影響範囲を把握するための技術の高度化が挙げられる。この課題に対しては、特に岩脈の発達が第四紀火山の中心から半径15 km(科学的特性マップにおける好ましくない範囲の基準)以上に及ぶ場合のデータの蓄積が求められるが、現存の火山体下に伏在している火道やそこから派生している岩脈の分布を把握することは現実的に困難である。そのため日浦ほか(2021)では、火山体が中心火道とそこから放射状に伸びる岩脈の分布を反映しているといった仮定のもと、地理情報システム(GIS)を用いた数値標高データの解析に火山体の三次元的な形状を定量的に把握するとともに、岩種、噴火タイプ、基盤標高などとの関連性について検討を行ってきた。しかしながら、本検討では解析の範囲を火山体に限定しているため、火山体を超えた岩脈についてはモデル化や評価ができないという問題がある。

     野外で地質踏査をすると、第四紀火山から離れた場所でも小規模ながら岩脈が貫入している露頭が見つかることがある。このような岩脈が近傍の第四紀火山に関連するかどうかは、岩脈の広がりを評価するうえで重要となる。そこで、我々は丹念な地表踏査の結果が記載したものとして、国立研究開発法人産業技術総合研究所地質調査総合センター発行の地質図幅から「岩脈」を抽出し、周辺の第四紀火山との関連性について評価を試みた。

    【実施内容】予察的な検討として大山を事例対象とし、20万分の1の「松江及び大社」、「高梁」、「浜田」及び「岡山及丸亀(中国地方の海岸線以北を対象)」の地質図幅を使用した。抽出対象とした「岩脈」は図幅の凡例にある「寄生火山」、「貫入岩」、「岩頸」、「岩脈」及び「岩床」を対象とした。また、データ抽出作業としては、岩脈の分布についてはデジタルでトレースを行い、GISデータを作成して白地図上に整理したうえで、「位置(緯度・経度)」、「サイズ(長径・短径など)」、「時代」、「岩型」、「岩脈が貫入している地層名、時代」及び「最寄り火山の火山名、火口からの距離」のデータを抽出した。

    【結果】抽出された火山岩岩脈等の数は、「松江及び大社」が67、「高梁」が53、「浜田」が22、そして「岡山及丸亀」が9の合計151であった(添付図参照)。第四紀火山に関連する岩脈類は新期大山火山噴出物(寄生火山)に限られ、それらの分布も大山の火山体内に限られる。また、岩脈の分布はNakamura(1977)が指摘したように水平最大主応力軸(σH-max)に伸びる放射状火山岩脈を示すことや、日浦ほか(2021)で検討した地形解析結果とも整合的である。なお、添付図では大根島の近くにドレライト岩脈が抽出されているが、それらは新第三紀中新世とされており、大根島との関連性は低いと考えられる。一方、火山より離れた地点に位置する岩脈類は全て新第三紀もしくは先新第三紀に形成されたものと判定されており、溶岩もあるがドレライトや閃緑岩など深部で形成されたことが示唆される岩石の岩脈もある。また、先新第三紀の岩脈類は、「浜田」と「岡山及丸亀」図幅の一部に認められ、レンズ状の分布形態を示すものが比較的多く認められる。産状は酸性岩の岩脈を主体としている。このことは第四紀よりも以前に深部で形成された岩脈が削剥により地表に見られるようになったことを示唆していると考えられる。今後は、さらに検討範囲を広げて例外的な事例がないか確認していく。

    【参考文献】日浦祐樹ほか:第四紀火山を対象としたGISを用いた地形解析による放射状岩脈のモデル化の検討,日本地球惑星科学連合2021年大会H-CG23,2021.

    Nakamura, K.: Volcanoes as Possible Indicators of Stress Orientation – Principle and Proposal, Journal of Volcanology and Geothermal Research, vol.2, pp.1-16, 1977.

    地質調査総合センター:20万分の1地質図幅「松江及び大社」,1982.

    地質調査総合センター:20万分の1地質図幅「高梁」,1996.

    地質調査総合センター:20万分の1地質図幅「浜田」,1988.

    地質調査総合センター:20万分の1地質図幅「岡山及丸亀」,2002.

    謝辞:本報告は経済産業省資源エネルギー庁委託事業「令和2年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」の成果の一部である。

  • 望月 陽人, 石井 英一
    セッションID: R23-P-2
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    ある端成分をもつ水が岩石中の亀裂に沿って流れている場合、亀裂内の水(亀裂水)の安定同位体比(δD, δ18O)は、亀裂周辺の岩石マトリクス内に含まれる間隙水に比べてより当該端成分に近い値を示すと推定される(図(a))。一方、亀裂水が停滞している場合には、亀裂と岩石マトリクスの間における拡散によって、亀裂水と間隙水の安定同位体比は類似した値を示すと推定される(図(b))。以上の推定の妥当性を検証するために、北海道幌延地域の新第三紀泥岩を対象として、鉛直ボーリング孔(HDB-5, -6, -9, PB-V01)の長期揚水により得られた亀裂水と揚水区間周辺の岩石コア中の間隙水とで安定同位体比を比較した。

    HDB-5孔の深度28~250 mおよびHDB-9孔の深度27~83 mでは、亀裂水および間隙水の安定同位体比が天水(最終氷期の天水/最終氷期以降の天水)の端成分にもっとも近い値を示し、かつ亀裂水の安定同位体比は間隙水に比べて天水の端成分により近い値を示した。このことは、天水がもっとも浸透しているHDB-5および-9孔の浅部領域において、亀裂に沿った天水の移流が生じていることを示唆する。一方、HDB-6孔およびPB-V01孔において天水がもっとも浸透していると考えられる深度(それぞれ、280~313 mおよび183~277 m)や、各孔のそれ以外の深度領域では、亀裂水の安定同位体比は周辺深度の間隙水の値と同程度であった。これらの領域では、亀裂に沿った天水の移流が現在は生じていないことが示唆される。

    水の安定同位体比を利用した成分分離(寺本ほか, 2006)および亀裂水中でのトリチウムの検出から、本研究の対象深度における地下水は化石海水と最終氷期に浸透した天水の混合により形成され、HDB-5および-9孔の浅部領域のみに最終氷期以降(現在)の天水が浸透していると推測される。このことは、同領域において亀裂に沿った天水の移流が生じているという本研究の推定結果と整合的であり、天水の移流の程度に関する評価手法の妥当性を支持するものである。HDB-5および-9孔の浅部領域では淡水水頭が静水圧よりもやや離れた値を示しており、相対的に高い動水勾配のために天水の移流が生じていると考えられる。本研究により得られた知見は、地層処分の安全評価において、亀裂や断層に沿った地下水の移流の程度を評価するのに役立てることができる。

    引用文献:寺本ほか (2006), 応用地質, vol.47, No.2, pp.68-76.

  • 大南 久紀, 西村 幸明, 中田 英二, 松四 雄騎
    セッションID: R23-P-3
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    これまで侵食地形の削剥速度決定や、段丘等の堆積地形の形成年代決定において、石英中の宇宙線生成核種(10Be)を用いた研究が盛んに行われてきた(松四ほか, 2007)。表面が侵食を受けている地形の形成年代や堆積物の定置年代を、10Beを用いて推定しようとする時、一般的には表面から鉛直下向きに複数深度で採取した試料を分析し、核種濃度の深度分布を得る方法(Depth profiling)が用いられる。この方法をとる事により、時間と速度の両情報を得られる可能性があるためである。本研究では、対象地点の基盤岩にこの方法を適用し、それを覆う上載層の定置年代に対する制約付与を試みた。

    【地質概要】

     調査地点は静岡県御前崎市佐倉である。この場所の基盤は新第三紀中新世後期から鮮新世前期の砂岩泥岩互層(相良層)であり、標高約50 mに位置する本地点(BF4地点)では、第四紀の堆積物が基盤岩を不整合に覆っている。本地点の北方約1 kmの標高55 m付近(BF1地点)には、最終間氷期(下末吉期)の海進期に対比される古谷泥層が分布する(杉山ほか, 1988)。また、調査地点である佐倉周辺の相良層には、南に開いた緩い弧状を呈する正断層群(H断層系:奥村2016)が分布し、これらの正断層群は、佐倉地域に分布するいずれの段丘堆積物も変位させていないことが確認されている。

    【試料採取】

     試料は、図-1に示すトレンチの断層の上盤側から採取した。基盤岩の相良層にはNW-SE走向の南落ちの正断層が確認され、円~扁平な基底礫を含む泥層が50cm程の層厚で相良層を不整合に覆っている。泥層の基底面に変位や変形は認められない。標高や泥層に含まれる基底礫の礫種等を踏まえると、泥層は最終間氷期の海進期の段丘堆積物に対比されると考えられる。正断層は、比較的連続性の良い2条の断層面を有し、断層面やその周囲には、引き延ばされたり、ちぎれたような形状を示す砂岩や泥岩が見られ、断層面には明瞭なせん断面は確認されない。また、断層周辺の母岩に断層角礫は認められないことから、堆積後の固結前の流動変形を伴う断層であることが示唆される。

     本地点の第四紀堆積物は泥質であり、10Be分析のための試料精製に適した粒径の石英粒子がほとんど認められない。そのため下位に位置する第三系基盤岩(相良層)を分析の対象とし、その結果に基づいて上位の第四系の堆積年代を検討した。試料は、相良層の上面から砂岩層を対象に深度方向に採取し、粒度150μmを中心とした石英を抽出した。得られた石英粒子は、米国Purdue大学の加速器質量分析施設(PRIME Lab)で化学処理した後、10Be濃度を分析した。

    【分析結果】

     測定された10Be/9Be同位体比は、バックグラウンドよりも有意に高く、測定は良好な状態で実施された。分析によって得られた石英中の10Be濃度について、各試料の採取標高に対してプロットした深度プロファイルを図-2に示す。10Beの濃度は、深さ方向に連続的に減少している。

    【考察】

     御前崎地域では、後期更新世の海進期以降、基盤を覆う堆積物が海水準の低下や隆起に伴う海退と同時に地表に露出し、侵食を受けている。BF4地点は近傍のBF1地点に比べて基盤を覆う泥層の層厚が小さく、両地点に現存するそれらの層厚差は約15 mに達する。このことはBF4地点が大きく削剥されていることを示唆し、仮にそれがMIS5eに相当する12~13万年前以降、現在までの間に生じたとすると、削剥速度は少なくとも約120 mm/kaと想定される。一方で、分析により得られた10Be濃度の深度分布は、数十万年スケールで約120 mm/kaの速度で地表が削剥されてきたと考えた場合に推定される核種の蓄積モデルカーブと合致している。このことは、BF4地点において基盤を覆う第四系堆積物を最終間氷期の海進期の堆積物とみなして差し支えないことを意味している。

    【結論】

     今回、10Beを用いてBF4地点の泥層の堆積年代を検討した結果、第三系における核種の蓄積量は、上位の第四系が12~13万年前に堆積後、現在までの間に約15 m削剥されたとの想定で得られるモデルカーブと整合しており、これが最終間氷期の海進期の堆積物に対比できるとの結果を得た。なお、断層の下盤側においても深度方向に10Beを用いた分析を実施した。その結果、10Beの深度方向の濃度には、断層の両側で有意な差異は認められなかった。

    【引用文献】

    松四ほか(2007)宇宙線生成核種10Beおよび26Alのプロセス地形学的応用:地形,28,87-107.

    杉山ほか(1988)御前崎地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,153p.

    奥村(2016)浜岡原子力発電所とその周辺の上盤プレート地殻内断層と地震: 日本地球惑星科学連合2016年大会.

R24(ポスター)鉱物資源と地球物質循環
  • 石田 美月, 稗田 裕樹, 荒木 修平, 藤永 公一郎, 清水 徹, 谷水 雅治, 中村 仁美, 岩森 光, 町田 嗣樹, 米田 成一, 中 ...
    セッションID: R24-P-1
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/05/31
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    産業上重要な金属元素の中には、鉛、亜鉛などのベースメタルの鉱石の副産物 (by-product) として産するものがある(たとえば、インジウム、カドミウム、テルルなど)。副産物の元素は、すべてのベースメタルの鉱床に濃集しているわけではなく、資源量の評価や効率的な探査が難しいことが知られている。したがって、これらの副産物元素が、なぜ、どのような場合に鉱床に濃集するかのメカニズムの解明が、重要な課題となっている [1]。

     レアメタルの1種であり、液晶や半導体に利用されるインジウムも、ベースメタルの副産物として産する元素の1つである。浅熱水性の鉛-亜鉛鉱床である北海道西部の豊羽鉱床は、1990年代には世界最大のインジウム鉱床として知られていた [2]。豊羽鉱床の鉱脈は、その走向や鉱物組み合わせにより前期脈と後期脈に分けられており、このうち後期脈は鉛-亜鉛に加えて、銀、銅、スズ、インジウムなどを産する [3]。豊羽鉱床の成因について、これまで様々な議論が行われてきたものの、後期脈の多金属鉱化作用の原因については不明な点が多い。後期脈に産する鉛、亜鉛、銀、銅、インジウムは全て親銅元素であり、これらの元素の起源物質の指標として、Pb同位体比は適していると考えられる。そこで本研究は、豊羽鉱床の鉱石中の硫化鉱物のPb同位体比と、豊羽鉱床周辺地域の岩石のSr-Nd-Pb同位体比を組み合わせることで、豊羽鉱床の鉱石中の金属元素の起源について制約することを目的とする。

     豊羽鉱床の鉱石中の硫化鉱物(方鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱など)のPb同位体比は、前期脈後期脈ともに、豊羽地域の基盤岩である薄別層よりも低い207Pb/204Pbおよび208Pb/204Pb比を示した。したがって、鉱石中のインジウムは、基盤岩に由来するものではないことが示唆される。また、前期脈のPb同位体比は、豊羽鉱山南方の無意根山溶岩の同位体比の範囲とほぼ一致することから、無意根山と同様の同位体比を持つマグマが、前期脈に金属元素を供給したと考えられる。これに対して後期脈は、前期脈や無意根山よりも幅広い206Pb/204Pb同位体比を示し、前期脈とは異なる金属元素のソースを持っていた可能性が高い。発表においては、後期脈に特徴的なこの金属元素のソースの候補について、周辺岩石のSr-Nd-Pb同位体比に基づいて制約するとともに、後期脈に多金属鉱化作用が生じた要因について考察を行う。

    [1] Jowitt, S. et al. 2018. Econ. Geol. Spec, Publ. 21, 25-38.

    [2] Ohta, E., 1991. Min. Geol. 41, 279–295.

    [3] Yajima, J., Ohta, E., 1979. Min. Geol. 29, 291–306.

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