80才以上で比較的に健康な老人455例について, 検尿, 血球計算, 血圧測定, 心電図記録, 胸部X線撮影, 血液化学検査を行い, 各検査項目における平均値・異常者の頻度を調査した.
血圧平均値は男141/76mmHg, 女145/77mmHgで, 正常血圧者は198例であった. 血圧の高いものは女性に多くみられた. 心電図ではST・Tの変化が134例 (29.5%) にみられ, 左室肥大がこれに次いだ. 心筋硬塞は6.8%, 左軸偏位は7.9%, 房室ブロックは7.0%, 脚ブロックは7.2%であり, 異常所見保持者は65.7%に達した. ST・T異常, 左脚ブロック, 上室性期外収縮は女性に多く, その他の所見は男性に多くみられた. 胸部X線で心胸比が55%以上の例は男で14.6%, 女で46.6%であり, とくに女性に心拡大例が多かった.
赤血球・白血球・血色素の平均値は正常範囲内にあり, 検尿では尿蛋白陽性は9.9%, 尿糖陽性例は8.3%, ウロビリノーゲン増加は13.1%で, 尿蛋白陽性は女に, 後2者は男に多く認められた. 血液化学検査においては, 平均値はおおむね正常範囲内にあった. GOT, GPT, 硫酸亜鉛試験, 尿素窒素は男性が高値を示した. これに対しアルカリフォスファターゼ, 燐脂質, コレステロール, βリポ蛋白, 中性脂肪, 遊離脂酸は女性が男性よりも高値であった.
以上のごとき検査で異常を示さなかったものは10.5%にすぎず, 高令者ではほとんどの者がなんらかの異常を有すると考えられる. 異常の頻度が高いのは, 心血管系であり, 高令者における心血管系疾患の予防・治療の重要性が認められる.
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