日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
10 巻, 4 号
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  • 伊藤 美佐男, 風呂 中弘, 清貞 和紀, 宮西 通博, 伊藤 千賀子
    1973 年 10 巻 4 号 p. 205-212
    発行日: 1973/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    80才以上で比較的に健康な老人455例について, 検尿, 血球計算, 血圧測定, 心電図記録, 胸部X線撮影, 血液化学検査を行い, 各検査項目における平均値・異常者の頻度を調査した.
    血圧平均値は男141/76mmHg, 女145/77mmHgで, 正常血圧者は198例であった. 血圧の高いものは女性に多くみられた. 心電図ではST・Tの変化が134例 (29.5%) にみられ, 左室肥大がこれに次いだ. 心筋硬塞は6.8%, 左軸偏位は7.9%, 房室ブロックは7.0%, 脚ブロックは7.2%であり, 異常所見保持者は65.7%に達した. ST・T異常, 左脚ブロック, 上室性期外収縮は女性に多く, その他の所見は男性に多くみられた. 胸部X線で心胸比が55%以上の例は男で14.6%, 女で46.6%であり, とくに女性に心拡大例が多かった.
    赤血球・白血球・血色素の平均値は正常範囲内にあり, 検尿では尿蛋白陽性は9.9%, 尿糖陽性例は8.3%, ウロビリノーゲン増加は13.1%で, 尿蛋白陽性は女に, 後2者は男に多く認められた. 血液化学検査においては, 平均値はおおむね正常範囲内にあった. GOT, GPT, 硫酸亜鉛試験, 尿素窒素は男性が高値を示した. これに対しアルカリフォスファターゼ, 燐脂質, コレステロール, βリポ蛋白, 中性脂肪, 遊離脂酸は女性が男性よりも高値であった.
    以上のごとき検査で異常を示さなかったものは10.5%にすぎず, 高令者ではほとんどの者がなんらかの異常を有すると考えられる. 異常の頻度が高いのは, 心血管系であり, 高令者における心血管系疾患の予防・治療の重要性が認められる.
  • 大橋 重信, 三島 好雄, 中山 夏太郎
    1973 年 10 巻 4 号 p. 213-218
    発行日: 1973/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    閉塞性動脈硬化症では臨床的には四肢の動脈病変が中心となることが多く, 局所病変にのみとらわれがちであるが, その動脈硬化性病変は全身の臓器血管にも及ぶことが多いとされ, そのため予後はよくないと考えられる.
    著者らは過去10年間に東大第1外科および東京都養育院で扱った268例の閉塞性動脈硬化症患者について血圧, 心電図, 腎機能, 胸部, 腹部レントゲン撮影などの検査所見とさらに手術所見, 剖検所見を中心に閉塞性動脈硬化症の臓器血管合併症を考察し, 以下の知見を得た.
    1) 全例中高血圧症が7割, 高コレステロール血症が4割と多く, これらと閉塞性動脈硬化症との密接な関係が示唆された.
    2) 心電図異常, 眼底動脈硬化, 腎機能障害など脳・冠・腎動脈障害をきたしたものが129例 (48%) であり, 合併症としては臓器血管合併症が多く, 脳血管障害, 心筋硬塞, 動脈瘤, 腎機能障害, 狭心症など動脈硬化性病変が主因と考えられる疾患が多かった.
    3) 死因としては脳・冠・腎動脈障害によるものが65%を占め, とくに心筋硬塞21%, 脳血管障害19%と重篤な臓器血管合併症が直接死因とつながり予後を悪くしているようであった.
    4) 剖検例中の13例について考察した結果, 全例とも大動脈, 脳・冠・腎動脈に中等度から高度の硬化像を認め, 時に全身の臓器血管にも広範な粥状変性を起こし, 血栓閉塞のみられるものもあった.
  • 倉持 衛夫, 関 顕, 藤井 潤
    1973 年 10 巻 4 号 p. 219-224
    発行日: 1973/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    40才以上の男347例, 女185例, 計532例について鼠径部動脈雑音をしらべ, 頻度および動脈硬化に関連する諸因子との関係を検討した. 鼠径部動脈雑音は男12.1%, 女7.0%, 男女合わせて10.3%に聴取された. 年代別の頻度は男40才代1.2%, 50才代8.2%, 60才代14.5%, 70才以上40.0%, 女40才代6.8%, 50才代4.0%, 60才代7.3%, 70才以上27.3%で, 男女とも加令とともに増加した. 片側性に鼠径部で動脈雑音を聴取する場合には右側のみの症例が左側のみの症例より多かった. 動脈雑音のある男では収縮期血圧は高く, 拡張期血圧は男女ともに低い傾向であった. 血清コレステロール値および糖尿病の有無と動脈雑音の有無との間には密接なる関係はみられなかった. 鼠径部動脈雑音のあるものでは腹部大動脈石灰化の頻度は高かったが, 女では男ほど明瞭ではなかった.
  • 北村 龍男, 伊藤 敬一, 沓沢 尚之
    1973 年 10 巻 4 号 p. 225-231
    発行日: 1973/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    頭部単純X線写真上, 内頸動脈 siphon 部にしばしば石灰化像を認めるが, その臨床的意義についての検討は少ない. 我々は, 特定地域の20才以上の全住民を対象とした集検の1,879名と, 入院患者750名に頭部単純X線撮影を行ない, siphon 部石灰化像の臨床的意義を検討した.
    集検の成績より以下のような結論を得た.
    1) Siphon 部石灰化像の出現頻度は4.5%で, この成績は欧米の成績とほぼ同様であった.
    2) 加令により siphon 部石灰化像出現頻度の増加傾向を認め, 20~39才は0%, 40~49才は1.2%, 50~59才は6.3%, 60~69才は15.2%, 70才以上は30.0%であった. 男女間の頻度には差を認めなかった.
    3) 頭痛, めまい, しびれ感の自覚症状は石灰化像出現頻度と関連性がなかった.
    4) 最高血圧, 最低血圧の高い群では siphon 部石灰化像出現頻度が高かった.
    5) 眼底所見の動脈硬化性変化は石灰化像出現頻度と関連性があった.
    6) トリグリセライド値, リン脂質値は siphon 部石灰化像出現頻度と関連性があったが, コレステロール値, L/O比は関連性がなかった.
    入院患者についての検討では次のような成績を得た. 石灰化像出現頻度は脳硬塞で明らかに高く29.9%であった. 高血圧性脳出血では16.0%であり, クモ膜下出血ではわずかに6.3%であった.
    これらの結果は, siphon 部石灰化像はしばしば認められ, かつ脳血管障害とくに脳硬塞の予知にある程度の information を与えることを示している. それゆえ, 脳動脈硬化症の診断, 管理上頭部単純X線写真により siphon 部石灰化像を検討することは有意義である.
  • 1973 年 10 巻 4 号 p. 232-274
    発行日: 1973/07/31
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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