胆石症は加齢とともに増加傾向があり, 近年高齢者人口の増加とともに臨床的に重要な疾患とされている. 今回著者らは, 老人医療施設の剖検例で, 高齢者の胆石症について検討したので報告する. 対象は浴風会病院 (東京) の1962年~1973年7月の11年半の60歳以上の剖検例1070例で, 男375例, 女695例である.
1) 胆石発生頻度は, 60歳以上の高齢者では18.8%であり, 男13.9%, 女21.4%であった. 年齢別では, 60歳代男2.4%, 女24.5%, 70歳代男17.4%, 女18.8%, 80歳代男11.9%, 女21.1%, 90歳代男20.0%, 女31.3%であった.
2) 胆石所在部位は, 95%が胆嚢内であった. 胆嚢外結石は18.9%の症例にみられた.
3) 胆石の種類はビリルビン系石が多くみられ, コレステロール系石とビリルビン系石の比は, 男で1:4.3, 女で1: 9.2であった.
4) 胆石症の3主徴である発熱, 黄疸, 疼痛を認めた症例は, 胆嚢内胆石の場合, 男でそれぞれ32.5%, 10.0%, 30.0%であり, 女では20.0%, 10.4%, 30.4%であった. silent stone は, 男52.5%, 女58.4%認められた. 胆嚢外胆石の場合, 発熱, 黄疸, 疼痛は男でそれぞれ41.7%, 25.0%, 41.7%, 女で37.5%, 12.5%, 54.2%認められた. silent stone は男50.0%, 女41.7%存在した.
5) 胆石症例の死亡前の主な臨床診断は, 男女とも中枢神経系, 循環器系, 呼吸器系の疾患であり, 胆道系疾患は男で23.1%, 女で21.5%であった. 胆石症と診断された症例は男で9.6%, 女で8.7%であった.
6) 胆石症が直接死因となった症例は, 男で7.7%, 女で4.7%みられた.
7) 胆石症に胆嚢癌の合併は, 女で2.1%みられた. 胆嚢癌の胆石保有率は女で60%であった.
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