90歳以上の超高齢者の脳血管障害, 特に脳出血につき検討した.
1) 過去3年間における養育院付属病院剖検例のうち, 90歳以上のものは39例あり, そのうち何らかの脳血管障害性変化を示したものは27例 (69%) であった. その内訳は, 大出血5例, このうち脳実質内3例, 脳室出血1例, 両側硬膜下血腫1例であった. 脳硬塞は大軟化4例, 中小軟化の多発18例であり, 大軟化と大出血はほぼ同数であった.
2) 90歳老人の脳出血例5例を検討すると, 女4例, 男1例で, 左混合型出血, 左側頭葉出血し, 橋出血, 原発性脳室出血, 両側硬膜下血腫であった. 全例高血圧があり, 脳動脈硬化は3例に高度であった.
3) 非定型的な左側頭葉出血例 (92歳女) につき病理学的検索を加え, 脳の小血管に高度の congophilia をみとめた. Congo red 染色による蛍光, 重屈折性および電顕所見より, これは血管壁へのアミロイド沈着であり, その結果としての血管破綻が出血の原因と考えられた. この congophilic angiopathy は髄膜血管のほか, 後頭葉, 側頭葉の実質内小血管に最も高度にみられ, 出血部位との関連が想定された.
4) 老年者脳における congophilic angiopathy を60歳以上の約80例につきしらべると, その出現頻度は年齢とともに増加し, 90歳代では60%にみとめられた. 従って, 超高齢者では, congophilic angiopathy による出血の可能性が高いと考えられた.
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