日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
14 巻, 3 号
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  • 佐々木 憲二, 福島 保喜, 水上 陽真, 村井 容子, 木田 厚瑞, 田口 悦子
    1977 年 14 巻 3 号 p. 151-156
    発行日: 1977/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    一酸化炭素-室内気混合ガス (約0.04%CO) を吸入し, 定常状態にて終末呼気採取による恒常状態法肺拡散能力 (DLCO) の, 老年者における正常予測値を求めるために, 実施例138例から, 臨床所見, 胸部X線・呼吸機能所見を参考として, 正常と思われる60歳以上の老年者31名〔男19名: 平均年齢67.7歳±5.7(1SD), 女12名: 平均年齢71.6歳±7.7 (1SD)〕を選び, 若年 Volunteer〔男11名: 平均年齢22.3歳±2.0(1SD)〕と比較した. DLCO値は, 測定時の安静分時換気量VE (l/min) に依存し, 両者間には, 次の有意な(p<0.01) 一次回帰式が成り立つ; 若年者DLCO=1.18VE+9.33(r: 0.69), 正常老年者DLCO=1.19VE+0.13(r: 0.71). 即ち老年者のDLCO値は, 若年者より明らかに低く, DLCOの正常値予測回帰式にも年齢の要因を考慮すべきであり, 成人のそれとは異った回帰式を必要とすると思われる. 又老年者の男, 女の回帰式には有意差はみられなかった. 老年者のDLCO値の評価は, 本回帰式に基づき, 正常予測値を求め, それに対する, 実測値の百分率 (%DLCO) で比較しうることを示した.
  • 在ハワイ, 在日日本人例の比較
    井上 淳子
    1977 年 14 巻 3 号 p. 157-169
    発行日: 1977/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老性変化の病理形態学的研究の一環として在ハワイ日本人男子136例と在日日本人男子86例の剖検膵について逐齢的変化を組織学的ならびに微計測的に比較検討した.
    膵重量, 膵外分泌腺 (膵腺) 組織量, 膵腺細胞数, 間質量の逐齢的減少を認めた. 膵島量は加齢の影響を受けず, 各年代でほぼ一定であった. 脂肪組織量は個体差が大きく, 一定の逐齢的消長を認めなかった. 膵腺細胞の大きさは在日群 (在日日本人) のみ逐齢的に増容したが, 在ハワイ群 (在ハワイ日本人) では高齢者でむしろ小さかった. 膵腺細胞核の大きさは在ハワイ, 在日両群とも逐齢的に増容した.
    以上両群とも加齢による消長に本質的な差を認めなかったが, 在ハワイ群において膵重量, 膵腺組織量, 膵島量, 脂肪組織量, 膵腺細胞および核の大きさはすべて大であった. また, これら両群間の差は在ハワイ群のすべてが2-3世からなる50歳代以下に特に著しく認められ, 1世からなる70歳代以上ではその差が少くなり, 特に80歳代では両群における値が接近してくるものが多かった. この原因の一つとして, 在ハワイ1世, 2-3世, および在日日本人における生活環境, ことに栄養条件の差の果す役割を重視した.
    既に報告された同一材料による肝の老化過程の様相と比較し, 膵の実質細胞である膵腺細胞数の逐齢的減少および核の逐齢的増容が軽度である点などを中心として, 肝細胞, 膵腺細胞の分化度の差や膵外分泌機能の代償の可能性その他についても考察した.
  • ことにその臨床像と予後について
    上田 慶二, 鎌田 千鶴子, 三船 順一郎, 大川 真一郎, 池端 邦輔, 杉浦 昌也, 村上 元孝
    1977 年 14 巻 3 号 p. 170-177
    発行日: 1977/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者 Sick Sinus Syndrome 例33例を対象とし, 平均3年2カ月間経過を観察し, 臨床所見, 治療と予後を検討して以下の成績を得た.
    1) 年齢では60歳台<70歳台<80歳台と高齢者に多い傾向を認めた. 2) 臨床的分類では徐脈頻脈症候群(15例) と洞停止あるいは洞房ブロック例 (14例) が多く, 洞徐脈例 (4例) は少数であった. 3) 全例の72.7%が症状を呈したが, 無症状例に80歳台高齢者, 老人性痴呆合併例を多く認めた. 4) 心電図上房室ブロック, あるいは脚ブロックの合併を21.2%に認めたが, 陣旧性心筋梗塞を示す例は12.1%にすぎず, 老人における慢性洞結節機能不全と心筋虚血との間に密接な関連は認められなかった. 5) 約半数の症例では薬物療法による治療が可能であったが, 42.4%の症例では, 短期あるいは長期心臓ペーシングを必要とした. また抗不整脈薬以外の薬によっても洞結節機能抑制を呈する例が認められた. 6) 観察期間中症状不変18.2%, 軽快57.6%で, 死亡率は24.2%であったが, うち不整脈死または関連ある心死は9.9%であった. 7) 全症例における3年生存率は76.2%であり, 心臓ペースメーカーの積極的利用によりさらに治療成績の向上が期待される.
  • 宮本 正治, 上田 操, 中林 肇, 内田 健三, 斉藤 善蔵, 竹田 亮祐, 泊 康男
    1977 年 14 巻 3 号 p. 178-187
    発行日: 1977/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Werner 症候群自験3例 (35歳女性, 43歳男性, 53男女性) の内分泌系機能を検討し, 文献例の成績と併せ考察した.
    まず成長ホルモン分泌については, insulin 低血糖に対する反応が3例とも低かった. 甲状腺機能は各例とも甲状腺ホルモンが正常内低値ないしやや低値であったにも拘らず, 2例でTSHが高値を示し, うち1例でTRH負荷時のTSHが過剰反応を示した. 視床下部-下垂体前葉-副腎系テストでは, 急速ACTH負荷テスト上異常反応を認めないに拘らず, metyrapon 負荷で尿中17-OHCSは無ないし低反応の傾向があった. さらに, 11-OHCS日内リズムも2例で夜間の高値が認められ, TSH動態の異常例があったことを考え併せると, 視床下部-下垂体系調節機構異常の可能性が推定される. 性腺系では, 男性例で血中FSH, LHが低値であり, LH-RHに対しても低反応であったが, 睾丸組織では間質細胞の増生が認められ, 原発性の性腺発育不全の可能性も否定できなかった. また, 女性1例では5回の出産を経験していた. 2例で Goldsmith の方法に従いCa静注負荷を行ったが, 副甲状腺機能亢進症の所見は得られなかった. 血漿 renin 活性は2例で正常高値ないし高値であった. 糖代謝系では3例とも耐糖能障害を認め, 糖負荷時IRIの過大反応をみた. しかし, 2例の Tolbutamide 負荷テストでは, IRIは正常反応であった. これらのデーターは, 本症では末梢組織での insulin 作用発現の障害があることを予想させる.
    本症の内分泌学的異常は多岐にわたり, 文献例の成績を考慮すると各症例間で相反する所見を認めることが多い. 従って, 内分泌系の異常を本症候群の一次的成因として理解することは難しい. また, 加齢による変化と異なる点も多い.
    今後は細胞レベルで本症の加齢現象の本態が検討される必要がある.
  • 特に congophilic angiopathy との関連について
    朝長 正徳, 東儀 英夫, 山之内 博
    1977 年 14 巻 3 号 p. 188-194
    発行日: 1977/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    90歳以上の超高齢者の脳血管障害, 特に脳出血につき検討した.
    1) 過去3年間における養育院付属病院剖検例のうち, 90歳以上のものは39例あり, そのうち何らかの脳血管障害性変化を示したものは27例 (69%) であった. その内訳は, 大出血5例, このうち脳実質内3例, 脳室出血1例, 両側硬膜下血腫1例であった. 脳硬塞は大軟化4例, 中小軟化の多発18例であり, 大軟化と大出血はほぼ同数であった.
    2) 90歳老人の脳出血例5例を検討すると, 女4例, 男1例で, 左混合型出血, 左側頭葉出血し, 橋出血, 原発性脳室出血, 両側硬膜下血腫であった. 全例高血圧があり, 脳動脈硬化は3例に高度であった.
    3) 非定型的な左側頭葉出血例 (92歳女) につき病理学的検索を加え, 脳の小血管に高度の congophilia をみとめた. Congo red 染色による蛍光, 重屈折性および電顕所見より, これは血管壁へのアミロイド沈着であり, その結果としての血管破綻が出血の原因と考えられた. この congophilic angiopathy は髄膜血管のほか, 後頭葉, 側頭葉の実質内小血管に最も高度にみられ, 出血部位との関連が想定された.
    4) 老年者脳における congophilic angiopathy を60歳以上の約80例につきしらべると, その出現頻度は年齢とともに増加し, 90歳代では60%にみとめられた. 従って, 超高齢者では, congophilic angiopathy による出血の可能性が高いと考えられた.
  • 1977 年 14 巻 3 号 p. 195-239
    発行日: 1977/05/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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