日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
15 巻, 6 号
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  • 第一報 加齢の影響
    宮脇 淳
    1978 年 15 巻 6 号 p. 523-532
    発行日: 1978/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    加齢にともない運動耐容能の低下をきたすが, これには循環調節機序の適応失調が大きく関与する. 本研究では19歳から79歳までの健常男子65名を対象とし, 自転車エルゴメーターを用いた段階的運動負荷時の循環動態を, 左心収縮時相とインピーダンス法により検討した. 被検者は, 49歳以下の35名 (I群), 50歳台の15名 (II群), 60歳以上の15名 (III群) に区分せられた. 方法は十分な安静臥床の後坐位の自転車エルゴメーターにより50ワット5分間の負荷を加え, 10分後再び各人に応じて75~125ワット5分間の負荷を加えて10分まで観察した. 心機図とインピーダンス法による測定は, 運動前, 運動直後および回復期1分間隔とし, 同時に換気諸量を連続記録した.
    結果はI, II群と比較してIII群で次のような特徴を示した. 即ち, 安静時QS2I, PEPの延長, PTTの短縮をみとめ, 又, 分時酸素摂取量, 分時炭酸ガス排出量, O2 removal の減少をみた. 運動負荷時心拍出量の増大が顕著であり, 分時酸素摂取量が600ml/min/m2 STPD以下では心拍数, 一回駆出量ともに増加が大きいが, それ以上では心拍数上昇の程度に有意差なく代償的な一回駆出量の増加が著しかった. 又PEPの減少度, LVETcの延長度も大であった. このような循環動態は, I群にβ遮断剤を投与した時と類似していた. 収縮期圧および拡張期圧の上昇も著しく, 脈圧と心拍出量両者の増加度の関係をみるとI群では密な正相関をみるのに反して全く相関を示さなかった. 一方, 換気諸量の反応は三群間に差異をみなかったが, III群でO2 debt の増加が有意であった. さらに50ワット負荷時に循環諸量の回復遅延もみとめられた.
    以上より, 高齢者では運動負荷に対し過度の心仕事量増加が要求されるが, これは, 心予備能減少, 心効率低下, 交感神経活動減少にもかかわらず, 末梢での酸素需要が著しく増大しているためと推察された.
  • 第二報 本態性高血圧症
    宮脇 淳
    1978 年 15 巻 6 号 p. 533-543
    発行日: 1978/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    本態性高血圧症患者59名を含む60歳未満の男性96名を対象として, 自転車ニルゴメーターを用いて段階的運動負荷を加え, その循環動態を左心収縮時相とインピーダンス法により測定した. 対象は, 健常群37名, 動揺型高血圧症18名, 心電図上異常をみない固定性高血圧症20名, 左心肥大を有する高血圧症21名の四群に分類された. 方法は, 十分な安静臥床の後に自転車エルゴメーターにより50ワット5分間の負荷を加え,10分後再び100ワット5分間の負荷を加えて10分まで観察した. 心機図とインピーダンス法による測定は運動前, 運動直後および回復期1分間隔とし, 同時に換気諸量を連続記録した. なお一部症例には125ワット5分間の負荷を加えた.
    結果は, 高血圧症各群で次のような特徴を示した. 動揺型高血圧症では, 安静時心拍数, double product, 分時酸素摂取量の増加, QS2I, LVETIの短縮をみとめ, 運動負荷時には心拍数上昇が大で, 心拍出量, 末梢血管抵抗の変化度は50ワット直後で小さく, 100ワット直後で健常群と有意差ないが速かな回復を示した. 又LVETI, LVETcの短縮が顕著であった. 合併症のない固定性高血圧症では, 安静時PEP延長, LVETI,PTT短縮をみとめ, 運動負荷時には心拍出量の増加度, 末梢血管抵抗の減少度が大きく, PEP短縮, LVETc延長の程度も大であった. 心拍数や血圧の上昇の程度は健常群と差異がなかった. 左室肥大を有する高血圧症では, 安静時上述の変化は一層顕著となり, QS2I QS2cの延長をもみとめ, 運動負荷時は収縮期および拡張期圧の著しい上昇, 心拍数, 心拍出量, 一回駆出量の増加抑制があり, PEP, QS2I, QS2cは運動直後も他群と比較して有意に延長していた.
    以上より, 本態性高血圧初期と思われる動揺型高血圧症ではβ受容体感受性や血管反応性の亢進が推測され交感神経系優位であるが, 固定性高血圧症では心収縮能異常, 動脈硬化のような器質的変化の関与が認められ, 殊に左室肥大群で循環動態への影響が大であった.
  • 中村 喜久子
    1978 年 15 巻 6 号 p. 544-553
    発行日: 1978/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    臓器組織の老性変化の研究の一環として, 17歳から73歳までの男子の手術胃の大弯について年齢的に微計測的比較検索を行い, 次の諸点をみとめた.
    胃粘膜固有層は加齢に伴い菲薄化するが, これは固有層腺部の菲薄化によるものである.
    胃粘膜腺細胞は加齢に伴ってその数の減少を示し, 減数は主細胞に最も顕著で, 壁細胞がこれにつぎ, 副細胞では軽度であり, その減数は細胞の分化度に比例的であると考えられる.
    胃粘膜腺細胞, 上皮細胞の細胞体および核の大きさは加齢に伴って種々変動するが, 一般的には40歳代に最も大きい. 高齢者では主細胞に軽い容積萎縮をみたが, 壁細胞, 被蓋上皮細胞には容積萎縮は明らかでなく, むしろ増容の傾向さえ認めると共に核容積にも加齢に伴う増大がみられ, ことに被蓋上皮細胞では顕著であった.
    胃固有筋層の厚さは50歳代までは加齢に伴って増加し平滑筋細胞の増数をうかがわしめた. しかし60歳代以後には筋細胞の減数を認めると共に筋細胞容積の増大が推定された.
    以上の諸成績から胃組織の年齢変化は田内のいう生命維持に直結している組織と同日に論ずるべきものと考えられると共に構成細胞の種類によってその加齢変化にも若干興味のある差のある点をも示した.
  • 葛谷 文男, 吉峯 徳, 森 邦雄, 坂本 信夫
    1978 年 15 巻 6 号 p. 554-561
    発行日: 1978/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    著者等はさきに家兎摘出大動脈平滑筋の収縮におよぼすノルアドレナリン, レシチンの影響に関して報告した. 今回はプロスタグランヂンおよびその誘導体の家兎摘出大動脈平滑筋の収縮に及ぼす影響を観察し, 同時にこれら薬剤の血小板凝集に対する影響をもあわせ比較検討した. その結果, プロスタグランヂンおよびその誘導体はそれ自身で家兎摘出大動脈平滑筋を収縮する作用があるが, その強さは, PEG2>GNO-1142>747-1>PGE1の順であった. 又これら被検薬はそれぞれノルアドレナリンに対して非競合的拮抗を示した. その拮抗の強さはそれぞれ単独での収縮作用の強さとよく一致した. またこれら被検薬はセロトニン, ヒスタミンとも拮抗した. 一方血小板凝集に対してはこれら被感薬はそれぞれ異った作用を及ぼした. すなわちPGE2はそれ自身で血小板凝集を惹起した. PGE1はノルアドレナリン凝集に対して抑制作用を示した. GNo-1142, 747-1はADP, ノルアドレナリン凝集に対して極めて強い抑制作用を示した.
    以上よりプロスタグランヂンの大動脈平滑筋への影響と血小板凝集に対する作用との間には異ったメカニズムが存在する事が想像された.
  • 蔵本 築, 関 顕, 松下 哲, 桑島 厳, 三船 順一郎, 岩崎 勤, 村上 元孝
    1978 年 15 巻 6 号 p. 562-565
    発行日: 1978/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老年者本態性高血圧で降圧剤治療中の65例に降圧剤を中断した後の血圧の推移を観察した. 降圧剤中断1カ月で血圧はほぼ一定値まで上昇し, 以後6カ月まで著変がなかった. 治療中血圧の低いものが6カ月後の血圧も比較的低値を示した. 治療中収縮期血圧149以下のものは, 160以上への上昇65%, 150台のものは85.7%であり, 160, 170台のものの中止後血圧上昇はそれぞれ56.3%, 57.1%, 180, 190台では血圧上昇は見られなかった. 降圧剤中断後も160未満の収縮期圧を示したものは26.5%であった. 拡張期血圧79以下のものは90以上への上昇13.6%, 80台のもの53.6%であった. 90台では血圧上昇41.7%, 100以上のものでは血圧上昇は見られなかった. 降圧剤中断後も90未満の拡張期圧を示したものは64.0%であり, 老年者高血圧の特微の1つと思われる. 服用中の降圧剤は thiazide 降圧利尿剤が大多数であり, 1剤群と2剤以上併用群で血圧上昇率には差を認めなかった.
  • 吉峯 徳, 葛谷 文男, 森 邦雄, 坂本 信夫
    1978 年 15 巻 6 号 p. 566-573
    発行日: 1978/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    末梢 L-Dopa 脱炭酸酵素阻害剤 (PDI) を L-Dopa によるパーキンソン病治療のさいに併用することは治療上有利であるといわれている. このさいビタミンB6 (B6) を投与することが有利かどうかは一定の見解に達していない. 著者らはこの点をラットを用いるB6負荷群とB6欠乏群の両者でPDI (MK-486, RO4-4602) を投与して実験から推論した.
    1) in vitro 実験でラット肝でのAAD活性はB6濃度の上昇によりかえって阻害された.
    2) in vivo 実験でB6 (+) ではPDI阻害効果は小腸で最も強く, Pal-p 負荷によりかえって阻害が強まった. 腎, 脳でも阻害がみられた. B6 (-) でも小腸での阻害が最高で, 肝, 腎でもAAD活性は低値を示した.
    3) 肝, 腎のGOT, GPTはMK群でやや低値をとるも, 特に大きな変化は認めなかった. 以上の事よりPDIの効力は小腸で最も強く, Pal-p負荷により更に阻害効果が強い様な結果を示した. これは L-Dopa とB6が血中及至組織中において結合物を生じ, そのためにみかけ上のAAD活性低下となったと考えられる. B6の血中及至組織中での増加が L-Dopa との結合を作ることの可能性及び, PDI投与のさいに残存するAADの活性賦活などの可能性を考えるとき, B6の長期大量投与はパーキンソン病の L-Dopa 療法に対して慎重を要するものと考えられる.
  • 瀬戸山 隆平, 佐藤 正典, 重松 宏, 小林 宏, 太田 郁朗, 大橋 重信, 三島 好雄
    1978 年 15 巻 6 号 p. 574-579
    発行日: 1978/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    過去20年間に東大第1外科を受診した慢性動脈閉塞は1339例であり, 閉塞性動脈硬化症 (以下ASO) 449例, いわゆる Buerger 病 (以下TAO) 890例である. 今回, アンケートを中心に遠隔成績追跡調査を行い, 主としてASOの予後についてTAOと対比して考察を行った.
    ASOは最近増加の傾向にあり, 男性に多くみられ, 51歳以上の発症が約80%に及んでいる. TAOが20~30歳代の男性に多くみられるのと対照的である. 冷感, 疼痛や間歇性破行を初発症状とするものが多く, 閉塞部位は末梢側にもみられるが, TAOと異なり中枢側の限局的な閉塞例が約30%にみられ, 血行再建術の適応例が増加しつつある.
    臨床検査所見, 合併症, 併存症そして死因等からみると, 本症は高血圧症や高コレステロール血症, 糖尿病, 臓器血管合併症と密接な関係を有しているといえる.
    本症の死亡率もTAOに比し極めて高く, 症状初発より死亡までの期間は3年以内14.1%, 5年以内28.7%, 10年以内33.9%, 10年以上40.2%に及んでいる. 死因別にみると81死亡例中, 心疾患50.6%, 脳血管障害16.1%, 腎不全4.9%と脳・冠・腎等の重要臓器血管障害が70%をも占めている.
    全身性の動脈硬化性病変に対する治療法が確立されていない今日, 生命の予後の面からは薬物療法, 運動療法, 食事療法, 禁煙, そして冠動脈バイパスや高コレステロール血症に対する腸管バイパス等の外科療法などを行い, 直接死因とつながる臓器血管合併症の出現もしくは進展を抑える努力が必要といえる.
    患肢の予後という観点からは可能なら血行再建術を行い, 手術適応がない場合でも対症療法と併せて患肢の保護が必要である.
    本症は生活様式や食餌の変化, 平均寿命の延長などに伴い更に増加すると思われ, 全身の動脈硬化性病変に対する治療法, 患肢に対する外科療法の進歩が今後の課題である.
  • 松尾 武文, 大木 康雄
    1978 年 15 巻 6 号 p. 580-586
    発行日: 1978/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    糖尿病の細小血管障害の成り立ちに微小血栓の役割が注目されている. 微小血栓の発生と関係の深い血小板凝集能を測定し, 糖尿病における血小板凝集能の役割を解明しようと試みた. 対象糖尿病は296名 (男138名, 女158名) であり, 血小板凝集能の測定は高濃度と低濃度の adenosine diphosphate (ADP) の2種濃度を用いて同時に凝集曲線を描記させ, 二次凝集の有無から四型に分けて評価した. また凝集亢進例に対してアスピリンを投与し, その効果についても検討した. 血小板凝集能は加齢とともに亢進型の頻度が増加し, また女性では男性と比較して亢進型の出現率が大であった. そして, 糖尿病の罹病期間が長期になると, 網膜症例での凝集亢進型の割合は増加し, 10年以上ではすべて亢進型であった. 網膜症との関係をみると, Scott III以上では, 対照と比較して有意に亢進型の出現率が増加した. また糖尿病の治療方法別にみると, 経口剤治療群では, 亢進型の割合が食事療法群やインスリン治療群に比較して増加していた. 次にアスピリンの効果をみたところ, 年齢, 性別, 罹病期間, 網膜症の重症度によってアスピリンの改善効果に影響はなかった. しかし治療方法別にみると, 経口剤治療群でのアスピリンの凝集能改善効果が食事療法群やインスリン治療群に比較して劣っていた.
  • 小田 雅也, 松岡 茂, 藤沢 浩四郎, 平井 俊策, 吉川 政己, 遠藤 久子
    1978 年 15 巻 6 号 p. 587-592
    発行日: 1978/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    全経過約5年で死亡した57歳女子の初老期痴呆症の剖検報告である. 大脳には, 多数の老人斑,Alzheimer 原線維変化が出現し, 前頭葉, 側頭葉を主に, 葉性局在の目立つ実質変性-皮質第2, 3層の基質そしょう化を伴う神経細胞脱落, 白質の著明なグリア線維症-がみられる. 神経病理学的には, Alzheimer 病と Pick 病の特徴を兼ね備えた非定型な初老期痴呆の1例と考えられる. 臨床的には, 比較的早期から, 外界との疎通性を失った無動無言状態が特徴的であった. 末期に原始的な除制現象, 四肢の屈曲位拘縮が現われたが, 神経学的所見は乏しかった. この臨床, 病理所見の関連について, 前頭葉症状, 及び無動無言症との比較そ主に考察した. 本例の特徴は, この症状は前頭葉性の意欲や自発性低下のみでは理解し難い周囲との隔絶,精神機能の阻害があること, また一方, Akinetic mutism や失外套症候群とも異なることである. これと対応して, 脳実質変性, 老年性変化ともに, 前頭葉をはじめとして大脳連合野に強調され, 第一次運動知覚領野とその周辺域には軽度にとどまったこと, また, 病変の進行や性質が緩徐なものであったことに注目した.
  • 古見 耕一, 赤松 隆, 井上 範江, 松村 美枝子, 森 皎祐, 前田 謙次
    1978 年 15 巻 6 号 p. 593-599
    発行日: 1978/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Tiobarbituric acid (TBA) 使用による血中過酸化脂質の測定には八木法, 内藤法, 武内法などが多くの施設で利用されているが, 著者らは武内法を取り上げ主として臨床応用に必要な基礎的面ならびに特定の疾患をもたない20歳代より100歳代までの健常者対照値について検討した.
    はじめに武内氏の原法 (分光法) に従い分光光度計 (分光法) とけい光分光光度計 (けい光法) とを使用し, 同一検体につき平行して測定したところ, けい光法による測定が再現性がよかったので, けい光法について食餌の影響, 検体保存法, 使用血清量, 煮沸時間, 回収率, 精度, 原法との相関などを検討した. なお, 分光光度計は日立181型, けい光分光光度計は日立MPF-2A形を使用した.
    その結果, 測定値に食餌の影響は殆んどなく, 保存は冷蔵7日までは可能であり, 使用血清量は0.1mlでよいこと, 煮沸時間は厳密に設定することが重要であることなどが分った. また, 回収率は90%以上, 精度は同一検体の10回測定で変動係数±3.32%であり, 原法との相関係数は0.71と正の相関が得られた. これらの検討より本法は試みるに値する方法と考えた.
    年代別健常者対照値は, 20歳代2.437±0.836nmol/ml (以下, 単位は同じ), 30歳代2.843±0.969, 40歳代3.053±0.824, 50歳代3.046±0.511, 60歳代2.969±0.607, 70歳代2.393±0.661, 80歳代2.109±0.565, 90歳代1.922±0.428, 100歳代1.651±0.461であり, 60歳代までは加齢とともに増加し, それ以後は加齢とともに減少した. このように少なくとも青年期 (20歳代), 壮年期 (30~50歳代), 老年期 (60歳代以後) の間では推計学的に有意の差が認められるため, 各種疾患についての意義を論ずる場合は, その点を考慮して比較検討すべきであろう.
  • 老ニホンザル脳の血管変化について
    吉村 剛, 谷敷 隆, 三上 泰史, 岩戸 敏広, 森内 巌, 岩田 毅, 池田 研二, 曽根 啓一, 池田 澄江, 森 俊憲, 田村 友一 ...
    1978 年 15 巻 6 号 p. 600-606
    発行日: 1978/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老ニホンザル脳の血管変化を検討し, つぎの結論を得た. 1) 脳内小動脈には老年性変化が認められ, それはヒトの congophilic angiopathy に一致している. 2) この血管と老人斑の間には極めて密接な関係が認められる. 3) かかる血管変化はニホンザル年齢で20歳すぎから明瞭になり始める. 4) ヒトの高血圧性動脈病変と Status lacunaris に類似するものはニホンザルでは線条体と視床において軽度にみられる. また淡蒼球の血管壁に多数の黄色色素が見出される. 5) 高血圧性病変および脳底動脈の粥状硬化病変は認められない. 6) 大脳で皮質表層にヒトの“Kapillarfibrose”に一致する静脈変化が認められる.
  • 竹村 喜弘, 吉江 康正
    1978 年 15 巻 6 号 p. 607-613
    発行日: 1978/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    我々は, 21歳より79歳までの健常成人20名に0.5g/kgの塩酸アルギニンを30分間にて点滴静注し, 投与前, 投与後15, 30, 45, 60, 90, 120分に採血し, 血清インスリン及び血糖を測定し, 次の如き結果を得た.
    1) 20~39歳の群では, 点滴開始後15分にΔIRI 29.4±3.7μu/mlの他群に比し高い頂値を有する曲線を描き, 又ΔBSは30分に, 13.0±3.6mg/dlの頂値, 60分に-9.4±4.5mg/dlの底値を有する二相性の曲線を描いた.
    2) 40~59歳の群では, 30分にΔIRI 19.2±5.7μu/mlの頂値を有する曲線であり, ΔBSは30分に14.0±5.0mg/dlの頂値と60分に-3.0±5.8mg/dlの底値を有するやや減弱した二相性の曲線を描く.
    3) 60~69歳の群では, 30分にΔIRI 6.7±2.7μu/mlの低い頂値を有する曲線であり, 又ΔBSは30分に8.7±3.5mg/dlの頂値を有する一相性の曲線を描く.
    4) 年齢とアレルギニンによるインスリン分泌との関係をみるために, 年齢を横軸にΔARIを縦軸にとると, 相関係数r=-0.70 (p<0.01) の有意の逆相関関係を示す.
    5) 年齢を横軸にΔBSを縦軸にとって, それらの関係をみると, 相関係数r=-0.16であって相関関係を認めず, 又ΔIRIとΔBSの間にもr=0.37と相関関係を認めない.
    6) アルギニンによるインスリン分泌は高齢者になるにしたがい低下してくる. このことは, 加齢による膵インスリン分泌能の低下によりもたらされるものと思われる.
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