加齢に伴う生理的な骨塩含量の減少と, 病的な骨塩含量の減少を, 生化学的に区別することを目的として以下の検討を行った.
60歳以上の老年者女性例53例において, photon absorption method により左橈骨骨塩含量 (RMC) を測定し, さらに血清Ca, P, Ca×P積, Al-P活性, estradiole (E
2)および, 25-hydroxycholecalciferol (25-OHD
3)を測定し以下の結果を得た.
(1) 血清各種パラメータ相互の相関を検討したところ, 25-OHD
3値と, 血清Ca値が相関係数0.460なる有意 (p<0.01) の相関を示す他は, 各因子間に, 相関を認めなかった.
(2) 血清各種パラメータと, 年齢の間にも, 有意の相関は示さなかった.
(3) RMCと各種パラメータの間には種々の相関を認めた. 即ち年齢と, -0.408, 血清Ca値と, 0.345,E
2値と0.396, および25-OHD
3値と0.510なる有意 (p<0.01~0.02) の相関係数を示した.
(4) 対象群53例を骨折の有無で2群に分類したところ, 骨折 (大腿骨頚部骨折および脊椎圧迫骨折) 例18例および非骨折例35例を認めた.
(5) この骨折, 非骨折群間で各パラメータの差異を検討した. 両群間で年齢に差を認めなかった. RMC値は骨折群 (0.43±0.018g/cm
2) に比し, 非骨折群 (0.49±0.015g/cm
2) は有意に高値を示した. 骨折群は, 非骨折群に比し, 血清Ca値低値, 血清P値高値の傾向を示したが, Ca×P積, Al-P活性及びE
2値は両群で差を認めなかった. 血清25-OHD
3値は骨折群では10.7±2.21ng/m
lを示し, 非骨折群では26.7±2.55ng/m
lを示し, 前者は, 後者に比し有意 (p<0.01) に低値を示した.
以上より, 老年者女性のRMCは生理的加齢に伴う減少を示す以外に, 25-OHD
3値の低値, 骨折で特徴ずけられる病的な, RMCの減少過程が存在することが示唆された.
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