日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
16 巻, 4 号
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  • 木畑 正義
    1979 年 16 巻 4 号 p. 295-302
    発行日: 1979/07/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
  • 特に副作用防止の立場から
    勝沼 英宇
    1979 年 16 巻 4 号 p. 303-313
    発行日: 1979/07/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    近年, 老人患者の増加に伴い, 投薬の頻度もふえているが, それと共に薬物による副作用も増加している. 薬物療法の薬禍は副作用に起因するといわれているが, 何故副作用が老人に多いか, その問題点について検討してみたい. 第1は薬用量の決定として, 薬理作用の発見, 同定が動物, ヒトを含めて若年期のものを用いて行われ, その薬用量をそのまま老年期のヒトにあてはめていることである. 第2は薬用量を血中濃度より算出しているが, 血中濃度の算出に身体構成々分の脂肪量を考慮に入れないで分布容積を体液量の体重%から計算しているから肥満老人や脂溶性の薬剤を使用する場合は血中濃度が有効量を反映するとは限らない. そこで第3の問題点として, 臓器機能が許容し得る範囲内の薬用量を投与すれば副作用は起らないと考えられるので, 薬用量の吸収代謝, 排泄に関与する臓器機能について加齢による変化を測定し, これを青壮年と対比し, 各臓器機能の最大公約数を算出すれば, それが安全下限界量となるので高齢者の臓器機能の変化を検討した. その結果, 肝機能は1/2~1/2.4, 腎排泄機能は1/2~1/3, 消化器機能は低下, 免疫機能も1/2と判明したので老人の薬用量は臓器機能からみれば1/2~1/3より始め, 漸増して至適量を求めるのが妥当である. 第4の問題点は薬用量が過量でなくても多剤併用により副作用が起る. これは薬物相互作用によるもので, その機序には吸収遅延, 胃内pH異常により胃内容停滞, 分布過程における蛋白質の競合, 置換現象, 更に酵素誘導, 抑制による薬効の変化, 排泄機序異常, 代謝阻害物により副作用が発現するので, これら相互作用を起す薬物の併用はさけるべきである. 第5の問題点は薬効を得るためには薬物を正確に服用することであるが, 老人は知能低下による理解力の欠如, 視力聴力の障害など服薬に正確さを欠き, 服薬の教育不足があげられる. これらの問題点を解決することが老人の薬物療法における副作用を防止することになると考えている.
  • 第1報 ロケット免疫電気泳動法による定量
    濱田 範子, 和田 一成, 奥田 史雄, 三木 秀生, 楠川 禮造
    1979 年 16 巻 4 号 p. 314-319
    発行日: 1979/07/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    HDL-Cholesterol のみならず apo HDL量と虚血性心疾患の関係をみることは重要である. ここでは血清 apo HDLの簡便な定量法として, 市販の抗HDL血清を用いてロケット免疫電気泳動を行い, その有用性を検討した.
    市販抗血清の検定のため Ouchterlony 法及び免疫電気泳動法を行った. Ouchterlony 法における本抗血清とヒト全血清, VLDL, LDL, HDLとの反応では, 沈降線はHDLと全血清のみに生じ, かつ両者は融合した. VLDLに対しては沈降線はみられず, 本抗血清は apo HDLのうちの apo Aに対する抗体であると考えられた.
    免疫電気泳動法におげる抗血清と全血清の反応では, α-globulin 領域に1本の鮮明な沈降線が認められるとともに, その陰極側にも極めて薄い他の1本の沈降線が認められた. しかし, 沈降線を脂肪染色すると, 鮮明な沈降線は染色されたが, 薄い沈降線は染色されなかった.
    市販抗血清を用いたロケット免疫電気泳動にて, それぞれの検体は鮮明な1本の沈降線を形成し, 脂肪染色により染色された. また倍数希釈された標準血清を用いてロケット免疫電気泳動を行った場合, 沈降線の高さはHDL濃度に比例し, 検量線は直線となった.
    陳旧性心筋梗塞患者16例 (32~80歳), 及び健康対照者42例 (45~57歳), 計58例につき本法により血清HDL濃度の測定を行ったところ, 陳旧性心筋梗塞患者群の血清HDL濃度 (87.0±3.9mg/dl) は対照群 (117.3±4.0mg/dl) に比して有意に低値を示した (p>0.001).
  • 中野 小枝子, 佐藤 磐男, 松原 充隆, 前田 甲子郎, 中尾 裕子, 熊田 和徳
    1979 年 16 巻 4 号 p. 320-328
    発行日: 1979/07/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    3カ月以上ADL5点以下の寝たきり老人患者124例 (A群) と通常生活中の老人ホーム在住者273例 (B群) および3カ月以上寝たきりの後死亡した老人剖検例112例 (C群) を対象に, その心電図所見と基礎疾患, 臨床所見および心臓病理所見とを比較検討し次の結果を得た.
    1) 長期臥床の原因疾患として脳卒中後遺症41.1%, 骨, 運動器疾患30.6 (大腿骨頚部骨折16.1%), 精神障害7.3%が多いが, これら運動機能障害の直接原因となるような疾患を持たない症例も25.8%にみられた. 2) A群の96.8%に心電図異常がみられ, これはB群の76.2%に比し高率であった. 3) A群の心電図異常は低電位差37.1%, 虚血性ST・T変化33.9%, 左室肥大29.8%, 非特異的ST・T変化29.8%が多く, このうち低電位差が最も特徴的で, また高率にST・T変化を合併した (76%). 4) A群のうち低電位差を示した群 (LV群) と示さなかった群 (非LV群) との比較では年齢, 血圧, 心拍数, 血清蛋白, 血色素量, 血清電解質に差を認めなかった. 四肢の浮腫はLV群が22%で非LV群の19%と差を示さなかった. 5) この低電位差心電図は寝たきり期間の延長や死亡時期に近づくにつれて高頻度となった. 6) C群のLV群では死因に心不全が多く (42%), 心臓病理所見では心筋褐色萎縮42%, 心肥大34%, 脂肪変性22%, 心筋梗塞18%, 散在性線維化16%などが多くみられた.
    以上の結果から, 寝たきり老人患者は高頻度に心電図異常を合併する. そのうち低電位差が最も特徴的所見である. この低電位差はこれら患者の心障害を反映し, その予後推定因子として臨床上重要であると考えられた.
  • その1 在日日本人と米白人剖検例の比較
    佐藤 秩子, 田内 久
    1979 年 16 巻 4 号 p. 329-338
    発行日: 1979/07/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    加齢に伴って増加するといわれるリポフスチンの肝細胞における発現様相の年齢消長検討の一環として, 21歳から116歳迄の在日日本人男子剖検例89例, 22歳から89歳迄の在米白人男子剖検例97例の肝組織について, 蛍光顕微鏡写真による量的分析を行った.
    在日日本人ではリポフスチン顆粒保有肝細胞数は, 80歳以上で有意に増加すると共に肝細胞あたりの色素量は70歳以上から顕著に増加し, 個々の顆粒も粗大化してくる.
    在米白人では, 色素保有肝細胞数はゆるやかに加齢と共に増加し, 80歳以上では中心層においてのみ有意な増加となる. 肝細胞あたりの色素量は60歳代迄有意に増加するがその後はあまり変らない.
    色素保有肝細胞数, 色素量ともに両群とも辺縁層におけるよりも中心層において多い. また色素保有肝細胞数, 肝細胞あたりの色素量の平均は, ともに在日日本人に比し, 米白人例に有意に多いが, 個々顆粒の大きさは, 70歳以後の在日日本人例で顕著に増加し, 在米白人を凌駕し, 両者の関係は逆転する.
    田内らが本質的な老化の形態学的指標としている肝細胞の逐齢的減数と, リポフスチン顆粒の逐齢的増加との関連性については, 細胞減数のつよい在日日本人高齢者群でリポフスチンが顕著に増加し, 老性減数の比較的緩徐な米白人例高年群における色素の増加が僅かである点は興味深い. しかし個々の例における肝細胞数と, リポフスチン量との間の反比例的傾向を全くは否定出来ないが, 推計学的には有意な相関をみる事が出来なかった.
    又色素量と肝内動脈硬化度との間にも, 有意な相関をみなかった. 何れにしても一般に加齢に伴って増加するこの色素の沈着がある程度老化の指標になり得る点を否定出来ないが, 本質的な老性変化とは考え難く, その生成, 代謝, 排泄の機構に関して尚多くの問題が残されている点が示唆された.
  • 田隅 和宏, 佐藤 磐男, 松原 充隆, 仁田 正和, 小出 幸夫, 前田 甲子郎
    1979 年 16 巻 4 号 p. 339-345
    発行日: 1979/07/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    種々の疾患を合併する高齢患者にも実施可能で, 有効なレニン分泌刺激法の確立を目的とし, 60歳以上の正常血圧患者21例と高血圧患者105例を対象に, 坐位, 歩行, Furosemide 0.5mg/体重kg静注の単独または2者併用によるレニン分泌刺激試験の負荷法の基礎的検討を行い次の結果を得た.
    (1) PRAは午前5~6時, 7~8時, 9~10時の間では有意な日内変動を示さなかった.
    (2) 負荷時間の検討では, 坐位1時間, 歩行1時間, Furosemide 静注30分後, Furosemide 静注+坐位1時間, Furosemide 静注+歩行1時間がそれぞれ適切な負荷時間と考えられた.
    (3) 各種レニン分泌刺激法によるPRAの検討では全5種の負荷法で有意のPRA増加が認められたが Furosemide 静注及び Furosemide 静注+坐位1時間と Furosemide 静注+歩行1時間の3法が強力なレニン分泌刺激法と考えられた. これら3法間ではPRAの増加率に差を認めなかった.
    以上の結果から, いわゆる寝たきり老人にも施行し得る, 高齢患者のレニン分泌刺激負荷法として Furosemide0.5mg/体重kg+坐位1時間負荷法が最も安全で適切な負荷法と考えられた.
  • 仁田 正和, 小出 幸夫, 松原 充隆, 佐藤 磐男, 中野 小枝子, 新美 達司, 前田 甲子郎
    1979 年 16 巻 4 号 p. 346-352
    発行日: 1979/07/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    健康高齢者の末梢血液検査値を調査し, 高齢者貧血の頻度および, 入院中の高齢者貧血の基礎疾患と貧血の種類について検討し以下の成績を得た.
    1) 高齢者では, 赤血球数, 血色素量, 血小板数が減少する. また MCHC は低くなるが MCV は高くなる. 高齢者貧血は, 血色素量11.2g/dl, 赤血球数350万/mm3以下と規定するのが適当と考えられた. 老人ホーム在住者の貧血の頻度は男11%, 女13%であった. 一方, 入院中の高齢者では男33%, 女53%であった.
    2) 入院高齢者では, 血液疾患, 肝疾患, 消化管出血, 悪性腫瘍, 感染症で貧血の頻度が高いが, 脳血管障害, 循環器疾患, 骨折など寝たきり状態となる疾患でも貧血が認められた.
    3) 貧血患者101名を鉄欠乏性, 葉酸欠乏性, ビタミンB12欠乏性貧血とその他の貧血に分類した. 鉄欠乏性貧血は36例みられた. 鉄飽和度16%以下の症例12例にのみ鉄剤投与を行ない, 残りの24例は基礎疾患の治療を行なった. 16例に治療効果がみられ, 20例に貧血の改善がみられた. 葉酸欠乏性貧血は17例みられ, 11例が鉄欠乏を伴なっていた. 葉酸の投与を行ない5例に治療効果がみられ, 3例に貧血の改善がみられた. 骨髄巨赤芽球の出現の少ない症例で過分葉好中球を認める症例もみられた. ビタミンB12欠乏性貧血は1例もみられず, 入院中, ビタミン剤の投与によると考えられた. その他の貧血は48例みられた. ビタミン B12, 葉酸値の subnormal の症例がみられまた過分葉好中球の出現する症例, 大赤血球性傾向もみられたので, 経過中, ビタミンB12欠乏性あるいは葉酸欠乏性貧血に移行する症例のあることが示唆された.
    以上の諸成績より高齢者では, 各種疾患で貧血が生じやすく, 貧血が一般状態を悪化させることがあるので基礎疾患を見出し適切な治療が必要である. また, 寝たきり状態で食事摂取の不十分な高齢者では, ビタミンB12, 葉酸の補給が必要である.
  • 森松 光紀, 平井 俊策, 江藤 文夫, 吉川 政己
    1979 年 16 巻 4 号 p. 353-361
    発行日: 1979/07/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    1975年から1977年までの3年間の東大老人科初診者2,284例 (50歳以上) を対象として, 腰痛の臨床的分析を行なった.
    (1) 腰痛患者の頻度と原因: 腰痛は受診者の26.2% (男22.6%, 女29.3%) にみられた. また腰痛を主訴としたものは6.9% (男5.2%, 女8.3%) で, いずれも女性により高頻度であった. 腰痛の原因は多い方から, 男性では変形性腰椎症, 脊椎骨粗鬆症, 脊椎辷り症, 椎間板ヘルニア, 女性では骨粗鬆症, 変形性腰椎症, 脊椎辷り症, 腰痛症の順であった.
    (2) 変形性腰椎症および骨粗鬆症と腰痛との関係: 腰椎単純X線写真における変形性腰椎症 (骨棘形成, 椎間腔狭小) および脊椎骨粗鬆症の程度をそれぞれ0~IIIの4段階に分け, 腰痛群と非腰痛群の間で対応する例数分布を比較した. その結果, 骨粗鬆症に関してのみ有意差がみられ, 骨粗鬆症の進展が腰痛発生により密接な関連をもつことが示された.
    (3) 腰椎X線写真における計測値と臨床症状との関係: X線写真において椎管椎体比 (Jones ら), 脊椎管前後径, 外側陥凹前後径を測定した. 3種の数値 (5個の腰椎の平均値として) の間にはそれぞれ有意の相関がみられた. 腰痛群と非腰痛群の比較では, 脊椎管前後径 (平均値, 最小値) が腰痛群において有意に狭小であった. 腰椎部の最小値で椎管椎体比1:5以下, 脊椎管前後径15mm以下, または外側陥凹前後径5mm以下の患者はほぼすべて腰痛群に属していた. 坐骨神経痛の有無と有意に関連する測定値は発見されなかった. 馬尾性間歇性跛行の患者は17例であったが, うち7例は椎管椎体比最小値が1:5以下であった. さらに馬尾性間歇性跛行のある患者は, 間歇性跛行のない腰痛者および非腰痛患者に比べ, 椎管椎体比 (平均値, 最小値) が有意に小さく, 椎管椎体比の計測が脊椎管狭窄症の発見に有用であることが確認された.
  • 柴田 博, 上田 敦子, 須山 靖男, 森山 良典, 籏野 脩一, 松崎 俊久, 芳賀 博
    1979 年 16 巻 4 号 p. 362-367
    発行日: 1979/07/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    昭和51年3月より12月までに戸田市における住民検診を受診した35歳以上の男女2,543名の50g経口ブドウ糖負荷後1時間の血糖値と尿糖を検査した. 血糖値160mg/dl以上, それ未満であっても尿糖陽性の者413名の50g経口糖負荷試験を行いインシュリンを測定した. 次の如き成績を得た.
    1) 50gブドウ糖負荷後1時間の血糖値は, 男女とも加齢と共に上昇する傾向を示し, 50歳以上では男より女の血糖値が高かった.
    2) 偏相関で血糖値と有意に関連したのは, 男女で年齢, 収縮期血圧, 血清中性脂肪, 女のみで血清総コレステロール, 肥満度であった. 拡張期血圧, 尿酸は男女とも有意な関係を示さなかった.
    3) 100mmX線写真における大動脈弓部石灰化, 心電図におけるQ波, T波の変化, 眠底変化 (出血を伴う血管変化) は, 血糖値と一定の関係を示さなかった.
    4) 対象中の糖尿病型の出現頻度は男4.3%, 女5.4%と女に高かった.
    5) ΔIRI/ΔBS (30分) は, 男女に著明な差を認めず, 正常型0.95±0.98, 境界型0.53±0.53, 糖尿病型0.25±0.26であった.
    6) 尿糖陽性者の血糖平均値は, 男 (158±57mg/dl) より女 (201±67mg/dl) に高く, 腎の糖排泄閾値に性差を認めた. 尿糖を糖尿病スクリーニングに用いる場合, このことを銘記すべきである.
  • 1979 年 16 巻 4 号 p. 368-394
    発行日: 1979/07/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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