日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
17 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 糖尿病, 高血圧および大動脈弓石灰化を中心にして
    泉山 伸
    1980 年 17 巻 6 号 p. 577-586
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    動脈硬化と関連の深い糖尿病 (DM), 高血圧 (HT) および大動脈弓石灰化のある患者 (AAC) では血清糖蛋白質 (SGP) が健常者 (HP) に比し高値であると報告されている. 本研究では, このSGPをゲル濾過クロマトグラフィーならびにセルロースアセテート (CA) 電気泳動により分画し, 各分画と動脈硬化との関連を検討した.
    ゲル濾過クロマトグラフィーを行なった対象は, HP 51例, DM 40例, HT 37例, AAC 20例の計148例である.
    上述の対象のうち, CA電気泳動を行なった対象は, HP 10例, DM 10例, HT 11例, AAC 10例の計41例である.
    年齢の区分は39歳以下を若年群, 40~59歳を中年群, 60歳以上を老年群とした.
    1) SGPへ及ぼす加齢の影響は認められなかった.
    2) SGPはゲル濾過クロマトグラフィーにより分子量の大きいFr-Iと分子量の小さいFr-IIとに分画された. Fr-IはHPに比し各疾患では高値であったが, Fr-IIは差がなかった. 従って, SGPの高値の理由はFr-Iの高値によることが知れた.
    3) CA電気泳動によりFr-Iは更にα2-, β-およびγ-GPに分画された. α2-ならびにγ-GPはDM, HTおよびAACではHPに比し高値であった. しかし, β-GPはDMにおいてのみ高値であった. 同様にFr-IIはα1, α2-, β-およびγ-GPに分画された. α1-GPはHTおよびAACではHPに比し高値の傾向にあった. α2-GPはAAC群で低値であった. β-およびγ-GPには差は認められなかった.
    一般にDMとHTは動脈硬化の危険因子として一様に考えられがちであるが, SGPの分画からみると差が認められた.
    〔結語〕動脈硬化関連疾患ではSGPはHPより高値であるが, ゲル濾過クロマトグラフィーおよびCA電気泳動により分画してみると, その高値の成分がより詳細に把握された.
  • 入江 昇, 矢野 芳和, 本間 康彦, 原 勉, 竹内 一郎, 中谷 矩章, 五島 雄一郎
    1980 年 17 巻 6 号 p. 587-594
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    HDLを超遠心法並びに沈降法の併用によりHDL2とHDL3の二亜分画に分離し, 各々の亜分画中のCH値を健常者, 高脂血症者および虚血性心疾患患者を対象として測定し, 以下の成績を得た.
    1. 健常男性のHDL・CH値は50±12mg/dl, 女性57±11mg/dlで女性が男性に比較し有意に高値であった.
    2. 健常男性のHDL2・CH値は20.8±8.3mg/dl, 女性27.5±6.6mg/dlで, 女性が男性に比較し有意に高値であった. 一方HDL3・CH値は男性27.8±6.2mg/dl, 女性30.2±7.6mg/dlで男女差をほとんど認めなかった. 以上の成績よりHDL・CH値の性差は主にHDL2・CH値の差に起因していると思われる.
    3. HDL2・CH/HDL・CHは男性0.42±0.08, 女性0.48±0.09で, 女性が有意に高値であった.
    4. HDL2・CH値は男女において血清TG濃度と, 男性において肥満度と負の相関を認め, さらにHDL・CH値と正の相関を認めたが, HDL3・CH値は血清TG濃度と相関を認めなかった. 以上の事実よりHDL2・CHがTG代謝と密接な関連性を有していることが示唆された.
    5. IIb型およびIV型高脂血症者は健常者に比較し有意にHDL・CH値およびHDL2・CH値が低値であった. しかしIIa型高脂血症者ではHDL・CH値の低下を認めなかった.
    6. 虚血性心疾患患者のHDL・CH値, さらにHDL2・CH値およびHDL3・CH値すべて健常者に比して有意に低下していた.
  • 18例経時的観察
    梶山 梧朗, 川本 敏雄, 久保田 茂夫, 三好 秋馬, 山田 勝士, 中川 公博
    1980 年 17 巻 6 号 p. 595-600
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    発作前からHDL-CHの測定が行なわれいた18例 (男性5例, 女性13例) の虚血性脳血管障害患者について, その成績を検討した.
    HDL-CHは, 発作6ケ月以上前よりすでに大部分の患者低下しいた. しかし発作6ケ月以内には6ケ月以前に比して一層低下する傾向がみられ, 直後 (24時間以内) は更に低下する傾向がみられた.
    この傾向は男女ともみられたが, 比較的例数の多かった女性, より明らかあった (p<0.05).
    このことから, 脳血栓発作後の患者みられるHDL-CHの低下は単一の因子によっ起るのはなく複数の因子によると考えられる. その1つは発作より以前からすに存在しいるいわゆる動脈硬化の促進因子としてのHDL-CHの低下あるが, そのほかに発作直前または発作時に起ってくる, 即ち発作と比較的関連性を持ったHDL-CHの低下などが加わるものと推定される.
  • 心臓, 肝臓, 副腎における加齢および他要因との関連
    横田 実
    1980 年 17 巻 6 号 p. 601-617
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    ヒトの心臓, 肝臓, 副腎におけるリポフスチン (以下LFと省略) 蓄積度と加齢及びその他の要因との相関の有無, 3臓器の相関, 及び臓器内部位による差異の有無を知るため, 病理解剖109例 (0~84歳), 法医解剖28例と肝生検34例を対象として, 光顕によりLF蓄積度をその胞体内占有面積と密度によって点数化した. 加齢以外の要因としては, 当該臓器の形態学的傷害の有無, 疾患群別, 病悩期間, 性差, 原爆被爆の有無などをとりあげた. データに関しては統計処理を加えて検討した.
    心臓, 肝臓, 副腎の順にLF蓄積度と加齢との間に正の相関を認めたが, 加齢の指標たりえる条件に適合すると考えられたのは, 心臓のみであった. 3臓器いずれにおいても当該臓器に強い形態学的傷害が存在する場合は, 健常の場合にくらべて加齢との相関程度は副腎, 心臓で低下し, 肝臓では相関しなかった. 循環器疾患群, 法医解剖例を除く各群でも同様の傾向を認めた. 肝重傷例及び肝疾患群などのように一方で肝細胞の再生増殖を促す条件下では加齢との相関を認めなかったが, 肝健常例にくらべてLF蓄積度は有意に低かった. また肝臓においては病変の有無にかかわらず, LFは肝小葉辺縁部よりも肝小葉中心部に有意に多かった. 副腎においては, 網状帯への偏在が特微的であった.
    以上のことより, 一括してLFとみなされているこの色素は, 単に経時的累積的蓄積をするのではなく, 臓器とその部位によって生成, 蓄積, 増減等の変動様態が異なることが, 特に心臓と肝臓において示唆され, 一方, 病悩期間との間には, 何れの要因や年代別においても有意の相関は認めなかった. 心臓, 副腎, 肝臓のLF蓄積度の比率はおよそ3:2:1であった. 臓器相関は心臓-副腎間が強く, 肝臓-副腎間が弱かった. 原爆被爆者のLF蓄積度に著変は認めなかった.
  • 上田 幸生, 吉村 陽, 渡辺 彰, 若杉 隆伸, 多々見 良三, 上田 良成, 亀谷 富夫, 羽場 利博, 伊藤 清吾, 小泉 順二, 太 ...
    1980 年 17 巻 6 号 p. 618-623
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    家族性高コレステロール血症患者 (FH) のアキレス腱 (〔ア〕腱) の肥厚の触診診断の有用性を検討する目的で,〔ア〕腱部横径を皮厚計を用いて測定し, 次の結果を得た.
    (1) FHの〔ア〕腱部横径 (ATT) は, 28.3±2mm (mean±SEM) であり, 非FHの正脂血症群22.5±1mm, 高コレステロール (Chol) 群20±1mm, 高トリグリセライド (TG) 群25±2mm, mixed hyperlipidemia 群22±1mmに比し有意の肥厚を示した (各群ともp<0.01). 非FH各群間に有意の差はなかった.
    (2) 非FHで, ATTは, 肥満群 (肥満度≧120%) (25.3±4mm) が非肥満群 (肥満度<120%) (19.3±3mm) に比し有意の肥厚を示した (p<0.05). FHのATTは, 両群に比し有意の肥厚を示した (肥満群と, p<0.05, 非肥満群とp<0.01).
    (3) 非FHのATTは肥満度と有意の正の相関を示した (r=0.68 p<0.01).
    (4) FHのATTはレ線学的に測定した〔ア〕腱横径と有意の正の相関を示した (r=0.77, p<0.01).
    (5) ATT/肥満度比は, FH0.26±0.05が非FHの正脂血症群0.2±0.03, 高 Chol 群0.18±0.01, 高TG群0.2±0.01, mixed hypelipidenia 群0.2±0.01に比し有意の高値を示し, (各群ともp<0.01), FH, 非FH間の差はさらに顕著となった.
    (6) FH, 非FHを含めた検討で, ATT/肥満度比は血清 Chol 値と有意の正の相関を示した (r=0.48, p<0.01).
    以上, 皮厚計を用いた〔ア〕腱部横径の測定は,〔ア〕腱肥厚の有無の鑑別に有効と思われ, 触診の有効性を示唆した.
  • 村井 淳志, 宮原 忠夫, 田中 友二, 佐古 伊康, 亀山 正邦, 西村 直卓
    1980 年 17 巻 6 号 p. 624-629
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患と同様, 脳梗塞の場合にもHDLコレステロール値は低い. このHDLを増加させることにより心筋梗塞や脳梗塞を予防治療しようと試みられている. HDLコレステロールを指標として, これを増加させる要因ないし薬剤が種々検討されているが, HDLは分子量, 組成, 機能が異なる種々の分子の集合である. 従って抗動脈硬化作用を評価するためには, HDL全体の変化ではなくHDL亜分画を詳細に調べる必要がある.
    本研究は脳梗塞患者に, 脂質代謝改善作用があるパンテチンを投与して, リポ蛋白の変動をHDL亜分画を中心に検討し, HDLの抗動脈硬化作用の面からその効果を評価しようと試みた.
    12名の脳梗塞患者にパンテチン1000mg/日を3ケ月間経口投与し, その前後で採血し, 超遠心法によりVLDL, LDL, HDL2, HDL3を分離し, コレステロール, トリグリセライド, 燐脂質, 蛋白を測定した.
    血清コレステロール, トリグリセライド, 燐脂質, VLDL, LDLの濃度は軽度減少したが, 有意の減少ではなかった. LDLの化学組成ではトリグリセライドが減少し, トリグリセライド含量の多いLDLの減少が示唆された.
    HDLコレステロールは有意に増加し, 従ってHDLとLDLのコレステロール比も有意に増加した. HDLをHDL2, HDL3の亜分画に分けると, HDLの増加は主としてHDL2の増加のためであり, HDL3はほとんど不変であった. このためHDL2とHDL3のコレステロール比も有意に増加した. HDL2の化学組成ではコレステロールと中性脂肪が減少傾向を, 燐脂質は増加の傾向を示した. このようなHDLの変化は, 従来の知見から考えると, 抗動脈硬化作用の面から好ましい方向ではないかと考えられる.
  • 5年後の予後
    長谷川 和夫, 本間 昭, 尹 美淑, 天本 宏, 佐藤 宏, 伊丹 昭, 朝倉 幹雄, 田代 卓也, 今井 幸充, 塚本 徹, 岩井 寛, ...
    1980 年 17 巻 6 号 p. 630-638
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    老化性痴呆をはじめとする老年期にみられる精神障害の予後を検討する場合, 地域在宅老人を対象とした調査が望ましいと考えられる. 諸外国においてはいくつかの結果が報告されているが, わが国においては, 特に系統的な調査はほとんどなされていないのが現況である.
    1973年に著者らは無作為抽出法により, 東京都在住の65歳以上の存宅老人4716名について精神医学的調査を行ない4.5%に老化性痴呆が認められたことを報告した.
    本研究の目的は上記の老化性痴呆をもつ地域在宅老人の精神医学的予後および老化性痴呆に含まれる老年痴呆と脳血管性痴呆の予後の相違. さらに老化性痴呆の予後に影響をおよぼす要因についての検討である.
    調査対象は上記の4716名のうち心身不健康を疑われて戸別訪門調査をうけた565名 (うち老化性痴呆182名) であり, 今回の5年後の調査時点では老化性痴呆161名を含む433名が追跡調査可能であった. 調査期間は1978年12月1日より1979年3月31日までであった. 調査は精神科医と心理技術士のチームにより戸別に面接調査を施行した. 内容は一定の調査用紙による身体および精神診査を行ない, 長谷川式簡易知能診査スケールを施行し, ADL評価表により日常の活動状況を評価した. 予後の判定では上記の調査結果より死亡, 衰退, 不変, 改善の4群に分類し検討を加えた.
    本研究の結果, 老化性痴呆の死亡率は非老化性痴呆群と比べて有意に高いこと, その死亡率は痴呆が高度になるに伴い増加すること, 失禁および寝たきりなどの身体機能の悪化に伴い死亡率も増加すること, また老年痴呆と脳血管性痴呆では予後に大きな差は認められなかったことなどが明らかとなった.
    さらに痴呆老人の死亡率を高める最も関連の深い要因として, 高度痴呆, 寝たきり, 失禁の3つの要因が示された.
  • 年齢, 性, 肥満および虚血性心疾患による影響
    辻 昌宏, 村尾 誠, 井出 肇, 小林 毅
    1980 年 17 巻 6 号 p. 639-646
    発行日: 1980/11/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    正常者 (253名) と虚血性心疾患 (IHD) 患者 (24名) を対象に沈澱法による高比重リポ蛋白 (HDL) 分画中のHDL cholesterol (HDL-ch), およびHDL phosphoipids (HDL-pl) を血漿中の Total ch, Total pl および Triglycerides (TG) とともに測定し, これらの脂質に及ぼす年齢, 性, 肥満およびIHDの影響とHDL-chとHDL-plとの比 (HDL c/p ratio) について検討した.
    Total ch, Total chマイナスHDL-ch値 (VLDL-ch) およびVLDL, LDL-chとHDL-chとの比 (ch ratio) は年齢および肥満度との間に有意の正相関が認められた. HDL-chには年齢との間に相関は認められなかった.
    女性は男性に比べ, HDL-chおよびHDL c/p ratio が有意に高値を示した.
    TGは男性群で肥満度との間に有意な正相関を認めた. HDL-ch, HDL-plおよびHDL c/p ratio は男性群で肥満度と有意な負相関を認めた.
    IHD患者群は正常者群に比べ有意にHDL-ch, ch ratio およびHDL-plが低値を示し, 女性群では, HDL c/p ratio も低値を示した.
    正常者のHDL-chとHDL-plとは非常に良く相関し, HDL c/p ratio は極めて狭い範囲に分布した. HDL c/p ratio は性, 肥満により差が認められた.
    これらの因子は, 従来HDL-chに影響を与えることが知られているが, 同時にHDL-plにも影響を与え, その結果HDL中の脂質成分の構成比にも影響を与えている可能性が推測された.
feedback
Top