老年者連続剖検1564例中急死例 (急変より6時間以内に死亡した症例) 230例 (14.7%) を認めた. 直接死因の診断率は50.4%で, その死因は心死が70例 (30.4%), 窒息48例 (20.8%), 肺炎25例 (10.8%), 大動脈瘤破裂17例 (7.4%), 脳血管障害15例 (6.5%), 消化管出血12例 (5.2%), その他9例, 不明34例であった. 死因別診断率では消化管出血83.3%, 脳血管障害73.3%と高く, 大動脈瘤破裂は, 35.3%と低かった. 基礎疾患では循環器疾患が91例 (39.6%), 呼吸器疾患が52例 (22.6%), 消化器疾患が37例 (13.5%), 脳神経疾患が31例 (13.5%) であった. 基礎疾患の診断率は, 87.4%を示した. 窒息例の基礎疾患の約半数近くの22例が呼吸器疾患であり, 肺炎11例, 肺癌4例などであった. 全急死中の56例 (24.3%) が瞬間死 (急変より5分以内の死亡) であり, 心死44.6%, 窒息26.7%, 大動脈瘤破裂10.7%であり, 全心死中半数 (50%) が瞬間死で, 全大動脈瘤破裂中35%が瞬間死を示した. 病院外で死亡した症例は55例で, その直接死因として窒息が18例と多く, 次いで脳血管障害9例であった.
老年者急死例はその原因が多様であり, 生前診断が困難な症例も多く, 老年者疾患の特徴である症状が非典型的であり, また症状の乏しいことを考慮に入れることが重要と思われる.
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