都内の老人ホームに住む, 62-89歳, 平均74歳の老人18名に, 経口コレステロール負荷テストを施行し, リポ蛋白の変動を検討した. コレステロール750mg/日 (卵黄3ケ分に相当) を2週間投与し, 投与前, 投与7日, 14日目に空腹時血清を採取し, VLDL, LDL, HDL, HDL
2, HDL
3コレステロール値を測定した. 20-42歳の23名のボランティアの成績をコントロールとし, 老年者の成績と比較した. コントロール群では, コレステロール負荷後, 2週間目にLDLコレステロール値は平均6mg/d
l, HDLコレステロール値は平均7mg/d
l上昇したが, 有意の上昇ではなかった. 老年者群においては, コレステロール負荷により, 血清総コレステロール値は205±28mg/d
lから, 負荷後2週間目に186±26mg/d
lと有意に低下した. LDLコレステロール値は, 平均18mg/d
l有意に低下し, HDLコレステロール値は4mg/d
lと軽度に低下した. HDL
2, HDL
3の変化傾向も, コントロール群と老年者群では異なっており, コントロール群では, HDL
2コレステロール値が, 負荷前24±10mg/d
lから, 負荷後2週間目で35±13mg/d
lと有意に上昇し, HDL
3コレステロール値は変化が認められなかった. 老年者群では, 逆に, HDL
2コレステロール値は不変で, コレステロール負荷によりHDL
3コレステロール値が, 22±5mg/d
lから17±6mg/d
lと有意に低下した. HDLcの指標として, 超遠心法で得たHDL中のヘパリン-マンガン可沈降部分のコレステロール値を測定したが, コレステロール負荷により上昇は認められなかった. コレステロール負荷によるLDL, HDLコレステロール値の変化より, 動脈硬化指数 (LDLコレステロール値/HDLコレステロール値比) が明らかに上昇した頻度は, コントロール群35% (男40%, 女25%), 老年者群17% (男0%, 女27%) であった. 老年者では, コレステロール負荷に対するリポ蛋白の変動が, コントロール群と異なる成績を得た.
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