昭和54年・55年に戸田市における住民検診を空腹で受診した男女4,459名 (男1,615名・女2,844名) について, 血清総コレステロール (Total-ch), 高比重リポ蛋白分画中のコレステロール濃度 (HDL-ch), Total-ch とHDL-chの比 (Total-ch/HDL-ch比), Total-chからHDL-chを引いた値 (LDL+VLDL-ch), 中性脂肪 (T. G) が肥満度といかなる関係を有するか検討した. また, 高脂血症と認められた者に, 体重減少を目的とした食事療法を行った. 6~12カ月後に再検した92名を対象として, 体重変化の血中脂質におよぼす影響について検討した.
1) 横断成績において, 肥満度と血中脂質の関係は, 男女とも Total-ch, Total-ch/HDL-ch 比, LDL+VLDL-ch, T. Gが有意の正の相関, HDL-CHは有意の負の相関を示した. 相関係数の最も高かったものは, 男女ともTotal-ch/HDL-ch比 (男0.42・女0.35) であった.
2) 再診時から初診時の肥満度を引いた値 (肥満度変動値) と血中脂質の変動値 (再診時-初診時) の関係は, Total-ch, Total-ch/HDL-ch比, LDL+VLDL-ch, T. Gが有意の正の相関, HDL-chは有意の負の相関を示した.
3) 対象を肥満度変動値別に三分位に分類した, 体重減少群では, Total-ch/HDL-ch比, LDL+VLDL-ch, T. Gが有意に低下した. Total-chは低下, HDL-chは増加の傾向を示したが, 有意の変動は認められなかつた.
以上の結果から, 横断成績においても, 介入研究においても, 体重の変動による脂質の動態が明らかとなった. 高脂血症の非薬物療法として, 体重コントロールは有用な一方法と考えられた.
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