日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
19 巻, 1 号
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  • 須山 靖男, 柴田 博, 松崎 俊久, 熊谷 修
    1982 年 19 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1982/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    昭和54年・55年に戸田市における住民検診を空腹で受診した男女4,459名 (男1,615名・女2,844名) について, 血清総コレステロール (Total-ch), 高比重リポ蛋白分画中のコレステロール濃度 (HDL-ch), Total-ch とHDL-chの比 (Total-ch/HDL-ch比), Total-chからHDL-chを引いた値 (LDL+VLDL-ch), 中性脂肪 (T. G) が肥満度といかなる関係を有するか検討した. また, 高脂血症と認められた者に, 体重減少を目的とした食事療法を行った. 6~12カ月後に再検した92名を対象として, 体重変化の血中脂質におよぼす影響について検討した.
    1) 横断成績において, 肥満度と血中脂質の関係は, 男女とも Total-ch, Total-ch/HDL-ch 比, LDL+VLDL-ch, T. Gが有意の正の相関, HDL-CHは有意の負の相関を示した. 相関係数の最も高かったものは, 男女ともTotal-ch/HDL-ch比 (男0.42・女0.35) であった.
    2) 再診時から初診時の肥満度を引いた値 (肥満度変動値) と血中脂質の変動値 (再診時-初診時) の関係は, Total-ch, Total-ch/HDL-ch比, LDL+VLDL-ch, T. Gが有意の正の相関, HDL-chは有意の負の相関を示した.
    3) 対象を肥満度変動値別に三分位に分類した, 体重減少群では, Total-ch/HDL-ch比, LDL+VLDL-ch, T. Gが有意に低下した. Total-chは低下, HDL-chは増加の傾向を示したが, 有意の変動は認められなかつた.
    以上の結果から, 横断成績においても, 介入研究においても, 体重の変動による脂質の動態が明らかとなった. 高脂血症の非薬物療法として, 体重コントロールは有用な一方法と考えられた.
  • 第1報 Hypoplastic leukemia の臨床的検討
    高岡 和子, 足立 富郎, 内田 耕三郎, 原 雅道, 藤原 寛太, 渡辺 清一郎, 重歳 誠, 頼 敏裕, 厚井 文一, 中西 紀男, 高 ...
    1982 年 19 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 1982/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    近年, 人口構成の高齢化に伴い高齢者白血病の増加と共にその病像の変貌が注目される中で, 特に非定型的白血病における加齢因子の影響が注目されている. 今回私達は, 高齢者白血病の特異性を病像治療において検討することを目的とし, まず高齢者 Hypoplastic AML (Hypopla. AML) について高齢者 Typical AML (Typ. AML) との比較の中でその特異性について検討した.
    対象は60歳以上の高齢者 Typ. AML 25例, Hypopla. AML 17例で, Hypopla. AMLの診断は骨髄像, 骨髄生検, 穿刺液 clot section, 骨髄組織培養所見などをもって行なった.
    高齢者 Hypopla. AMLは, 肝腫を除き診断時の発熱, 出血傾向, 脾腫, リンパ節腫脹などの理学的所見に乏しく, また白血病診断前に再生不良性貧血と診断ないしその疑いがもたれていた例が6例35.5%にみられた. 診断時末梢血では白血球減少, 芽球の低率な出現, 比較的リンパ球増多, 単球比率の増加, 骨髄では比較的赤芽球増多, III型 Sideroblast 増多などが注目された.
    次に高齢者 Hypopla. AMLは初発症状発現から診断までの期間6カ月以上の症例が41.2%と長期間の例が多く, 又 systemic chemotherapy (-) 群で推定発病からの生存期間は Typ. AMLの2.5カ月に比し Hypopla. AMLで12カ月と明らかに長く, 本症と Smoldering acute leukemia との関連が示唆された. 一方 Typ. AMLでは systemic chemotherapy によりその生存期間は2.5カ月から6.5カ月と著明に延長しているのに比し, Hypopla. AMLでは12カ月から8カ月とむしろ短縮しており, 確定診断からの生存期間でも2.5カ月から3.5カ月と軽度延長しているのみであった. すなわち, 高齢者AML特に Hypopla. AMLでは特殊な治療体系の確立が望まれると共に, 高齢者AMLにおいては化学療法の検討と評価に際し bias をなくすための層別化が必要であると思われた.
  • 亀山 孝二, 間 武雄, 浅野 伍朗
    1982 年 19 巻 1 号 p. 16-25
    発行日: 1982/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    血管平滑筋細胞が多分化能を有する細胞でその機能異常が動脈硬化様病変など血管病変の発生にいかに関与するかの検討を目的に, ヒト剖検例並びに実験的に1%コレステロールとバゾプレッシン投与家兎の脳動脈, 冠動脈, 大動脈と犬の血管の平滑筋細胞を対象に電顕組織化学的に Periodic acid methenamine silver (PAM), Ruthenium red (RR) 染色法を用い, 膠原線維, 弾性線維の形成動態を検討すると共にMg-ATPase, Acid-Phosphatase, Na-K-ATPaseなど各種酵素の活性局在並びにオートラジオグラフィーにより3H-Thymidine, 3H-Proline を用い本細胞の増殖動態と機能的役割を検討した.
    その結果, 1) 血管平滑筋細胞は加齢に伴い内膜肥厚に関与すると共に基質の膠原線維, 弾性線維などの産生に基本的に関与しており能動的性質を有していることが電顕組織化学法, オートラジオグラフィーにより明らかとなった.
    2) 血管病変の発生には血管攣縮および血清内因子の作用が重要であり, 平滑筋細胞の Acid-Pase, Mg-ATPase の活性局在は各血管で特異性を示し, 血管障害の指標として注目された.
    3) Na-K-ATPase は平滑筋細胞の細胞膜に局在し細胞の収縮能と関連することが示唆され, この酵素の失活は血管の異常収縮を発来すると考えられる.
    4) 血管透過性は血管の持つ構造的, 機能的差異により, 異りその亢進は内皮細胞の障害を介して平滑筋細胞の障害並びに血管の機能失調の発現に重要である.
    5) 以上血管平滑筋細胞は多分化能を有する細胞で, 動脈硬化様病変並びにその類似病変の発生に極めて重要な役割を果していることが剖検例, 実験例の検索から明らかになった.
  • 佐藤 秩子, 田内 久
    1982 年 19 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 1982/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    臓器組織の老性変化研究の一環として, 田内, 吉岡らはラットの骨格筋 (前脛骨筋) について微計測的検索を行い, 骨格筋の赤筋では逐齢的減数を, 白筋ではむしろ減容をみとめた.
    本報告ではヒト声帯筋についての同様の微計測的検討により逐齢的変化を求めた. 18歳より97歳迄の日本人男子剖検例109例の声帯中央部横断面のパラフィン切片について燐タングステン酸ヘマトキシリン染色により赤筋, 白筋 (I, II型) に分けそれぞれの年齢変化を検討した. 切片上での声帯筋横断面積は50歳以後減少しはじめ, 80歳以後有意となる.
    一定視野内筋線維数×声帯横断面積から, 計算上の筋細胞数係数を求めた. 白筋では30歳以後から減少し始め, 60歳代以後, 逐齢的に有意な減数がみとめられた. 赤筋では50歳以後から減数がみられるが70代以後有意となる.
    個々筋線維の大きさは赤・白筋とも逐齢的に増加する. 白筋ではやや不規則で80歳以後むしろ減容の傾向を示す.
    筋線維の総面積は個々筋線維の逐齢的増容にも拘らず, 線維数の減少が強いため, 白筋では60歳以後, 赤筋では70歳以後に有意な減少がみとめられた.
    声帯筋横断面積は逐齢的に減少し, とくに80歳以後には有意となる. 赤・白筋ともに筋線維数は減少し80歳代では更に白筋の減容が加るという成績で充分裏付けされる.
    白筋では本質的な老性変化に加えて栄養障害, disuse などによる修飾が加り易い事が推測された. 以上の声帯筋における成績は, さきの共同研究者によるラット前脛骨筋における逐齢的消長と異る点もみられたが, この差はヒトとラットの差というよりも, 四肢運動筋と, 特殊筋である声帯筋との機能の差に起因すると考えたい.
    リポフスチンの沈着は全く寥々たるもので細胞減数と無関係であることが改めて認められた.
  • 井上 博, 大川 真一郎, 植山 千秋, 阿部 仁, 上田 慶二, 杉浦 昌也
    1982 年 19 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1982/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    Thurmann の報告以来, 心房細動f波波高は左房拡大, 負荷を反映すると考えられているが, 反対する報告もある. 本研究では心房細動を伴った143例の剖検例を対象として, 老年者におけるf波波高と心房容積に関する臨床病理学的検討を行ない次の結果を得た.
    最大f波が粗なもの (≧0.10mV) の頻度は, 非心疾患群, 弁膜症群, 高血圧・虚血性心疾患群でそれぞれ20%, 65%, 56%であり, 非心疾患群では他の二群より有意に低かった. f波波高の平均値は, 非心疾患群が最低で (0.06mV), 弁膜症群 (0.14mV), 高血圧・虚血心群 (0.11mV) に比し有意に低い値を示した. f波は年齢が増すほど低い傾向を示し, 経過中にジギタリス剤の投与の有無にかかわらず減高した.
    心房容積 (右房と左房の和) は, 非心疾患群, 弁膜症群, 高血圧・虚血心群でそれぞれ平均92, 140, 113mlで, 三群間に有意の差を認めた. 心房容積は心房細動の持続の長いもの (≧3カ月) は短かいもの (≦1カ月) に比して有意に大であったが, 年齢による差は認められなかった.
    全体としてみると, 粗なf波を有する例は, 微細なf波を有する例に比し心房容積は有意に大きく, 非心疾患群でも同様であった. しかし弁膜症群や高血圧・虚血心群ではf波が粗な例と微細な例で, 心房容積に有意な差は認められなかった.
    以上のことから, 心房容積はf波波高を規定する因子であっても唯一のものではないことが示された.
  • 衣笠 勝彦, 加嶋 敬, 稲田 安昭, 堀居 雄二, 森永 理, 片岡 慶正, 瀧野 辰郎
    1982 年 19 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 1982/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    合成基質 Suc-(Ala)3-NAを用いて, PS試験で得られた十二指腸液の elastase 活性測定法に検討を加えるとともに, PS試験を施行された60例における elastase output の加齢による変化を, 同時に測定した amylase output と比較する方法で検討した. その結果, elastase output と amylase output は非常に強い有意の相関 (n=60, r=0.773, p<0.001) を示した. elastase output は加齢とともに明らかに低下し, さらにelastase output と amylase output の比 (E/Aratio) も加齢により有意に低下した. すなわち, elastase output は加齢により他の膵酵素よりも強く低下することが証明され, elastase が動脈硬化症の進展に関与している可能性を関接的に支持する結果が得られた.
  • 高橋 修和, 荒井 敦子
    1982 年 19 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 1982/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    我々は山梨県における人口の高齢化を示す指数の年次推移および地理的分布について検討した.
    1950年以後の人口年齢別構成割合の年次別推移は年少人口割合は減少し, 生産年齢人口割合および老年人口割合は年々増加している. 老年人口指数および老年化指数は1950年以降年々増加し, 1975年では1950年以前の2~3倍となっている.
    山梨県は全国の人口の年齢構成割合および指数をいずれの年次においても上回っている.
    老年人口を示す65歳以上人口割合, 長寿者率, 高齢者比率, 長寿率は1950年から男女共に年々増加を示している. 全国と山梨県のこれらの数値を比較すると, いずれの指数も山梨県は高値を示している
    1955年に老年人口指数および老年化指数の高値を示している市町村群は1965年, 1975年とも高値を示し, その増加も著しい. これに対し, 高齢者比率および長寿率は年次により市町村群の分布は異なっている.
    1975年の老年人口を示す老年人口指数, 老年化指数, 長寿者率, 長寿率のいずれも市部およびその隣接町村では低率である. さらに老年人口指数, 老年化指数は県東部市町村が低率である. 長寿者率および長寿率は県中央部町村および県南部町村が高率である.
  • 藤田 勝成, 坂本 信夫, 葛谷 文男
    1982 年 19 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 1982/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
    リポ蛋白リパーゼ (LPL) がヘパリンにより血管内皮より血漿中に遊出する事, 肝トリグリセライドリパーゼ (H-TGL) も同様にヘパリンによって血漿中に出現する事が知られているが, この機序については種々の推測がなされている. 著者等はLPLに対するヘパリンの役割を知るため, ヘパリン注射後の血漿 (PHP) を用いてPHP中のLPLに対してヘパリナーゼを作用させ, ヘパリンのLPL活性に及ぼす影響及びヘパリナーゼによって得られたヘパリン分解物の静注後のLPL活性について調べた. H-TGLがヘパリンにより遊出される場合, 直接ヘパリンによる影響か, あるいはLPLによって血漿中で上昇する遊離脂肪酸 (NEFA) やグリセロールによって二次的に肝からH-TGLが遊出されるか不明であるため著者はラットの肝を灌流し, 灌流液中にNEFA, グリセロール, ヘパリンを用いてH-TGLが遊出されるか否かを検索した.
    その結果, 1) PHPにヘパリナーゼを添加し, 経時的にヘパリン量を検討すると, 添加されたヘパリナーゼに対応してヘパリン量は減少した. 2) しかしLPL活性を示すNEFA量の変化はヘパリナーゼ添加によってもコントロールと差違を認めなかった. 1), 2)よりLPLが遊出されるとヘパリンはLPLに対して必須でなくなり, ヘパリンはLPLの遊出作用を有するのみであると推察された. 3) 今回ヘパリナーゼによって得られたヘパリン分解物は, 血液凝固阻止能がLPL活性化能に比しより強く低下する傾向にあった. 4) 肝灌流実験においてグリセロールではH-TGL活性に影響を与えなかったが, NEFA及びヘパリンでは明らかに活性を上昇させ, H-TGLはNEFAによっても活性化される事を認めた. 5) ヘパリン灌流により遊出されたH-TGLはプロタミンの阻害を受けたが, NEFAでは阻害を受けなかった, 4), 5)はヘパリンによるH-TGLの活性化には血漿中に上昇したNEFAによっても二次的にH-TGLが遊出される事を示唆する.
  • 1982 年 19 巻 1 号 p. 61-88
    発行日: 1982/01/30
    公開日: 2009/11/24
    ジャーナル フリー
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