血小板凝集, 血栓形成及び動脈硬化などの発症の面より高度不飽和脂肪酸代謝が注目を集めており, アラキドン酸 (AA, C
20:4) に関しては可成りの事が判ってきたが, エイコサペンタエン酸 (EPA, C
20:5) については未知のことが多い.
グリーンランドのエスキモーに於いて血清脂質中にEPA含量が高いこと及び血栓性疾患が少なく, 出血性疾患の多いことが報告されている. 我が国におけるEPA含量に関する報告は極めて少ない.
今回, AA及びEPA含量をガスクロマトグラフィを用いて測定し, とくに加齢による影響について検討した.
1) 血清脂質の総脂肪酸量は若年者群でも高齢者群でも変りなく, その構成脂肪酸をみると, 高齢者群で飽和脂肪酸含量が増加し, 高度不飽和脂肪酸含量が一般に低下する傾向を示した.
2) AA及びEPA含量に及ぼす加齢の影響をみると, 前者は加齢に伴い低下傾向を示し, 後者は上昇傾向を示した. 従ってEPA/AA比は加齢に伴って有意に上昇した.
3) AA及びEPAの血清脂質画分における分布をみると, AAはリン脂質に多く, EPAはリン脂質とコレステロールエステルにほぼ均等に分布していた.
4) 以上の諸変動について, 食餌の影響その他について考察した.
抄録全体を表示