近年, 脳血管障害・パーキンソン病・脊髄小脳変性症など種々の神経疾患において, 自律神経系に対する検討が行なわれている. ただし, 自律神経機能は生理的加齢に伴っても変化するため, 患者の自律神経機能を評価するにあたっては, 常に加齢による影響を考慮する必要がある. 我々は, 加齢に伴う自律神経機能の変化を, より詳細に検討する目的で, 高血圧・糖尿病・神経学的異常・一般検査における異常のいずれをも有しない, 各年代層の健常者81例を対象として, 血圧・脈拍・呼吸の連続記録下に hemodynamic functional tests を施行した. さらに, パーキンソン病患者36例・脊髄小脳変性症患者26例にも同様の検討を行ない, 同年代層ごとの健常者の成績と比較した.
1) 副交感神経機能の指標である Aschner 試験・Valsalva maneuver の反射性徐脈は, 加齢に伴い緩徐な反応性低下を示した.
2) 交感神経機能の指標である寒冷昇圧試験の反射性頻脈・反射性血圧上昇は, 30歳代で急速に低下し, それ以降の年代では変化が少なかった.
3) 起立性血圧下降は, 40歳代以降で著明となった.
4) パーキンソン病・脊髄小脳変性症における起立性低血圧の出現頻度は, 年齢をマッチさせた場合, 健常者との間に有意差を認めなかった.
以上の結果より, 加齢による自律神経機能の変化は, 一般に理解されている以上に大きく, 各種疾患における自律神経機能を検討する場合には, 加齢による影響を十分に考慮しなければならないと考える.
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